Nadia's Skyrim

  -スカイリムRP妄想日記-
【スカイリム独立戦争編】

カテゴリ: -スカイリム独立戦争編-

1

バルグルーフ
『お前は・・・ブレナイン?』

ブレナイン
『あ?なんだぁ文句あんのか?』

バルグルーフ
『いや・・・』

ブレナイン
『まったくあんたらお城の人間は、毎日いいもん食ってるくせに、
牢屋に入ってもパンとエールだけは貰えるんだからな!羨ましいよなぁ~』

バルグルーフ
『なんだとぉ~!!』

2

プロベンタス
『おい!ブレナイン!ブレナイン』

ブレイナン
『ああ?なんだぁ~?』

3

プロベンタス
『お前、幾らで雇われたんだ?』

ブレナインは不機嫌そうにプロベンタスに言う。

ブレナイン
『なんでそんなこと聞くんだ?』

4


プロベンタス
『あそこにいる方はホワイトランの首長様だ』

ブレナイン
『ふん!”だった”だろうwそれぐらい知ってる』

プロベンタス
『ああ、そうだな。
だがバルグルーフ殿はスカイリム中で有名なお方だ。
帝国軍のテュリウス将軍も彼の事はよく知っている』

ブレナイン
『何が言いてんだよ?』

プロベンタス
『つまりだ、もしお前が我々に手を貸してくれれば、それ相応の礼をすると言っているんだ』

5

バルグルーフ
『そうだ!お前が俺たちの脱走に手を貸してくれれば、金と住む場所、それに仕事をやるぞ!』

ブレナイン
『へっ、あんたら牢屋の中だろうwどこにそんな金があるんだヨ?』

バルグルーフ
『イイかよく聞け!俺たちがここを出たら、向かうのはソリチュードだ。
そこでエリシフに事情を説明する。そしたらお前の事を話してやる。
ソリチュードは知っているだろう?』

ブレナイン
『そりゃあ知っているよ。首都だろう』

バルグルーフ
『そおだ!ソリチュードだぞ!スカイリムの首都にお前も家を持てるんだ!』

6

物乞いのブレイナンにとっては寝耳に水だった。
だからどうしてもバルグルーフの話を信用できない。
だが・・・心は揺らいだ・・・

ブレナイン
『ほ、ホントなんだろうなその話・・・』

バルグルーフ
『もちろんだ!俺が街の人間に嘘をついたことがあるか!?』

バルグルーフ
『偉大なる首長バルグルーフとまで言われてるんだぞ!』

フロンガル
『そうだ!兄貴は偉大なる首長なんだ!』

7

ブレナイン
『わかった!わかったよ!じゃぁ~どうすりゃいんだぁ?』

プロベンタス
『ロックピックを何本かもってこい!』

ブレナイン
『ロックピック?そんなもんどこにあるんだよ?』

プロベンタス
『戦乙女の炉を知っているだろう?ホワイトラン入り口にある鍛冶屋だ』

ブレナイン
『ああ、知ってるぜ』

プロベンタス
『外にいつも立ってる女性がいる。俺の娘だ!』

ブレナイン
『おお、あの女か』

プロベンタス
『俺が助けて欲しいから作ってくれと言えば、すぐ作ってくれるはずだ』

バルグルーフ
『そうだ!エイドリアンだ!』

ブレナイン
『あ~わかったわかった。』

8

ブレナイン
『ちゃんと約束守れよ!』

バルグルーフ
『わかっているから、早く行け!』

ブレナイン
『へいへい』

9

アルギス
『どうだった?』

ブレナイン
『ああ、ロックピック持って来いって言われたよ』

アルギス
『交換条件は?』

ブレナイン
『・・・ソリチュードに家をくれるって。それと、金と仕事を・・・』

10

アルギス
『そうか。どっちにするかはお前さんの好きだ』

ブレナイン
『・・・』

アルギス
『よし、じゃぁ・・・今日の夕飯を運ぶときに持って行ってやれ』

ブレナイン
『わ、わかったよ・・・』

11

ブレイナン
『なぁダンナ・・・』

アルギス
『ああ?』

ブレナイン
『どっちにしたほうがいいと思う?』

アルギス
『そんなもん俺には決められねーよ。お前が選ぶんだ』

12

ブレナイン
『選ぶって・・・どうやればいんだよ?
おらぁ~ずっと物乞いやってきたんだ。
それが急にこういう話だろ・・・
わかんねーよぉ~』

アルギスがため息をつく

アルギス
『そうだなぁ~俺だったらポエットの出した条件を飲むね』

ブレナイン
『なんでだ?』

アルギス
『だってよ。まずソリチュードまで行かなきゃならないんだぜ。
道中危険は付き物だ。バルグルーフにとってお前は目の上のコブにすぎないだろ。
ってことは途中で死んでも、あいつにはなんの痛手にもならないてことだ』

13

アルギス
『それに、ソリチュードに家だって?
ホントにもらえるのかどうかさえ怪しいもんじゃねーの?』

ブレナイン
『でも、エリシフ首長に話をしてくれるって言ってたぞ』

アルギス
『話をするって、お前、そのボロ以外の服って持ってるのか?』

ブレナイン
『・・・・いや・・・持ってない・・・』

アルギス
『じゃぁ宮殿には入れないだろ。
ってことは、バルグルーフがエリシフにその話をしてくれるかどうかだって解らないってことだろ?
ってことは、家も持てるかどうかも解らないってことじゃないのか?』

ブレナイン
『で、でも・・・約束してくれた!』

アルギス
『助かるって思えば。嘘でもなんでもつくさ』

ブレナイン
『くっそー!ひでー奴なんだな!』

アルギス
『いや、だから。
どうなるか俺には解らんよw
だがブリーズホームに住んで、子供の世話と広場の清掃の仕事で食べていけるなら。
そっちのほうが現実味があるんじゃないのか?
お前だってルシアとは顔見知りだろ?
ってことは友達もいる。話相手もいる。
俺だったら間違いなくそっちを選ぶよ』

14 17-3

ポエット
『リーチやハイヤルマーチからの襲撃の可能性はゼロじゃありません』

ウィグナー
『ワシが首長になったとは言え、兵も民もまだ安定しておらん。
民心を掴まなくてはホワイトランの運営も難しい』

ポエット
『お気持ちは最もです。ですがこれは決して無視できません。
せっかくホワイトランの実権を握っても、また取り返されては元もこうありません』

ウィグナー
『だがどうすればいいのだ?』

ポエット
『とりあえずはグレイムーア砦の守りが先決です。
最低限度、ここの守りを徹底してリーチからの侵入を防ぎましょう』

ウィグナー
『それぐらいなら何とかなるだろうが、まとめる者がおらん。カイウスは牢に閉じ込めたしの』

15

ポエット
『リディアさんにお願いしましょう^^』

ウィグナー
『そりゃありがたいが・・・お前はナディアの従者だろ?』

ナディア
『私は大丈夫だよ^^』

ウィグナー
『そう言ってもらえるとありがたいな』

16

ウィグナー
『バルグルーフはどうする?あのまま閉じ込めておくのか?』

ポエット
『いえ、彼らには早めに出て行ってもらいます』

ウィグナー
『どこかへ移送するのか?』

ポエット
『いえ、脱獄してもらいます』

17

ウィグナー
『な、なに!?だっ、脱獄!?脱獄させるのか?』

ポエット
『はい^^』

ウィグナー
『せっかく捕まえてるんだぞ。
交渉の道具やらなにやらで使い道はあるじゃろ?』

ポエット
『いいえ。ホワイトランには彼を支持する者もいます。
彼にホワイトランにいられては色々と迷惑なだけなんですよ』

ウィグナー
『だが、あいつを脱獄させたら、ホワイトランに戻ってくるのではないのか?』

17-1

リディア
『戻ってくるわけないじゃないですかw』

ウィグナー
『え?』

ナディア
『子供がソリチュードにいるもんね^^』

ウィグナー
『あっ!そうか!なるほどのぉ~w』

ポエット
『彼の口から直接ホワイトランを奪われたことをエリシフに話してもらうんです。
彼女はすぐにでもテュリウスに手紙を送るでしょう。となればウィンドヘルムから帝国軍は引いていきます』

ウィグナー
『子供たちを先に送ったんじゃなかったか?エリシフだって既に手紙を送ってるんじゃないか?』

ポエット
『エリシフにはバルグルーフが正式に帝国側につくから、戦火を免れるために子供を預かってくれという内容で手紙をしたためました』

ウィグナーは驚きを隠せなかった。

ウィグナー
『なるほどなぁ~・・・お嬢さんにはホトホト感服するの!ナディア!お前が羨ましいぞw』

17-2

ナディア
『ねぇ!!ポッポちゃんかわいいでしょカワ(・∀・)イイ!!』

ウィグナー
『あ、いや、そういう意味じゃ・・・』

ポエット
『ああ~もぉ~><;』

リディア
『あらら・・・』

14 17-3

ポエット
『えっと、それとですね^^;事前に了解していただきたいのですが・・・』

ウィグナー
『なにをじゃ?』

ポエット
『ホワイトランは”ナディア”が落としたということです』

17-4

ウィグナーは急に顔を強張らせた。

ポエット
『それはつまり・・・』

ウィグナー
『わかっておる!
名家、名家と言っても、所詮は名ばかりの一族じゃ。
なのにこの街の首長の座までくれよった。
ナディア無しにこれほどの事は成しえなかったであろう』

ウィグナー
『わしはノルドだ、タロスの信奉者でもある。
だがワシは、どうもウルフリックとは馬が合わない。
あの男は高慢ちきで、支配欲の塊じゃ。
じゃがナディア、お前は別じゃ。
お前さんならワシらの期待に応えてくれる上級王になれるじゃろうて^^』

17-5

ナディア
『やだっ!王様なんかやりたくない!』

ウィグナー
『ええ~~・・・・』

18

山賊A
『おいおいおい、マジカよw』

山賊B
『どうしたの?』

山賊A
『見ろよ無人だと思ったら、もう囚われてるやつがいるぜw』

山賊B
『セットメニューじゃないw』

19

山賊A
『なぁ~こいつらの誰かで試さネ~?』

山賊B
『まっ、4人もいるし、一人くらいいんじゃないw』

山賊A
『さてとぉ~だれがしようかなぁ~?』

20

山賊B
『この女はダメね・・・強面だし。きっと噛まれるわ』

山賊A
『このでかいのは、反抗しそうだしな』

21

山賊A
『おい見ろよ!このハゲ、一番ひ弱そうだぞ!』

プロベンタス
『おい、よせよ、冗談だろう・・・』

山賊B
『いいわねwそいつにしましょww』

22

バルグルーフ
『おい!マテ!何するつもりだ!!!』

山賊B
『こいつどっかの貴族かしら?』

山賊A
『身なりからしてそんな感じだなwこいつは身代金代わりに使おうぜw』

山賊B
『そうねw』

バルグルーフ
『おい!やめろ!』

23

山賊A
『おら!さっさと行きやがれw』

プロベンタス
『うわぁ!』

バルグルーフ
『プロベンタスをどうするつもりだ!?』

山賊B
『あんたは後でのお楽しみよwじゃぁねぇ~w』

バルグルーフ
『なんだと!どういう意味だ!?』

山賊B
『あひゃひゃひゃひゃ!!!』








24

プロベンタス
『よ、よせ!やめろ!』

アルギス
『うるせぇ!おとなしくしてりゃすぐ終わるんだよ!!』

イオナ
『うりゃぁ~ああああ!!!』

プロベンタス
『や、やめ、やめてくれ~~~~!!!』

ジョディスが牛肉の塊を切り落とし、
床に剣をたたきつけてカキ―ン!という音を立てた。

イオナ
『うっひゃー!スゲーぞこの剣の切れ味!!!』

アルギス
『おおw』

(このありきたりな・・・落ち・・・)

25

イリレス
『な、なんてこと・・・・』

フロンガル
『うそ・・・だろ・・・』

バルグルーフ
『す、すまん、プロベンタス・・・』

26

その日の夜、バルグルーフ達はブレナインの助けのもとグレイムーア砦から脱出した。
ブレナインはやっぱりホワイトランに残ると言い、三人でソリチュードへ向かった。

27

バルグルーフ達がグレイムーア砦から出て行ったのを見計らい、
リディアを筆頭に、アルギス、ジョディスと数名の衛兵たちでこの砦の守りを固めた。

28

ポエットはナディアとイオナ、そして救出に成功したプロベンタスを連れて早馬で一路リフテンを目指した。
彼女は今までにない決意を内に秘めて。



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<備考>

◎ルシア
ホワイトランにいる両親を亡くした孤児。
ブレナインの世話になっていたが、ナディアが養子として引き取ることにした。

◎Jaxonz Positioner
今回初めてこちらのMOD使わせてもらいました。
基本的に箱コンなので、キーボード操作に切り替えるには、一度外さないといけないのですが、
初代の箱コンはこの繰り返しでおシャカにしちゃったので、ちょっと慎重にやりました。
ですので変な部分もあるかと思います。
しかし、ホントすごいMODですね^^
大事に使わせていただきます^^

明けましておめでとうございます。
いつも読んでいただいている読者の方々には感謝に耐えません。
皆様の益々のご健勝をお祈りいたします。

今年もどうぞ、愚筆ではございますがよろしくお願いいたします。

さて今回の物語ですが戦争ものになっております。
読み応えがあるよう、はたまた見所があるよう十分に考慮して作成させていただきました。
しかしながら、お読みなられる方々の中には、非常に不快に思われる描画もございますのでご注意ください。

新年一発目の【スカイリム・オリジナル・ストーリー】

お楽しみくださいm(_ _)m

2016年  1月2日  作者より

1

ウィンドヘルムは北西に位置するスカイリム最古の街である。
かつてノルドの英雄イスグラモルが500の同胞団を引き連れて、ここよりエルフ達を追い出した。
その後の建造物で、スカイリムのノルドたちに取って非常に歴史ある都市でもある。
アンソール山脈の南側に寄り添うように石造りで建てられたこの城は、
200年以上の年月が経とうとも、その堅牢さは未だ健在である。

またこの地は、スカイリムにおいて最も降雪量の多い地域として有名である。
そのため作物が育ち難く、物資の調達は他の町からの援助がほとんどだった。
しかも本格的な冬将軍が訪れれば、完全に陸の孤島になってしまうほど厳しい環境である。

そんな場所だからこそ人々は知恵を出し合って生きる術を編み出す。
干物や冷凍に至るまで、保存のためのあらゆる知識は他の地域の類を見ない。
そのため食料の備蓄は、他の都市に比べて遥かに多い。
今現在ウィンドヘルムに住む人々を飢えさせることなく、約半年は援助なく過ごしていけるだけの蓄えがある。

2

テュリウスはウィンターホールドの陥落に成功すると、休む間もなくウィンドヘルムへ進軍した。
彼は停戦協定が結ばれた時点から、既にウィンドヘルムまでの攻略策を練っていた。

参謀役であるリッケは、かつてウルフリックの元にいた人物であったため、この城について最も詳しい人物だった。
食料の備蓄が多いこの城には兵糧攻めは効果がない。
ということは短期決戦が必然となる。

前述通りこの城の後ろにはアンソール山がそびえ立っている。
入口はホワイト川に掛かる巨大な石造りの連絡橋を渡った巨大な正門と、そして港工の奥にある隠し扉の2か所。
いずれも城の南側に位置している。

本来ならば敵の正面に陣を敷きたいところだが、リフテンからの後方支援の可能性があるため不可能だった。

そこでテュリウスは、東と西の2方向から正門を狙って挟撃することにした。

3

一方は東側の海沿いに位置するユンゴル墓地周辺。
ここに【トレイターズポスト】と呼ばれる山賊たちの拠点があった。
これをたやすく一掃すると、このボロ小屋を本陣として置くことにした。

4

もう一方はウィンターホールドから南西に位置するカスタブ砦である。
ここにも死霊術士が数人いたが、あっという間に片付けてしまい陣取りをしたのである。

5

一方ウルフリックは、帝国軍来るの報を受けてから城の正面に陣取りをさせた。

6

さらにカスタブ砦からの挟撃を考えて、アンガの工場付近にも陣を敷いたのである。

7

彼は撃って出るよりもあくまで籠城をしたほうが、落ちにくいことを知っていた。
持久戦はこの土地にとって定石といえた。

8

しかし最初に動いたのは反乱軍だった。
ガルマルはウルフリックに進言した。
帝国は戦続きで兵士の疲労がピークに来ている。
今こそ初戦を制し、敵の士気を挫くべきだと。

そこでウルフリックは帝国軍の本陣を夜陰に乗じて攻め込むことにした。

ウィンドヘルム南側には三つの農場がある。
その一つであるフラール農場の脇道を上り、狩人のキャンプを横目にさらに東へ進む。
雪と氷に覆われた山の急斜面を足元に気をつけながら進むと、敵の本陣である【トレイターズポスト】が見えてくる。

9

彼らは事前に用意した油玉を陣に向かって無数に投げつけた。
さらに火矢を打ち込むと瞬く間に大火事になったのである。

帝国兵たちは何事かと右往左往し始めた。
慌てた兵が火を消そうと、手近にあった桶の水をかける。
油を含む炎は、広範囲に広がるばかりで、兵士たちの狼狽が余計に広がった。

反乱軍はさらに油玉に火矢を打ち込む。
すると今度はウィンドヘルム城から歩兵が攻め込んできた。

帝国軍は上と下の両方から挟撃を受け、ホワイト川に逃げ出し、【雪帳の聖域】まで陣を後退させざる得なくなった。

ウルフリックは初戦を見事な勝利で飾ることができた。

10

実はテュリウスは、この事態をおおよそ予測していた。
なので本陣といえどそれほど兵も置いていなかったのである。
ただし、自分がそこにいないとウルフリックは攻めてくる可能性も少ないと考えていた。

戦に置いて重要なのは地の利である。
地元である反乱軍にはそれがあるものの、帝国側にはそれがない。
まさに死地に身を置いていることになる。

ではそれを回避するにはどうすればいいのか?
最小の犠牲で最大の利益を。

この城を落とすには、こちらから仕掛けるよりも、
まずは相手の出方を見て、犠牲を少なくしジッと耐えることが重要だった。

11

本陣を落としたことによって、ウルフリックはややも浮かれていた。

ウィンドヘルムの東側には急斜面の山道がある。
この道は岩山に隠れているため、一見するとただの山の群れにしか見えない。
ただここを上り切ると丁度カスタブ砦の裏手に出るのだ。

彼はテュリウスに目に物を見せてやる意気込みで、帝国に更なる追い打ちをかけた。
翌朝数十名の兵を引き連れてこの坂を上り、砦の裏から侵入。
突如として姿を現した反乱軍に帝国兵は浮足立ち、防戦一方になる。

しかし時の声とともに【アンガの工場】付近に陣取っていた兵も正面から現れ、二方向からの挟撃を受けてしまった。

12

カスタブ砦は瞬く間に占拠された。

13

反乱軍は初戦の2戦を制したことで喜び喚起し、
【帝国弱し!】【テュリウス腰抜け!】【ウルフリック万歳】
の三拍子の声で包まれ、ハチミツ酒を浴びるように飲んだ。

14

しかしテュリウスはこの機会を見逃さなかった。
密偵の報告を受けると、彼は今まで耐え続けていた物を吐き出すように、部下たちに矢継ぎ早に命令を下した。
そしてウィンドヘルムに総攻撃をしかけたのである。

15

一方はリッケ特使を大将に夜陰に乗じてホワイト川を渡り、正面の反乱軍に襲い掛かった。

15-3

酒に酔って眠りこけていた反乱軍は、突如として現れた帝国軍に完全に虚を突かれ右往左往し始めた。
明かりも乏しい中で敵味方入り乱れての乱戦状態となった。

16

さらにもう一方は、テュリウス自らが陣頭指揮を取り、ウィンターホールドからの援軍も加えカスタブ砦へ攻め込み、これをたやすく落とし進軍。
そしてアンガの工場付近の陣に襲い掛かると、これもいとも簡単に殲滅してしまった。
反乱軍は酔っぱらって酩酊していたため、帝国軍のされるがまま死体の山を築いていった。

快進撃を続ける帝国は、遂にウィンドヘルムを2方向からの挟撃に成功したのである。

16-3

これにはさすがの反乱軍も浮足立った。
慌てたウルフリックは正門を固く閉じ、入口に兵を集め虫一匹侵入させまいと必死に守りを固めた。
門の屋上から雨あられと反乱軍が火矢を浴びせる、油玉も一緒に投げ入れていたせいで、橋の上は大炎上。
湿り気のある強い寒風が炎を冗長させ、波ように帝国軍に襲い掛かり、彼らを灰になるまでまで焼き上げた。
反乱軍は辛うじて帝国の侵入を防ぐことができた。

その後、反乱軍は亀のように固く閉じこもって籠城せざる得なくなったのである。

16-4

一方帝国はウィンドヘルムという巨城を落すまでは行かなかったものの、反乱軍を徹底的に叩き追い詰めることに成功。
結果的に大勝利を治め、再びホワイト川を渡った。
トレイターズポストは燃え尽きてしまったので、そこからやや東にあるリフュージズ・レストに本陣を構えなおした。

しかし、反乱軍が籠城を決め込んでしまったせいで、帝国も容易には攻め込めなくなった。
そのためお互い睨み合いが続くようになる。

17

ウィンドヘルム正門前には焼け焦げた遺体が累々と続いた。
その殆どが帝国兵ではあるが、取り残された反乱軍の姿もそこにはあった。
この戦でストームクロークは兵の半数以上を失う大失態を犯してしまった。
城に閉じこもることで、なんとか帝国からの攻撃は防いではいたものの、ダメージが大きすぎ、すっかり意気消沈してしまった。

18

ポエットはホワイトランを制圧した後、すぐにカルダーをウィンドヘルムへ使わせた。
彼は丸一日かけて馬を走らせようやく到着することができた。

ウィンドヘルムの惨状を目の当たりにした彼は、簡単には入場できないことを悟り、少し南にあるカイネスグローブの宿屋にいた。

ウルフリックがいかに籠城を決め込んだとしても、どうしても門を開けなくてはいけない時がある。
それは【薪】である。
ウィンドヘルムは年間を通して降雪量が多いため、薪の保存に適していない。
そのために定期的に薪集めをしないと火が焚けなくなってしまう。

カルダーは門が開く薪集めの日を待つしかなかった。

19

カイネスグローブに到着してから2日後、ようやく開かずの門が開いた。
彼は皆が薪集めから戻ってくるの待ち、一緒に紛れ込むとようやく城へ入ることができた。

昔馴染みの衛兵に話をし、王宮の間に通してもらった。

20

ウルフリック
『貴様が姿を現したということは、ようやくナディアの気持ちも決まったようだな』

カルダー
『・・・』

ウルフリック
『我々に味方するということでいいんだな?』

カルダー
『さぁ・・・?』

ウルフリック
『さぁ?』

カルダー
『手紙を預かってきた』

ウルフリック
『手紙?』

21

ウルフリック
『カルダー・・・・これは本当の事なのか?』

カルダー
『ああ』

カルダーはぶっきらぼうに答える。

ガルマル
『何と書いてある?』

ウルフリック
『ナディアがホワイトランを落としたと』

ガルマル
『なんじゃと!?ちょっと見せてみろ!』

22

ウルフリック
『どうやって落としたんだ?』

カルダー
『さぁ・・・?』

カルダーはなぜか首をかしげて否定的な態度をとる。

ウフルリック
『さぁ!?どういう意味だそれは!?』

ウルフリックが勢いあまって問い詰める。

カルダー
『わからない』

ウフルリック
『わからないってお前、ナディアと一緒にいたんじゃないのか?』

間髪入れずガルマルが割って入ってきた。

ガルマル
『こうも書いてあるぞ。間もなく帝国がウィンドヘルムから撤退するだろうと。
そしてウィンターホールドも手放すだろうから、すぐにこれを占領せよと』

ウルフリック
『帝国が撤退?ホワイトランをナディアが落としたからって帝国が撤退するって言うのか?』

23

ガルマル
『どうもよくわからんな・・・おいっ、カルダー、何故撤退するんじゃ?』

カルダー
『さぁ・・・?』

24

カルダーの否定とも肯定ともとれない態度にウルフリックは苛立った。
彼の首根っこを掴むと顔前で怒鳴り散らす。

ウルフリック
『貴様ふざけてるのか!!!』

カルダー
『いいや?』

ガルマルが再び割って入った。

ガルマル
『いや、待て!』

皆がガルマルに注目した。

25

ガルマル
『カルダー、ここに書かれていることは本当の事なんだろうな?』

カルダー
『ああ』

ガルマル
『わかった。お前は下がってろ』

26










27

ウフルリック
『ガルマル!いったいどういうつもりだ!?なぜ奴を下がらせた!?』

ガルマル
『落ち着けウルフリック!』

ウルフリック
『これが落ち着いていられるか!?』

ガルマル
『もしこの内容が本当なら、ホワイトランからソリチュードまで最短距離で伺うことができる』

ウルフリック
『だからなんだ!?』

28

ガルマル
『今の帝国にとってソリチュードは喉元だ!ここを狙われたら!いかにテュリウスと言えど兵を引かざる得ない!』

ウルフリックは喉を詰まらせた。

ウフリック
『じゃぁ、ホワイトランが落ちたのは本当なのか?』

ガルマル
『その真偽はわからん。だがもし本当ならば、近く帝国は撤退するはずだ』

29

ウルフリック
『そういうことなら、奴は何故話さなかったんだ?』

ガルマル
『おそらく余計なことを話すなと言われとるんじゃ』

ウフルリック
『余計なこと?』

ガルマル
『お前がさっきナディアが反乱側につくのかと聞いたら、答えをはぐらかしたじゃろ』

ウルフリック
『ああ』

29-1

ガルマル
『ナディアは使者を連れてこいと言っとるんじゃ』

ウルフリック
『なんの使者だ?』

ガルマル
『ホワイトランを手土産にするからその見返りを寄越せと言っとるんじゃ』

ウルフリック
『・・・交渉の使者か・・・ってなんだと!?』

後半彼は声を荒げた。

30

ガルマル
『ホワイトランは我々にとって必要だ!
ナディアも必要だ!帝国に勝つにはあの女が必要なんだ!』

それ以上にガルマルは声を粗ぶり、ウルフリックの首根っこを掴んでいた。

ガルマル
『すまん・・・』

彼はハッと気づくと、掴んだ手を放した。
ウルフリックは一呼吸置いて自分を落ち着かせた。

31

ウルフリック
『なにを・・・何を要求してくると思う・・・』

ガルマル
『わからん・・・だがこの窮地を脱出できるのならば・・・選択の余地はないだろう』

反乱軍は現在窮地に陥っていた。
最もな要因は初戦の2戦を勝利したものの、その後の帝国の逆転劇に完全に士気を失いつつあった。
にも関わらず、やけ酒まで飲み始めている。状況は最悪に近かった。

それでもテュリウスは手を抜くことはなかった。
膠着状態が続くと、彼は実戦を全く行わず、諜報戦を仕掛けて来た。
その狙いはダンマーとアルゴ二アンであり、彼らを焚付け内側から門を開けるよう画策したのだ。

それはカルダーが到着する2日前に起きたことだった。
ダンマーの動きが妙だということを、エルフのニラナイが嗅ぎつけ、近くの衛兵に密告。
全てのダンマーとアルゴ二アン達を逮捕監禁することで未然に防ぐことができた。
しかし、これはガルマルを通すことなくウルフリックの独断で行われていた。

31-1

これが一部のノルド達の反感を買った。
ウィンドヘルムではダンマーとアルゴ二アンは迫害の対象となっている。
だが彼らの中にはノルドを頭とし、商売を行っている者も少なくない。
貴重な労働力を奪われたことに、ウルフリックに反感を持ち始めていたのである。

ガルマルはウルフリックに何度も訴えたのだが、まったく聞く耳持たずの状態だった。
実際彼自身、猜疑心に苛まれ始めていたのだ。

そんなときに来たナディアの助け舟である。
ウルフリックももちろんだが、ガルマルは藁にも縋りたい思いだったのだ。

32

テュリウスの元に知らせが届いたのは、カルダーがウルフリックに手紙を渡してから3日後の夕方ごろの事だった。

テュリウス
『クッソー―!あの女狐め!!!!』

テュリウスは怒号を放ち近くにあったものを力いっぱい蹴とばした。

リッケ
『・・・将軍』

テュリウス
『撤退だ!撤退の準備をしろ!』

アルディス兵長
『将軍!まずは情報の真偽を確認してからでも・・・』

テュリウス
『情報の真偽だと!?馬鹿者目が!!!
バルグルーフが直接言ってきてることが何よりの真実だろうが!!!』

ホワイトランが反乱軍の手に堕ちたという報は、瞬く間に帝国軍をウィンドヘルムから撤退させた。

ナディア達がホワイトランを落としてから既に6日以上が経過してた。

一人の小さな女性の策略は見事に功を奏したのである。
そしてこの事がスカイリムの情勢を一気に変化させたのだ。



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<備考>

【油玉】
主に牛や豚の腸などを一度乾燥させ、適当な大きさに切り分ける。
切り分けた干物を一晩かけて水戻しし、片方を固く縛り付け、
ここに点火しやすい獣油を注ぎこみ、風船のようにパンパンに膨らんだところでもう片方を縛り付ける。
投げつけ、物に当たると破裂し中身が飛び出る・・・かもしれない作者独自の想像物w

【トレイターズポスト】
日本語版スカイリムでは『裏切り者の位置』と翻訳されているが、
誤訳らしいので原文をカタカナで表記しました。

【ニラナイ】
ウィンドヘルムで働く金物屋の女ハイエルフ。
ハイエルフの中でも得に好戦的なのはサルモールという組織。
なのでハイエルフといえど全てのエルフが戦争に参加しているわけでない。
スカイリム各地には、サルモールとは関係のないハイエルフが多数生活している。

1

汚職の街、犯罪の街、盗賊の街

リフテンには様々な病名があった。
この街を取り仕切る者【ライラ・ロー・ギバー(Low-giver 立法者)】
その名の通りとはよく言ったもので、彼女がこの街の首長である。
しかし、この街で彼女を首長として認める者はごくわずかだった。

様々な問題を抱えた街が、街として成り立っている理由。
それは、この街の裏社会を仕切る人物がいるからだ。

【メイビン・ブラック・ブライアー】

彼女を怒らせてはいけない。
これがこの街の基本ルールである。
2

彼女はスカイリムで有名なブラック・ブライアーハチミツ酒の製造主である。
街のすぐ傍には、ホンリッヒ湖という湖がある。
この湖に浮かぶ小島で、自らの広大な敷地の養蜂場を所有している。
これがブラック・ブライアー家の主な収入源となっている。

しかしこれは表の話。
本当のところは誰も知らない。知りたくもないと言ったところだろうか。

何れにせよ膨大な資金力のある者が、この街の真の支配者となっていることは間違いない。
つまりは、首長でさえ彼女には逆らえないと言ったところである。

ホワイトランのクーデターを終えた後、ポエット達がここに急ぎ向かったのには理由があった。

【守りを固めるためのリフテン兵を借りること】
3

いくらウィンドヘルムから帝国兵が撤退するとしても、テュリウスも馬鹿ではない。
守りながら周囲に情報網を敷きつつ、撤退するはずである。
となれば隙あらば牙を剥く瞬間を狙ってくるということだ。
実際ドーンスターよりモーサルを含む西方は帝国領となっているため、テュリウスがホワイトランを伺うには十分な可能性があるのだ。
だが、本隊であるテュリウスの軍をホワイトランへ向けるには、何れの地域から進軍するとしてもどうしても時間がかかってしまう。

つまりはその時間を利用して、リフテンから兵を借り、防備に充てるということである。

とはいえこれには大きな壁が立ち塞がる。
それが【メイビン・ブラック・ブライアー】である。

ポエットは軍役していた頃、リフテンには伝達兵として何度か赴いたことがあった。
なのでこの街の情勢は理解していたものの、メイビンという女性だけは素性が掴めずじまいだった。
ハチミツ酒醸造所のオーナーであり、養蜂場の主であることは知っていたが、
たったそれだけの事でこの街の首長であるライラに対し、殆どため口ともいえる態度で接することができる物なのか?と。
4

ナディアの家に向かう時、カーリアに初めてその真実を教えてもらうことができた。

カーリア
『彼女はスク―マの売人よ。それも随分貴重なレッド・スクゥ―マのね』

ポエット
『レッド・スクゥ―マ?』

カーリア
『リフテンからちょっと西に向かったところにレッド・ウォータ―の隠れ家ってところがあるのよ。
そこの地下には赤い水が沸いているらしくて、何なのかは解らないけど、それをスク―マーに加えて作ってるって話だわ』

ポエット
『それを売りさばいているんですか?』

カーリア
『そうなんだけど、どこに売っているかはわからない。ただ彼女が帝国にもアルドメリにも顔が通じているってことは事実ね』

ポエット
『ならそこを潰してしまえばいいじゃないですか?』

カーリア
『あなたもナディアに関わるなら知っておいた方がいいわ。メイビンは私たち盗賊ギルドのパトロンよ』

ポエット
『えっ!?』

カーリア
『それに彼女に関わっているのは人間種だけじゃない。明らかに人外の者も含まれてる。
ナディアがギルドに関わった際にも忠告したけど、彼女に手を出すことは絶対に許されないのよ』

その時の彼女にはそれ以上何も言えなかった。

そう、ナディアの資産を知るまでは。

彼女は武力ではなく舌三寸と金の力でホワイトランを無血開城させた。
ナディアはどちらかというとお金に対し無頓着なところがあり、その管理はリディアが一人で行っていた。

が・・・
5

リディア
『そうねぇ~不動産だけでもホワイトランのブリーズホームにリフテンのハニーサイドでしょぉ・・・以後割愛

スカイリム
ホワイトラン ブリーズホーム
リフテン   ハニーサイド
マルカルス  ヴリンドリルの間
ウィンドヘルム ヒジェリム
ソリチュード ブラウドスパイヤー邸
ドーンスター ヘリヤ―ケン・ホール 
モーサル   ウィンドスタッド邸  
ファルクリース レイクビュー邸   

ソルスセイム島
レイヴンロック セヴェリン邸

そしてここエリジウムエステート
5-1

それ以外にも現在の自宅には、大量の宝石から調度品、膨大なインゴットから金貨に及ぶまで、
金額に置きなおしてみても、巨大な城を20から30は平気で持てるほど溢れていた。

山賊やモンスター退治などから得た賞金、またその戦利品の数々。
錬金術などに使用される稀少価値の高いモンスターの部位や植物。
またはそれによって生み出される高価な薬の品々。
各町の商店街への投資。
または自らが鍛冶場に立ち、武器防具などあるいはオリジナルの品々を製造、そして販売。

いかに冒険という混沌の中で、ハイレベルな経験をこなして来たかが伺えた。
それでも街の規則に従い、毎月一定の税も各町ごとに支払っているというのだから驚きである。

ナディアという人物が、ドラゴンボーンである以上に、途方もない資産家であることは間違いないが、
それを微塵も感じさせないところが、ポエットには魅力だった。

兎にも角にもこれだけの資産があれば、街一つ買い取るくらい平気なはずである。

とはいえナディアには上級王になってもらわなければいけない。
リフテンの首長はライラを据え置き、そしてメイビン以下悪党どもを排除。
そのためには立法者たるライラの【権威復興】をしなくてはいけなかった。
6

ブリニョルフ
『いきなり現れて、ギルドを移転しろだと!?ふざけてるのかお前は!?』

以前ポエットに肩無しにされた彼だったが、今回は違った。

ブリニョルフ
『おい!ナディア!お前マスターのくせにこんなこと了解するのか!?』

ナディア
ブリブリ~話聞いてよぉ~^^;』

ブリニョルフ
『これが黙ってられるか!?それにその呼び方やめろって言っただろう!

ポエット
『私は本気です!』

ポエットは負けじと一際大きな声で言った。

ポエット
『ギルドの皆さんに聞きたいことはただ一つです。
この先メイビンの援助を受け続けて、このギルドが本当に存続できると思いますか?』

ヴェックス
『今まではそれで旨くやってきたヨ』

6-1

ポエット
『今まで?・・・これからはどうです?
カーリアさんから話は聞いてます!彼女は明らかに悪事に手を染めている!
あなたたちはどう言われようともアウトローであることには変わりありません!
反乱軍がもしこの戦に勝つことがあれば、今度は帝国との本格的な戦争になります!
いえ!アルドメリかもしれません!
メイビンは!!
帝国にもアルドメリにも顔が効く!
自身の身に危険が及ぶと思えば、あなたたちなんて簡単に切り捨てますよ!! 

ポエットの声がホールに木霊し、その場が一瞬静寂に包まれた。

デルビン
『なら、他に方法があるのか?俺たちが存続できる方法だ』
6-2

ブリニョルフ
『おい!デルビン!』

デルビン
『お前だってメルセルが何をしたか覚えてるだろう?』

ブリニョルフ
『うっ・・・』

デルビン
『闇の一党だって、帝国とアルドメリの大戦のせいでブルーマから移転せざる得なくなったって話だ。
戦争は俺たちの場所も間違いなく奪いに来る。他に方法あるなら・・・俺は聞くべきだと思う』
7

ポエットはブリニョルフを睨みつけた。
ブリニョルフは肩の荷をおろし、観念した表情で”わかった”と了解した。

ブリニョルフ
『で?どこに引っ越せばいいんだ?』

ポエット
『それについては現在検討中です』

ブリニョルフ
『検討中?じゃぁメイビンの代わりは!?』

ブリニョルフは再び苛立ちを見せた。

ポエット
『それなら、ナディアがいます』
8

ブリニョルフ
『じょ、冗談だろ!こいつは確かに、俺たちの中でも間違いなく腕はピカイチだ!
ギルドを立て直してくれたのもこいつだ!そいつは認めるさ!
だがギルドのパトロンをするってのは、訳が違うんだぞ!』

ナディア
『幾ら出せばギルドのパトロンになれるの?』

ブリニョルフ
『え?』

ナディア
『幾ら出せばみんなを守ってあげられるの?』

ブリニョルフ
『そ、それは・・・』
9

ナディア
『私がさ、このギルドに入った時に言われたのはさ、お金持ちから盗んでいるんだって聞いたのね。とくに悪党のね。
でもさ、そこにいる新しく入った人達だとか、幹部以外の人たちに話を聞くとさ、お金持ってない人達から物を捕ったりしてるのね。
例えばウィンドヘルムの石地区とかさ、リバーウッドの商店とかさ、リフテンだってバリマンドの家に押し入ってるんだよ。
それにハニーサイドの私の家まで入ってこようとしたことあったんだよ。
まぁ私の家はいいとしてもさ、どう見たって関係のない弱い人たちから盗んでるじゃん?滅茶苦茶だよね?』

みなが押し黙る・・・

ナディア
『このギルドはさ、義賊的な考え方があるのかな?って私は思っていたのね。
でもさ、メイビンがいるから必要のない犯罪を犯しても、お金払えば許してもらえるっていう変な習慣ができてるんだよ』

彼女の言葉に誰も言い返すことができない奇妙な空気が流れた。

ナディア
『ギルドには守るべき信条がある』

ゆっくりとした口調でそう言うと、ブリニョルフを睨みつけた。

ナディア
『お前・・・私にそう言ったよな?』

ブリニョルフ
『えっ・・・』
10

ナディア
『おぃ!ブリニョルフ!おめーに聞いてんだよっ!これのいったいどこに信条なんてあるってんだ!?ああっ!?』

ナディアは近くにあった【物?】を蹴とばし、聞いたこともない怒号を放った。
彼女の表情は鬼のように怒り狂っていた。
普段が普段なだけに、彼女の変わりように皆が驚愕する。

ナディア
『メイビンなんてクソババア頼ってっからそうなるんだよぉ~!』

11

隣にいたポエットさえ驚きが隠せずにいた。
ふと最初に出会ったときの事を思い出す。

ナディアを怒らせるとこうなると・・・

皆が突然の出来事に呆気に取られてしまった。
12

カーリア
『ナ、ナディア・・・お、お、おちついて^^;』

カーリアは下腹部に落ちた言葉を必死に押し上げて、震え気味で口にした。
13

ナディア
『私だって無意味な殺しをしたり、酷いことも沢山してきた。
悲痛に叫ぶ人たちを見て、助けてあげられらなかった事もあった。
メイビンに関わってたら、盗賊ギルドも盗賊ギルドじゃなくて殺人ギルドに変わっちゃうんじゃない?』

ナディアはいつの間にかいつもの表情に戻っていた。

ナディア
『ナディアはさ、ギルドマスターだけどさ、ここにいる人たちにそんな意味のないことなんてさせたくないのね。
もちろん、泥棒なんていいことじゃないけどさ、今の世の中には必要不可欠だとも思うのね。
だから否定もしないよ。ただメイビンに関わるのだけはやめた方がいいと思うよ^^』

ポエットは思った。状況から判断して正論を述べることしかできない自分よりも、
ナディアのように同じ背丈で相手を見、感情に訴える事ができれば、より効果が高いのでは?と。
あの激高と若干ズレタ性格が、多くの者を付き従わせる原動力。
あれは自分には真似できそうもない・・・
14

カーリア
『ポエットの言うことにも一理あるし、ナディアの言うことにも一理あるのは確かよ。
あの女は自分の利益のためなら自分の家族に殺しをさせたり、不必要なら牢に閉じ込めたりもしてる。
私たちだけが例外と言うのは難しいと思うわ』

デルビン
『俺もそう思う・・・』

ヴェックス
『あたいもそう思うよ・・・』

多くの仲間を守ろうとする者は、兎角保守的で慣習に慣れやすい。
ブリニョルフはその典型と言えるのかもしれない。

彼は一呼吸置くと口を開いた。
15

ブリニョルフ
『なぁ、この件はもう少し俺たちで話合いをさせてくれないか?期待するほどではないかもしれないが、色は付けるぜ』

カーリア
『私もそのほうがイイと思うわ』

さすがにポエットもナディアもそれをダメとは言えなかった。
だが盗賊ギルドを説得させることにほぼ成功したと言えるだろう。
16

プロベンタス
『あの~そのぉ~』

プロベンタスがバツが悪そうに手を挙げて出てきた。

プロベンタス
『お取込み中もうしわけないんだがなぁ~・・・』
17

ナディア
『あっ!ごめん!プロベンタス忘れてたw』

ブリニョルフ一同最初は何事かと驚いていたが、理由を説明し暫く預かってほしいと願い出ると、それほど抵抗することなく受け入れてくれた。
18

次はライラとの接触だった。
彼女は基本的にミストヴェール砦から出てくることがない。
だがどうしても密会を開く必要があった。

彼女には二人の息子がいる。長兄のハラルドと弟のサエルンド。
ハラルドは反乱押しだったが、弟は真逆だった。

ハラルドは一日に一回、外に剣術の訓練をしに出てくることがある。
19

リフテン衛兵を務めたこともあるイオナには、隠密で衛兵に変装してもらい彼と接触してもらった。
【ドラゴンボーンが首長と内密に話をしたがっている】という内容で手紙をしたためた。
20

翌日の真夜中にミストヴェール砦の作戦室にてライラと密会を開くことができた。
ただし彼女の私兵であるアンミッドと息子のハラルドも一緒だった。

ライラ
『私に何の用だ。内密な話などらしくもない・・・』

ポエットが横から顔を出す。

ポエット
『始めましてライラ首長^^』

ライラ
『そちらは?』
21

ポエット
『私はポエット、ナディア様の従者です^^』

ライラ
『ナディアの従者だと・・・?』

ポエット
『単刀直入にお伺いします。首長はメイビン・ブラック・ブライアーを信用しておられますか?』

ライラ
『メイビンを信用しているかだと?そんな事を聞きに?』

ポエット
『はい』

ライラ
『彼女にはこの街の秩序の一部を任せてある。
特に盗賊ギルドに関しては、彼女が必ず一掃すると私に約束した。
私には結果がすべてだ。彼女の申し出が成功することを願っているだけだ』

ポエット
『彼女が盗賊ギルドのパトロンだとしても?』

ライラは苦顔をみせた。

ライラ
『な、なに!?』

ポエット
『彼女が盗賊ギルドを支えているんです』

ライラ
『証拠はあるの?』
21-1

ナディア
『ナディアがギルドマスターだよ^^』

ライラが驚く。

ライラ
『なっ!なんですって!?』

22

瞬時に空気が殺伐とする。
アンミッドとハラルドがライラを守るように構えた。

ポエット
『まっ!待ってください!!』

ポエットが慌てて静止に入る。

ポエット
『私たちは争いに来たわけではありません!』

アンミッド
『じゃぁ目的はなん
だ!?』
23

ポエット
『ライラ首長の権威復興です!』











24

ライラ
『権威・・・復興ですって・・・?』

ポエット
『はい!そのためにもメイビンを排除しないといけません!』

ライラが二人を落ち着かせると、イオナも抜いた剣をひっこめた。
彼女は一呼吸置くと椅子に腰かけた。
25

ライラ
『話を聞こうじゃない・・・』

ポエットはリフテンの現状を説明し、どうメイビンを排除すればいいのか、綿密に練った策をライラに言って聞かせた。
彼女は時折驚いた表情を見せるが、納得し首を縦に振ることもあった。
ライラの質問に対し、ポエットは毅然とした態度で返答する。
お互い抜かりがないことを確認し合うと、ライラは言った。

ライラ
『気になるのは、あなた方が望んでいる見返りは何?』

当然の質問だった。

ポエット
『ホワイトランを守るために、リフテンの兵を貸してほしいんです』

ライラは少し考えた後、口を開いた。

ライラ
『私の権威復興に手を貸してくれることはありがたいけど、それは難しい話だわ』

ポエット
『首長がおっしゃりたいのは帝国の動きですよね?』

ライラ
『その通りよ・・・リフテンはシロディールとの国境沿いの街。
いつ帝国が兵を送り込んでくるかわからない。
ここの首長である以上、私にはこの街を守る義務があるのよ』

ポエット
『首長の懸念は最もだと思われます。しかし、私の見立てでは帝国は援軍を向かわせることはありません』

ライラ
『自信がありそうね?どうして?』
26

ポエット
『理由は三つあります。
一つは、帝国はアルドメリとの大戦で大きなダメージを負っているということ。
テュリウスは内戦鎮圧のために1万程度の兵しか与えてもらえませんでした。
彼は現地調達を余儀なくされたんです』

ポエット
『二つ目は、内戦における停戦協定です。
私が思うにテュリウスという人は戦略には長けてますが、外交内政に関してはてんで疎い人物だと見ています。
その証拠に、その当時帝国領だったファルクリースをドーンスターとの交換に容易に応じました。
リフテンを反乱軍が所有している以上、ファルクリースは帝国にとって最も近い玄関口のはずです。
これを簡単に手放すということは、援軍は来ないと自ら口にしているようなものです』

ライラは苦顔し神妙な面持ちでポエットの話に耳を傾けた。

ライラ
『うむ・・・』

ポエット
『そして三つめは、今です』

ライラ
『今?』

ポエット
『現在、ウィンドヘルムは帝国軍と睨み合いの状況にあります。
これは戦況が帝国に傾いたせいもありますが、
テュリウスにしてみれば本来シロディールからの援軍を送ってもらい、
リフテンを襲う絶好の機会と言えるでしょう。
・・・でも来てません』

ライラ
『・・・確かに』

ポエット
『以上の3つが援軍が来ない理由です』

ライラはポエットの話に関心していた。
正直これほど自分にズケズケと物を言ってくる人間も、最近ではメイビンくらいだったが、
ポエットの話には奇妙な含みを全く感じなかった。
しかし・・・

ライラ
『でも・・・残念だけど援軍は出せないわ』

ポエットは驚く。

ポエット
『え?どうしてですか?』
27

ライラ
『その話を聞いた以上、私たちが最初にやることはウィンドヘルムへの援軍よ』

ポエット
『それならご心配いりません^^』

ポエットは帝国がウィンドヘルムから撤退する理由を説明した。
28

ライラ
『私の権威が復興できたとして、兵を持たない首長なんて話にならないわ』

アンミッド
『首長、この話を鵜呑みにするつもりですか?』

ライラ
『もちろん、私は憶測よりも結果を重視する人間よ。彼女の策が実ったらの話に決まっている』

ライラ
『だから、成功すればあなたの望むだけの兵を貸してあげるわ』

ポエット
『ありがとうございます^^』
29

密会の後、ライラは早速ポエットに言われた通りに行動を起こした。

リフテン監獄にはメイビンの孫である、【シビ・ブラック・ブライアー】が囚われている。
彼が前述でカーリアが語っていた男であり、家族のために殺しまでする悪漢であった。
だが街の権力者であるメイビンの名の元、彼の待遇は自宅の部屋と変わらず装飾品から家具に至るまで高級品を揃え、おまけに食事まで特別扱いされていた。

だがこの事をライラは知らされていなかったのだ。

手始めに彼女は、シビの待遇をもっと刺激的なものに変更させることにした。
30

素っ裸にし両手を縛りあげたシビを連れ、まるで見せつけるが如く中心街を歩かせる。
イオナが先頭に立ちシビを挟んで衛兵が付いていく。

シビ
『おい!俺をいったい何処に連れていくつもりだ!?』

イオナと衛兵は何も言わない。

この様子をメイビンが目にしていた。
彼女は驚いた表情でイオナに問い詰める。
31

メイビン
『お待ちなさい!!これはいったいなんのつもり!?』

彼女は自分の家族が辱めを受けていることに憤慨し、上目目線で怒鳴った。

イオナ
『首長の命令だ!そこをどけっ!!』

イオナはお構いなしに怒鳴り返す。
彼女は寸分も狼狽(うろた)えることなく、逆にメイビンを強い眼光で睨みつけた。

メイビン
『首長ですって・・・?』
32

メイビンは驚愕する。

イオナ
『申し出があるなら首長に直訴することだな』

そう言い放つと、彼らはラットウェイに姿を消していった。
33

メイビン
『首長!?』

メイビンは砦に入るなり、いきなり怒鳴り声でライラを指名した。

メイビン
『私の家族があのような辱めを受けるとは一体どういうことなの!?』

ライラは平然と答える。

ライラ
『メイビンか。どうした?何か問題でも?』
34

メイビン
『問題も大問題よ!先ほど衛兵に連れて行かれた男は、私の孫だ!
私はただお灸を据えるためだけに牢に入れておいたのだ!
あのような扱いをするのなら即刻釈放を求める!』

ライラ
『釈放?』

メイビン
『そうだ!!今すぐ私の権限で釈放しなさい!!』

彼女は完全にいきり立っている。

ライラ
『それはおかしな話ね?』
35

メイビン
『お・か・し・い~?』

ライラ
『私の調べでは、あの男は連続殺人鬼よ。それも重度のね』

メイビン
『はっ!いったい何を根拠にそのような事を言っているのか!?説明してほしいものね!?』
36

???
『直接本人から聞いたんだよぉ^^』

メイビンが怒りの形相で声の方に目を向ける。






37

メイビン
『ナディア!?』

彼女はしばし硬直し、一息してから再び口を開いた。
38

メイビン
『ははははははっ!』

メイビンが嘲笑する。

メイビン
『なるぅほ~どぉ~そういうことですか。あなたは私を売ったわけですね』

彼女の眼は細くなり、ナディアを嘲る視線を送った。

メイビン
『あなたがどれほど身のほどを弁えていないか、よ~くわかりましたよ』
39

彼女は開き直りナディアに指さし言った。

メイビン
『首長!あの女は盗賊ギルドのマスターよ!今すぐ逮捕なさい!!!』

40

ライラ
『知っている』

メイビン
『・・・え?』

ライラ
『だが、今はその話をしている訳じゃない。お前の孫の話だろ』

メイビンは硬直してしまった。

ライラ
『何か申し開きはあるのか?』
41

メイビンはショックのためか何も答えない。

ライラ
『何もなさそうだな。ならば私から話そう』
42


ライラは隣に座っている執政のアヌリエルに目を向けた。

ライラ
『アヌリエル』

アヌリエル
『は、はい・・・』

彼女の声は震え掠れていた。
そしてライラは言った。

ライラ
『メイビンの横に立て』
43

アヌリエルは無言のまま身を震わせ、メイビンの横に立った。
その表情は明らかに血色がない。
43-1

そしてライラは二人の前にある手紙を投げ捨てた。

ライラ
『さて、お二方。その手紙の内容を説明してもらおうか?』
44

メイビンは気が付いたように手紙を拾うと、読むこともなく丸めて口に放り込み、丸呑みしてしまった。

ナディア
『ああ!食べっちゃった!?』

メイビン
『手紙?いったいなんのことです?』

ライラはあきれ顔でため息をついた。

ライラ
『まったく・・・お前という女は、どこまでも往生際の悪い奴だな』

そう言うと彼女は腰の下にしまっていたもう一枚の手紙を取り出し、開いて二人に見せた。
45

それを見た二人は開いた口が塞がらない。

実はこの手紙、ポエットがカーリアに頼み、事前にアヌリエルの寝所からこっそり盗み出していたものである。

知者は知者に溺れるという。

ポエットはメイビンの狡賢さを読み取り、おそらく破り捨てるか食べるだろうとライラに伝えていた。
なのでワザと偽物を床に投げ捨てたのである。
46

ライラ
『この内容によると、アヌリエル、お前は私に隠れてシビの待遇を良くしていたようだな?』

アヌリエルは土下座して謝りだした。

アヌリエル
『首長!申し訳ございません!申し訳ございません!』

ライラ
『お前に問い詰めることはもうなさそうだ。衛兵!連れて行け!
47

アヌリエル
『首長!どうか!どうかおゆるしぉ~ぉぉおおお』

彼女は衛兵に両腕を掴まれ連れて行かれた。
48

メイビンは興奮した牛のように鼻息を荒げる。

メイビン
『わ、私をどうするつもり・・・?』

ライラ
『うん・・・お前は追放処分とする』

メイビン
『追放?私をこの街から追い出すということ?』

メイビンは再び嘲笑する。
49

メイビン
『やはり!
お前は私には何もできない愚か者だ!
暗愚な首長なのだ!
私を追放ですって!?
はっ!!笑わせる!
そんなことをしてみろ!
街の人間はお前の言うことなど何一つ聞かなくなる!
そればかりか街自体が立ち行かなくなる!
そんなこともわからないのか!?』

ライラ
『メイビン!』

50

ライラは怒り顔でメイビンの胸倉をつかみ言い放った。

ライラ
『私は貴様を信じていた!にもかかわらず貴様は私を裏切り続けてきた!この報いは受けてもらうからな!』

メイビンの両目が見開き、額に冷や汗が流れる。

ライラ
『お前の資産はすべて凍結した!養蜂場からハチミツ酒醸造所!お前の家!別荘!そしてっ!レッドウォーターの隠れ家もだっ!!!』

メイビンは開いた口が塞がらず呼吸が震え始めた。

ライラ
『あそこは以前、リフテン兵を差し向けてスクゥ―マの一掃をさせたところだ。
にも関わらず!?お前はそれを都合よく利用し、息子のヘミングと一緒に売人までやっていたそうだな!?』

51

彼女は力なく項垂れほぼ観念した様子だった。

ライラ
『申し開きもなさそうだな・・・衛兵!!

衛兵
『はっ!』

ライラ
『この者を我が町の慣例に従って処罰し、国境沿いに捨ててこい!息子のヘミングも一緒だ!』

衛兵
『了解しました!!』

ライラ
『お前ら二人はリフテンからの追放ではなく、
スカイリムからの永久追放だ!』
52

メイビンとヘミングは着ている衣服を剥ぎ取られ、街中を一周させられた。
これはリフテンの規則であり、ライラがいかにスクゥーマという麻薬を嫌っているかという見せしめでもあった。
それでも二人を生かしておいたのは、ライラの温情でもあったのだ。
53

その後、彼ら二人はシロディールの国境付近で捨てられた。
54

衛兵は彼らにこう言った。

『この線を超えて戻ってきたら、その首が飛ぶぞ』

『死にたくなければ、早めに着る物と武器を調達するのねw』

『お前らはハチミツの臭いが染みついてるから、クマさんたちとお友達になれるだろう』
55

メイビンは”帝国兵を連れてきて、報いを受けさせてやる”などどほざいていたが、誰一人耳に入るものはいなかった。
56

リフテンのラットウェイと言えば、盗賊ギルドの本拠地がある。
だが、更にその下には精神異常者を閉じ込めておく【ラットウェイ・ウォーレンズ】がある。
すでに何人かの住人が住みついているその場所に、シビを閉じ込めることにした。
57

盗賊ギルドの次の当留置が必要だった。
そこでナディアとイオナはレッド・ウォーターの隠れ家を視察。
中に吸血鬼やらその従徒などが蔓延っていたので大掃除することにした。
58

あっという間に制圧すると、ギルドメンバーを集めてここを根城にするよう勧めた。
59

アヌリエルが逮捕されたのでリフテンには執政が空席になってしまった。
ライラがポエットに相談したところ、手ごろな人がいるということでプロベンタスを紹介した。
実は彼女は彼の事をよく知っていた。
その才能と実直さは遠くリフテンまで名が通っていたのである。
プロベンタスは、はじめこそ断っていたが、ライラの誠実さに負け、彼女の隣に座ることにした。
60

ライラは約束通り望むだけの兵をナディアに貸し与えた。
ポエットは彼らを引き連れ急ぎホワイトランへ向い、北からの攻撃に即時備えることができた。
61

ポエットがホワイトランの防備を完了する頃、テュリウスの元に知らせが届き、帝国はウィンドヘルムのからの撤退を始めた。
彼は撤退する際も、ホワイトランの動向を探るためあちこちから偵察兵を送り込んだが、どの場所も守りが固く容易に攻め込めなくなってしまっていた。



ポチットお願いしますm(_ _)m

<備考>

【レッド・スクゥ―マ】
通常のスクゥーマに比べて効果も中毒性も遥かに強い。
レッド・ウォーターの隠れ家の地下に湧き出ている、謎の水を混ぜることで精製して作っている。
この場所は吸血鬼とその従者たちが守っている場所で、特に危害を加えることがなければ、普通にスクゥーマやレッドスクゥーマを購入できる。

DLC【Dawnguard】のクエストで、基本的にメイビンとは全く関わりはありません。
作中では彼女は人外の者との繋がりを持たせて、更なる悪女をイメージ付けることで、より虐めがいがあるようにしました。

【盗賊ギルドの信条】
殺すなかれ、弱きものから盗むなかれ、仲間から盗むなかれ

【メルセル・フレイ】
約25年前、当時のギルドマスターだったガルスを密かに殺害。
お陰で自分がギルドマスターとしての地位を手に入れたのだが、
ガルスの恋人だったカーリアの策略とナディアの協力によって復讐を果たすことができた。

【インガン・ブラック・ブライアー】
ブラック・ブライアー家の孫娘。
ゲーム中では錬金術を学んでいる女性。
やや危ない面があり、よく小動物などを捕まえては実験に使ったりする癖がある。
今作では、彼女を追放するほどの罪を犯しているとは思えなかったので、存在していないことにしました。

ブラック・ブライアー家についてはゲーム中と設定とが、食い違っていたりしているようなので、
メイビンを母とし、その息子がヘミングス、そしてヘミングスの息子がシビということにしています。

1

ウィンドヘルムから帝国が撤退したことを確認すると、ウルフリックは即座に動いた。
以前の二の足を踏むわけにもいかなかったので、将校たちと相談し、ウインターホールドの守備を以前の倍に増やし、陣容を変えることで守りを強固にした。

ガルマルがナディアからの手紙の意図を読み取ったことから、彼を使者としてホワイトランへ使わせることにした。
これは異例中の異例ともいえる。
ウルフリックにとって参謀の彼を向かわせたのは、ナディアに対する彼の敬意の証ともいえた。

ガルマル
-あれは・・・リフテン兵? なぜリフテンの兵がホワイトランに?-

盾に描かれた文様を目にすればそれはわかる。
ガルマルは怪訝そうな目つきでその陣容を眺めた。

リフテン兵に紛れてホワイトラン兵がいる。
彼らは主にドーンスターからの街道を警戒するように、二翼に分かれて陣を敷いていた。

ガルマル
-なるほど・・・ああしておけばドーンスターからの攻撃があっても即座に対応できるわけだな。
しかし、ナディアがこんな戦略を思いつくような人物には思えなんだ・・・-
2

ガルマル
-ここにもリフテン兵がおる・・・さっきの砦といい、
ホワイトランにまでリフテンの兵がおるとは・・・あそこはシロディールとの国境の街。
ワシらへの援軍を無視していたのは、それが原因だと思っていたのに、
ライラはここを守るために援軍を寄越せなかったというのか?-

ガルマルの疑念は広がるばかりだった。
3

ガルマル
『おい!カルダー!どこへ行くんじゃ?』

カルダー
『ナディアの家だ』

ガルマル
『家?ホワイトランの首長がナディアじゃろ?』

カルダー
『護衛はここまでだ。中に入れるのは使者だけだ』

カルダーはそれだけ言うと、そそくさとブリーズホームの中に入っていった。
4

ガルマルと護衛のピアスには理解できなかった。
使者を自分の自宅に案内するなんて、形式的にも異例としか思えなかった。

ガルマル
『いったいどうなっとるんじゃ?』

ピアス
『さっぱり理解できませんね・・・』

止む終えず中に入る。
するとカルダーが着いて来いと言わんばかりに指さし二階へ案内した。
5

カルダー
『この部屋だ』

ガルマル
『ふぬぅ~・・・』















6

ナディア
『おおっ!ジジイ来たぞぉジジイw』

みんなで
『イェーイ!!!』
7

ガルマル
『な!なんじゃこれは!?』

8

ナディア
『何ってほら!ホワイトラン奪取記念パーティーだよぉ~^^ノ』

ガルマル
『ぱ、パーティ!?』

(字まちがえた・・・)
9

リディア
『まぁまぁ、ガルマル殿こちらにお座りください^^』

ガルマル
『あ、あぁ?・・・・』

ガルマルには戸惑いが隠せなかった・・・
10

ナディア
『みんなぁ~飲み物は持ったかなぁあ~?』

みんな
『は~い!!』

ナディア
『それではホワイトランの奪取記念を祝して!』
11

ナディア
『かんぱーーーーーい!!!』

みんな
『かんぱーーーーい!』
12

ポエット
『お疲れ様ですカルダーさん^^』

カルダー
『いやぁ、ちょっと冷や冷やものだったけどな・・・』

カルダーはウィンドヘルムでの帝国と反乱軍の戦況を余すことなくポエットに語った。

カルダー
『薪集めの日が、思っていたより遅かったから焦ったぜ』

ポエット
『なるほど・・・ってことは城内で揉め事でもあったんでしょうね』

カルダー
『ああ、たぶんダンマーとアルゴ二アンだ。姿が見えなかったからな』

ポエット
『わかりました^^』

ポエットはカルダーに労賃を渡すと、彼は思った以上の報酬に驚いていた。
2日ほどの休暇を与え、好きなように使っていいと伝えると、カルダーは喜んでバナードメアへ走っていった。

ひとしきりたったころ、2Fの騒ぎもやや落ち着てきた。
13

ガルマル
『ルシア、ソフィ、これでおやつでも買って来なさい^^』

ソフィ
『やったー^^』

ルシア
『ジィジ!ありがとうぉ^^』

(怪しいジジイにしか見えない・・・)
14

ガルマル
『さてナディア、そろそろ本題に移ってもらいたいんじゃが・・・』

ナディア
『うん、そうだねぇ~^^』

ガルマル
『お前は相変わらず、能天気じゃのぉ~』
15

ポエット
『お久しぶりですガルマル殿!』

ガルマル
『おまえは・・・ポエット!?なんでお前がここにおるんじゃ!?』

ガルマルは一瞬膠着する。
16











17

ガルマル
『そうか・・・ぬしが黒幕か!?

ポエット
『さすがはストームクロークの重鎮ですね^^;でも黒幕って・・・><;』

ポエットは挨拶を終えると、ガルマルの前に巻物を開いた。
18

ガルマルは額にしわを寄せ、その内容に固唾を飲んだ。

読み終えると、彼は頭を抱えて黙り込んでしまった。

その内容は明らかにウルフリックの激を招く。
反乱軍としての存在意義さえ変えてしまいかねない。
参謀役である自分の身も切らねばならない。
だが事実が書かれている。
ポエットの提示したそれは、明らかに”帝国に勝利する”為に必要な、そして重要な項目文だった。
19

ナディア
『ジジイ!あんまり考えるとプロベンタスみたいになっちゃうよ^^』

ガルマル
『ああ?プロベンタス?』

重い空気をナディアが緩和してくれた。
20

ガルマルは一息つくとポエットの目をマジマジと見つめ、重い口を開いた。

ガルマル
『質問してもいいか?』

ポエット
『かまいません^^』

ガルマル
『お前たちは・・・いや”ナディア”は・・・
ウルフリックを上級王にする為に、反乱側に味方するということでいいのだな?』

一瞬、その場の時間が止まった。
奇妙な緊張感がツンと張り詰める。
21

ポエット
『もちろんです^^当然じゃないですか^^』

リディアたちは、ポエットのあっさりとした答えに口を開いて驚いた。
23

ガルマルはポエットを睨みつけ、ややも強い口調で言った。

ガルマル
『だが、この条項を見る限り、お前たちには別な狙いがあるようにしか思えん。
よもや頭を挿げ替えようなどと・・・考えておるわけではなかろうな?』
24

ポエット
『ナディア様が上級王になれるわけがないじゃないですか^^』

彼女はいつものように饒舌に語る。

ガルマルは額のしわをさらに増やす。

ガルマル
『なぜじゃ?』

ポエット
『上級王制度は、スカイリムのノルドにおける風習の一つです。
歴代の上級王でさえ、ノルド以外の上級王なんて聞いたことがありません。
ノルドは祖先を敬います。祖先の習慣も敬っています。
ガルマル殿も同種族であられる以上、私以上にこの事はご存じなのでは?』

ガルマル
『う・・・うむぅ・・・』
25

ポエット
『ナディア様は”ブレトン”です』

ナディア
『ナディアは王様なんてやりたくないもんねぇ~^^うふふふぅ~w』

ポエット
『本人もこのように言ってますので^^』
26

ガルマル
『では、単にウルフリックを上級王にすることが目的か?』

ポエット
『ナディア様はアルドメリのやり方を良いように思っていません。
もちろんそれを擁護する帝国も同じです。
私たちには、スカイリムの独立とウルフリックを上級王にすると言う同じ目的があります』
25-1

ガルマル
『目的が同じか・・・』

ポエット
『ナディア様は他種族ではありますが、この地のノルドと同じように、
スカイリムを愛する気持ちに変わりはありません!
この地を帝国やアルドメリ等(ら)に思い通りにされるなんて許せないんです!』

ガルマル
『うむぅ~・・・志も同じというわけだな』
26

ガルマル
『ならば・・・ホワイトランにリフテン兵がいるのは何故じゃ?』

ポエット
『ホワイトランの守りを固めるために、ライラ首長からお借りしたんです』
27

ガルマル
『要は西と北からの帝国軍への対処のためであろう。そんなことは分かっておる!
わしが聞きたいのはそうではなく、
元来、南からの攻撃に備えねばならないはずのリフテン兵が、何故ホワイトランにおるのかということじゃ』

ポエット
『まず、ホワイトランを奪取することで、ウィンドヘルムから帝国は撤退します。
でも、ここの兵はまだ首長に対する服従が浅いため、反乱軍に与(くみ)していて、なお軍備が重厚なリフテンから兵を連れてこなければいけませんでした』

ガルマル
『ふむ、ライラからいったいどうやって兵を借りたんじゃ?』

ポエット
『ライラ首長にはシロディールからの援軍はこないと説明しました。
そしてメイビンを排除・・・』

28

ガルマル
『メイビンを排除!?』

ポエット
『あーはい^^;・・・そしてライラ首長の権威復興をすることで、兵をお借りすることができました』

ガルマルは一瞬戸惑ってしまったが、気持ちを立て直して口を開いた。

ガルマル
『・・・シロディールから帝国兵が来ないとはどういうことじゃ!?』
28-1

ポエット
『ウィンドヘルムが帝国と睨み合いをしている以上、リフテンを襲うには絶好の機会です。
もし南から兵が来ているなら、今頃戦場になっているはずです』

ガルマルはポエットの抜け目のない行動に驚愕するしかなかった。
と同時にこめかみに一筋の汗が流れる。
そして背筋が凍る物を感じた。
28-2

-目的や志が同じというのは理解できる。今の反乱軍を纏めるのは容易いことではない。
ドラゴンボーンが味方になれば、兵の士気も上がるだろう。
だが、この娘の言っていることを全てを鵜呑みにするのは危険じゃ。
もし、あのメイビンが本当に排除されたと言うのなら・・・
しかし、ウルフリックを上級王にするには、迷う訳にもいかない-

参謀としての彼には、【ウルフリックを何としてでも上級王にする】という固い誓いがあった。
焦りは無いと自負していたものの、老い先短い自分にとって何かを残すには、避けられない道だった。
29

暫くするとガルマルは重い口を開いた。

ガルマル
『この件はウルフリックの判断を仰がねばならん。どのみちワシは一介の使者に過ぎん』

ポエットは奥歯を噛みしめ、より一層気合の入った表情でガルマルを見つめる。

ガルマル
『ポエット、ナディア、お前たち二人にはウィンドヘルムへ来てもらうことになるぞ』

ポエット
『承知しています。しかし、護衛も一人付けさせてください』

ガルマル
『いいだろう。出発は明日だ。準備しておけ』

30

ガルマル
『ところで今の首長は・・・ウィグナーか?』

ポエット
『はい^^』

ガルマルは大よその経緯から、ウィグナーという答えを導き出した。

ガルマル
『奴にはワシが来ることを伝えてあるのか?』

ポエット
『もちろんです^^ただ・・・ホワイトランは今現在バタバタしている状況でして・・・』

ガルマル
『そうだろうな・・・』

ガルマルは残念そうにため息をついた。

ガルマル
『ふむぅ・・・ならば新首長に挨拶せねばならんな』

ウィグナーはウルフリックにあまり好意を持っていない。
彼に味方しているガルマルとの関係も決して良好とは言えなかった。
今回の席にも誘ったのだが、公務を理由に欠席となっていた。

ナディア
『ジジイ!今日ここ泊まりなよ^^ルシアとソフィもいる^^』

ガルマル
『それはありがたいが、ダメじゃ』

ナディア
『ええええっ!なんでぇ~><;』

ポエット
『ガルマル殿は御使者として来られてるんです。
ここに泊まられては使者としての公平性が疑われかねません』

ガルマル
『ま、そういうことじゃ』

ナディア
『ぶーぶーぶーぶー!』

ガルマル
『バナードメアで宿泊できるか聞いてくる。だめならウィグナーに聞いてみるとしよう』

ガルマルとは、翌日早朝よりの出発と約束し、ブリーズホーム前で別れることになった。
31

ナディア
『ちぇっ!今日こそジジイの顔を白塗りにしてやろうと思っていたのにぃ~><;』

リディア
『何考えてるのあんたわ・・・><;』

ナディア
『今日は久しぶりにここに泊まるのだ!ルシアとソフィと遊ぶのだ!』

リディア
『程々にしときなさいよ。明日出発なんだから・・・』

ナディア
『家行って寝巻取ってくる^^』

ナディアはそう言うとエリジウムエステートへ向かった。

彼女が正門を出ていくのを確認すると、リディアは怪訝そうな表情でポエットに向き直った。

リディア
『ポエット、ちょっと話があるんだけど・・・いい?』

ポエット
『はい?』
32

リディアたちはポエットを連れ再びブリーズホームに入った。

リディア
『私たちはあなたを疑っているわけじゃないけど、どういうことなのか説明してほしいのよね・・・』

ポエット
『ナディアが上級王になれないということですか?』

イオナ
『そうよ・・・私たちはあなたの指示に従ってここまでやってきた。それは一重にナディアを上級王にするためよ』

ポエット
『皆さんのおっしゃりたいことは十分わかってます。でもガルマル殿に話したことは事実です』

ジョディス
『上級王になれないなら、私たちは一体何のために頑張っているの?』

皆が一様にポエットに疑いの目を向けた。
33

ポエット
『もちろん、ナディアを上級王にするためです!』

彼女は一際声を高くして言った。
34

イオナはあきれ顔を見せ、ため息交じりに口にする。

イオナ
『ま~たはじまった・・・・><;』

リディア
『ポエット、また言ってることがアベコベよ・・・』
35

ポエット
『結末から言えば、ウルフリックを上級王にしないとナディアは上級王にはなれないんですよ』

皆が押し黙る・・・

リディア
『それって・・・?』

ポエット
『さっきも言った通り、ノルドは過去の慣習を重んじます。
このまま反乱軍の頭を挿げ替えて、ナディアがスカイリムから帝国を追い出し、
上級王として選ばれることがあっても、殆どのノルドは彼女を認めようとはしません』

ポエットに鋭い視線が集まる。
36

イオナ
『でもムートでの選出は、各地の首長の選出によって選ばれた首長が上級王になるんでしょ?
ナディアは各地の首長の信頼があるって・・・あなたが言ったんじゃない?』

ポエット
『それは同族に限ってのみの、慣例の話です。慣習を重んじれば信頼が着いてくる。そう考えるのがノルドです。
ナディアが他種族である限り、首長は認めても下の者が異を唱える可能性は高いです。
もしそんな事態が起きたら、反乱軍に対する新たな反乱軍が生まれかねません』
37

ジョディス
『そっかぁ・・・今、頭を挿げ替えると結果的にドサクサ紛れの王ってことになるのね』

ポエット
『今は時期が重要なんです。
ハッキリ言ってしまえば今の反乱軍は烏合の衆です。
でもナディアが加わることで、それを纏め、士気を上げることは可能なはずです!』

ポエットの言うことは確かに理にかなっていた。
38

リディア
『私たちが反乱軍に加わることによって、反乱軍を纏めることができる。
でもそれはナディアを頭にするのではなく、あくまでウルフリックを頭とし、私たちは今のうちに反乱軍内部に変革をもたらす。
でもポエット・・・それが実現できたとして、ウルフリックが上級王になってしまったら、後の祭りなんじゃない?』

ポエット
『いえ!ウルフリックが上級王になる時期と、ナディアが上級王になる時期は明らかに状況が変わっているはずです。
それはあの条項に盛り込んだ内容です!
おそらくウルフリックは、あの全てを受け入れる事はないでしょう。
でも反乱軍が勝利するには、どうしても満たさないといけないものが含まれています。
ということは、ナディアが反乱側に付くことによって、反乱軍が変わった。帝国に勝利することができた。そういう意識が強くなるはずです!』
38-1

ポエットの言いたいことが、リディアの中で大体まとまってきた。
彼女はやや不安だったが、ゆっくりと話し始めた。

リディア
『それってつまり・・・新しい判例を作るしかないってこと?』

ポエット
そうです!ウルフリックを上級王にし、そのウルフリックに請われて上級王になるしか、ナディアには道がありません!
でもそれを実現させるには、どうしても地慣らしが必要なんです!』

リディア
『ん~』

リディアはため息をついた。
39

彼女は思った。
ナディアの性格は誰よりも知っている。
彼女が上級王になってくれたら確かに嬉しい、自分でもそれを想像したこともあった。
だが彼女の性格上”王”という肩書は、どこか絵に描いた餅のような気がしてならない。

ポエットは、それを実現しようと躍起になっている。
彼女の気持ちを汲み取ってあげたいが、当のナディアがどこまで汲み取ってくれるのか?

ポエットとナディアの目的が今は同じでも、近い将来どこかで違えてしまうのではないか?
その懸念が一瞬脳裏を走った。
41

リディア
『千里の道も一歩からか・・・』

ポエット
『はい!私はナディアを上級王にするために全力を尽くします!』

それでも今は、この小さな娘の敷くレールを歩くしか道が見いだせなかった。

リディア
『ウィンドヘルムには私が着いていくわ、いい?』

ポエット
『はい!是非お願いします^^』
42

ナディア
『たっだいまぁ~!!!』

ミーコ
『ワンワン!!ワン!!』

ナディアが帰ってくると、ミーコは喜んでナディアにすり寄ってきた。

ナディア
『おお!ポチポチ元気だったかぁ^^?』

ミーコ
『ヴーーヴーーー!』

ミーコは違うと言わんばかりに唸った。

アルギス
『おい、ナディア!』

奥の応接間からアルギスが手招きしている。
43

ナディア
『んあ?』

アルギス
『お前にお客さんが来てるぞぉ~』

ナディア
『お客?』

アルギス
『また随分とベッピンさんの知り合いがいるもんだなぁ~w』

ナディア
『あぁ?ベッピンさん??』

ナディアは何の気に無しに、アルギスの向かいに座っていた者に目を向けた。











44

ナディア
『ゲッ!!!!ロザリー!!??』







45


ポチットお願いしますm(_ _)m
<備考>
◎ムート
スカイリムの上級王を決めるため、各地の首長が集まり合議をすること。

◎ポエットがガルマルに出した条項
この条項は、第十話EP2における、ナディアがホワイトランを手土産にする代わりの見返りの条項のことである。
この内容が次作?のテーマになる予定なので、ワザと出しませんでした。
ですので、ポエットがナディアの従者たちに話した内容が、少し分かり辛いかと思われますがあしからず・・・

◎ミーコ
ソリチュードのやや南西にある小屋で飼われていた犬。
飼い主はすでに他界しているが、ミーコは飼い主の傍を離れず未だに住みついている。
ナディアはひと声かけて、家に連れて帰って来た。

からすまぐろ
Twitterでお世話になっているフォロワーさん。
このたびNadiaとリディアのカワ(・∀・)イイ!!画像を描いていただいたので、
作中に使ってみました^^
とても雰囲気にバッチリだと思います!!
ありがとうございました^^ノ

Melt in the Mouth-Sweets for Elza
Twitterでお世話になっているフォロワーElzaさん。
今回『ガレット・デ・ロワ』など新たなデザートが加わったということで使わせていただきました^^
オリジナルで積んでみたりして、会場作りもなかなか楽しいものでした^^
でも、あのセーブデータは消す勇気がでない・・・><;
すばらしいMODをありがとうございます(人''▽`)

ロザリー登場!!!
念願かなってようやくロザリーさんを出演させることができました^^
素敵なフォロワーさんを作成してくださったokmaeさんに感謝感謝^^

どうして彼女を出演させたのか?という点は今回は触れませんw

最初は全く別の形での出演を考えていたのですが、
作者は主人公であるナディアについてずっと悩んでいたことがありました。
それを解決してくれたのがロザリーさんでした。とだけ書いときますw

では次回をお楽しみにw

【お断り】

今話の内容についての注意でございます。

今回舞台として使用しているMODですが、『Beyond Reach』を使用しています。
MOD内におけるクエストやストーリーには一切関係はこざいません。
ただしNPCや場所を利用いたしました。
おそらくこれらを知ったからと言って、ネタバレに繋がる事は無いと思われますが、
どうしても嫌だという方には、お勧めいたしません。

あっ、あと、何気に長いです(@ω@)





1





2 20-1





5

ポエットは、グレイムーア砦とホワイトウォッチの守りをイオナとジョディスに任せ、
リディアには明日の出発に備えて休んでもらう事にした。

リディア
『ウィンドヘルムに行っている間に、何もしてこなければいいんだけど・・・』

ポエット
『帝国は負戦(まけいくさ)をした訳ではないので、それほど遠くない話だと思います』

リディア
『大丈夫なの?』

ポエット
『ホワイトランの布陣は終えているので、帝国軍も不用意に近づいては来ないと思います。
でも、どのみちそれを心配しても変えようがありません。
それに私達の今後も、ウルフリックに謁見してからでなければ始まりませんから』5-1
事実ポエットは、リフテンの兵を勝手に動かしてしまったという負い目がある。
ウルフリック自体は、お目こぼしをすると思われるが、
参謀であるガルマルならば、おそらく交渉の一つとして利用してくる可能性はあるだろう。

これからはナディアを真に支えてくれる人物が必要になってくる。
同じ方向性を持ち、なお傍にいてくれる人といえば”リディア”しか見当たらなかった。
そういう理由もあり、彼女のウィンドヘルムへの同行は、ポエット自身の強い希望でもあった。

のだが・・・
6
自宅に戻ると、いつものナディアの席に、見慣れない人物の姿が目に入る。
ナディアとアルギスが並ぶように座り、三人で談笑していた。

リディア
『だ、誰っ!?』

ナディア
『あふぅ~(*‘ω‘ *)
リディア!
ポポちゃん!
おかえりなのだぁ~(^◇^)』

ナディアが笑顔で手を上げ二人に答える。
6-1
リディアとポエットには、彼女の”尖った耳”が先に目に入った。

リディア
エルフ!?なんでエルフがここにいるのよっ!?

彼女は警戒するように口にする。
7
ナディア
『紹介するのだ^^
ナディアのお母さんなのだぁ~(^◇^)』
8
リディア・ポエット
『え”っ?』




9
ロザリー
『気にしないで大丈夫だから^^』

リディア・ポエット
『も、申し訳ありません...m(_ _;)m』

二人とも頭(こうべ)を垂れる。
9-1
ロザリー
『でも、エルフに警戒しているってことは...サルモールかしらね?』
10
ナディア
『あふぅ!!サルモールはっ』

ポエット
ナディアっ!!...』

ナディア
『あふっ!』

咄嗟にポエットがテーブルを叩き、ナディアの言葉を遮った。
11
ポエット
さ、さ、サルモールはですね!えーと、えーとですねぇ~

彼女は戸惑いを隠せない。

ロザリー
『何か訳ありのようね^^
心配しなくても大丈夫よ、私はサルモールとも、自治領とも繋がりは無いから^^』

ポエットは、ホッと胸をなでおろした。

エルフはどこにスパイを放っているかわからない。
特にサルモールは要注意であり、今の状況を考えればロザリーに対して警戒するのも当然だった。
とはいえ、相手がエルフではなかなか口火を切れない。
12
リディア
『あ、あのぉ~エルフですよね?』

恐る恐る口にする。
リディアが先発を務めてくれた。

ロザリー
『そうよ^^私はエルフよ^^』

リディア
『ナディアは”お母さん”と言ってましたが...?』

疑わざる得なかった。

ロザリー
『お母さんと言うか...う~ん、まぁ~養母(ようぼ)って所かしらね^^;』
13
ナディア
『あふっ!
ロザリー夜母(よぼ)だったのだっ!?』

ロザリー
『そんな訳がないでしょぉ~もぉ~』

ナディア
『あふぅ~...そうなのだぁ...』

ロザリー
あなたは、甘い物に直ぐくっ付いて行っちゃうんだからっ!
変なのに関わっちゃダメよっ!

ナディア
『あふぅ~('ω')』

なんだか余計重苦しい空気になってしまった...
14
ナディア
『そうだ!!ルシアとソフィを呼んでくるのだ^^ノ
ロザリーちょっと待っているのだ!!』

そう言うとナディアは飛び出していった。

リディア・ポエット
-えええっ!!-
15
アルギス
『やべ!俺もそろそろグレイムーア砦行かないと』

リディア・ポエット
-なにっ!!!-

アルギス
『お袋さんワリーなぁ、仕事がるからよ^^まぁゆっくりして行ってくれ^^』

ロザリー
『お仕事頑張ってくださいね^^』

ロザリーの満面の笑顔にアルギスはデレデレだった。

リディア
-おのれアルギス!意味の解らない格好しやがって!後でイオナに言いつけてやる!!-
16
目の前に見えない重石でも落ちてきたか用に、しばしの無言な時が漂う。

ナディアと契りを交わしたリディアにとってみれば、初めて合いまみえた姑である。
しかも突然現れた”ハイエルフと”来ている。
どう対応していいのか・・・かなり頭を悩ませた。
17
ロザリー
『ルシアとソフィって誰の事かしら?』

二人の重石など、微塵も感じていないような口ぶりで、ロザリーは言葉を発した。

リディア
えっ!?・・・あ、えっと、よ、養子ですぅ^^;』

ロザリー
『あら、ナディアに養子がいるのぉ~驚きだわ^^』

ロザリーはニコニコしている。
18 81-1
ポエット
『あのっ!お、お聞きしてよろしいですか?』

流れを変えようと、ポエットは口を開いた。

ロザリー
『どうぞ^^』

ポエット
『ナディアとは...どこで出会ったんですか?』

リディア
-ナイス!ポポちゃん!!-
19
ロザリーはカニスの根茶を一啜りすると、ゆっくりと口を開いた。

ロザリー
『そうねぇ~...あれはぁ、私がウィスパーズ大学で教鞭を振るっていた頃に...』

ポエット
『ウィスパーズ大学って...たしか...』

ロザリー
『シロディールの魔術師大学よ^^あの時、昔の友達から手紙が届いたの』






20
ハイ・ロックでは嘗て【西の歪み】と呼ばれた、不可思議な事象が起きた事があった。
一説によると、イリアック湾で何かが爆発し、その翌日には44あった国が4つだけを残して壊滅したんだそうだ

やがてオークを主とするオルシニウムという国が、帝国に対し統治を求めてきた。
帝国はそれを認めず、オーク達との戦いになる。
彼女はこの戦に参戦していた。
20-1
向かうところ敵無しだったロザリーは、オーク達にとって忽ち恐怖の対象になった。
彼女の扱う毒魔法のあまりの残酷さから、その姿を目にしたオークは『毒エルフが来た』と叫び、警戒されるようになったのである。

帝国はそんな彼女に『マスターウィザード』の称号を与え、その後も様々な紛争に参戦する様になった。
2 20-1
だがある時、囚われの身となっていたはずの少女に、誤って毒の結晶を突き刺してしまう。
5歳にも満たない少女は、もがき苦しみ、やがて萎(しお)れた花のように命を枯らしていった。
それを目にした彼女は、自分の犯してしまった罪に酷く苛まれるようになる。

以後彼女は、自ら作り出した毒魔法を封印、軍を去る事にした。
そして大学に戻り、教鞭を振るうようになった。
だが破壊魔法専攻の彼女は【毒魔法】を封印した事によって、大学内での他の講師及びアークメイジに至るまでの嫉妬の的になってしまう。
20-2
この手紙は、そんな時に来た嘗ての戦友からの物だった。

だが破壊魔法専攻の彼女にとって、治癒は専門外に等しい。
それに何より、戦争で犯してしまった自分の罪と向き合う気には、どうしてもなれなかった。

最初の手紙は断りの返信をした。
だが次に来た手紙に心を動かされる事になる。
21





22
数日後、ロザリーはリーチのレイブン・スプリングスの城門前に立っていた。
この地に足を踏み入れた瞬間から、異様なほど重苦しい気配を感じ取った。
空には灰色の雲が佇み、まるで泣いているかのように頻繁に雨が降る。
地面は水を吸った土が泥化しており、容易に足が地にめり込んでしまう。
空気が常に湿気を帯びており、淀んだ臭いが漂っている。
思わず呼吸をするのも躊躇(ためら)ってしまう。
そんな場所だった。
23
城門をくぐり中に入った瞬間、いきなり大きな炎が目に入り込んできた。

篝火だろうか...多くの兵士達がその周りに集まっていた。
だがよく目を凝らすと、どうやら何かを焼いているようだった。

彼女は思わず目を疑った。
人だ...遺体を焼いている...
焦げた臭い...人が焼ける臭いだった。
23-1
こんな事、戦場にいた頃は、気にも掛けなかった。
だがそれは遥か昔の話であり、今は不気味な前兆にしか思えなかった。
23-2
近くにいた衛兵が『何の用だ?』と声を掛けてきた。
ロザリーは事情を説明すると、彼は何も言わず聖堂に案内してくれた。
24
むせ返るほどの嘔吐物の異臭が、部屋中を漂っている。
町民が横になって苦しんでいるようだが、何故か皆一様に体を縛られていた。

マウリシオ
『ロザリー...やっと来てくれたんだな』

彼女を目にしたマウリシオが、縋(すが)るように声を掛けてきた。

ロザリー
あなた...ホントにマウリシオ?

その変貌ぶりに彼女自身驚いていた。
毛髪は抜け落ち、顔にはシワが増え、立派で分厚い白髪髭(しらがひげ)を蓄えている。
若かりし日の彼の面影は微塵もなかった。

マウリシオ
『俺はインペリアルだ...君とは違う...』

エルフは長寿である。
中には1000年生きる者もいる。
ロザリーはそのギャップに初めて遭遇した。
24-1
ロザリー
『何故縛ってるの?』

気を取り直して彼女は聞いた。

マウリシオ
『暴れるんだよ...病が発症すると、患者の体から黒い筋が現れる。
目を見開いて、次の瞬間悲鳴を上げて無差別に襲い掛かってくるんだ』
25
マウリシオ
『あまり近づかないほうがイイ。子供でも片手で大岩を砕けるほどの怪力になる』

ロザリー
『他に症状は?』

マウリシオ
『酷い嘔吐を何度も繰り返す。だから...食べ物を受け付けない。最後には...』

ロザリー
『吐血ね...ということは、衰弱か失血死が原因ね』

彼女は毒の可能性を感じ取った。
26
ロザリー
『発症から死ぬまでにかかる時間は?』

マウリシオ
『大体は5日。長くても一週間持った者はいない』

おおよその検討がついた彼女は、マウリシオに言った。

ロザリー
『今から言う物を町中から掻き集めて』

彼は指示された材料を片っ端から集めた。
【山の青い花】【小麦】【巨人のつま先】
それはタムリエルにおいて、体力を回復に導く基本的な錬金レシピだった。

ロザリーは患者の症状から、ある毒が頭に浮かんだ。
【マッドマン】と呼ばれる激毒である。
27
毒が血液を循環し始めると、血液の色が黒ずんでくる。
やがて激しい鼓動が始まり、心痛と多量の汗をかきながら、痛みから逃れるため暴れまわる。
血流が激しくなるため、血管が皮膚を押し上げて黒く枝別れした文様が体中に姿を現す。
脳が本能的に痛みから逃れようと、鎮痛と興奮成分を過剰に分泌させるため、一時的に興奮状態に陥る。
だから周りにいる者に見境なく襲い掛かるのだ。
27-1
しかしそれは一時的な事なので、やがて興奮は収まる。
だが体は異物に対し拒絶反応を起こすので、毒が抜けるまで嘔吐を繰り返す。

マッドマンに対する中和剤は存在しない。
ただし、死の原因は嘔吐による衰弱が殆どなので、根気強く体力回復の薬を服用させることが一番だった。28
ロザリーはマウリシオが集めてきた材料を使い、できるだけの薬を錬金台で作成し始めた。
錬金術は、作成する者の持つ技量によって効果に大きな差が生まれる。
毒学に詳しい彼女にとって、錬金術は基礎の基礎に等しかった。
なのでその技術も一級品だったのだ。
29
マウリシオ達には、ある道具の作成を指示した。
薬瓶の半分を丁寧にのこぎりで切り落とし、瓶の口に牛の腸で作った管(くだ)を付けジョウゴ状の物を作らせる。
患者の口から直接胃に入るよう、無理やり食道に管を突っ込む。
そこから薬液を流し込む作業を、日に三度繰り返すよう指示を出した。

最初は薬液を吐き出す者が後を絶たず、効き目がないのでは?
と不満を漏らしいていたが、ロザリーは腸(はらわた)の洗浄をしている状態だと説得した。

三度目の投薬になると大概の患者の嘔吐が止まり始めた。
薬の効果がようやく見え始めたのだ。
30
だが、ここに来て新たな問題が発生した。
材料不足である。

ロザリー
『外に行って集めて来るしかないわね』

マウリシオ
『残念だが、もうできない...』

ロザリー
『どうして?』

ロザリーは眉を顰(ひそ)める。

マウリシオ
『城外への外出禁止令が出た...』

ロザリー
『そんな!?体力回復にはもう少し時間が必要よ!それには薬が必要だわ!』

マウリシオ
『この毒は外から来た可能性が高い。
フォーローン周辺にも病人はいるんだが、傭兵崩れの野党どもが、あちこちに陣取っていて近づけないんだよ』

ロザリー
『なら、討伐隊で追い出せばいいじゃない!』

マウリシオ
『今のレイブン・スプリングスには、そんな力はない』
30-1
ロザリーは悟った。

ロザリー
『つまり...城の中まで感染が広がっている事を、彼らに悟られる事が恐いのね...』

マウリシオ
『そういうことだ...』
30-2
ハンマーフェルは、レッドガードという人間種が支配する隣国である。
かつてここは帝国領だったのだが、白金条約によりアルドメリに譲渡されていた。
だが、元々独立が希望の彼等は、侵攻するエルフ軍に戦いを挑んだのである。
およそ5年に及ぶ戦争のすえ、ストルス・エムカイ島にて二次条約を結ぶことで独立を果たしていた。
30-3
戦争というのは様々な形で爪痕を残す。
腕に自信が有る者は、軍に所属しなくても、その身一つで商売が成り立つ。
所謂傭兵である。
ハンマーフェルには、ドラゴンスターという城があり、この城主が多数の傭兵を抱えていた。
終戦と同時に解雇され、再び争い事を求めて他国に流れて行く者も少なくない。
だが仕事が得られないと、山賊や野党などに身を費やす者もしばしばいる。

ハイ・ロックは分裂が激しい土地でもあるため、彼らのような無法者にとっては、一時の住処(すみか)になり易い。
だが厄介なのは、野心を持った一部の金持ちである。
彼らは自分の望みを形にしようと、傭兵を雇い入れ、小さな土地を占領地と称し、周辺の町を脅す恐怖分子となる。
これが嘗てのドラゴンスターの傭兵達であり、今の傭兵崩れの姿だった。
30-4
またこの国は、帝国領土であっても、貴族階級における領土や派閥紛争があちこちで起きており、平民達はその火種を受けて、土地を追いやられたりする事が頻繁におきていた。
だがそういう事例は、何も平民に限った話ではない。
治安が不安定故に、内戦と同時に脱獄する犯罪者もいれば、不意に犯してしまった罪のお陰で土地から逃げる者もいる。
そして中には、位の高い者が冤罪などで追放されたりもする。
不思議とそういう不遇な者同志が集まり、流民となってあちこちを転々しつつも、小さな部落から隠れ里などを作る事もしばしばだった。

彼らの中には、後に危険人物と判断され、暗殺の対照にされたりもする。
仕事を無くした他国の傭兵達に取って、これは格好の餌に成りえる訳だ。
なので傭兵崩れと言っても、貴族と繋がっていたりもする。
もっとも彼等にとっては、いつでも切り捨てられる都合の良い駒だとも言えるだろう。

いずれにせよハイ・ロックには、正式な統治者が居ないせいで、混沌が慢性化し、治安の悪化が近年の最もな問題になり始めていた。
30-5
ロザリーは領主に直接掛け合うことにした。

だが入口の近衛兵に拒否されてしまう。
病気を邸内に持ち込まれては困るとの理由であった。
だが彼女は必死に訴えた。

ロザリー
ここには沢山苦しんでる人達がいるのよっ!
私は彼らを助けるために、薬を作りたいだけなの!
その為の材料が欲しいのよ!

近衛兵A
『好きに探しに行けばいい』

ロザリー
『町から一旦出たら、もう入城ができないって聞いたわ!?』

近衛兵B
『その通りだ。ここ何日かで戦況が変わったからな』
30-6
ロザリー
だから領主に直談判したいのよっ!

近衛兵A
『それは我々の領分ではない。もちろんお前も同様だ』

近衛兵B
『それに、”許可の無い者は通すな”との命令が出ている』

近衛兵二人の淡々とした返答に、ロザリーは苛立ちを現した。
31
ロザリー
何よそれ!
領主のくせに病気を染されるのが怖くて、町民に顔も見せらないっていうのっ!?
随分な腰抜けねっ!!

近衛兵A
黙れっ!

彼は語気を強めてロザリーに警告する。

近衛兵A
お前がこの町に貢献してくれている事は認めよう。
だから今回だけは見逃してやる!
だがこの町には、この町の規則がある。
それ以上の領主様への冒涜は、極刑に値するぞっ!

32
ロザリーは両の手に拳を作り、怒り顔で歯ぎしりをした。
流石に極刑と言われれば、引き下がるしかない。
フンッっと吐き捨て、振り向くと、頭の中で想像を超える罵詈雑言を繰り返した。

ロザリー
-役立たず!腑抜け!アホ!馬鹿!死ね!-

他人がダメなら自分がやるしかない!
33
聖堂に戻るなり、彼女はイソイソと荷物を纏め始めた。
その様子を見たマウリシオは目を丸くする。

マウリシオ
ど、どこ行くんだロザリー!?

ロザリー
材料を集めてくるのよっ!

マウリシオ
無茶言うなっ!もう夜になるんだぞっ!!

ロザリー
病人に昼も夜も関係ないわっ!!

二人の痴話喧嘩に、看護をしていた者達の手が止まる。
33-1
マウリシオ
『それはわかるが...
一旦城壁の外に出たら、もう中には入れてもらえないって言っただろう!
それに夜は危険すぎる!』

ロザリー
『ここに来る時、町の南側に水門が有ったのを見たわ。
なんとなればあそこから出入りできるっ!』

マウリシオ
馬鹿な事を言うなっ!
ここじゃ帝国軍もそれほど影響力を持たないんだぞっ!

ロザリー
私を誰だと思ってるの!?マスターウィザードよっ!

マウリシオ
おい!ロザリーッ!

彼女はマウリシオの静止も聞かず、そのまま出て行ってしまった。
34
ロザリーにはもう一つ気がかりがあった。
この毒の発生原因である。

マッドマンは自然界には存在しない。
この毒は明らかに作成されたものであり、人為的なものである。
だからこそ神々の祈りも通じないのだ。

水、農産物、家畜、さらには土壌に農薬など、あらゆる物を調べ尽くした。
が、そのすべてに陽性が出ていた。
となると毒が付着する原因は、大気中に散布された可能性が高い。

子供や年寄りが先だって中毒症状を発症している。
新陳代謝の度合いよりも、免疫の少ない子供、盛りを過ぎた年寄りが優先だと考えると、
毒の許容量が発症の差を生み出している可能性がある。

もしこれが事実ならば、今現在健康体に見える者も、やがて発症する可能性が高い。
子供や年寄ならまだしも、血気盛んな大人が発症し発狂した場合、とても危険な状態が生まれる。
これは町中に限った話ではない、その周辺に住む者も対象となるのだ。
そのためにも、早めに特効薬となる薬を作り出さねばならなかった。
35-1
彼女はリーチ中をひたすら歩き、錬金材料となりそうな物を片っ端から集めて回った。
道端の薬草を摘み。
35-2
山賊や野盗どもの目をかいくぐり...35-3
遥か古代の遺跡を横目にし...35-4
時にはクモの巣と激しく格闘する事もあった。
36
リーチには、ウィッチマンという先住民が、あちこちに集落を形成している。
彼らは、スカイリムでフォースウォーンと呼ばれている、リーチメンの原型だとも云われている。
フォースウォーンと言えば、奇妙な魔術に儀式を行うことで有名だ。
彼らは、ハグレイブンという人間と鳥を掛け合わせた醜悪な魔女を頭として組織していることが多い。
36-1
魔女は不思議な薬や毒を沢山持っていることがある。
ウィッチマンもまた、このハグレイブンを頭としている集団なので、彼らが錬金材料を多量に持っている可能性があった。

ロザリーにとって命がけの材料集めである。
彼らには同族以外の者をすべて敵とみなす教えがある。
よって彼女も例外ではなかった。

【調和】という高等魔法がある。
この魔法は一定期間周囲にいる者の戦意を失わせ、友好的にする変性魔法である。
多量のマジカを消費するが、無謀にも一人で戦いに挑むよりは、ましだった。
37
2日程経過した頃、彼女はレイブンス・プリングスの城外にある集落に戻ってきた。

城門の前で、衛兵と口論をしている男性が目に入る。
彼は両手を広げ何かを訴えていたようだが、衛兵はまったく取り合ってくれる様子も無く、
ついには帯剣を抜き、切っ先を彼に向け『死にたいのか!?帰れっ!』と追い払っていた。

彼は肩を落とし、残念そうに橋の方にトボトボと歩いて行った。
38
彼女はたまらず声をかけた。

ロザリー
『ちょっと待って!どうかしたの?』

彼はグリムベインというアーケイの司祭であり、彼の聖堂にレイブン・スプリングス周辺の病人達が、助けを求めて集まって来ているのだという。
神への祈りが通じないこの病に、多くの人々が苦んでいる。
そんな時、城から抜け出してきた町民の一人が、城内に薬が有ると教えてくれたので入城できないか衛兵と掛け合っていたと云うのだ。

彼女は迷うことなく、彼の手助けをすることにした。
39
聖堂に案内され、中に入る。
レイブン・スプリングスの聖堂で見たモノと、同じ景色がそこにはあった。
漂う嘔吐物の臭い、さらには生々しい血の臭い。
ハッキリ言って、町よりも環境は悪かった。
ただ違うのは、誰一人縛られている様子はない。
おそらく峠を越したのだろうと、ロザリーは判断した。
40
ロザリー
『錬金台はある?』

グリム
『昔はあったんだがなぁ...戦争でみんな持ってかれてしまったよ』

ロザリーは頭を悩ます。
ここにきて錬金台がないとは致命的だ。

ロザリー
『じゃぁ、この周辺で持っている人はいないかしら?』

グリム
『あんな高価な物を持てる家なんて無いよ。城内にでも入れれば...』

考えてみれば、自分もあの中に入れない。
たとえ旨く入り込めたとしても、薬を作ってから戻ってくるのは至難の業だ。
マウリシオに啖呵を切った事を今になって後悔していた。

グリム
そうだ!
蒸留器ならたしか余っていたはずだ!
ガラス製品は取られなかったからな』
41
グリムの言葉に一筋の光明が差した。
蝋燭の火を使えば蒸留器が使える。
あとは乳鉢と乳棒の代用品さえあれば...
42
ロザリーは手近にあるもので仮の錬金台を作り、薬液の作成を始めた。
そしてグリムには、マウリシオ達にやらせた様に、薬瓶のジョウゴを作らせた。
43
旅の疲れや汚れなど微塵も感じなかった、彼女は体が動く限り薬を作り続けた。

グリムは、ロザリーの作ってくれた薬を病人達に服用させる。
症状の改善が見られるにはやや時間は掛かるが、とりあえずは一安心だった。
44
グリム
『いやぁ、あんたのおかげで助かったよ^^』

彼はロザリーに、半切れのパンと湯を渡した。
彼女は一言も発することなく、無我夢中でがついた。
考えてみれば、リーチに来てからまともな食事にありつけたのは、この時だけだった。

グリム
『悪いなぁ...
町がこんな状態じゃなきゃ、もっといい物を出してあげられたんだが・・・』

ふと彼女は気づく、彼らにとってこの半切れのパンは命にも代えがたい物なのだと。
それをガツいてしまった自分が、恥ずかしかった。
45
アガ―――――ッ!!!

次の瞬間、床の隙間から耳を劈(つんざ)く甲高い悲鳴が聞こえてきた。
驚いて声のした方向に目が行く。

ロザリー
今のはなに!?
46
グリムは思わず下を向き、気まずそうに答えた。

グリム
『実は...最初の頃の病人を地下に閉じ込めているんだ...』

ロザリー
なっ!なんてことをっ!!
46-1
ロザリーは慌てて地下に駆け降りた。

グリム
『ちょっ...』

グリムは静止させようと追い掛けるが、後ろめたさが相まって本気になれない。

降りた先には、固く冷たい鉄の扉があった。
開けようとしたが、鍵が掛かっていて開けられない。
47
ロザリー
鍵を開けてちょうだい!!

グリム
『じょ、冗談はよしてくれっ!そんな事はできないよ!...危険すぎる...』

ロザリー
まだ薬はあるわ!助けられるのよ!! 』

グリム
連中は、一週間以上前から閉じ込めているんだ!
48
ロザリー
えっ!?

彼女の脳裏にマウリシオとのやりとりが浮かんだ。

ロザリー
『発症から死ぬまでにかかる時間は?』

マウリシオ
『大体は5日。長くても一週間持った者はいない』

ロザリー
-どういうこと?薬も与えずに一週間過ぎてもまだ生きているなんて?-
49
彼は頭を抱えて嘆いた。

グリム
私にどうしろというんだ!?
私はただのアーケイの司祭だ!
死者を安息の地に葬るのが仕事だ!
そのアーケイに祈っても効き目がない病など!
私にはどうする事もできない!!

ロザリー
いいから開けなさいっ!!!

ロザリーは、彼のゴタクを耳に入れる前に大声で怒鳴っていた。
50
グリムは彼女に絆(ほだ)され、シブシブと鍵を開けると、そそくさと逃げるようにその場を後にした。

グリム
『ひぃ~~ッ!』

肉体的にも精神的にも疲労困憊だった。
”何故”という言葉よりも、湧き上がる使命感だけが彼女を突き動かしていた。

意を決して重い扉を開く。
重厚な扉は、ギギギッ...と不快な音を立ててロザリーを招き入れた。





固唾を飲んで、その光景を目にする。
沢山の黒い影が、唐突に彼女の瞳に入り込んできた。






51
内出血を起こした時のように、皮膚が青紫色を呈している。
所々皮膚が腐り、蛆が湧き、皮が剥がれ落ち、筋肉繊維や骨、歯茎を露呈させ、フジツボの群れのように、瞼(まぶた)の奥に何かが光っていた。
一様に体毛が抜け落ている。
着衣だけが、かつて彼らが人間だった証(あかし)だった。

似たような光景を彼女は目にしたことがあった。
シロディール周辺に点在する、アイレイドの遺跡内にいた"それ"と大差はなかった。
52
中は蝋燭の明かりが所々点在しているが、彼らの陰りがより一層暗さを増していた。
体が降れないよう、間をすり抜け、警戒しながら進む。
唾を飲み込む事さえ、躊躇ってしまいそうなプレッシャー。
だが不思議なことに、彼らはロザリーの存在に対し警戒するでもなく、襲ってくる様子もない。
息を潜め、奥歯を噛みしめる。
眠気が醒めた瞳を見開き、心臓の鼓動さえ聞こえてきそうな慎重さで一歩一歩前進した。
53
暫くすると奥の棺の上に、青白い光を見つけた。
よく目を凝らすと、白髪の小さな子供が、棺の上に座っているではないか!?
彼女の視線は、女性の衣服を身に着けた化け物に向けられ、不思議と笑顔を見せている。

だがその化け物は、大きく右手を振り上げて、その子を殴り落とそうとしていた。
54
ロザリーは自分でも気づかないうちに、自らの封印を解いていた。
毒の結晶が脇腹を大きく貫く。
化け物の動きを止めるには十分な大きさだった。
55
少女
ママ...?

少女にママと呼ばれた”それ”は、壁を頼りに崩れ落ちる。
両手を前に出し、支えようとしたが、気づけば目だけが姿を追っていた。
56
ロザリーはハッと気づいて彼女の元に駆け寄る。

ロザリー
『あなた大丈夫?怪我はない?』

少女
『ママ...』

少女の問いかけに、”それ”は息も絶え絶えの様子だった。
だがその片手が、ロザリーの服の裾をガッチリと握っている。
60
彼女は化け物の方に目が行く。

化け物
『こ、これを...』

ロザリー
-しゃ、喋った...?-

ロザリーには分かった。
この女性は瞳の周囲だけだが、確かに人の時の面影を残している。
言うことを聞かない体を動かし、血液の混ざった涙を溢れさせ、必死に何かに抵抗している事を。

化け物
『これを...おねがい...』

嗚咽と枯れたような、または魂を削ってまで発している声。
小さな青い宝石をなんとか指の間に挟み、ロザリーに渡すと、そのまま息を引き取った。
61
少女
ママ―――――――――ッ!?






62
少女の悲痛な叫びと共に、今まで大人しくしていた化け物達の視線が、一斉にロザリーに向けられる。

グガガガッ―――――!!

例えようのない呻き声を上げ、そして群れを成して襲い掛かってきた。
63
彼女は少女を力いっぱい抱え、眼前から襲い来る脅威に向かって毒の結晶を撃ちまくった。
無我夢中で撃ちまくり、化け物の壁を少しずつ押しのける。
63-1
少女
ママ――――――――ッ!!

引き離された少女が、ロザリーの耳元で叫ぶ。
暴れようとする彼女を片腕で締め付け、押さえつけた。
63-2
腐臭と肉の塊を振り払い、殴りつけ、蹴とばし、体当たりし、
思いつく限りの戦闘術を駆使し、必死に血路を開いた。
63-3
迫りくる恐怖を背後に感じつつも、なんとか元の位置に戻る事ができた。
64
急いで入口をくぐり抜けると、ドアを閉め、近くにあった鉄のシャベルを杭にして閉じ込めた。

少女
ママ――――――!?
しめないでっ!
あけてぇ―――!!!!

ロザリー
ダメなのっ!開けられないよっ!!

少女
やだやだやだっ―――!!!

ロザリー
ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!

扉の向こうに戻ろうとする少女を、両腕でしっかりと抑え込んだ。
肩から指先に至るまで恐怖が伝わり、力が抜けそうなくらい震えているのがわかる。
少女の押し返す力より、自分の弱さに負けまいと必死に抵抗し、押し返した。

ロザリー
『ごめんなさい...ごめんね...』

少女を守る事の方が大切なのだと、心の中で自分に叫んだ。

ロザリー
『ごめんね...本当にごめんね...』

...謝る事しかできなかった。
64-1
どれくらいの時間が経ったのだろう?
どこか自分との折り合いをつけたのか、少女は泣き止み、ロザリーに寄りかかる様に、ただ茫然と立ち尽くしていた。
扉の向こうに置いてきてしまったもの・・・
それはきっと、暖かかった記憶、そしてぬくもり。
全てを冷たく、固く、封印してしまったかような鉄の扉。

ロザリー
-私はまた...あの時のように...この子の全てを奪ってしまったのだろか...?-






すると聞き覚えのある声が、微かに耳に入ってきた。

ロザリーはゆっくりと起き上がると、黙り込んでしまった少女を再度抱え階段を上った。
65
二階に戻ると、帝国軍の鎧を着こんだマウリシオの姿が目に入った。
グリムが驚きの表情を見せている。

グリム
あ、あんたっ!?無事だったのかっ!?
66
マウリシオ
『やっと見つけたぞぉ~』

マウリシオは、安堵し言葉を発した。

ロザリー
『マウリシオ...なぜここに?』

外出禁止令が出されている。
一旦城外に出た者は中には入れてもらえない。
魔術師でもない彼が外に出ているという事は・・・

マウリシオ
『お前を探していたんだっ!』

ロザリー
『また戻れるの?』

彼は首を横に振る。

マウリシオ
『いや、我々救援隊の退去命令が出た』

ロザリー
『え?』
67
マウリシオ
『土地の者でない者は、国外に退去しないといけないんだ』

ロザリー
『そんなっ!まだ病人がいるのよ!』

マウリシオ
『どのみち我々は、町に戻れない...』

ロザリー
『どうしてっ!?』

彼は深刻な表情をみせつつも、一呼吸してから答えた。

マウリシオ
『病人達の容体が急変した。
化け物のようになって町中で暴れまわっている。
それだけじゃない。
傭兵崩れが、この混乱に乗じて攻め込んで来たんだ』
68
彼女は唖然とし、両膝を床に着いてしまった。

ロザリー
『そ、そんな...』

マウリシオ
『もう...我々には打つ手がないんだよ...』

床に座り込んだロザリーに、マウリシオは悔しい表情を浮かべる事しかできなかった。
69
マウリシオ
『その子も置いていけ...地元の子だ...』

正しい事だと言い聞かせても、残酷な事を口にしている事も理解できた。
70
だが彼女は言った。

ロザリー
嫌よっ!!!絶対嫌っ!!

マウリシオ
『国境で検閲がある。
どのみちその子は越える事ができない』

ロザリー
嫌よっ!!!
71
ロザリーは唇を噛みしめ、端から血を流しながらも、威嚇するかのような目つきで訴えた。
大切な物を奪われまいと、必死で抵抗する子供の様に。

マウリシオは、その表情に憐みしか感じ取れなかった。
次の瞬間、彼女の二の腕を強く掴み、無理やり建物の外に引っ張り出した。
72
グリム
『お、おい...我々はどうなるんだ?』

その言葉を遮るように、外にいた帝国兵が彼を押し戻し、ドアを閉めてしまった。
73
マウリシオ
誰も助けられなんだよっ!ロザリーっ!!

聞き分けの無い子供を叱りつけるように、マウリシオは怒鳴った。

ロザリー
この子は発症してないわ!もししていても私が必ず治す!

マウリシオ
その子は病気持ちだっ!
得体の知れない病を、帝国領土に持ち込んだとなれば、お前は重罪を犯す事になるんだぞ!
仮に逃げ延びたとしても、今後お前は一生追われる羽目になる!
お前一人ならまだしも、そんな子供を抱えてどうやって生きていくつもりなんだっ!?

ロザリー
私が育てるっ!

マウリシオ
お前の子供じゃないだろうっ!!!

二人の激しい言い争いは、後ろに控えた兵士さえ圧倒し、やり切れない思いを与えた。
74
少女を捕られまいと、強く抱きしめた。
小さな肩に顔を蹲(うず)める。

ロザリー
-この子を救わなければ、私は救われない。
殺しだけしか取り得のない私なんか認めたくない-

”もう二度と間違いを犯すまい”

彼女の体は小刻みに震えていた。
75
マウリシオ
『諦めろロザリー...その子は置いていくんだ...』

彼は子供を受け取ろうと両手を差し出した。
だがその手は、罪悪感で明らかに震えている。
自分でも意識していなかった。

ロザリー
『あの時...』

マウリシオ
『え?』

ロザリー
『あの時、私は殺してしまった...この子は渡さない...この子を渡してたまるか...』

マウリシオには、ロザリーの呟きが良く聞き取れなかった。
気がふれて...そう表現するしかなかった。
76
辺りの静寂を掻き消すように、雨が降り始めた。






76-1
マウリシオ
『さぁ、渡すんだ、ロザリー』

ロザリー
嫌よっ!!!

マウリシオを鋭く睨みつけ、腹の底から大声で抵抗した。
77
ロザリー
この子を救えなかったら!私は一生後悔するっ!!

彼女の両目に涙が溢れていた。
それはまるで、助けてくれと言わんばかりに...

その涙は、いつもの強情で頑固なロザリーとは別なモノに見えた。
強気な態度や論理的な返答ではなく、只のワガママ...

マウリシオ
-いや違う...そうか...そう言う事か-

ようやくマウリシオにも理解できた。
ロザリーが背負い続けていた十字架を。
78
彼は頭を抱え、黙り込んでしまった。
しばしの空虚な時間が流れる。






78-1
そして認めた。
自分では止められないと...

マウリシオ
『検閲は何とかする...だがその後の面倒はみられない...それでもいいのか?』
79
ロザリーは満足そうな笑みを見せると、何も言わず首を縦に振った。






80
ロザリー
『その後は、ナディアを連れてひたすら旅を続けたわ。
私達が安全に暮らせる場所を探して。
色んな事があったわねぇ...
この耳を切り落とそうと思ったこともあったのよ。
でもナディアが止めてくれた...』

ロザリーは過去に起きた壮絶な出来事を、笑顔を交えて語った。

一方のリディアは、ナディアの過去をこの時初めて知った。

ハイロックの出身だとは聞いていたが、それ以外の事を聞いた事はない。
寧ろリディア自身、彼女の過去について聞いたことは一度もなかった。

従者に任命され後、彼女の行動は様々な不安を駆り立てた。
世間知らずで、子供のように無邪気でいつも明るく甘えん坊な性格。

自分の先々の事を考えれば、彼女の過去や性格など、特に問題ではないからである。
仕事さえ滞りなくこなしていれば、やがて自分にも転機が訪れる。
ただそう思っていた。

ドラゴンボーンであること、アルドゥインを倒したこと、アークメイジに任命されたこと、ギルドマスターに昇進したこと。
ナディアは、自分が想像していたよりも、遥かに超えた肩書を多数持つようになる。
やがて自分の彼女への見方が変化していった。
81 81-3
ロザリー
『1年くらいかしらねぇ...ようやく落ち着ける場所を見つけたのよ^^
14年間...あの子と一緒に生活したわ』

彼女は微笑み、ひとしきり終えてホッとした表情を見せている。
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ポエット
『あの・・・聞いて良いですか?』

ロザリーは『どうぞ^^』と笑顔で返す。

ポエット
『その後、ロザリーさんとナディアは発病したんですか?』

彼女は恐る恐る口にした。

ロザリー
『いいえ^^健康体そのものよ。他の人にも影響はなかったしね^^』

ポエット
『そうですか^^』

81-2
リディア
『リーチでの出来事は、私も少し知ってます』

ロザリーはリディアに目線を向けた。

リディア
『後に帝国が介入して、街一つ焼け野原にしたと。
でも...みんなオカシイって口々に言ってました。
傭兵達が、領主を殺し町を占領したからって...焼け野原にするなんて...』

ロザリーは悲しげな表情を浮かべた。

ポエット
『帝国は...もみ消したんですね』

重苦しい空気が漂ってしまった。

リディア
『す、すみませんっ!余計なことを話してしまいました><;』
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ロザリー
『いいのよ^^気にしないで^^』

ロザリーがリディアを宥めてくれた。

ロザリー
『あの後の事は、私もナディアに付きっ切りだったから、世間の事なんて興味も持てなかったしね。
むしろ教えてくれて感謝したいわ^^』

リディアは、放任主義のナディアと共感していた自分が恥ずかしくなった。
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ロザリー
『ほおぉぉぉぉんとに手の掛かる子でね^^;
ママーママーって...す~ぐ泣きじゃくるのよぉ^^;』

彼女の視線は過去のナディアを思い浮かべている。
その顔は、微笑ましい母親の顔をしていた。
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ロザリー
『ある時、シチューが食べたいって...でも、シチューなんて作った事もないもんだから、
知っている人に教えてもらって、なんとかそれらしい物を作ったんだけど...
”ママのシチューじゃなぁあぁ―――い!”て、器ごと床に投げ捨てられて、またワンワン泣き出すのよね^^;』

リディアとポエットも気まずい気持ちが込み上げた。
幼い頃の自分達にも、似たような事があったような・・・
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ロザリー
『ホントに、どこかの山奥に捨ててこようと何度思ったことかw』

二人は含み笑いをしてしまった。

ロザリー
『どうせ実の母親じゃないんだしってね...でも、もう駄目だぁ~って思った時に、私の母が昔作ってくれた”おにぎり”を思い出したのよ^^』
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二人はハッと気づいた。

ロザリー
『それを無言で出してあげたら、もぉ~夢中になって食べてくれてね^^
やっと心が通じたような気がして...嬉しかったわ^^
”おかわりちょうだい!”って言われた時は...泣きそうだったわね^^』

ここが原点なのか!!!と二人は思った。

ロザリー
『おにぎりって知ってる?
シロディールじゃぁ結構ポピュラーなのよ^^
なんでも元は東方の...』

リディア
『よく知ってます!!』

リディアは思わず口走ってしまった。

ロザリー
『あら...^^;』

リディア
『今でも好物ですから^^』

ロザリー
『そう^^』
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ロザリー
『でも、あの子...未だに私のこと”ママ”って呼んでくれたことが無いのよね^^;
あの子の母親を手に掛けたのは私...きっと、まだどこかで許せないのよね...』

彼女はどこか物悲しさを見せ、下を向いてしまった。
二人も喉に溜まった唾を飲み込み、押し黙ってしまった。
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そこに丁度良く、ナディアが子供達を連れて帰って来た。

ナディア
『たぁだいまぁ~なのだぁ~^^ノ』

いつもの元気な声が、三人の目線をナディアに向かせた。

ナディア
『ルシア!ソフィ!』

ロザリーは笑顔を向ける。

ナディア
この人がママの”ママ”なのだぁ~^^ノ

ルシア
『ワァ~~イ(*^▽^*)』

ソフィ
『キレェ~~(´▽`*)』
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親心子知らず・・・




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<備考>

◎ロザリーについて
Nadiaは今話において、ロザリー作成者であるOkame様に【彼女の背景設定から表情の汚れに至るまで】事前にご許可を頂きました。
彼女の使用方法及び美観を損ねる点につきましては、不快に思われる方も多々おられるかと思われますがご了承ください。
作成者であられるOkame様には重ねてお礼申し上げますm(_ _)m
今後も彼女を多岐に渡り、使用させていただきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

なお、作中の【マスターウィザード】という称号は、それなりの肩書を持たせただけの物ですのでNadiaのオリジナルです。
またレースが設定されていなかったので、尖った耳からエルフといたしました。

ビヨンドリーチ
ハイ・ロックの東部に位置する、リーチ地方を舞台とした大型MOD。
今作の舞台となるマップです。

主にアーニマ周辺を使用させていただきました。
物語の背景から過去の出来事を抽出しているので、MOD事態のストーリーやクエストとは直接には関わりはありません。
ただし、【アーニマ】という街の名前は、領主であるモーティフェインが勝手に名前を変えてしまっているので、元々の街の名前である【レイブン・スプリングス】を使用しています。

Nadia的にこのMODは非常に内容の濃い作品だと思っております。
第四紀201年現在、スカイリムでアルドゥインと内戦の騒動の中、他国であるハイ・ロックを上手く表現している気がします。
ハイ・ロックは貴族社会が主となっているようで、ある意味スカイリムよりも格差が激しいと思われます。
さらに独自の文化をもっており、大小様々な王国を内包しているようです。

現在の最新バージョンは3.98となってますが、まだ未完成の部分もあるので、これからも楽しみなMODです。

◎フォーローン
ビヨンドリーチに含まれているアーニマ周辺の町です。

◎ドラゴンスター傭兵
ハンマーフェルとハイ・ロックとの国境境に、ドラゴンスターという地名があるのを確認しました。
アルドメリとの戦後の話なので、本編のようになっているのでは?という事にしています。
ビヨンドリーチにも実際に出てくるのですが、彼らのバックストーリーは不明です。

◎夜母
TESシリーズに出てくる女性のミイラ。
【闇の一党】という集団がおり、彼らは暗殺業を生業としている。
ゲーム中には【黒き聖餐】という儀式がある。
誰かを暗殺して欲しいという者が、この儀式を行うと【夜母】に伝わり、そして【夜母】から【聞こえし者】に伝わり暗殺が行われる。
ちなみに【夜母】は、既に死んでいるので声を発することができない。
できないので精神?頭の中?心?どうやってか知らないが、【聞こえし者】だけには伝える事ができる。
この【聞こえし者】も稀な存在で、いつ、どこで、誰になるのかはわからない。

◎西の歪み
TES2のDaggerfallを舞台にした出来事。

第三紀 417年に起きた【平和の奇跡】の別名。
イリアック湾で何かが爆発。
一夜にして44の国が4つの国だけを残して壊滅した出来事。
以後20年間、四つの国は落ち着いていたが、オルシニウムのオークが反乱を起こし帝国が介入することに。

Nadiaは、オブリビオンからのプレイヤーなので詳しい所はよくわかりませんw
すいませんw
Daggerfallには複数のエンディングがあるらしく、その内の一つで帝国軍が介入する結果を持ってきました。

マウリシオ
老軍人マウリシオ軍曹フォロワー
本名:マウリシオ・ドミンゴ・デ・アヴィラ
ブラジル空軍の軍曹で、2015年4月10日に亡くなった方だそうです。
享年67歳。実在の人物です。
作成者様のお父上とのこと。

SOSでは、ロザリーの元戦友として出演してもらいました。
Nadiaは以前よりこのMODのこと知っていたのですが、どこかで使えたらなと考えておりました。
表情や貫禄及び年齢などを考慮し、ロザリーの相棒役を務めるには最適なフォロワーさんと判断し、使用させていただきました。
彼に参加していただけたことは、本当に喜ばしい限りです。
今後ももしかすると出演していだたくかもしれません。

ご冥福をお祈りいたします。

◎マッドマンと回復薬
毒と薬
【マッドマン】は筆者が考えたオリジナルの名前です。
適当にチョコチョコ錬金していたら図のような毒ができました。
10秒間近くの者を見境なく攻撃するという点から、オブリビオンのデイドラロードである【シェオゴラス】から取りました。
シェオゴラスは別名【マッドマン】と呼ばれています。
450ポイントの毒ダメージは無視してくださいw
回復薬もチョコチョコやってたらできました。

◎ストルス・エムカイ島
ハンマーフェルとサマーセット島との間にある小さな島。
この島で二次条約という条約を結ぶことで、一時終戦という形になった。
二次条約の内容は不明。

◎アーケイ
埋葬と葬儀の神、輪廻の神、色々とあるようだが、TESにおける九大神及び八大神の一人。
オブリビオンにおける存在がデイドラに対し、彼らはエイドラと呼ばれ、オブリビオン界の外側のエセリウスという世界に住んでいる。

◎ウェストリーチでの帝国軍の権威について
今話では、第四紀175年に終戦した大戦以降のハイロックが舞台になっています。
大戦以降のハイロックは、基本的には帝国領土となってはいますが、この国は昔から内戦が絶えない地域だったとされており、それは統治された後になっても続いていたようです。
その証拠が、第三紀の417年に起きた『西の歪み』であり、一晩のうちに44もあった国が4つに纏まったという事象なのですが・・・

ハイロックは厳格な貴族社会で成り立っているようです。
この貴族社会とは、王より爵位を与えられると同時に、領土も与えられるといった構図の事を言います。
爵位を与えられた貴族は領主となり、一定の領土を治める頭になります。
おそらくこれが内戦・紛争の火種になっていたのでは?とナディアは解釈しました。

貴族社会が細かく乱立すると、平民と貴族との間に大きな隔たりが作られます。
貴(とうと)いと言うくらいなので、当然差別が生まれます。
差別が生まれると、自然と下の者に不満が広がっていきます。
貴族社会に対する反乱がおこり、やがてその火種が大きくなると、革命がおこります。
中にはそういう社会に対して不満を持ち、外側から内側を潰そうとする組織も出てきます。
(ウィッチマンなどの先住民による反乱、あるいはオルシ二ウムのオーク達)
また、与えられる領地にも限度が出てくると思うので、やがてお家騒動にまで発展しかねません。

これが、ハイ・ロックのブレトンの社会だと思われます。
今話でマウリシオが、『ここじゃ帝国軍もそれほど影響力を持たないんだぞっ!』と書き加えたのは、
いかに統治する者であっても、他国の文化や慣習に対してメスを入れる事は難しいという意味で加えました。




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