大変お待たせいたしました!
ようやく第十七話EP1の公開でございます。
何とか年内に公開できた><;

今回のお話は、シロディールから来る輸送船護衛のお話です。
スカイリムの北海ゴーストシーは海賊の出没が頻発しており、各領主たちの悩みの種になっていました。
ウィンドヘルムで東帝都社の支社を任されていたアデライサ・ベンディッチは、この問題に苦悩し最終的に閉鎖に追い込まれてしまいます。
その後ソリチュードの支社と併合する形で続投するのですが...

今回の輸送船はブルーマのカーヴェイン家が受け持ち順となり、巨大なフリュート船で一ヶ月以上旅を続けてようやくスカイリムに到達しました。
この船の護衛の為にアデライサ達が動き出します。
果たして彼らは、無事に輸送船をソリチュードに入港させる事ができるのか?
こうご期待なのだ( `ー´)ノアフゥ!

十七話ではこのお話をEP1~EP3に分けて順次公開していこうと思います。
はじめてお読みなる方はSOSの第十四話EP1前篇後編第十五話EP2第十五話EP3を一読していただけるとより楽しんでいただけると思います^^

それではお楽しみくださいなのだぁヾ(*´∀`*)ノアフゥ~










1









3
船は順調に航路を進んでいた。
ここはスカイリム北方の海域ゴーストシー。
通称【亡霊の海】
近年海賊の襲撃が頻発しており、最も警戒しなくてはいけない地域の一つである。


4
目の前に幾つもの氷山が乱立している。
大小様々な流氷が静かに動きつつ船の進行を妨げる。
おかげで進路が限られしまい、船は水上をゆっくりと滑り、時に氷塊を砕きつつ進んでいた。



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船主のプラウティス・カーヴェインは、二日ほど前からよく眠れずにいた。
それというのも、目的地に近づくほど商船が狙われ易いからだ。
いかなる出来事も具に観察し、微妙な変化も見逃してはいけない。
不眠による注意力散漫はよくない事も知っているのだが、今回の渡航はカーヴェイン家の復権も懸かっていた。


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サロニア『チマチマチマチマって...ホントにイライラするわっ!早く陸に上がってお風呂に入りたいのに!』

妻はそんな不安など露程に感じ取ってくれそうもなかった。









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船員A『プラウティス様!船が見えます!』

船員の指さす方向に船の姿が。

プ『何の船か先に確かめないと。全員でよく目を凝らすんだ!』

甲板に緊張が走る。
もしその船が敵船なら、早々に進行方向を変えて逃げなければいけない。
この船は軍船ではないからだ。


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小豆色のマストに船のシンボル...

船員B『あれは...東帝都社の船だ!』

プラウティスは安堵のため息をついた。

プ『おそらく案内船だな』


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プ『錨を降ろして船の速度を落とすんだ。戦士ギルドの者は船の縁に集まるように。旗の用意もして照会の準備だ』

船員達『アイアイサー!』


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彼の号令と共に甲板は慌ただしくなる。
それもそのはず、シロディールから船で丸一月。
上陸する機会が全く無かった彼らには、土の有難みが恋しくなっていた。


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プラウティスは、戦士ギルドの連中を船の周りに立たせ威風堂々と見せつけた。
この船は軍船ではないが、それなりの虚勢を張る事で積み荷の安全と自信の現れを表現するのはある種の慣例とも言える。




一方東帝都社側では...


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オルサス『おぃ...帆が二つ...まさか、あれが本当に..シロディールからの輸送船なのか?』

オルサスは目を丸くして言った。

アデライサ『ブルーマの紋章がある。間違いないわ』


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オ『そりゃ分かっている。でも...あんなでかい船で来るなんて...』

ア『カーヴァイン家は200年前のオブリビオン襲撃で貿易業に大ダメージを負ったわ。
ナリナ女伯爵の骨董かぶれが原因だっていう噂もあったけど、プラウティスは紛れもないその子孫で、今でもカーヴェイン家を支えようと躍起になっている』

没落貴族として貿易商の間では悪例となっていたりもするが、反対に彼の意思を尊重している者もいる。
オルサスも噂は耳にしていたが、都会から渡航してきた貴族の落差に思わず舌を巻いてしまった。


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アデライサは船員に小舟の用意を指示した。

オ『何もお前が行かなくても...』

部下にやらせればいいと提案したのだが...

ア『この仕事は最初から最後まで私がやるべきなのよ』


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彼女はソリチュードでは有名人だった。
元々ウィンドヘルムの支社をまかされていたのだが、地元の同業による妨害、度重なる海賊の略奪、帝国軍によるウィンドヘルムへの攻撃のおかげで働き手まで失ってしまう。
やむなく事業を畳みソリチュードに戻る事になったのだが、今度は会社の責任者でもあるヴィットリア・ヴィキが暗殺されてしまう事態に。


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ヴィットリアは富裕層からの高い支持を得ていた。
なので市民には公平という皮をかぶった偏見を持つ者も少なくない。
故に誰かにこの責任を押し付けないと収拾がつかない事態になっていた。


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その的になったのがアデライサである。
他所から来た彼女は格好の餌食だった。
いくらエリシフが代替えの首長だからといって、分別の無い人物という訳ではない。
寧ろ名誉挽回を図らせ、窮地から脱するのに手を貸してやった。
それだけにアデライサの心境は複雑でもあり、どうしても失敗できないのだ。


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彼女は二人の共を連れ小舟で輸送船に近づいた。
確認作業の殆どは無言で行われるのが通例だ。
極寒のゴーストシーは、氷山が多く伏兵にピッタリな場所があちこちに散在している。
氷は音が響く為、どこで誰が聞き耳を立てているかわからない。


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その為、情報のやり取りは矢文によって行われる。
最初の矢は船の縁に打ち込まれる。
乗船している船員達に当たらないようにする事ともう一つ。
これには諸説もあるが、もしも輸送船が偽物だった場合、小舟が逃げる時間を稼ぐ為だともいわれている。


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最初の文には案内役の身分証が結われている。


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確認した船主は、今度は自分がどこから来て何の船なのかを証明する為に、地域と役職そして目的を記した照会旗を広げて見せる。
殆ど場合ここで終了となる事が多い。



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なので二本目以降の矢は、その時々によって放たれる。
主に今後の航路の予定図や注意事項などが結われている為、初顔合わせや変更でもない限りあまり打つことは無い。








作戦室にて...


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アデライサは、元海賊の力を借りる事で不足していた護衛の任務にあたる事になった。
エリシフの許可は得たものの、彼女の信用は完全ではない。
それは彼女も含め社員全員が同じであった。
しかし、物資をはじめ人員不足では選択の余地もない。
止む負えず彼らの望みを受け入れ、東帝都社の社員とし輸送船の護衛に了承させた。


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レッドウェーブの船長であるサフィアは、ゴーストシーでの三傑の一人と囁かれている。
それだけに海域の特徴を知り尽くしていた。

サフィア『作戦はいたって単純だよ。案内船と輸送船の北側に護衛船を配置し、そのままソリチュード港まで向かうっていう寸法さ。陸側は"背むし"が抑えているって話だから問題ないんだろ?』


25-1
案内船はアデライサ率いる東帝都社が...



25-2
護衛船はサフィア率いる元海賊団が...


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そして"背むし"とはエリク―ルの事である。
サフィアはこのエリクールを個人的に嫌っていた。
当然だが、それぞれに役割を持たせる事で被害を最小限に抑えようという作戦である。


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サ『あんた達も知っての通り、亡霊の海っていうのは海図がいつも同じじゃない。あちこちに氷山があって、その殆どが波で流されている。
それに加えて流氷だ。下手な道を通るとすぐに袋小路になってしまい、その後は立ち往生するか格好の獲物になるしかない』

彼女は聞き耳を立てる者に目を配りつつ、手を叩いたり蛇行させたりと色々な仕草を見せてくれた。

サ『だから案内船と輸送船は、予め定めた航路を進んでもらう必要がある』

海賊被害が頻発する大きな要因ではあるのだが、しかしそれ以上に恐ろしいのは動けなくなる事なのだ。


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サフィアは地図に描かれたルートを指し示した。

サ『あたしらはその周囲を警戒し、二隻の船が無事にソリチュード港に入るまで護衛するよ』


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アデライサ『海賊達の当たりは付けてある?』

アデライサは難しい表情で問い詰める。

サ『ここと、ここと、ここ。ハルディンが見張りを置くなら多分このあたりだな』

ハルディンとは三傑の一人であり、唯一テュリウスに歯向かった海賊の船長だ。


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オルサス『多分?...偵察してないのか?』

サ『あんたさぁ~さっきのあたしの話、聞いてなかったのかい?』

オ『?』

サ『氷山は常に動いているんだよ。どこに伏兵がいるかなんて、実際はわかったもんじゃない。予測するしかないのさ』

オルサスは目を丸くする。



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サ『それにこのゴーストシーは、帝国軍が懐柔策を取って以降、殆どがブラッド・ホーカーズのシマだ。こんなところに輸送船を通すって言うんだから容易な話じゃない』

ア『ちょとまって...将軍が懐柔策を取ったのは最近じゃないわ...随分前の話よ。その間にも輸送船は何度か来ているはず...いったいどうやって通したの?』

サ『...聞いていないのかい?』

オ『聞いてないって...どういう事だ?』


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サ『そこにいる古参に聞いてみな。あたしが話すよりずっとリアルだろうよ』

ア『一体どういうこと?』


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古参の船員『えっと...ヴィットリア様は本社に対して水増し請求をしていたんです』

ア『水増し?』

古『対外費という名目で、船を襲う連中に毎月一定の額や物資を支払って航海の安全を保障させていました』


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オ『賄賂じゃないか!』

ア『どうして言わなかったの?』

古『その...慣例事項だったので、すっかり伝わっているモノかと...それに...これは宮仕えの方々のお話なので...』


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ア『...表に出ないのね』

アデライサはため息を漏らす。

オ『そんな時間もなければ、余裕もないぞ...』

腕組すると自然と額の皴も増えた。


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オ『どうしてもっと早く言わなかったんだっ!?』

オルサスはテーブルを叩き、船員ではなくサフィアに食って掛かった。


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サ『あたしが話す訳がないだろうっ!』

オ『どうしてっ!?』

サ『これは公然の秘密だ!海賊だったあたしらが口にすれば、何だかんだで原因を押し付けて翌日には縛り首だっ!』

上流階級の有様を知っているだけに、アデライサにとっても十分あり得ると思えた。
彼女は自分や仲間の命を守ったに過ぎない。


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ア『やめなさい!私たちは今同じ船に乗っているのよ!』

オ『くっ...』

オルサスは唇を咬む。


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サ『あたしらはあんたみたいに浅はかじゃやっていけないんだよっ!』

オ『なんだと!?』

ア『もういいわ!...それより、もし賄賂を渡さなかったらどうなるの?』


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サフィアは一呼吸置いてから話し始めた。

サ『...あいつらにとっては予定外の出来事だ。耳に入ってない荷物が目の前を通れば、そりゃ餌以外のなんでもないだろうな』

厳しい返答だ。

ア『戦闘になると?』

サ『避けるのは難しいね』


49
サフィアはまるで他人事のように話をする。
実際に戦いになるとしたらその矛先は自分達だというのに、その様子が矛盾して見えた。


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アデライサの嫌疑の視線を感じたのか、彼女から更に言葉を綴る。

サ『今回はヴィットリアが死んでから初の輸送事業だ。
最もハルディンだってこの事は知っているだろうし、奴にとっては後釜のあんたがどう出るか興味深い所だ。
まぁ、今回は無視してもせいぜい小規模戦で終わるだろうよ』

ア『ふむ...』

少し疑わしい気もするが、納得はできる。


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サ『ハルディンだってバカじゃない。脅しの一つや二つかけておいた方が、後々の交渉で優位に立てるからね』

オ『どうしてそう言い切れる?』


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サ『あたしがそうするからさ』

サフィアはあっさりと返した。


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ア『でもそれなら、向こうが戦闘を避ける可能性もあるのよね?』

サフィアはアデライサの目を暫く見つめた。


54
サ『なぁ将校さんよ。ハルディンは帝国軍を恨んでる。特にテュリウス将軍を...』

ア『将軍を?』

サ『まぁ、若気の至りっていうやつも有るんだろうけどさ...』


55
テュリウスがスカイリムへの赴任が決まり、今と同じようにシロディールからの物資が大量に運び込まれていた頃の話である。
新天地への赴任というのは、様々な洗礼が付き物だ。
なので輸送船の警備は、より厳重にと軍が引き受ける事になる。


56
サ『こういう事はだいたい運と天候が悪い時に起こるものさ。それに当時のハルディンはまだ新米で怖いもの知らずだったしね』

ハルディンは帝国軍の輸送船に対して、遥かに小さい複数の手漕ぎボートを用いて襲い掛かった。
信じられないかもしれないが、当時の彼は少数精鋭だった事もあり、自信過剰から船の実用性は重要視していなかったらしい。


57-1
だが結果は火を見るより明らか。
象に蟻が戦いを挑むようなものだった。


57-2
サ『海賊は捕まれば即縛り首だ。でもテュリウスは殺らなかった。原因はよくわからない。若かったからだとか...気概を買ったからだからとか...』


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サ『でも罰は与えた。右足を切り落としたのさ。二度と悪さができないようにってね』



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サフィアの話に三人は顔を強張らせ、思わず唾を飲み込んだ。


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サ『足は魚の餌にされ、彼自身はソリチュード監獄に収監された。でも一月も経たないうちに姿を消したって話だ』


61
サ『その後、しばらくは海賊達も静かになった。
テュリウスはこの期に乗じ、餌を撒いて奴らを共食いさせた。
でもそれを逆手に取って、軍にハメられた連中を一つに纏めた奴がいたのさ』









62
サ『それが、ハルディンだよ』


63
テュリウスが陸での戦いに興じている間、彼はヴィットリアが発注した輸送船の強奪を始めた。
護衛船に対して容赦なく大砲を打ち込み肉弾戦で挑んでくるスタイルは、ヴィットリアの肝を冷やし続ける。
やがて毎月の賄賂を支払う事で、彼らの襲撃を抑え込むようになった。


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サ『逃げ腰はハルディンに付け入る隙を作らせる事になる。船板掲げてるだけで大丈夫だなんて...考えないほうがイイだろうね』









65
サフィアの言葉は、自分の浅はかさを知らしめた。
だがだからと言ってその話を全て鵜呑みにはできない。
行き場を失って止む無く海賊に身を落としたとは言っても、荒くれの中で生き抜いてきた人物でもある。
そして今や三傑の一人だ。
アデライサは微妙な均衡を保つ事に専念するしかなかった。


66
プラウティスは二通目の文を読み終わると、手を挙げて了解の意思を示した。
これによりお互いの照会が終了する事になる。


67-1
アデライサは本船に戻るなり威勢よく声を張り上げた。

ア『出発よっ!錨を上げてっ!』

船員達『アイアイサーッ!』


67-2
ア『取舵一杯!』

航海長『と~り舵いっぱーーーい!!』


68-1
ア『我々は輸送船の水先案内人だ。これからの道中、何があってもこの道を外れぬよう!ソリチュードまで一直線で進む!』

船が180度転回する。


68-2
ア『全速前進!』

航海長『全速ぜんしーん!』

船は風を受けゆっくりと前進を始めた。


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東帝都社製の船は頑丈で長持ちすると有名だった。
だがこのフリュート船は、輸送目的の為に製造されている事から多くの欠点を孕んでいる。
その最たるものといえばやはり鈍重だ。


70
輸送業は出来高がモノを言う。
沢山積んで目的地に運べば、それに比例して収入も大きい。
だが当然、量を積めば動きは鈍くなる。
食糧などは腐ってしまう事が多いため、季節にもよるが時には半分が損失してしまう事も珍しくはない。
それでも手に入れたがる者がいるのは、東帝都社のブランド性や一攫千金の夢を見る者が後を絶たないからだ。

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だが近年、社は新しく機動性に優れたキャラック船を導入。
フリュート船に比べると小型だが軽量。
マストを増やし足を速くさせ、複数で行動する事で天災人災から貨物の安全性を高めていた。
製造コストは以前の半分になり、その分数を増やす事で更なる輸送が可能に。

そんな中でのプラウティスの船は骨董品そのものと言えるのだ。
オルサスが驚いたのは、カーヴァイン家の衰退も一つだが、その事を隠そうともしない当主の不可解な胸中だった。


72
二隻の違いは直ぐに現れた。
プラウティスのフリュート船は重荷のせいで動きが鈍い。
キャラック船で誘導するアデライサ達と大きく差が開いてしまう。

オルサス『船をロープでつないだ方がいいんじゃないか?』

ア『こっちの方が軽いのよ。引っ張るどころか動けなくなるわ』

キャラック船の欠点は寧ろその軽量化だったりもする。









73
氷山の間を吹き抜ける風は、まるで何かの叫び声のようでもあり、不幸な女の泣き声のようにも聞こえてくる。
ハーフィンガルを覆い隠すように聳え立つドルアダッチ山脈。
この山の影響により南方からの暖気が遮られ極端な寒暖差もあまり発生しない。
その為に強風が吹き荒れる事は少ないが、濃い霧が立ち込める事はしばしばだ。
これは昼間の太陽によって温められた海水が、夕方になると北方からなだれ込んでくる冷気と混ざりあってしまうからだと考えられている。
何れにしてもこの辺りの風を読むのは非常に難しく、帆船を操作するのは熟練の技術を要するのだ。


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だがそれでも一ヶ所だけ勢いよく流れてくる風がある。
ソリチュードという街は、巨大な岩盤の上に建設された都市なのだが、この街の港はスカイリムの他のそれと一線を画している点がある。
それがこのアーチ状の岩だ。
この街を出入りする船は、必ずこのアーチを通り過ぎる事になる。
そしてこのアーチを通り抜けるのは船だけではなく、暖かい南からの風も吹き抜けていくのだ。


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【サウス・ウィンド・エリア】...いつしか安全地帯の代名詞にもなったこの一帯の名称は、亡霊の海を旅する者にとって大きな助けになっている。
アーチを抜け出てくる暖かな風が北海の冷気と混ざると、一方行だった風が様々な方向へと吹き荒れ、やがて吸引するように船を港まで運んでくれる。
驚くことに舵取りさえ必要なく、勝手に港まで運んでくれるのだ。
付いたあだ名が"ポケット"あるいは"キナレスの祝福"などと呼ぶ者もいる。
外から来た船がこのポケットに入り込めれば、ほぼ九割の確率で旅の成功を見込めるという訳だ。


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では反対に港から出て行くのは難しいのか?という疑問が湧くだろうが、全く難しくない。
元々南から風が吹いているので、それに逆らわず進めば大気のウィークポイントまで勝手に船を進めてくれるのだ。


77
ただ一つだけ、ポケットに入ってしまった船は途中での転回が非常に難しい。
過去には無理な転回をしたために座礁してしまったり、船体が大気の流れに耐え切れず破損、そして沈没したりと...
お陰でエリアでの舵取りは、ソリチュード独自の船舶法によって禁止されている。









78
昼間の太陽が陰り始める。
空を大きな雲が覆いつくし、暖かかった日差しも隠れてしまった。
そして案の定、ゆっくりとだが船の周りに霧が立ち込めてくる。
さすがに北国だけあり、冷気の支配は目に見える程変化が速い。


79
アデライサが周囲を見渡すと、一瞬北の方角にサフィアのレッド・ウェーブ号を確認できたのだが、ほどなくしてその船も霧に飲まれてしまった。


80
ア『輸送船との距離を保って慎重に進むのよっ!』

彼女が厳しい口調で号令すると船員達に緊張が走る。

その時である。


81
ドスンッ!

『うわっ!』

大きな音を立てて何かに強くぶつかってしまった。
衝撃で甲板に立つ者がバランスを崩し足を取られてしまう。


82
オルサス『なんだ!?乗り上げたのか!?』

この辺りは海水に隠れた岩場がいくつもある。
竜骨が乗り上げてしまう事もしばしばだ。


83
ア『違うわ...船よ』


84
それを最初に見つけたのはアデライサ本人だった。
小型のボートが船首にぶつかってしまったせいで船の勢いが止まってしまった。
向こうも胴体をぶつけられて船体が横流しにされている。


85
船員『おいっ!こんなところで何している!?』

船員の一人が怒鳴り声をあげた。



86
衝撃で身を崩した船頭も、ゆっくりと体を起こしてフード越しに謝り始めた。

船頭『いやぁ~すまへん、すまへん、申し訳ねぇですぅ~』

腰を低くし頭を抱え平に謝っている。

船頭『霧のせいで見えんかったからさぁ~』


87-1
少しばかり南方の訛りが入っている。
大方出稼ぎで来たインペリアルといったところか?
オルサスは思った。


87-2
船員『貴様!聞こえなかったのか!?何をしているのかと聞いているんだ!?』


87-3
船頭『いや、何してるってぇ~見ての通り漁船なんでぇ~今日は大漁でさぁ~これから帰ろってぇ~』

船員『そんな事は聞いていないっ!』


88
ア『もういいわ!それより船底で浸水が無いか確認を急いで』

船員A『わかりました!』

ア『あなたは船尾に行って輸送船の様子を確認してきなさい』

船員B『了解です!』

アデライサは割って入り、新人教育でもするかのように仕事を与えた。


89-1
ア『あなたっ!』

彼女は船頭を強く指名する。

ア『あなたのやっている事は帝国公務の妨害よっ!』


89-2
船頭『えぇっ!そんなぁ~あっしら真面目に仕事していただけでさぁ』

アデライサの予想外の一言に彼は困惑した表情を見せた。


89-3
ア『今回は大目に見てあげるわっ!今すぐ船をどかしなさい!さもないと公務執行妨害で逮捕するわよっ!』

船頭『へぃへぃ~急いでやりますぅ~大急ぎでねぇ~』

肝を冷やした船頭は慌てて船を動かす準備を始めた。


90
本来なら素顔を確認するべきなのだが、今回はそこまでしなかった。
時間も無いし、ウィンドヘルムでの二の舞はごめんだとも思ったからだ。
首都の性質は虚栄や虚飾が最上と謡われていたりする事もある。
ソリチュードには味方がいない。
それだけに煙が立つような事もしたくない。
焦りやイラつきもあるが、心の余裕はまだ作る事が出来た。
だがこれが正しいかどうかまでは...判断しかねる。


91-1
魚船の船員達は、オールを近くの氷塊に突き立てて慣性力で船を後ろに動かそうとしている。
三人ばかりの団体だが、目深くフードをかぶっているだけに怪しい。


91-2
やはり確認しておくべきか?
三人の男たちの背中とチーム性の良さ。
どうも腑に落ちない...だが時間も惜しい...心が揺れる。


92
輸送船の様子を見に行かせた船員の話では、こちらの動きに同調して停船しているそうだ。
これから夕刻にかけてこの辺りの霧が更に濃くなってくる。
天気もあまりいいとは言えない。
吹雪にはならなくても、雪が降れば視界だけでなく音までも遮られてしまうのだ。
いずれにせよ一刻も早く動きだしたかった。


93-1
船頭『いやぁ~すんまへん~すんまへん~本当にすんまへんでしたね~』

船をどかせた船頭は、愛想笑いを見せながら必死に頭を下げている。


93-2
船頭『すんまへんでいしたぁ~おきをつけてぇ~』

彼らは船に並び手を振ってアデライサ達を見送った。


94-1
オルサス『浸水もなかったみたいだ』

ア『まったく...これ以上のトラブルはごめんだわ』


94-2
オ『この辺りはたしか...ブラック・ブラッドのアジトのあたりじゃないか?』

ア『えぇ、漁船が戻ってくるって事は湾があるようね』

しかし霧でよく見えない。

ア『エリクール卿が彼らの事はなんとかすると仰って下さったのよ』


95
オ『...噂じゃバルモラブルーを街に流してるって聞いたぞ』

ア『止めなさいオルサス。こうして船が出発できた。今はそれが重要なのよ』


96-1
エリクールという男には様々な噂がついてまわっている。
耳障りの良くない事ばかりが殆どだ。
麻薬の横流しや密輸、盗賊ギルドとの繋がり、物だけに限らず"人"も取引の材料として使うのだとか...
そんな彼の屋敷をよく訪れているのが、デインティン・スロードの船長"ヴァゴス"である。
彼も元海賊だった事が、エリクールの一面をより色濃くしているのは確かなようだ。


96-2
サフィアが彼を"背むし"蔑むのは、過去に仕事のトバッチリを食らった上に仲間の中傷を受けた事が要因らしい...
にもかかわらず彼はエリシフの従士という枠に収まっている。
"目に見える事だけが全てではない"
スカイリムの首都は、条理と不条理が奇妙なバランスで成り立っている街だとも言える。


97
何れにせよ今のアデライサにとっては、物資を無事に届ける事が全てだ。

船は再びゆっくりと進みだす。
僅かな風を利用するのはなかなか難しい。
きっと輸送船の船主であるプラウティスは、さぞ不安がっている事だろう。
念の為もう一度船員達に輸送船の確認と航路のチェックを急がせた。


98-1
今回の護衛業務はどう考えても非力だ。
本来なら軍船をもう二、三隻従え、ネコの子一匹は入れないような厳重さで輸送船を守る。


98-2
だがヴィットリアは倹約家でもあったがゆえに、海賊へ賄賂一つで済ませたほうがずっと効率が良かったようだ。
今回はそれが無いだけに実に多くの不安材料が浮かんでくる。


99-1
それもこれも目の前に広がってきたソリチュード湾に入り込めれば問題はない。
少しづつ霧が晴れてきたのもその証拠だ。


99-2
ここから吹き付ける暖かい南風が、船を港まで一直線で運んでくれる。
キャラック船の船員たちは一瞬安堵のため息をついた。


100
ア『まだよ!安心するのはポケットに入ってからにしなさい!』

アデライサは彼らの気の緩みを感じ取り、ワザと冷や水を掛けた。


101-1
彼女が船仲間から聞いた話によれば、ここであった海賊たちの戦いは苛烈を極めたらしい。
怒号と悲鳴はもちろん、空中には砲弾が飛び交い、黒煙が辺りを包み、焦げた臭いが港まで流れ込んできたんだとか...
後には残骸と無数の遺体が浮かび、やがて海中へと沈んでいった。
今でも海底は手付かずの状態のまま放置されている。


101-2
そんな事が無ければいいと思っていた矢先、一瞬暖かい風が頬をかすった。


102
オ『ポケットに入ったぞ!このまま一気に港まで直行だ!』

オルサスの掛け声に同調した船員たちが俄かに活気だつ。
どうやら船は無事、サウス・ウィンド・エリアのポケットに入り込めたようだ。


103-1
ア『輸送船にも伝えて!』

オ『おぉよ!了解だ!』

この朗報を一刻も早く彼らにも伝え、ここから先の航行の安全を保障したかった。









しかし...その矢先である。


103-2
ドド――――ンッ!

突然大きな轟音が鳴り響き、再び船体を揺らした。
今度のそれは、漁船との衝突とは比べ物にならない程の振動だ。


103-3
『うわぁあ!!』

船員達の驚き声もさっきより遥かに大きい。


103-4
アデライサは瞬時に空を見上げる。

船員『輸送船がっ!』

見張り台に立つ船員が後方の異常を指で示していた。


103-5
ア『オルサスっ!!』

嫌な予感が過る。









104
オ『いったい...どうなっているんだ?』









105
輸送船の甲板からもうもうと火の手が上がっていた。


106
その炎は見る見るうちに広がり、海面を赤く染めつつも、あちこち爆発を繰り返しながら後方へと燃え移っていく。


107
瞬く間に甲板は火の海となり、黒煙が高々と空へと立ち昇っていた。


108
ア『う、うそ...な、なによこれ...』

今まで何事もなく着いて来ていたはずの船が、彼女の目の前で無残な姿をさらしている。
事の有様にオルサスも掛ける言葉を失ってしまった。

オ『ア...アデライサ...』


110
サウスエリアに入り込んでしまったキャラック船は、輸送船を見捨てるようにどんどん距離を広げていった。


111
ア『なにやってるの!?船を戻すのよっ!』

操舵『えっ!?』

慌てて操舵者に詰め寄る。


112
操舵『無茶言わんでください!ポケットに入ってからの転回はリスクが高い!できませんよっ!』


113
ア『そんな事を言っている場合じゃないわ!あの船の荷が無いと、私たち全員監獄行きなのよっ!』





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[備考]


◎ブルーマの紋章

SSではよくわからないかもしれませんが、赤丸の所に黄色い紋章があり、アデライサ達には見えているという設定。
因みに帆に描かなかったのはカーヴェイン家は没落貴族だから。

A1

A2



◎ブルーマのカーヴェイン家

SOSでのカーヴェイン家は没落貴族として登場させています。
作中にその理由は書いたのですが、プラウティスは嘗てのナリナ女伯爵と血縁関係があるかどうかは不明。
ファーストネームが同じという事で子孫としています。
またスカイリムに登場する時は、貴族でありながら徒歩でソリチュードに向かっている事から"落ち気味であってもプライドはある"ような印象から没落貴族にしました。


◎照会旗

三つのシンボルが描かれた旗。それぞれのシンボルは【目的】【役職】【地域】を示している。
請負い会社と東帝都社のみが知る暗号のようなもので輸送の度に変更される。
照会の際に誤魔化しが効かないようにする事と、帝国軍の発注した仕事を貴族が下請けに回さないようにする事が目的だと言われている。
今回の輸送は【物資輸送(目的)】【男爵(役職)】【ブルーマ(地域)】という意味が刻まれた三つのシンボルが刺繍されている。


◎ブルーマからの輸送船の物資

遠征軍の食糧は一定の時期や期間もあるが、シロディール各都市の貴族達に交代で受け持ちをさせている設定。
土地の特徴や収穫量などにより多少バラツキもあるが、特産品や手紙、宅配なども請け負っている為、現地で戦う兵士達の士気に大きく影響する。
ブルーマはシロディールの最北に位置する都市で、ジェラール山脈を越えての陸路が望ましいが、現在はスカイリムの反乱軍によって国境を抑えられている事から、アンヴィルまで陸路を行きそこから船で北上するしかなかった。


◎東帝都社のシーリングワックス

twitterにてお世話になっているponさんに東帝都社のシーリングワックスを特注で作成していただきました。
作中で使用したのですが、小さすぎてよくわからなかったのでこちらで再度掲載させていただきます。
素敵なMODありがとうございますなのだぁヾ(*´∀`*)ノワーイ

B1

B2

B3



輸送用に設計された帆船。
重さ200トンから300トンという巨大な船で、大量の物資の輸送を目的としている事から積載スペースの確保とクルーの活動効率を最大限に生かした造りになっている。
ガレオン船より速度は出るが、海賊の格好の標的にされていた。



キャラック船は遠洋航海を前提に開発された船種であり、高波でも船体の安定を保つだけの巨体と、大量輸送に適した広い船倉を持つ。
航行性能や安定性の高さから冒険家などに好まれた船である。
アメリカ大陸を発見したクリストファー・コロンブスや世界一周を目指したフェルディナンド・マゼランも使用した。


◎ブラッド・ホーカーズ

ハルディンが率いている海賊団の事。


◎船板

東帝都社のシンボルに描かれている船の事。


◎亡霊の海で立ち往生の四つの危険性

第一にゴーストシーは霧が多い為、外部との連携が取り難い。

第二に立ち往生で抜け出せないと、霧が晴れるまでまともに動けない。
スカイリムで最も北に位置するこの海域は、温度を保てないと低体温症により命を失う危険を伴う。

第三に季節によっては何日も霧が晴れ無い場合もあるので、食糧が尽きないよう注意しないといけない。

第四に何もしなくても海賊に襲われる。

この海域での立ち往生は禁忌といえる。
実際のゲーム内でも霧で覆われてしまい一寸先が見えなくなる状況は多い。


◎エリクールとサフィア

ゲーム内には、盗賊ギルドのクエストでエリクールに会いに行くクエストがあります。
報酬は落ち目のギルドの復興、新しいマスター誕生にエリクールに盗品商として開業してもらうという特典の多いクエストになってます。

問題はその過程にある"バルモラブルーをサビン・ナイッテから入手しろ"という内容です。
ここを創作して、サビンは船長であるサフィアの断り無しにバルモラブルーの密輸・横流しをやっていた。
としました。
エリクールはサフィアが元海賊だという事を知って弱みに付け込み、サビンに麻薬の密輸を密かに依頼していたとし、それを知ったサフィアはエリクールとの関係をあまり良い様に思っていません。
同時にサビンに対してもどこか他人行儀になっています。

ちなみになぜ"背むし"かというと、"こそこそとお金を数えて背中を丸めて笑っている後ろ姿"からサフィアが勝手にあだ名したとしています。

◎ブラック・ブラッド団

ブロークン・オール洞窟を拠点としている強盗集団。


◎バルモラ・ブルー

バルモラはモロウィンドウに嘗て存在した町の名前。
現在はレッド・マウンテンの噴火によって滅んでしまっている。
バルモラ・ブルーは麻薬の一種で、町が滅んでからは製造法が失われてしまった為に禁制品としての価値は高いのだが、同時にそれに対する罰則ランクも高い。



[使用MOD]

Skyrim Beautiful Followers - SBF..............................hrk1025

Rigmor of Cyrodiil ...........................................jihan02

Apachii Divine Elegance.......................................apachii

Immersive Armors..............................................Hothtrooper44

ROS SealingWax 20190925 ......................................@Residets_of_sky

RUSTIC EAST EMPIRE COMPANY SIGNAGE............................Gamwich

EastEmpireTradingCompanyArmor.................................m