ホワイトランはスカイリムの中央に位置する街で、物流の中心として有名である。
スカイリム中のありとあらゆる物がここを通り各都市へと流れていく。
物が集まれば当然人も集まってくる。
商人やキャラバン、傭兵に流れ者、巡礼者や物乞い。
そして大きな金の貯水池であり、様々な支流を抱えている。
さらに政治的にも大きな力を持つ場所である。
名家として名高い【バトルボーン家】と【グレイメーン家】があるが、
内戦の影響で二つの家が、帝国側と反乱側に別れて互いにいがみ合っている。
街の中心にあるギルダーグリーンと呼ばれる一本の木は、
この街の平和の象徴として称えられ、何者もこの木を傷つけることを禁じられている。
ヘイムスカーと言う男が、日がな一日タロスについて演説しているのもこの街である。
またこの街には【同胞団】と呼ばれる戦士ギルドがある。
彼らはジョルバスクルという大きな建物に住んでいる。
ホワイトランという街はこの建物の周辺から始まったのだと言う。
かなり古くからあるギルドで、代々の首長も彼らには敬意を払ってきた。
とは言え、彼らはこの街における政治的な問題には一切関与しないことでも有名である。
衛兵の数も現在の首都であるソリチュードに劣らぬほどの数で守られている。
様々な事柄が交差する都市にしては、犯罪件数は他の都市と比べると極端に少ない。
街中で子供が走り回れるほどである。
これはスカイリムにとってどの勢力に属そうとも中立的な立場であるからと言えるだろう。
そして、この街を治めているのが【バルグルーフ】という一人の男である。
ホワイトランを円滑に且つ絶妙なバランスで保っているのも彼である。
よって人々は彼の事を尊称して【偉大なる首長】と呼び。彼に付き従う者は少なくなかった。
現在彼は帝国、反乱どちらにも与していないが、どちらの言い分にも大儀があると明言はしていた。
とは言え、スカイリムの情勢は刻一刻と変わりつつある。
いかにバルグルーフと言えど、決断の時は迫りつつあった。
バルグルーフ
『くっそぉ!テゥリウスめ!我々をいったい何だと思っているんだ!』
イリレス
『何を言ってきたの?』
バルグルーフ
『我々にファルクリースに攻め込んで、これを獲ってこいと言ってきた!』
イリレス
『また同じ内容なのね・・・でもファルクリースは要害ではないわ、ホワイトランの兵で十分攻め取れる場所よ』
バルグルーフ
『そんなことはわかってる。俺が気に入らないのは、帝国が我々に対し特になにかをしてくれるわけでもないのに、
帝国側につきたいならファルクリースを手土産で持ってこいと言ってることだ』
イリレス
『でも、実際時間の問題であることには変わりないわ。あなたもそろそろ決断する時なのよ』
バルグルーフ
『ダメだ!少なくとも、我々が出兵している間にこのホワイトランを保護してくれるだけの援軍でも来ない限り、オレは動く気にはなれない!』
プロべンタス
『しかし、あまり時間を掛けると我々が何かを企んでいると思われ兼ねません』
バルグルーフ
『俺がそんな男に見えるか!?この街を円滑に運営しているのは、この俺だぞ!』
バルグルーフにとっては内戦どうこうよりもホワイトランの安全が第一なので、中立という立場が崩れてしまうことを何よりも恐れていた。
リディア
『随分と荒れてますねバルグルーフ首長^^』
バルグルーフ
『リディアか。ナディアはどうした?』
リディア
『実はナディア様の使いで来たんです』
バルグルーフ
『お前を使いにするとはな。何をたくらんでる?』
リディア
『できれば・・・お人払いができるといいのですが・・・』
バルグルーフはリディアを睨んだ。
バルグルーフ
『それはできん!今は誰が敵で誰が味方か判断が難しい。要件はなんだ!俺は今忙しいんだ!』
リディア
『わかりました。実はナディア様も首長と同じことで悩んでおられます』
バルグルーフ
『なるほどな・・・
ナディアは英雄だ。その功績は計り知れないものがある。
となれば、どちらについても彼女の影響は大きい。
それはつまりどこで誰が見ているかわからんというわけか』
リディア
『はい・・・』
バルグルーフ
『悪いがみんな下がってくれ』
プロべンタスと衛兵たちは二階に上がっていった。
だがイリレスだけは残った。
バルグルーフ
『イリレス、みんなと言ったはずだが』
イリレス
『私は残るわ。あなたを守るために私は人生を捧げてきた。あなたを裏切る理由なんてないもの』
イリレスはリディアを怪訝そうに見つめる。
バルグルーフはため息をついたが、それについては何も問わなかった。
バルグルーフ
『すまんなリディア。そういうことだ』
リディア
『私はかまいません^^』
バルグルーフ
『で?ナディアはどう考えている?』
リディア
『それについてですが、手紙を預かってきました』
リディアはなんの気無しにバルグルーフに手紙を手渡しした。
バルグルーフが手紙を受け取り中身を開いて見る。
イリレスがそれに目を奪われた瞬間、バルグルーフがいきなり怒鳴り声をあげた。
リディアは二人の隙を見事につくようにバルグルーフの首筋に剣を立てる。
彼は瞬時に背筋が凍った。
イリレス
『いったい何のつもり!』
人払いしたはずなのに、いつの間にか衛兵の一人がイリレスの後ろにいた。
しかもその剣は彼女の後ろ首を一突きしようと向けられている。
リディア
『立ってください首長』
バルグルーフ
『いったいなんのつもりだ!?』
リディア
『立ってください!』
バルグルーフは仕方なく玉座を立つ。
同時にリディアはバルグルーフの後ろに回り、右手を抑え、首筋に剣を横走りさせた。
そして二階にいる衛兵に叫んだ。
リディア
『私に何かあれば首長の首が飛ぶ!わかったら全員武器を捨てろ!』
二階から衛兵が弓矢でリディアを狙おうとしていたが、プロペンタスが止めにかかった。
プロペンタス
『よせ!撃つんじゃない!やめるんだ!』
リディア
『武器を捨てろっと言ってるんだ!!』
プロペンタス
『首長の命が危ない。みんな武器を捨てろ!捨てるんだ!』
ガチャガチャと衛兵は武器を捨て始めた。
ドラゴンズリーチの監獄から外にでようした衛兵も捕まってしまった。
リディア
『あなたもよイリレス^^』
イリレスは完全に裏をかかれた事に腹の底から怒りが込み上げていたものの、バルグルーフを犠牲にはできないと判断し武器を捨てた。
ひざまずき両手を頭にのせる。
イリレス
『おのれ・・・卑怯者め!!』
腹いっぱいの憎しみを込めて言い放った。
???
『卑怯者っていうのは、首長でありながらいつまでも決断できず、城に籠って怒号ばかり吐いてる人のことを言うんじゃないですか?』
???
『始めましてバルグルーフ首長』
ポエット
『私はナディア様の従者でポエットと言います^^』
バルグルーフは頭の中で必死に事を整理し理解しようした。
バルグルーフ
『まさか・・・お前みたいなガキがこの事態を招いたというのか?』
ポエット
『ガキガキって、そのガキに捕まったのはあなた達ですよw』
リディアはバルグルーフの右手を更に強く抑え込んだ。
バルグルーフは息を飲む。
彼の目の前にウィグナー・グレイメーン、そしてその家族と彼を支持する者が立ちふさがった。
ポエット
『バルグルーフ首長、本日付であなたには首長の座を辞任してもらいます』
バルグルーフ
『ふざけるなっ!』
ポエット
『ふざけてなどいません。これから街に出てあなた自身の言葉でそれを宣言してもらいます』
ポエットは演説の内容を書いた用紙をバルグルーフに見せた。
ポエット
『簡単ですから。暗記してください^^』
それを見た彼は再び激高する。
ポエット
『あれ?お手紙お読みにならなかったのですか?』
そいえば昼間から子供たちの姿を見ていない・・・
バルグルーフはテゥリウスからの手紙の内容で頭がいっぱいだった。
ポエット
『安心してください。子供たちの命まで取ろうとまでは思っていません。
ですが、拒否した場合は・・・保証ができなくなるかもしれません・・・』
信じ難い事実だったが、さすがのバルグルーフも子供を人質にとられたのでは遇の根もでなかった。
ウィグナー
『バルグルーフ。これはお前さん自身のプライドの高さが招いた結果だ。お前もノルドなら男らしく受け入れろ』
町民A
『首長だ』
町民B
『え?あれが首長さんなの?』
ポエット
『みなさん!これよりバルグルーフ首長から大事なお話しがあるそうです!』
バルグルーフは腸が煮えくり返そうだったが、子供たちを事を思いひたすら我慢した。
バルグルーフ
『わ、私は今の状況を考慮に考慮を重ね。重臣たちとも相談し。今日あることを決断した。
それはつまり本日付で首長の座を辞することにする・・・』
町民
『ええ?それっていったいどういうことなんだ!?』
バルグルーフ
『私には皆の命を危険に晒してまで、この戦争に参加する意義を見出せない』
バルグルーフ
『ノルドでありながら、ノルドらしい生き方を追い求めても、それを追求することができないのだ』
バルグルーフ
『私個人としては、正直ウルフリックとの友情を優先したい。それこそが真のノルドの生き方だからだ』
台本棒読みに近かったが、込み上げる怒りを額の汗に変え、とにかく終わらせようとした。
バルグルーフ
『だが私には、それをやる資格がない!よって今日より、名家であるウィグナー・グレイメーンにその座を譲り渡すことにする!』
真昼間の出来事に、町民たちはにはいったい何がなんのか理解できず唖然とし、誰一人反論するものはいなかった。
実際、町民達にとっても目前の仕事や用事で忙しく、首長にカマっていられるほど余裕もないのだ。
ただ一人、タロスを敬愛している男の大きな声だけがホワイトランに木霊する。
ポエット
『即興で覚えた割には上出来でしたよバルグルーフ殿w』
彼はもう首長ではない。
バルグルーフ
『子供たちは無事なんだろうな・・・』
ポエット
『心配いりません。ソリチュードに向かっております。エリシフ首長に手紙もしたためてありますので^^』
バルグルーフ
『俺たちをどうするつもりだ!?』
ポエット
『あなた方には、しばらくの間グレイムーア砦の監獄に入っていただきます^^』
バルグルーフ
『おい!ここは無人の砦のはずだ!』
衛兵
『心配すんなってw飯はちゃんと運んでやっから。トイレはそこにあるし。じゃあなw』
バルグルーフ
『おい!待て!ナディアに会わせろ!』
衛兵
『俺にその権限はねーよ』
ホワイトラン制圧はここに完了した。
アルギス
『ほんとにホワイトラン落としちまったよ・・・』
イオナ
『ええ・・・とんでもない娘が来たわね』
カルダー
『あいつスゲーなぁ・・・』
リディア
『脱帽ものよね^^』
ジョディス
『あの娘がいれば、ナディアが本当に上級王になるかもしれないわ・・・』
ウィグナー
『まさかこうも簡単にホワイトランを制圧してしまうとは、お嬢ちゃんには恐れ入ったわい^^』
ポエット
『いえいえ、これも皆さんのご協力あってのおかげです^^』
ポエット
『まず初めにやることは、ホワイトランを落とします』
みんなで
『なんだって!?』
さすがのリディアもポエットのこの発言には驚いた。
アルギス
『おい、ポエットぉ~いくらなんでもそりゃ無理だぜ・・・』
ポエット
『どうしてですか?』
アルギス
『だってよぉ~あそこはハッキリ言って要害だぜ。衛兵の数が多すぎだ!頭の悪い俺でもわかるぜ!』
ポエット
『私はなにも、武力で奪うとは言ってませんよ^^』
アルギス
『う~ん・・・』
イオナ
『でも、ウィンドヘルムはどうするの?今あそこは危ないのよ』
ポエット
『それはよくわかっています。だからこそホワイトランを奪い取らないといけないんです』
ポエットの考えはこうである。
現在ウィンドヘルムは帝国軍と睨み合いの状況にある。
兵も持たないナディア達が援軍に駆けつけても、なんの意味もないことはわかっていた。
そこで帝国をウィンドヘルムから離す作戦を取ったのである。
ホワイトランはスカイリムの中心であり。ここを獲れば文字通り地図上の中心を取ったことになる。
もしこのまま兵を北上させれば、帝国軍の喉元であるソリチュードを伺うには最短の距離を得ることができるのである。
このことをテュリウスが知れば、ウィンドヘルムから兵を引かざる得ないのである。
ポエットはホワイトランを奪うために実に緻密な作戦を実行した。
まずは帝国びいきのバトルボーン家の排除である。
そのためには賄賂を使うほうが効率が良かった。
ナディアに金の工面をお願いしてみたところ、二つ返事でOKしてくれた。
むしろ好きなように使ってくれとまで言われた。
ポエットが最初に接触したのは、ホニングブリュ―ハチミツ酒醸造所のオーナーであるサビョルンである。
彼は以前、ナディアに醸造所の地下の害獣駆除を依頼してきたことがあり、その借りはまだ付けのままだった。
さらに彼は新しいお酒の研究に余念がなく、試飲会をちょくちょく開いていたのである。
次にポエットは、ホワイトランで働きもせずプラプラしている者に目をつけた。
ノルドの”シンミール”とレッドガードの”アムレン”である。
シンミールは日雇いで稼いでは、その日にバナードメアで費やす日々を送っている。
アムレンは以前、ナディアに父の形見である剣を、山賊から取り返してもらった義理があった。
シンミールには1000セプティムを握らせ、アムレンには義理立てを口実に参加せることにした。
さらにポエットは雑貨店の店主べレソアをも巻き込んだ。
彼は生粋の商人ではあるが、利益になるならなんでもする小悪党な商人でもある。
ナディアは彼のところにちょくちょく顔をだしては、不用品を山のように売りつけていたために上お得意様になっていた。
だが、金には汚い面があるため、念のため軍資金として2000セプティムを渡した。
実はこの金額には彼の下で働いている雑用係のシグルドの分も含まれていた。
その点には深く触れず、ただ彼も参加させてあげてと軽く頼んでおいたのだ。
人数は多いほうがイイ。
ポエットはべレソアの性格上、猫糞してでもシグルドを連れて行くだろうと読んでいた。
彼を作戦に加えたのにはもう一つ理由がある。
彼はあくまで商人である。名家との接点を持ちたがるのは当たり前だからである。
彼らにはバトルボーン家の男共(オルフリッド、イドラフ、ジョン)全員を呼び出し、
ホニングブリュ―ハチミツ酒醸造所にて試飲会を開き、徹底的に酔いつぶして欲しいと頼んだのである。
バトルボーン家には女性があと2人と男の子が1人いる。
リリス・メイデン・ルームという謎の老女がホワイトランにはいた。
彼女はすれ違う人々に、”いつでも話相手になってあげるよ”とぼやいている。
おそらく寂びいしいのだろうとポエットは単純に考えた。
そこで、家長であるオルフリッド・バトルボーンの妻ベルグリッテをお茶会に誘ってはどうかと提案してみた。
お互い年齢も近いのか、リリスは見事に誘い出してくれた。
次は長男のイドラフの妻であるアルフヒルドだが、噂では義理の父親と床を共にしているらしい。
真偽のほどは確かではないが、この噂を広めて彼女をホワイトランから追い出すという手もあった。
が、彼女は毎日実直にバトルーン農場に働きに出ていくため、夕方まで姿を現すことはまずない。
しかもバトルボーン農場はホワイトラン郊外の裏側に位置するため、城内で騒ぎが起きてもまったくわからない場所だった。
さらに彼女は嫁いで来た身でもあるため、この内戦にはあまり興味をもっていないらしいで、ほおっておいても問題ないと判断した。
ポエットはさらに買収を進めた。
ドラゴンズリーチ内で掃除婦として働いている2人の侍女である。
彼女たちには現在の首長からもらっている毎月の給料を聞き出し、
その一年分の半分を今払うから、作戦の間はバルグルーフの子供三人をグレートポーチに誘い出してくれと頼んだのである。
彼女たちは今まで見たことのない金塊を見て喜び、お菓子や食べ物を大量に買い込んで子供たちを誘い出してくれた。
この時、ナディアの養子であるルシアとソフィを使い、バトルボーン家長男の息子であるラーズを誘い出させた。
もちろんナディアの了解の元である。
バルグルーフをグレイムーアへ移送すると、彼女たちはバルグルーフの子供三人を連れてソリチュード行の馬車に乗せた。
この時に残りの半額を支払った。
侍女二人に支払う賄賂を二回に分けたのは、彼女たちが宮仕えの使用人のためポエットの警戒心からである。
ポエットは子供たちの移送に護衛として二人の傭兵をつけることにした。
ダンマーのジェナッサとノルドのウスガルドである。
お互い同業同士でもあるので途中争いが起きないよう、普段の倍額を支払った。
そして子供たちを無事にソリチュードへ送り届けたら500セプティム。
エリシフにきちんと手紙を渡したらもう500セプティム。
と分割して条件を出し、ホワイトランに帰って来た時にこれらの金額を支払うと約束させた。
さらに宮廷魔術師のファレンガーには今後の研究費用を倍額払うことを約束させて黙らせた。
ついでにナディアが持っていたドラゴンの鱗と骨をつけてやったら、モーレツに喜んでいた。
ポエットが次に行ったのはウィグナー・グレイメーンとの接触である。
これにはナディアの同行が欠かせなかった。
彼は信じられないというように目を丸くして話を聞いていたが、ナディアの後押しがあると聞くとすんなり同意してくれた。
もちろん彼の家族も一緒にである。
ただし弟のエオルンドだけは同意はしてくれなかった。
本人が言うにはこれらの事柄に関与したくないからとのことだった。
それならとポエットは念書にサインをさせることにした。
こんなことまでする必要があるのかと反抗し睨まれたが、彼女は強気に出た。
ポエット
『これから行おうとすることは、お兄様の命にも関わってきます!
あなたは親族でありながら、それを無視すると言いました!
信用するとかしないとかの問題ではなく、大人としてのケジメをつけてもらうために必要なものです!
もしこれに同意できないのなら、バルグルーフと同じようにホワイトランから追放処分しないといけません!!』
エオルンド
『なんだとこのガキ!!』
ポエットは精いっぱい彼を睨み返し、語気を強めて言った。
エオルンドは何か言い返そうとしたが、ウィグナーの必死の静止でなんとか宥めさせ素直にサインしてくれた。
その間にポエットはナディアの従者5名にグレイムーア砦の制圧を指示した。
これはバルグルーフ首長からの仕事の依頼であり、ナディアは既に受理していたのでこれを利用したのである。
なのでバルグルーフはグレイムーアが無人であることを知っていた。
ポエットが最も悩んだことが一つだけある。
衛兵の買収である。
そこでリディアに相談してみた。
リディア
『それは・・・かなり難しいわね』
最初に目に着けたのは衛兵隊長のカイウスである。
彼は怠け者の隊長として有名だったのだが、生粋のインペリアルであるため、帝国を裏切るとは考えられなかった。
衛兵のほとんどは顔がわからない。
それというのも兜がフルフェイスの為だ。
これは兵の買収を防ぐために各地の首長が行っていることだった。
リディアが言った。
リディア
『プロべンタスはどうかしら?』
ポエット
『プロべンタスって・・・執政の?』
リディア
『そう』
ポエット
『彼は何か弱みがあるんですか?』
リディア
『一人娘がいるのよ。戦乙女の炉で働いている』
ポエット
『ええ?あそこにはレッドガードの女性しか・・・あっ!養子ですか!?』
リディア
『違うわ。れっきとした娘よ。それにレッドガードじゃないわ。インペリアルよ』
ポエット
『インペリアル!?日焼けだったんだ・・・』
リディア
『日焼けより・・・たぶん炉焼けよ・・・』
リディアが言うには、彼女の名前はエイドリアン・アヴェニッチといい。
ノルド人と結婚し、今の鍛冶屋を営んでいるとのこと。
ナディアやリディアもこのお店には随分と世話になったことがあり、お互いなーなーな関係でもあるとのこと。
ホワイトランにはエオルンド・グレイメーンという名匠がいる。
前述のウィグナーの弟なのだが、彼の作る武器はどれもスカイリムおいて業物の一品とされ有名である。
彼に憧れ尊敬する鍛冶職人はスカイリム中にいた。
エイドリアンはそんな彼の大ファンであり、将来は彼のようになりたいと常日頃考えているのだという。
つまりその点を餌にできないかと考えたのだ。
そこでポエットは執政のアヴェニッチ、娘のエイドリアン、その旦那のウルフべルスの三人を連れて密会を開くことにした。
これはポエットにとって材料の少ない危険な賭けではあったが、方法が他に思いつかなかった。
プロペンタス
『なんでその話を俺にする?』
プロべンタスはポエットを睨んだ。
ポエット
『今後、このホワイトランが反乱軍の手に落ちた後でも、娘さんの身の保証はするという意味です』
エイドリアン
『な!なんのよそれ!ナディア!あんたっ!』
ナディア
『うひっ><;』
リディア
『まぁまぁ、落ち着いて落ち着いて^^;』
プロべンタス
『そんなこたぁ当たり前だ!!だがな俺が聞いているのはそいうことじゃない!』
プロべンタス
『どうして俺がその話に乗ると思うのか?ってことだヨ!?』
プロべンタス
『娘は女房似でね。俺と違って辛抱強い。それに気も強いと来たもんだ。父親の俺なんかいなくてもちゃんとここまで成長してくれた』
プロべンタス
『嫁の貰い手が心配だったんだが、ウルフべルスが貰ってやると聞いたとき、どんなに嬉しかったか・・・;;』
エイドリアン
『お父さん・・・』
プロべンタス
『俺はよ!母親を早くに亡くしちまって、男で一つで娘を育ててきたんだ!だからよ!
娘が今の生活で幸せっだって言うなら、オレは喜んで自分を切り捨てるぜ!』
ポエット
『そ・・・それは・・・つまり?』
プロべンタス
『だから!娘が俺の弱点にはならねぇってこったヨ!』
ポエット
『あぁ~あぁ~なるほど^^;』
プロべンタス
『俺はインペリアルだ!どう転んだって反乱軍に手を貸すような理由はねーのさ』
ポエット
『なるほど、だからどうして聞かせたのか?ってことなんですね^^』
プロベンタス
『やっとわかったかお嬢ちゃん』
ポエット
『はい^^でもぉ~私思ったんです』
ポエットはゆっくりとした口調で話始めた。
ポエット
『バルグルーフ首長という人に私は一度も会ったことがありません。
でもおそらくかなり気性の激しい人なんじゃないかなぁ~って?』
プロべンタス
『・・・』
ポエット
『だってぇ~そうじゃないとぉ、このホワイトランっていう街が中立の立場を保つなんて・・・不可能ですよ^^』
ポエット
『そいう人を補佐するとなると、余計に辛いですよねぇ・・・キット。
どこまでも自分を抑えて抑えて・・・我慢に我慢を重ねて・・・ストレスを抱えているんじゃないかな?って』
ポエット
『だから・・・プロべンタスさん・・・もしかしてぇ~・・・辞めたがっていませんか?』
ポエットはプロべンタスの表情の変化を見逃さなかった。
ポエット
『バルグルーフ首長はあなたを重要な片腕だと思っているに違いありません。
このままいけば彼は死ぬまであたなを傍に置いておくでしょう。
彼と離れることができる唯一のチャンスではありませんか?』
プロベンタスはホワイトランの執政であり、バルグルーフのオモリ役でもある。
これは傍から見れば立派な職業に見えるが、当の本人にしてみれば毎日身を削るような思いを繰り返している。
バルグルーフが間違った道を歩まぬよう、道を正してやることが本来の仕事ではあるが、
時には彼の身代わりになり悪人役まで引き受けなくてはいけない。
そんな毎日を繰り返してきたことに、大概の人は誇りを持っているなどどと単純に置き換えるが、実際はそんな生易しい物ではないのだ。
それは彼自身を見れば一目瞭然だった。
ポエットは心の中であらゆる神様にお願いした。
おねがい!おねがい!おねがいだかさぁ~><;
プロベンタス
『どうすれば離れられる?』
ポエットは心の中でやったーーーー!!!とガッツボーズした。
エイドリアン
『お父さん・・・』
プロベンタス
『娘よ。俺はお前が思っているほど、我慢強くないんだ・・・それに、俺はスカイリムに居過ぎた。
お前をノルドに嫁がせたせいで、帝国には・・・帰る場所もないんだよ』
エイドリアン
『そんな・・・』
ナディア
『行くとこないなら家にきなよ^^』
プロベンタス
『そいつは・・・ありがたいんだがな・・・』
ポエット
『それはダメですよナディア』
ナディア
『なんでぇ~><;』
プロベンタス
『そりゃそうだ。お前さんは目立つからな。そんなところにオレはいられねーよ』
ナディア
『う~~~ん><;』
ポエット
『手配しますよ。内戦が終わるまで安全に住まえる場所を。あなたほどの人を埋もれさせるのは惜しい』
プロベンタス
『へっ!俺は引退間地かのジジイだ、できれば死んだことにしてほしい』
ポエットは彼の希望を全面的に受け入れることで同意させた。
プロベンタスには当日の兵の配置替えを頼んだ。
危うい瞬間を体験したが、思わぬ出来事を逆転させることに成功した。
これで当日の人の動きは、ほぼ制御できると判断した。
プロベンタスが、ホワイトラン衛兵の配置を内外問わず全て変更してくれたので動きが取り易い。
執政の命令ならば衛兵隊長のカイウスも反論はできない。
なので、こちら側からのスパイを潜り込まることもうまくできた。
衛兵を二階に連れて行き、片側の通路のみに集めさせたのは彼の指示だった。
バルグルーフが気性の荒い男だということは分かっていたので、
ポエットはワザと激高する文章をしたためてリディアに渡すよう伝えた。
イリレスの性格もリディアがよく知っていたので、
プロベンタスと衛兵は首長の命令を聞いても、彼女だけは残るだろうと予想していた。
バルグルーフの弟であるフロンガルは、殆ど2階にいることが多い。
武芸に秀でているが頭のほうはイマイチだと、プロベンタスは言っていた。
なので、彼の事は俺に任せろと一任してくれた。
そしてドラゴンズリーチから外に出るための監獄への道も塞いだ。
ホワイトランには二つの弱点がある。
一つはバルグルーフの気性の荒さ。
そしてもう一つは、交易のための人の出入りが激しいことである。
ホワイトランには定住している人の数は限られている。
こういう街を制御するには資本主義的でないと成り立ちにくい。
なので犯罪は少ないというものの、実際は格差も激しい街でもある。
町民にとってバルグルーフは、尊敬する存在ではあるが、
命を懸けて守るほどの価値は薄く、お飾り的にしか思われていないのが現実だった。
ポエットはこの二点をうまく利用し、ものの見事に制圧したのである。
しかしホワイトランの制圧には、もう一つだけやり残していることがある。
それは帝国側の偵察兵をテュリウスの元に返さないことである。
テュリウスはホワイトランの動向を必ず見張っているはずだとポエットは睨んでいた。
だが、ナディアだけは絶対に出したくなかった。
主君には制圧完了後、安全を確保できてからの入場をしてもらうためである。
とはいえ、バルグルーフご一行は四人、彼らを無事にグレイムーア砦に届けるには最低でも5人は必要だ。
それもかなりの手練れの。となるとどうしても従者の数だけでは回せない。
ジョディス
『一人いるじゃないw』
リディア
『ムリよ。昼間は嫌がるでしょ』
ナディア
『ああ^^セラーナがいたね^^』
ポエット
『セラーナさん?誰です?』
ナディア
『あ!来た来た^^セラーナ!』
セラーナ
『なんですの?』
ポエット
『えええ!うっそ・・・・き、き、きゅうけつき~~~!!
なんで吸血鬼がいるんですかぁ~!!??』
セラーナ
『嫌ですわ!太陽はお肌の大敵ですのよ!』
ナディア
『いつものフードかぶればいいじゃん^^』
セラーナ
『あなた私をなんだと思っているんですの!?00+』
なんだかんだ言っていたが、ちょっとだけという約束で穴埋めしてもらうことができた。
ポチットお願いしますm(_ _)m
<備考>
◎同胞団
ホワイトランにあるジョルバスクルに住んでいる戦士ギルドの一団である。
伝統高く格式の高い組織であるため、スカイリム中にその名は轟いている。
彼らのところにはスカイリム中から様々な仕事の依頼が来て、それらを解決することで収入としている。
同胞団の特に限られた者たちには獣の血を持つ者がいる。
獣の血とはウェアウルフに変身できる能力を持つ者である。
このことは一団だけの秘密であり、決して漏れることはない。
◎バナードメア
ホワイトランにある酒場件宿屋。
夕方近くになるとホワイトランにいる人たちの大半がここに集まってくる。
飲めや歌えやの騒ぎがほぼ毎日のように行われる。
ノルドらしい一面が見れる場所でもある。
◎ホニングブリュ―ハチミツ酒醸造所
ホワイトラン郊外にあるハチミツ酒醸造所。
ハチミツ酒を自社ブランドとして売り出しているが、よく妨害にあったりもする。
ライバルはリフテンのブラックブライヤーハチミツ酒。
◎ファレンガー
ドラゴンズリーチの宮廷魔術師
バルグルーフは彼にドラゴンの研究をさせている。
ややもマッドな面もあるが、魔法書などの販売からウィンターホールド大学への入学案内などもやっている。
◎エオルンド・グレイメーン
兄ウィグナー・グレイメーンの弟。
ホワイトラン斬っての名匠。
ジョルバスクル付近に自分専用のスカイフォージと呼ばれる鍛冶場を持っている。
同胞団お抱えの鍛冶職人でもあり、同胞団に所属する者はみんな彼の武器を持つことができる。
寡黙な性格で、人との関わりをあまり好まない。
彼の名前はスカイリム中に轟き、彼に憧れる鍛冶職人は多い。
◎アヴルスタイン・グレイメーン
グレイメーン家には実はあと二人の家族がいる。
アヴルスタイン・グレイメーンとソラルド・グレイメーンである。
ソラルドはノースウォッチ砦で囚われていたところをナディアに救われたが、自宅には戻らずどこかへ行ってしまった。
もう一人のアヴルスタインは、作者のスカイリムでひたすら探したのだが、コンソールを使用しても出てきてくれなかったので、
止む終えず存在しないことにした。
◎セラーナ
ディムホロウ墓地にて数百年間封印されていた吸血鬼。
ストーリー上ナディアは彼女を封印から解き放ち助け出すことになる。
タムリエルには吸血症という病がある。
その原因は吸血鬼に噛まれたせいではあるが、この病気をもたらしたのはモラグ・バルというデイドラである。
ハルコンは吸血症より吸血鬼になり、そして吸血鬼の王になった。
セラーナは彼の娘であり、モラグ・バルより寵愛を受けて純血種の吸血鬼となった。
これを【コールドハーバーの娘】という。
好奇心旺盛で何事にも積極的なところもあるが、基本的に吸血鬼なので昼間の活動は好まない。
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