お待たせいたしましたm(_ _)m
ようやく【第十三話EP1】を公開したします。

今回は文章の作り直し、SSの取り直しなどを何度も行い、ようやく自分なりに納得いく出来になりました。
Nadiaはへそ曲りなので、今までも結構大変な所もあったのですが、新しい事に挑戦するたびに自分がワクワクしないと嫌なのですw
そんな風に一時の興奮に浸っていただけたら幸いでございます。
なので”ありえない”と思われる方々もいるかもしれませんが・・・あくまで純粋に読んでいただければと思います。

今話はホワイトランの攻防戦にて、最も激しい攻城戦がメインとなっております。
ストームクローク軍はグレイムーア砦を破壊し、使い物に出来ない状態にはしたものの、帝国軍は遂に城塞の目前まで迫って来ました。
果たしてテュリウスはこれを見事陥落させ、ホワイトランを奪還できるのでしょうか?
それとも、またもポエットの知略奇策に踊らされるのでしょうか?

また今話では、おそらくですが次話における”ある作戦”を予測できるようヒントを散りばめてみました。
そんな事を考えながら読んでいかれると、面白いかもしれませんw

どうぞお楽しみください^^

1
グレイムーア砦を倒壊させた翌日の早朝。
ポエットはジョディスを大将としファルクリースに援軍に向かわせる事にした。
その数およそ100名程度。
この数字は、現在のホワイトランから送る事のできる最大限の兵数だった。
2
ウィグナー
『ファルクリースに援軍?』

ウィグナーは眉を顰(ひそ)める。
3
オルフィナ
『あそこはシロディールとの国境の町。
だからテュリウスも狙ってるって事ね』

ポエット
『その通りです^^』

ウィグナー
『どのくらいの兵を送るつもりじゃ?』

現在ホワイトラン及び周辺に駐留している兵の総数は2000と少々。
その殆どは、リフテンのライラ首長から借り受けていた兵だった。

対して帝国軍は、およそ6000以上と三倍の兵力差がある。
先の戦いにて600人という大きな被害は出したモノの、それでも未だ5000人以上いる。

よって現在のホワイトランからまともに援軍を送る事は不可能に近い。
ウィグナーは明らかに難色を示した。
4
ポエット
『100人程度で大丈夫でしょう^^』

ウィグナー
『なっ!なにっ!?100人じゃとっ!?』

ウィグナーは驚く。
5
オルフィナ
『たった100人じゃ援軍にはならないわよ?』

ポエット
『偽兵の計を使います』

ウィグナー
『ぎへいのけい?』
6
ブリル
『偽物の兵隊を置いて、あたかも大軍がいるかのように見せかける作戦だな』

ポエット
『そうです^^』

ブリル
『しかし・・・もしテュリウスがファルクリースに攻め込むとするなら、それは一時凌(しの)ぎにしかならないんじゃないか?』

ポエット
『はい、今は単なる時間稼ぎでいいんです』
8
ウィグナー
『どういうことじゃ?』

ポエット
『テュリウスは、攻城戦を必ず”最初”に仕掛けてきます。
その理由は二つ。
一つは、ホワイトランが増築された事で、どれほど強化されたのか知りたいという事。
二つ目は、私たちの目を、テュリウス本人に向けさせるためです』
9
ブリル
『つまり、攻城戦を仕掛ける前や最中ではなく、ホワイトランの強化具合を見てから判断するという事かな?』

ブリルはゆっくりとした口調で話す。

ポエット
『そんなところですね^^
テュリウスは私達を警戒しています。
なので攻城戦においては、正攻法で攻めてくるでしょう。
という事は、ホワイトランの状況がわからないまま、次の一手を打つのは危険だと考えるはずです。
ですが、問題はその後です』
10
ウィグナー
『ファルクリースに攻め入った後と言う事か?』

ポエット
『現在のストームクローク軍は、致命的な問題を抱えています。
テュリウスは、これを絶対見逃しはしません。
早い段階で何とかしないと、今度はこっちが痛い目を見る羽目になります』
38
ホワイトランは増築工事が急ピッチで進められ、全体の約7割方が終了していた。
時間が足りなかった為、幾分か不足な面もあるが、攻撃及び防御どちらもある程度は強化され、臨戦態勢だけは整っていた。
38-1
また、帝国軍からの攻撃が最も遠いドラゴンズリーチ周辺、そしてギルダーグリーンの大木の周りに避難所を設ける事にした。
タロス像の前には配給設備を整え、仮設のテントなどを置き、いつでも避難ができるよう万一の備えは万全とさせた。
更に犯罪などにも即対応できるよう、衛兵の数を増やし常時巡回させるようにしたのである。
38-2
ホワイトランがこのような状態にも関わらず、ジョルバスクルの同胞団は、相変わらず無関心を決め込んでいる。
市民の中には、彼らを良いように思わない連中も確かにいた。
39
ポエットの睨んだ通り、テュリウスは攻城戦を仕掛けてきた。
帝国軍は、フロンガルとイリレスを先頭にホワイトランに向かって進撃する。

フロンガルの隊は城壁を上るため。
イリレスは城門を破壊するために、二手に分かれたのである。
40
ホワイトランの城門は、新しく分厚い鉄門が設置されていた。

イリレス
『フッ、ポエットとかいう小娘、知者と言っても大した事は無さそうねw』

副将校
『どういう事です?』

イリレス
『あの城門を御覧なさい。
門を外開きにするなんて聞いた事もないわ。
これじゃ開けてくれって言っているようなものよw』
41
通常、門という物は城内に向かって内開きするものである。
この場合攻撃する側は、攻城兵器を用いて扉の破壊を試みる。
その為に城門の下に多数の兵士を集めないといけない。
そして反撃側は、それを狙って上からの攻撃を行うのが定石だった。

だがそれを外開きにするという事は、攻撃する側は、門を外側に引っ張ればいいのである。
扉にフックなどを引っ掛け、ロープを伸ばし、馬などに引かせて破壊する。
となると攻撃する側は、城に近づかなくていいため、被害も少なく済むのだ。
42
イリレスは数人の兵士に多数のフックを扉の底に引っ掛けさせた。
そして三頭の馬にロープを結び、さらに三十人の兵士達にも引っ張らせたのである。

イリレス
『引け―――――っ!!』

兵士達は掛け声と共にロープを引っ張る。
馬は悲鳴のような嘶(いなな)きを上げて前進しようとするが、前足を仰け反らせ、後ろ脚の蹄が地面に食い込むだけでなかなか前に進まない。

イリレス
『怯(ひる)むな!引け―――――っ!!』

イリレスは更に声を張上げた。
42-1
すると徐々にだが、鉄門が傾き始め、ジリジリと地面から動き出した。
ミシミシと石造りの囲いが、音を立てて崩れ始める。

イリレス
『もう少しよっ!引け――――っ!!』
43
次の瞬間、鉄門は重厚な音を立てて後ろ倒れにりなり、地面に引きずられた。
同時にモウモウと土煙が沸き立つ。
それが収まる前に、イリレスは突撃の合図を出す。
兵士達は土煙の中を前進し、一番手柄は自分の物だと言わんばかりに突っ込んで行った。

が、彼らがそこで目にした物は・・・
44
帝国軍兵士
『イリレス様!!また門がありますっ!!』

イリレス
『なんですって!?』

帝国軍兵士
『この門は・・・内開きですっ!!!』

イリレス
『小癪(こしゃく)なぁ!!』

イリレスは思わず小言を吐いてしまったが、即次なる作戦に切り替えた。
45-1
イリレス
『破城鎚(はじょうつい)を前へっ!!』

偵察隊の話では二枚目の扉の報告は無かった。
少々焦りもあったが、念のために破城鎚を用意させていた事が幸いした。

8人の力自慢な男達が屋根の下に並ぶ。
45-2
彼らは大きな丸太を力いっぱい後ろまで引くと、丸太の重みと8人の体重を込めて力いっぱい前倒しになり、鎚を鉄扉へと叩きつけた。
ガンッ!!ゴンッ!!と重圧感のある音が、トンネル状の内部で響き渡る。
叩くたびに男達の手に痺れが走り、骨の真まで響いていた。
45-3
後ろから兵士達が掛け声を上げ、その都度鎚が扉を叩く。
男達は何度も何度も、鐘を叩くように突きまくった。
傍から見たら既に扉の蝶番が破壊され、徐々にだがズレているような錯覚さえ覚えた。

だが門はビクともしない、それどころか全く倒れる様子さえ見せなかった。
46
それもそのはずである。
城門のカギとは、通常は内側の真ん中に横一文字に分厚い”閂(かんぬき)”をするものなのだが・・・
スカイリム各地には、ノルドの遺跡がいくつも点在している。
遺跡には多数のトラップが仕掛けられている。
この仕掛けの中には、鎖付きのスイッチで上下に開閉する鉄門というのがあった。
この仕組みを利用し、左右に開閉するよう改造。
これを二枚設置し、うまい具合に中央で重なるよう特注で作り上げたのである。
木製で作られた破城鎚は、云わば二重の鉄扉を相手にしなくてはいけなかった。
47
そしてその様子を上から虎視眈々と眺めていたのは、ストームクローク軍を指揮するイオナである。
破城鎚が門の前で悪戦苦闘している姿を目にした彼女は、長方形に成形された”石柱”を落とすよう兵士達に指示を出す。
47-1
イオナ
『落せ――――ッ!!』

ストームクローク兵士達
『うおおおおおお!!!』

全員で天に向かって力いっぱい大声を上げた。
彼らは三本の石柱に背中をあてがい、踏ん張りを利かせ、掛け声とともにズリズリと”石柱”を押し出した。
48
イリレス
『なにっ!?』

帝国兵士達
『あああああああ!?』

帝国兵士達の掛け声が止まる。






48-1
”石柱”は真ッ逆さまへと落ち、激しい轟音と土煙を巻き上げ、破城鎚の屋根を押し潰し、それを真っ二つに破壊してしまった。
二枚目の門の前には、落ちた衝撃で折れた”石柱”と、破壊された破城鎚の大小様々な木片、そして命を落とした帝国兵士達による”ガレキの山”が出来上がってしまった。
帝国軍は、ガレキの山のせいで、城門から侵入する事ができなくなってしまったのだ。

つまりはイリレスの言う通り”開けてくれ”と言っていたのだ。

彼女達は、しばしその様子に茫然としてしまっていた。
48-2
リディア
『突撃イイィ―――――ッ』

ストームクローク軍兵士達
『うおおおぉぉぉっ!!!』

その隙を見て、今度は後方からリディア率いるストームクローク軍が、時の声をあげて突進してきた。
48-3
イオナ
『撃て―――――ッ!!』

同時に城門の上から、イオナが指揮する兵士達が雨霰(あめあられ)と矢を打ちまくる。
48-4
イリレス率いる帝国軍は、前から後ろからと挟み撃ちに合い、ここにきて再び激しい白兵戦が繰り広げられた。
48-5
今まで中立とし争いとは無縁だった街のすぐ外で、凄惨な殺し合いが始まる。
そこかしこと怒号と刃の金切り音が鳴り響く。

帝国兵士
『反逆者に死をっ!!』

ストームクローク
『帝国に呪いあれっ!!』
48-6
イリレスも得意の電撃魔法と剣戟を駆使し、戦いの渦中に飛び込んで行った。
48-7
しかしイリレスの目は、この激しい混戦の最中でありながら、リディアの姿をシッカリと捕らえていた。
その目はまるで、復讐に燃えた一匹のオオカミの様だった。
48-8
実はイリレスは、リディアに一度だけ敗北を期している。

リディアは、バルグルーフに武勇を褒められた事があった。
この事がきっかけとなり、イリレスの逆恨みを買ってしまうのだが・・・

49
ある日イリレスは、我慢ならず彼女との勝負をバルグルーフに申し出た。
彼も余興次いでと考え、木製の剣による勝負を許可したのだが・・・
殆ど刃を交える事もないまま、イリレスが気絶させれていた。

この日から二人の間には、深からずも溝が出来上がってしまう。
50
リディアが、イリレスがバルグルーフの絡んだ事になると、執念深く固執するタイプだと知ったのはこの時である。
まさかこれが原因の一つとして、ホワイトランを反乱軍に奪われてしまうとは、彼女自身も思いもよらなかったであろう。
(第九話)
51
イリレス
『リディアッ!!』

その声に気づき、リディアが振り向く。
イリレスが望んでいる事を察すると、彼女はゆっくりと歩みを進めた。
呼吸を整えると、剣を斜(はす)に構え、イリレスの前に立ちはだかった。






52
一方、フロンガルの隊はホワイトランの城壁に近づく。
壁をよじ登るため、兵士達が鉤縄(かぎなわ)を勢いよく天に投げる。
旨く引っかかった事を確認すると、それを頼りにいそいそと登り始めた。
53
しかし、ある程度登ったところで縄が切断。
兵士はそのまま落下し、岩棚に頭部や全身を激しく叩きつけられ絶命する者が相次いだ。
54
実は城壁の上方には、鋭い刃が設置されていた。
人の重さでピンっと張った縄は、よじ登る兵士の動きに合わせて徐々に刃物によって切られていく。
そのため上階に到着すまでもなく、たやすく切断されるのが落ちだった。
55
フロンガルは急いで梯子に切り替える。
その間にも反乱軍は、城壁の上から雨霰(あめあられ)と矢を飛ばしてくる。
梯子を持った兵士達の先頭の一人が、矢に当たり絶命する。
一人が倒れると、バランスを崩して後ろの人間が梯子の下敷きになってしまい、一瞬身動きが取れなくなる。
その隙を狙って反乱軍は矢の嵐を飛ばしてくる。
隣を行進していた梯子隊が、それを見て肝を冷やすと、走る速度が自然と落ちてしまった。
56
フロンガル
『恐れるなっ!!お前たちは勇敢な帝国兵士だろっ!!アルディスの事を思い出せっ!!』

恐れおののく兵士達をフロンガルは鼓舞した。
57
帝国兵士達
『うおおおぉぉっ!!』

【アルディス死す】
この言葉は、彼の教え子達に衝撃を与えた。
フロンガルは彼の戦死を利用しただけだったが、彼らを奮い立たせるには十分な言葉だった。
58
すると矢など怖くないと言わんばかりに、次々と梯子が壁に立て掛けられる。
フロンガルは兵士の間を駆け抜け、負けじと梯子を上って行った。
59
アルギス
『刺股隊(さしまたたい)!突っ込め――――っ!!!』

ストームクローク兵達
『オオオオオオ―――――ッ!!』
60
最初に到着したのは、アルディスの教え子の一人だった帝国兵士だった。
梯子を上り切った彼は、剣を振り上げ怒声を放つ。

帝国兵士
『アルディス隊長のカタキだぁああ!!!』
61
ストームクローク兵
『そんなもん!知るかぁぁああああ!!!』

同時に刺股を持ったストームクローク兵が、全速力で彼に突っ込んできた。
62
帝国兵士は突進してきた刺股に弾き返され、壁の上から突き落とされる。
63
同時に梯子も後ろに倒された。
梯子に手を掛け、登っていた多数の兵士達も同時に倒れていく。

帝国兵士達(梯子)
『うわあーああーあーあーあ!!!!』

帝国兵士A(下にいる)
『倒れるぞぉおおおお!!!』

帝国兵士B(下にいる)
『逃げろぉぉぉおお!!!』

彼らは群がる帝国兵士の頭上に落ち、巻き添えを喰らう者が相次いだ。
64
それでもフロンガルは梯子を上り切った。

アルギス
『おらぁああっ!!』

だがそこで待っていたは、アルギスによる強烈な戦鎚の打ち抜きだった。
鉄製の鎧が凹む音を含め、見事にフロンガルの鳩尾(みぞおち)に鎚が食い込んだ。

フロンガル
『グハッ!?』

フロンガルは苦悶の表情を浮かべ、あまりの強烈な一撃の為、口から血を吐いていた。
人間ワザとは思えないほど強力な一撃は、巨体のフロンガルを30cmほど砦から外に向かって放り出した。






65
鳩尾の一撃が強すぎて体の自由が利かない。
彼はそのまま間ッ逆さまに落ちてしまい、杭の餌食になってしまった。

帝国兵士
『ひっ!!ヒ――――――ッ!!た、隊長が殺られたぁあ!!!』
66
ストームクローク兵は、壁に寄りかかる梯子を粗方(あらかた)落とすと、アルギスが次なる指示を出した。

アルギス
『網を投げ入れろぉおおっ!!』

67
彼らは、まるで投げ縄漁でもするかのように次々と上空に網を投げる。
空を覆い隠さんとばかりに網が広々と広がった。

下にいる帝国兵達は右往左往し始める。
鉤縄に始まり、梯子を落され、多くの死体が散らばる中、指揮官を失った彼らは、何をしたらいいのかさえ分からなくなっていた。

そこへ更なる奇策である。
たかだか漁師の使う網程度でも、彼らにとっては恐怖以外の何物でもなかった。

67-1
城壁の真下にいた者の殆どが網に囚われてしまった。

帝国兵士A
『なんだこれ?』

一人の兵士が手に付着したネットリした物に気づく。

帝国兵士B
『あ、油だっ!!』

実はこの網には、油を吸わせてあった。
なのである程度の重みもある。
68
アルギス
『松明を投げ入れろぉオオオ!!!』

アルギスの一言で一斉に火の着いた松明が投げ入れられた。
69
油を吸った網に火が付く。

帝国兵士達
『うわああーーーー!!』

69-1
混乱した帝国兵士達の悲鳴が木霊す。

帝国兵士達
『ギャー――――ッ!!』

『たすけてくれぇえええ!!!』

暴れれば暴れるほど網が体に纏わりつき身動きが取れなる。
70
しかしアルギスは更に続ける。

アルギス
『よおぉし仕上げだ!小麦粉をたっぷり掛けてやれぇえっ!』

ストームクローク兵士
『よっしゃー!』

71
ストームクローク兵士
『これでもくらえぇぇっ!!』

小銭袋に小麦粉を入れ、投げる際に紐を解き、下に向かって次々と投げつけた。
小麦粉の粉末はとてつもない引火を誘う。
粉塵爆発(ふんじんばくはつ)である。
72
とどめの一撃ともいえる粉末は、瞬く間に炎の勢いを増し、帝国兵士達を忽(たちま)ち覆い尽くした。
群がる兵士達は、慌てふためき逃げようとするが、方向性を失い目の前の味方が邪魔で動こうにも動けない。
72-1
更に網に引っ掛かって、火達磨になる者が後を絶たなかった。
やがて彼らの悲鳴すら聞こえなくなり、次々と命を落としていった。
73
その様子を後方で控えていたテュリウス達が目にする。
今まで見た事も無いような炎の壁に、驚きを隠せずにいた。

バルグルーフ
『なんなんだあの炎は?』

テュリウス
『くっそぉお・・・また火計か』

テュリウスは歯を食いしばった。

しかしここに来て、まさか後方に控えている自分達にまで被害が出ようとは思いもよらなかった。
73-1
ホワイトランには新たにカタパルト専用道路が設けられていた。
これにより遠方射撃が可能になる。
最終的には屋根を建設する予定なのだが・・・
74
ポエット
『放てぇえええっ!!』

ポエットの渾身の号令が、ストームクローク兵達の耳に入る。
彼らは待ってましたとばかりに、カタパルトの縄を次々と切り裂いた。
74-1
すると炎の塊が長い煙の尾を引き、空高く弧を描くように遥か彼方の前方に次々と飛び出していった。
75
テュリウスとバルグルーフは目を疑った。
その光景はまさに隕石による流星群、いやそれよりも遥かにリアルだった。
テュリウスは咄嗟に口にする。
76
テュリウス
『くっそ!後退しろ!!退け退けぇっ!!!』

慌てて帝国軍は踵(きびす)を返す。
だが上空の炎の塊は、まるで自分達を狙っているかのように追い掛けてきた。
77
帝国兵士達
『うわあぁあああぁ!!』

轟音と共に着弾するたびに、周辺に拡散するように炎の爆発が起こる。
この爆発と火災で、吹飛ばされる者、火達磨になる者が相次いだ。
78
気が付けば、テュリウス達はグレイムーア砦の近くに位置する廃家(はいか)まで退いていた。
思わず後ろを見やった時、背筋がゾッとした。

どんな戦であっても、ある程度のリスクは承知の上でなければならない。
ホワイトラン陥落に始まった出来事、そして予想もしなかったアルディスの死とグレイムーアの崩壊。
次々と目に入る奇策は、一層の警戒心を持たせた。
今までなら大軍を見せられれば、どんな相手でも一瞬だって怯(ひる)むはずだった。
79
だがどうだろう、ナディアを慕う者達は、怯むどころか果敢に立ち向かい、さらにはそれを容赦なく叩き潰す。
まるで大軍など気にもかけていない様子に、テュリウス自身が恐怖に打ちのめされそうだった。
80
彼はリッケに言った。

テュリウス
『退却の合図を出せ!』

リッケ
『え?・・・ですが将軍、まだ始まったばかりです・・・』

リッケの言う通り、ホワイトランにおける最初の攻城戦は、2時間も経過していなかった。

テュリウス
『今回は様子見だ。
無理強いをして、貴重な兵を失うわけにはいかない』
81
グレイムーアの出来事もあるので、敢えて策略を用いず正攻法で攻めていた。
実はこれには意味がある。
反乱軍が時間を稼ぎたいがために、睨み合いを望んでいるのは明らかだった。
その為のホワイトランの強化である。
時間稼ぎをさせないためと言うのはもちろんなのだが・・・

彼が一番に知りたかったのは、新しいホワイトランがどれほどの防御力と攻撃力を備えているのか?
という点である。
現時点では大雑把にしかわからないが、相手の事も解らないまま次の行動はできない。
闇雲に策を弄(ろう)すると、かえって分かり難くなるだけだからである。

だがこれらの全ては、ポエットの睨んだ通りだったw
82
リッケは兵士に角笛を吹かせ、ホワイトランに攻め込んでいる二隊に合図を送った。






83
バルグルーフ
『将軍、考えたんだが・・・・ワザと長期戦に持ち込んだらどうだろうか?』

テュリウス
『流通を阻(はば)ませるつもりか?』

バルグルーフ
『そうだ!流通を滞らせれば物資の搬入が無くなる。
そうなればあの街は、急激に力を失うはずだ!』

テュリウス
『残念だがそれは意味がない』
84
バルグルーフ
『どうしてっ!?』

テュリウスは”それはお前が治めていた時の話だ”と言いたかった。
85
バルグルーフは、言ってしまえば”お飾り”、あるいは”成り上がり”のような首長である。
驚異的なバランス能力があるとは言うが、彼はまた”短気”あるいは”気性が荒い”という性格で有名であった。
彼の傍にいたフロンガル及びイリレスを見れば、単なる”猪”と表現されてもおかしくない。
恐らくはもう一人、バルグルーフが殺されたと言っていた”プロベンタス”という執政が、非常に秀逸だったと考えられる。
86
テュリウスは昔、まだ内戦が起こる前の話だが、一度この街を訪れた事があった。
城門前は広々としており、街中には市場まで続く幅広のメインストリートがある。
階段を上がればギルダーグリーンと呼ばれる大樹が、広場の真ん中に設置され皆の憩いの場となっていた。
87
更にその上にあるドラゴンズリーチは、豪勢とまではいかなくとも、立派な木造建築の城が高々とそびえ立ち、天井に上がれば階下の動きを見下ろせる程に素晴らしい物だった。
だがテュリウスは思った”ずいぶんとこじんまりしているな”と。
88
ホワイトランは中立だったが故に、内戦においての争い事は殆ど無縁状態だった。
その為バルグルーフは、使い道の殆ど無い税金をドラゴンズリーチ内に貯めこんでいた。
”もしものため”という名目で。
この街が多くの人の出入りがあるにも関わらず、さして変化が見られないのは、バルグルーフ自身が変化に対して抵抗感を持ったせいである。
(実際はゲームなので変更のしようがないw)
89
だがホワイトランという城塞が、これほどまでに急激に変化を遂げる事ができたのは、彼が貯めこんだ税金をポエットがうまく使い回したからだ。
仮に流通が滞ったとしても、仕事があり、食べる物があり、給料さえきちんと払えば人は集まってくる。
恐らくはそれらの人々を使い、高給を払ってあの城塞を急ピッチで作り上げたのだろう。
と同時に市民からの信頼を得る事ができる。
もしもあの城壁に穴でも開けようものならば、反乱軍だけではなく市民まで敵に回しかねない。
90
テュリウス
『時間稼ぎは向こうに利するだけだ
反乱軍とてそれをよくよく考慮しているはず。
恐らくは、あの街を出入りする商人達から多量の買い占めを行ったはずだ。
物資など、倉庫に有り余っているに違いない』

バルグルーフ
『なんでそんな事がわかる?』

テュリウス
『その為のホワイトランの強化だ。奴らは最初(はな)から時間稼ぎを狙ってるんだよ』
91
テュリウス
-自分が治めていた街だというのに、この男はこんな事も解らないのか?-

テュリウスはバルグルーフに少々苛立っていた。
彼は志こそ一緒なのだが・・・

バルグルーフ
『まさか・・・あの金庫を開けたのか・・・?』

バルグルーフはボソッと呟いた。

テュリウス
-ホントにあったのか!?w
大方の予想だったのだが・・・
私がわかるという事は、ポエットも分かるはずだ-

テュリウスは少々驚いたが、呆れてモノが言えなかった。
とはいえ、今はこの男を感情的にさせても意味がない事も理解していた。






92
ホワイトラン城門前にて・・・

両軍入り乱れての混戦だったにも関わらず、帝国、ストームクロークどちらの兵士も手を止め、その決闘に魅入ってしまっていた。
93
二人の女の戦いは、未だに続いていたのだ。
彼女たちは、既に数十合と刃を交えたおかげで荒息が目立ち始めていた。

93-1
だが地面に刺した剣を頼りに膝を落としていたのは、やはりイリレスの方だった。
リディアは、イリレスを実際に見下(みお)ろしてはいるが、思った以上の上達ぶりに少々驚いていた。
一方イリレスは、負けたその日から只管(ひたすら)に続けた訓練の成果が見られず、再び悔しい思いを噛みしめていた。
のだが・・・






93-2
瞬間、ダークエルフ特有の赤い目が光る。

イリレス
『フンッ!!』

窮鼠猫を噛む。
彼女は闇雲に剣を前に突き出した。
”負けたくないっ!”その思いだけを剣の刃先に込めて。






93-3
偶然とも思えるその刃先は、見事にリディアの左胸を突き刺していた。






94
彼女は言葉無く、そのまま後ろに倒れてしまった。
夥(おびただ)しい血液が地面を真っ赤に染める。
リディアは血を吐き、痙攣をおこし始めていた。
95
ストームクローク兵達
『隊長ぉぉぉ~!!』

驚いたストームクローク兵達が、一斉に彼女に駆け寄って行く。
96
イリレスはスクッと立ち上がり、一呼吸おいてから剣を背中の鞘に納めると一号した。

イリレス
『退却するわよっ!』
97
彼女は去り際、一瞬だがストームクローク兵達が群がるリディアの方に目を向けた。
確かに自分は”勝者”だった、だが何故か妙な不安が脳裏を過った。
しかし今は・・・

”敗者に掛ける言葉は無い”

イリレス率いる帝国軍は、そのまま退却して行った。






112
その夜、帝国軍本陣では・・・

バルグルーフは、フロンガルの入った石棺に泣き崩れていた。
イリレスも傍に寄り添う。
彼は弟の棺の前で固く誓う。
113
バルグルーフ
『弟よっ!俺は必ずお前のカタキを取るっ!
あのガキどもには、己の血で償わせてやるっ!!』
114-117
テュリウスとリッケも、少し離れた所でその様子を眺めていた。

テュリウス
『あの男をどう思う?』

彼は声を窄(すぼ)めてリッケに呟いた。

リッケ
『バルグルーフですか?』

テュリウス
『そうだ』

リッケはテュリウスが、奇妙な疑念をバルグルーフに持ち始めていた事を察した。
115
リッケ
『バルグルーフは、バランス能力の高い人物だと評価されています。
中立であるホワイトランを旨く回せていたのは、彼の能力の高さからと言えるでしょう。
また仲間意識が強く、人望も厚い人物だとも評価されています。
彼の嘗ての豪胆さと勇敢さを目にしている者は、彼を今も支持し続けています。
ウルフリックも、彼には一目置いているようです』

テュリウス
『それはお前の評価じゃないだろう?』

リッケはテュリウスを見やった。
彼もそれに気づく。

テュリウス
『・・・らしくない事を言うな』
115-1
一呼吸置くと再び口を動かし始めた。

リッケ
『・・・そうでしたわね・・・私個人としては、短気で感情的。
まさにノルドの性格そのものを表現していると思います。
恐らくですが、プロベンタスという執政は、かなり優秀だったのではないかと・・・
ホワイトランあってこその彼ではありますが、ホワイトランから離れれば・・・只の”人”ですかね』

リッケは最後の部分で言葉を選んだ。
”成り上がり者”と明言したかったが、それは流石に避けたw
115-2
テュリウス
『ふぬぅ~』

リッケ
『しかし・・・どのみち我々にとって、ホワイトランを治めるにはあの男が必要なのも事実です』
116
テュリウス
『切ろうなどとは思っていない。
我々とてアルディスを失っている。
・・・だが今は戦時だ。
一人の将の死に涙など流していたら、それこそ相手に付け込まれかねない。
それがたとえ親兄弟だとしてもな・・・』

テュリウスの表情は、いつの間にか厳しくなっていた。
だがその目は、どこか悲しげでもあった。
114-117
テュリウス
『気になったのは”牙”だ』

リッケ
『牙?』

テュリウス
『バルグルーフが豪胆で勇敢であったのは知っている。
だが今の奴を見ると、”牙を折られた虎”・・・
そんな風に見えてな』

リッケ
『ホワイトランで甘い汁を吸い過ぎていたと?』

テュリウス
『かもしれんな・・・』
119
テュリウス
『ハドバルは、ロリクステッドに着いたか?』

リッケ
『つい先ほどシピウスが本陣に到着したようなので、すでに着任しているかと・・・』

テュリウス
『よし、シピウスに500の兵を与え、ファルクリースに攻め入るよう指示を出せ』

リッケ
『分かりました』

テュリウス
『油断はするなと伝えておけ』

リッケ
『了解です』
120
しかしそこへ、伝達兵が駆けつける。

伝達兵
『将軍!大変ですっ!!』

テュリウス
『どうした?』
123
伝達兵
『マルカルスがフォースウォーンによって包囲されたとの事ですっ!!』

テュリウス
『なんだとっ!?』

リッケ
『何ですって!?』
124
テュリウスは、またも地団太を踏む結果になった。
彼は苦々しい表情を見せ、腕組をしてしばし考えに耽(ふけ)った。

テュリウス
-しまったっ!交代要員を作ったのは時期尚早だったか・・・
マルカルスは天険の要害だ。
多数の兵を連れても、地形を理解している者でなければ手痛いシッペ返しを喰らう事になる-
125
リッケ
『リーチ周辺には多数の巡回兵がいるはずです・・・
今頃になってフォースウォーンが、何故マルカルスを包囲できるのです?』

リッケは疑問符を浮かべながらテュリウスを問いただす。
彼はため息をついた。

テュリウス
『奴らの活動が収まった事を理由に、巡回兵を使い交代要員を作った。
実際、警戒網が緩くなっている』
126
リッケ
『なんてことをっ!あれほど私が口を酸っぱくして言ったじゃないですかっ!?リーチ周辺は警戒を緩めるべきではないとっ!!』

彼女はいきり立った。
さすがのテュリウスも焦りを隠せない。

テュリウス
『分かっている!だがこれには理由があるのだ!』

リッケ
『どんな理由ですかっ!?』
127
テュリウス
『シロディールからの援助が滞っているだろ』

リッケ
『だから軍備の節約をし、已む無くシルバー・ブラッド家との取引をしているのですよねっ!?』

テュリウス
『そうだ。
だが先日、銀の取引量が減少していると報告を受けた。
得る物が無ければ、我々とて多くの兵を養っていく事ができなくなる』

リッケ
『いったいいつの話なんです!?』
128
テュリウス
『ヴィットリアの式の最中だ。
アデライサによると、シルバー・ブラッド家の者から直接話を聞いたとの事だった』

自分が不在だった事に、リッケはため息を漏らした。
129
実は、アデライサが話を聞いたというこの人物は、”鼻効きネポスの親族”と呼ばれている連中である。
ネポスはマルカルスに住む一族で、シルバー・ブラッド家の帳簿係であり、シドナ鉱山からマダナックを脱獄させた調本人であり、そして根っからの”フォースウォーン”である。
130
アデライサは、ウィンドヘルムにて東帝都社の倉庫の管理を任されていた帝国軍人である。
ウィンドヘルムから撤退した後に、ソリチュードの東帝都社の倉庫を任されていた。
彼女が赴任したばかりだったという事もあるが、テュリウスがこの話を真に受けたのは、彼女が同族のインペリアルであり、将校クラスの人物だったからである。
(第十一話EP3)
131
遠征軍である帝国軍は、資金繰りにかなり頭を悩ませていた。
スカイリムの北部は、作物を育てる場所としては全くの不向きであり、何かを作り上げるという力が弱かった。
なので確実な物としては、各鉱山から産出される鉱物がメインとなってくる。
それでも帝国軍には、シロディールという巨大なバックがあるおかげで、今までやってこれていたのだ。
シロディールからの物資船は既に出発しており、到着まであと数日だとは聞いていたのだが・・・
ウィンドヘルム、ホワイトランと転戦に次ぐ転戦だったせいもあり、その消費量が多くなっているのも事実だった。
132
リッケは少々呆れ気味だった。
だがテュリウスが資金繰りに苦しんでいた事も事実だったので、これ以上の攻め口調ができなかった。

リッケ
『私が行きましょう』

彼女はかつてウルフリックの元に席を置いていた。
マルカルス事件においても、同行していた経緯がある。

テュリウスは申し訳ないという気持ちもあったが、同時に適任とも思えた。

テュリウス
『どのくらいの兵が必要だ?』

リッケ
『できれば500は』

テュリウス
『ならば1000貸そう。
お前がロリクステッドに連れて来た兵を使うといい。
それと副将にシピウスを連れて行け!』
133
リッケ
『えっ?ファルクリースはどうするのです?』

リッケは一瞬同意しかねた。

テュリウス
『余計な事は考えるな。お前はフォースウォーンの制圧の事だけを考えろ!』

リッケ
『しかし・・・シピウスは・・・』

彼女としては珍しく、シピウスの過去の行いを気にしていた。
134
テュリウス
『お前を指揮官に任命する!
シピウスが命令違反をするようであれば、お前の判断で切り捨てろ!』

リッケ
『了解しました!』

リッケは少しホッとした。
スカイリムに来たばかりの彼とは、明らかに違って見えたからである。
135
テュリウス
『それともう一つ』

リッケ
『何でしょう?』

テュリウス
『10日以内で決着を付けろ』

136
リッケ
『と、10日!?・・・ですか・・・?』

リッケは焦る。

テュリウス
『そうだ。
リーチは天嶮の要害だ。
日足から見れば既にフォースウォーンには一日以上の余裕があり、そして奴らには地の利がある。
下手をすればマルカルスは落ちている可能性が高い』

リッケは怪訝そうな表情を浮かべる。

リッケ
『マルカルスがたった一日で落ちたと・・・?』
137
テュリウス
『あの街は一枚岩じゃないからな』

リッケ
『10日以上経過すると、どうなると言うのです?』

テュリウス
『守りを固めて容易には落とせなくなるだろう。
そうなれば、ホワイトランよりも先にリーチを優先しなくてはいけなくなる』

それはつまり、ホワイトランから撤退を余儀なくされるという事である。
138
リッケ
『わ、わかりました・・・』

思った以上の厳しい状況に、彼女自身肝が冷える思いだった。
139
テュリウス
『リッケ!!』

テュリウスは彼女の目を凝視した。
そして口元を振るわせて言葉にする。

テュリウス
『死ぬんじゃないぞ!』

彼なりの精一杯の声援であり、そしてその言葉には千の意味を込めたつもりだった。

だが常に傍にいたリッケには、彼が本当に言いたかった事が理解できた。
そして同時に、これ程の勇気付けられた言葉は経験した事がなかった。
何故なら、プライドの塊のようなテュリウスが、自分に対し初めて心の内を口にしてくれたからである。
”すまない”と。
140
リッケを大将としシピウスを副将とした1000の帝国軍は、その日の夜のうちにマルカルス救出へと出発した。
彼女は、今まで経験した事のないプレッシャーを感じていた。
筋違い、お門違い・・・そんな事は百も承知だった。
だからこれ以後、迷う事を止め、今まで以上に自分自身に厳しくなるよう誓った。
テュリウスとの約束を守り、フォースウォーンを撃退するために。
141
テュリウスは、何人かの小隊長を呼び、バルグルーフとイリレスも交え、今夜中に本陣を山の裏手に移動するよう指示を出した。

本来ならば反乱軍の戦力を割くはずだったのだが、フォースウォーンのせいで逆に兵を割く結果になってしまった。
今までの事もあるので、この事もポエットの策略なのでは?と疑いさえした。
142
テュリウスは幼い頃から”負けず嫌い”だった。
逆境など何度も経験しているのだ。

だが経験を重ねるたび、”負けず嫌い”では勝てないと言う事を知った。
重要なのは”負けん気が強い”事と”底知れぬ強(したた)かさ”である。
これが逆境を跳ね除ける力になるのだと。
だからこその今までの失敗だった。
143
テュリウス
-マルカルスの事が、貴様の仕業だろうが何だろうがどうでもいい。
私はこれでも軍神と呼ばれる帝国軍の将軍だ!
見ていろ!
今度はこっちがお前を引きずり出してやるっ!!-

彼は己のプライドを掛け、ポエットとの駆け引きに応じる決断をした。






144
ウィグナー
『ストームクロークには問題は山積みじゃ、今更一つくらい増えた所で、驚きはせんわい』

オルフィナ
『それで・・・致命的な問題って?』
144-1
ポエット
『それは・・・未だストームクローク軍の殆どが、単一の種族で構成されていると言う事です』
145
ウィグナー
『ノッ・・・ノルドの事を言っとるのかっ!?』




ポチットお願いしますm(_ _)m

◎兵数について
今話で初めて兵数の実数を公開しました。
リッケがホワイトランに進軍した時から、兵数を少しずつ明らかにさせてはいたのですが・・・
実は、かなり前から両陣営がどのくらいの兵数であり、またどのくらいの大差があるのかという事をだいぶ悩んでいました。
ポエットがリフテンから兵を借り受けた時には、2000人くらいが妥当なのかな?なんて感じで想像して・・・

今までキチンと公開しなかったのは、スカイリムにおける全人口の総数がわからない事、作者が戦争体験者ではない事、基本的に参考としているのは三国志演義の方である事などなど・・・
挙げれば結構あるのですが、慎重になっていたと思っていただければ幸です。

では今回、何故?公開したのかと言うと”ある種の限界を感じた”からですw
どうせ戦争を表現したいのなら、勢いがあって、激しくて、それでいてワクワクするようなモノを表現したい!!
そんな思いから実数の公開に踏み切りました><;

自分なりには様々に考慮した結果の妥当な数値だと考えております。
お読みなられる方々には『???』など疑問符を多数持たれる方もいるかもしれませんが、あくまでフィクションですのでご容赦くださいm(_ _;)m

◎グレイ―メーン
ゲーム上の内戦クエストをストームクローク側で終えると、ホワイトランの首長はバルグルーフに変わり、ウィグナー・グレイメーンがその座を奪う事になります。
SOSではクーデーターの際にナディア達がホワイトランを奪い、その時点で交代という形にしています。
ウィグナーはグレイメーン家の家長であり、そして彼の従士として立つのが娘のオルフィナ、執政となるのがブリルです。

ウィグナーはブリルの恩人らしく、執政になると酒を絶ったともっぱら話すようになります。
彼が執政になる前は、日がな一日ウィグナーと一緒にジョルバスクルにてプラプラしているようですが、特に同胞団と深い関わりがある訳ではないようです。
ウィグナーの弟のエオルンドも同胞団ではなく、彼の作るスカイフォージの刀剣が、同胞団御用達となっているだけで、その繋がりからなのかもしれません。

◎偽兵の計
SOS本編におけるブリルの言う通り、そのままの計略です。
ファルクリースはスカイリムでは珍しく、多くの木々による緑に囲まれた自然の中にある町であり、また地形も高低差が激しいので非常に有効な策と言えます。
今話では帝国軍のファルクリースへの介入が一旦お預けになりました。
テュリウスはどうするのでしょうか?

なおこれも兵法三十六計の一つらしいのですが、この兵法書自体が寄せ集めの兵法書らしく、結構いい加減なところもあったりするそうです。

◎城門の外開きの弱点
城門を外開きにすると、攻撃側は門を開けるのではなく、逆に門の前に物を置いて開けられないようにし、閉じ込める事ができる。
殆どの場合これが最もな要因とされているとの事。
SOSにおける今回の作戦は、ストームクローク側としては誘導であり、帝国側にしてみれば攻め込む事が目的だったので門を破壊しました。

◎粉塵爆発(ふんじんばくはつ)
一定の濃度の可燃性の粉塵が大気などの気体中に浮遊した状態で、火花などにより引火して爆発を起こす現象。
炭鉱で石炭粉が起こす粉塵爆発が代表例。
しかし小麦粉や砂糖(粉糖)、コーンスターチなどの食品、あるいは金属粉(アルミニウム)などあまり一般に可燃物・危険物と認識されていない物質も爆発を引き起こす。
発火する条件としては、粉塵雲、着火元、酸素の3条件が必要である。(Wikipeda)

スカイリムには幸いにも多量の小麦粉が生産されています。
今回はこれを利用しましたw
非常に危険です。
ものすごい着火能力を持っています。
本当に危険です!!!
火の近くで小麦粉などを扱う作業する場合は気を付けましょう。

◎ハドバル
スカイリムのオープニングに登場する帝国軍兵士。
ヘルゲンにてアルデュインの襲撃の際、脱出を手伝ってくれる人物。

SOSではアルディスの後任としてソリチュードにて衛兵隊長を拝命された設定です。
一応帝国軍がウィンドヘルムへ侵攻した際には、アルディスは既にテュリウスと同行しているので、この時点からの隊長職となっています。
しかし、アルディスがグレイムーアにて名誉の死を遂げたため、急遽ロリクステッドの指揮官として配属され、交代にシピウスを現在の本陣に移動させました。
言ってしまえば破格のスピード出世を遂げているかもしれませんw


◎鼻効きネポスの親族
SSに映っている中心の人物がネポス本人ではありますが、後ろの三人とは実際どういう関係なのかはわかりません。
ゲーム内での真ん中の女性は、侍女と名乗っているので、実際には親族ではないようです。
SOSではシルバーブラット家との癒着感を深い物にしたかったので、”鼻効きネポスの親族と名乗っている連中”と表現しました。

◎アデライサ・ベンディッチ
本来ならばウィンドヘルムの東帝都社を任されている帝国軍人。
SOSではウルフリックの強引な政策のおかげで、雇用していた者を投獄され人手が無くなってしまった。
その為にウィンドヘルムには居られず、ソリチュードの東帝都社に撤退する事に。
彼女はヴィットリアの元で補佐を務める事となり、今回はヴィットリア本人が結婚式だったので、その代役を務めていた。

ゲーム上では、クエストクリア後フォロワーになってくれる貴重なインペリアルでもある。

◎【負けず嫌い】と【負けん気が強い】

【負けず嫌い】
他人に対して負けることを極端に嫌う人。
負けん気が強いとは別で、その対象は【他人】となるため、自分に甘く人に厳しいと言える。

【負けん気が強い】
何故負けたのか?何が足りないのか?などを自分自身に問い詰め冷静に判断し、自分に厳しい人。
負けたくないという気持ちは強いが、それを感情的にあまり表さず、心の中で強い思いを秘めている人。

どちらも他人を勝手に勝負の対象にするので、迷惑な人とも解釈できる。
だが反面、この感情をコントロール出来れば、競争心や闘争心となって努力にも繋がる。