1
猛吹雪の夜。
強い風が雪と氷を弄び、体に衝突させて圧迫感を与える。
2
凍てつく空気の中、我々はコルバンヤンド遺跡に到着した。
3
エズバーン
『なんだこれは?』

入口のドアを通り抜けた瞬間、エズバーンが最初に放った言葉だった。
4
テーブルの上から落ちたパンやワインの空瓶が無造作に転がり、器からこぼれたスープがシミになって広がっていた。
腰かけ椅子が乱雑に配置され、幾つかは背もたれを床にして倒れている。
5
デルフィン
『酷いわね...』

消炭の上に鍋が転がっている。
どうやら沸かしていた湯やスープをひっくり返したようだ。
6
タケオ
『このドア、向こう側から押されていますね』

荒らされた形跡の中で最も異様だったのが正面のドアだ。
なんらかの力で押し倒されている。
枠ごと外れてしまい、開いた扉が地面に引っかかって辛うじて立っている状態だ。
7
兎に角...一難去ってまた一難。
タロスはそう簡単に答えを与えてくれないようだ。
8
タケオがエズバーンと話しをしている間に、デルフィンがキャンプ用の火何処の準備を始める。
私は床に散らかった物を拾い集め、簡単ではあるが皆で生活空間の整理整頓を行った。
フェニグがテントの方に指さすと、メアリーは背負った椿を寝袋に寝かせて脇に座り込んでしまった。
9
優しく頭を撫でる。

メアリー
『つばきぃ~;;』
10
鼻水と涙を流し友を慈しむように声を掛ける。
血色を失った彼女は、無言のまま冷たくなっていた。
椿の身にいったい何が起きたのだろう?
おかしな事といえば...あのヒスイという少女が、荷台から降りた時の急激な温度変化だけだと思うのだが...

11
タケオ
『偵察してきます。出発は僕が戻ってからにして下さい』

椿とは関係なしに、彼らは奥へと進むつもりだ。
12
カズ
『ここには誰かいたんですか?』

エズバーン
『あぁ~そうか...先発隊を置いていたのだ』

散らかった食事や消えた焚火、部屋の隅にある木箱や鎧などからそれは容易に想像できる。
13
エズバーン
『五人いたはずだが、皆姿を消している』

私は破壊されたドアの方に目を向けた。
14
カズ
『あのドアの状態からしてかなりの力だ。トロールでもいたんでしょうか?』

エズバーン
『トロールは頭は悪いが、ドラウグルがいる洞窟内部には近づこうとしない...』
15
ドラウグルとは死者達の事を指す。
ノルドの遺跡、とりわけ嘗ての竜教団が関係している場所には、必ずと言っていいほどいるんだそうだ。
歩く死体...なんでも強力な力を持っている者もいるとか...
16
エズバーン
『それにリンが率いている隊は、殆どが軍関係出身の連中ばかりだ』

カズ
『それなら、余ほどの相手ですね...』

エズバーンは”うーん”とうねり声を上げた。

17
一方、テントの中ではデルフィンが椿の上で四つん這いになっていた。
メアリーはその様子を足を抱え小さくなって見ている。
18
デルフィン
エズバーン!エズバーン!
19
エズバーン
『タケオが戻ってきたらすぐにでも出発するつもりだ。お前さんには考古学の知識がある。なので同行してもらいたい』

カズ
『それは、かまいませんが...』

彼は私の言葉を確認してからデルフィンの方へ足を向けた。
20
エズバーン
『どうした?』

デルフィン
『目を見て』


21-1
21-2

21-3

22
エズバーン
『金色...これは?』
23
デルフィン
『アシリウスが書いていたレポートの事...覚えてる?』

エズバーン
『あぁ~...ドラゴンを従わせる事のできるという"黄金の瞳"の事か...』

デルフィン
『彼が目にしたって言う"竜の瞳"って、この事を言っていたんじゃないかしら?』

エズバーン
『だが彼女はドラゴンボーンだ。
むしろこれは魂石症の症例と一致する。
"竜の瞳"は眉唾物だと...お前も言っていただろう?』

デルフィン
『そっ、それはそうだけど...』
24
メアリーは何も言わず、椿に視線を落とし悲しげな表情を浮かべている。
そんな彼女を他所に、二人はよくわからない会話をしていた。
25
カズ
『あの...魂石症?竜の瞳?いったい何の事ですか?』

聞きなれないワードに思わず私が反応すると、彼は一瞬躊躇ったような表情を見せた。
26
エズバーン
『...原因は昨日吸収したドラゴンの魂だ』
27
ドラゴンボーンはドラゴンの魂を吸収できる特殊な能力がある。
椿はここに来る前、スカイヘイヴン聖堂で遭遇したドラゴンの”それ”を吸収していた。
28
カズ
『彼女は無事なんですか?』

エズバーン
『元来ドラゴンボーンは、ドラゴンに打ち勝つために存在しているはずだ。
結論から言えば、ただ気を失っているのと変わらない』
29
この言葉にメアリーはようやく反応を示す。

メアリー
『じ、じいさん...でも、顔が真っ青なんだぜ...冷たいんだぜ...』

彼女の言う通り、どう見ても”死んでいる”ようにしか見えない。
30
デルフィン
『魂石症はドラゴンボーン特有の症状で、個人差はあるけど、ドラゴンソウルを吸収した時に患う事が多いの。
特に初めての場合は影響が強いらしいわ』
31
ドラゴンの魂がどれほどのモノなのかなど分かるはずもない。
だがあの巨大で狂暴な生物の魂を一人の人間が吸収するのだから、何かしらの異常があって当然だろう。
32
デルフィン
『症状にはいくつか種類があって、殆どは意識を失ったり、高熱を出して寝込んだり、死んだように冷たくなってしまうらしいの』

まさに三つ目こそ椿が今陥っている状態だ。
33
メアリー
『じゃぁ、そのうち目を覚ますって言うのか?』

デルフィン
『えぇ、そのうちにね』

メアリーの表情に一筋の希望が湧いた。
何故だろう?デルフィンの存在は非常に大きく感じ、そして有難く思えた瞬間だった。
34
それを聞いて安心できたのか、彼女はまた肩を竦める。
溢れ出る涙を腕で隠し肩を震わせ言葉もなく嗚咽を繰り返す。
34-1
我々が考えているよりも、遥かに思い詰めていたようだ。
目には見えないが、二人の間には確かに固い絆がある事が理解できた。

35
メアリー
『なぁ~治す薬とかないのかぁ?』

当然の質問だろう。
だがエズバーンは、ため息を着いてから答える。
36
エズバーン
『前にも言ったが、ドラゴンボーンというのはアカトッシュからの賜物なのだ。
二ルンに住まうあらゆる種族から見れば、現人神とも言える存在だ。
人が神を治せるなら、神など無用の長物になってしまう...』

メアリー
『それって...どういう意味だよ?』
37
デルフィン
『要するに、誰もドラゴンボーンっていう病気を治す薬は”作れない”って事よ』

デルフィンの提唱した話は、なかなか面白いと思えた。
38
メアリー
『じゃぁやっぱり...つばきは...椿は死んじまうのか?』

鼻声で愚図っている。

デルフィン
『死ぬ事はないから心配ないわ』

メアリー
『でもよぉ~...』

暫くこんなやり取りが続きそうだ。

私はエズバーンを誘うと、二人から少し離れた所で話す事にした。
40
カズ
『余計な事かもしれませんが、今日の探索は控えて明日にされてはいかがでしょうか?』

それを聞いたエズバーンは、腕組をして唸り声を上げた。
41
私が懸念しているのは戦力の分散だ。
先行していたブレイズ達が姿を消しているという事は、少なくとも相手はそれなりの使い手だと考えられる。
こちらの戦力を考えると、武闘派と言えるのはドラゴンと戦ったデルフィンとタケオ、そして騎士団の椿とメアリーの四人だけ。
後者の二人は未知数ではあるが、ドラゴンボーンがあの状態では動けないし、当然親友のメアリーは離れようとしないだろう。
となるとタケオとデルフィンの二人が、分散して守りを固める事になる。
42
エズバーン
『お前さんの言わんとしている事はよくわかるが、ここで立ち止まる訳にはいかない』
43
エズバーン
『ウルフリックにも話は通してあるが、準備やらなにやらで時間を割くだろうし、更に行軍の時間も考えねばならん。
”王冠”を手に入れる事ができたとしても、援軍を送る事が出来なかったら何も意味を成さなくなってしまうのだ』

確かに彼の言う通りだ。
44
今日中に必要な物を手に入れれば、明日にはウィンドヘルムへ向かえる。
そうすれば少なくとも四日は稼げる。
実際はかなりギリギリなのだろう。
私はため息を着くしかなかった。

45
ヒスイ
『なんだこれ?』

ジプサム
『ん?』

さっき私が片付け忘れた編み込みパンをヒスイが見つて拾い上げようとした。
45-1

ジプサム
『そんなバッチィ物に触るんじゃない!焚火の所に行って暖まりなさい!』

ヒスイ
『ただ見ただけだよぉ~もぉ~』

ジプサムの親バカぶりは目を見張る物が有る。
彼らの身なりからして、外の吹雪はさらに激しさを増したようだ。
46
ジプサム
『エズバーン、悪いが一晩世話になるぞ』

エズバーン
『構わん。食料も酒もある。勝手にやってくれ』

ジプサムは手を上げて合図を返した。
47
デルフィン
『外の様子はどうなの?』

メアリーと折り合いをつけたデルフィンが、早速エールを拝借したカジ―トに声を掛けた。

ジプサム
『ホワイトアウトだ。今晩が山だな』
48
ジョリーという馬はどうしたのだろう?
外がそれほど荒れているのなら、馬は凍えてしまわないのだろうか?
49
デルフィン
『愛馬は大丈夫?』

ジプサム
『心配ない。ジョリーならこんなのへっちゃらだ。
まぁ、お前達みたいな毛無しは危ないだろうがな』50今のはなんだろう?...暗に嫌味も含まれているのだろうか?
51
偵察に行っていたタケオが戻ってきた。
エズバーンとデルフィンを交えて会議が始まる。
52
タケオ
『中ほどまで行きましたが、特に怪しいモノは見かけませんでした』

私は二人の後ろに控えて話を聞いていた。
52-1
デルフィン
『リン達は?』

タケオは首を横に振る。
53
タケオ
『最奥聖域の扉まで行けば、また何かわかるかと...』

デルフィン
『となると...進むしかないわね』

エズバーンは相変わらず気難しい表情を浮かべている。
54
エズバーン
『ここから先は私とタケオ、カズ殿の三人で向かう。デルフィン、お前さんはここに残ってくれ』

デルフィンは眉を傾げてエズバーンを見つめ返した。
55
デルフィン
『やっぱり、無理しないで明日に回したらどうなの?』

彼女らしからぬ一言だと思えたが、初めて意見が一致した。
56
エズバーン
『いや、無理は承知だが、ここで時間を費やす訳にはいかない』
57
やはりここでも、彼は頑な態度を見せる。
だが一瞬、彼の目が私の方を向いたように見えたのは...気のせいだろうか?
58
一通り今後の手筈を終えると、デルフィンはタケオに色々と注文を付け始めた。
おそらくエズバーンの事を頼んでいるのだろう。
心配しているのが手に取る様に理解できる。
59
考えてみれば、早朝から今の今まで狭い空間の中で何時間も揺られ続けてきた。
道中にも問題が発生し、安心しきったところで再び問題...しかも今度は二つ。
ここに来るまでに食事もろくに取れていない。
60
更に加えるなら、彼は齢70を過ぎた老人だ。
疲れなど微塵も感じさせないタフネスに見えるが、心労は相当なものだろう。
だからこそ彼女は完全に納得はしていない。
だが彼の頑固な所を知ってなのか、それ以上言葉は挟まなかった。
61
これで残る者と進む者が決った。
老体も心配だが、ここから先は自分の身は自分で守らなくてはいけない。
そう考えると胸が引き締まる思いだった。

62
広い遺跡内には、あちこちと青銅製の鼎(かなえ)が設置されている。
すでに消炭になっているモノもあるが、中には勢いよく燃え続け、明かりを放っている物もあった。
おそらく先行隊が、ブナやナラの木などを定期的にくべることで長持ちさせていたのだろう。
63
階段を降りると狭い空間を歩く事になる。
湿った空気が漂ってくる。
洞窟独特のカビ臭さや土の匂いだ。
64
時折頬を撫でるようにひんやりとした風が流れてくる。
この風が不快な臭いを遠ざけてくれると、少しホッとできた。
65
更に階段を下っていくと気温が下がっていくのが分かった。
再び広い空間に出る。
66
この場所は木組みを使って壁や足場などを設置していたらしい。
広間を一周するように作られいるみたいだが、長い間の放置か、あるいは自然の力によるものなのか...
所々崩れてしまい、今では全く機能してはいない。
67
中心にはその残骸が山積みになっており、雪が降り積もっている。
天井を見上げると裸の空が見える。
雪が静かに舞い降りてきているが、どうやらこの穴が換気口になっているようだ。
68
エズバーンとタケオの二人は、どんどん奥へと進んで行く。
彼等は何度も足を運んでいるのか、目的地までの最短距離を歩いているようだ。
69
狭い道を挟んでは、また次の部屋へと進むのだが、徐々に洞窟内の複雑な作りが目につくようになる。
横に広いだけではなく縦にも高く、一つの空間だけで二階三階と足場が有り、上に行くほど道が細くなっていた。
70
天井の道は途中で壊れてしまっているため、そこから先に道があるかは定かではない。
いや、嘗てはあったのだろうから、今もどこかへ通じる通路がきっと生きているのだろう。
70-1
こういう複雑な作りを目にすると、どこかで誰かに見られているような?
そんな気配を感じてしまう。
やはりそこは、嘗ての竜教団が仕掛けたカラクリの妙味なのだろうか?
70-2
タケオとエズバーンの二人は、辺りを見向きもせず進んでいく。
すると次第に靄(もや)が出始めた。
さっきよりさらに温度が落ちている。
70-3
タケオが階段を降りたところの扉の前で待っていてくれた。

タケオ
『足元に気を付けてください。
最奥聖域にはまだもう少しありますので...』

どうやらここから先は、彼もまだ確認していないようだ。
70-4
ドアを抜けると目の前に開けた空間が現れ、そして大きな階段が飛び込んできた。
ここは登りだが、今は地上からいったいどのくらい下にいるのだろうか?
70-5
これがドラウグルか...
初めて目にするが、こんな奴らが此処をうろついていたのか?
ミイラのように皮膚が干しけているが、なんだか生っぽく今にも動き出しそうにも見える。
70-6
階段を昇り切った踊り場にも一体。
さっきのは鎧を纏っていたが、こいつは薄く敗れた肌着一枚だけだ。
いったいドラゴンは、人間にどんな苦痛を強いていたのだろうか?
残酷な現実を目の当たりにしているようにしか思えなかった。
70-7
更に奥へと進むと明かりは殆ど無くなってしまい、辺りは今までよりずっと暗みを増してきた。
しかし薄っすらとした明かりは存在している。
恐らくだがこれは苔の一種だろう。
暗闇の中でも光るコケやキノコがあると、昔本で読んだ事がある。
71
奥に目を凝らすと大きな扉が見えてきた。
その扉は少し階段を降りた所の真ん前に在り、大きくて堂々とした作りだった。
72
エズバーン
『おかしいな?扉が閉まっているぞ...』

タケオ
『そうですね?』
73
カズ
『どうかしたんですか?』

エズバーン
『うむ、この扉は建付け悪いから常に開けておくよう伝えておいたはずなのだ』
74
タケオ
『ん?』

タケオが何かを見つけた。75タケオ
『なんだこの金属片?』

彼が持ち上げたのは金色をした真鍮製の部品だった。
76
すると"キィ―――――"という奇怪な音を立ててゆっくりと扉が開いた。

カズ
『勝手に開きましたよ...』
77
開いた先は真っ暗だ。
火の明かりが一つもない。
道中の焚き木の管理具合を考えると、ここだけ明かりが無いなど不可解だ。
78
我々は唾を飲み込み、暗がりに目を凝らす。
一瞬、何かを見た気がした。
目を擦り、再度確認する。
79
赤い小さな明かりが...

80
明かりが...

80-1
明かり...

81
エズバーン
なんだこいつらは...』
82
暗闇に目が慣れたせいか視界が開けてくる。
黒い煙が揺らめいており、赤い光が明滅を繰り返し、無数の顔を形成していた。
83
そしてそれは、部屋の奥までギッシリと敷き詰められており、一様に不気味な視線を放っている。
明らかにヒト成らざる者に他ならない。
84
突然、次々と雲の様に膨れ上がると、耳障りなうめき声を上げて迫ってきた。

???
ウグギャ――――――ッ!!
85
エズバーン
いかんっ!扉を閉めろっ!!

カズ・タケオ
オオッ!
86
焦った私とタケオは、扉の両端に手を掛ける。

カズ・タケオ
うわぁああああああ!
87
それに気づいた無数の顔がこちらに向かって突進し、閉じようとする扉を押し開けようとする。

エズバーン
閉めろっ!閉めろっ!
89
バタンッとドアを閉じると、エズバーンも加わりそのまま背中で抑えつけた。
だが扉はガンガン音を立てて振動する。
反対側から激しく叩いてくるのだ。
明らかに我々を侵入者と見なし排除しようとしている。
91
しかし、そんな悠長な事を考えている余裕などない。

カズ
うわっ!

エズバーン
むうっ!

タケオ
クッソ!

一瞬物凄い力で押し返してきた。
男三人でストッパーの役目をしているというのに、まるで効き目がない。
92
背中に激しい衝撃が伝わってくる。
このままでは押し返されてしまう。
非常にまずい状況だった。

のだが...
93
気が付くと激しい衝撃音はするものの、ドアの動きが全く無くなった。
私は何があったのかとそのまま上を見上げる。

94
二本の太い腕が我々の頭上で扉を押さえていた。
しかしこれは、腕?...というか...まるでこれは...機械?
腕の跡を辿っていくと、黄金色のそれは...
95
カズ
ドゥッ、ドゥーマーのオートマトン...!?
96
その後ろには、見慣れない三人が立っていた...

97
我々三人は目を瞠(みは)った。

エズバーン
『何者だ...?』
98
???
『私はアイリ、トレジャーハンターよ』

アイリと名乗った女は、気丈な口調で返してきた。
99
アイリ
『後ろにいる冷めた目つきのおじさんが、護衛の”ミック”で』
100
アイリ
『足元にいるのが”フロッグ”』
101
アイリ
『そしてドアを押さえているのが、私のオートマトン、ゼファーよw』
102
突然の来訪者に呆気にとられる。
彼女たちはいったいどこから現れたのだろう?
最初に思い立った疑問だ。
103
エズバーン
『フロッグ?』

タケオ
『そおいえばリンの隊に、そんな名前のアルゴ二アンがいました...』

エズバーン
『ダンが急遽入れた奴だな...』
104
タケオ
このトカゲ野郎っ!

フロッグ
ヒィッ!

タケオが怒り顔を見せてアルゴ二アンを威嚇する。
105
フロッグは慌ててアイリの影に隠れてしまった。

フロッグ
うわあ~ぁ...
106
エズバーン
『リンに何かしたのはお前達だな...』

エズバーンはアイリを睨む。

アイリ
『まぁねっwちょっと眠ってもらって、今は安全な場所に隔離しているわ』
107
エズバーン
『安全な場所?』
107-1
アイリ
ちょっとフロッグっ!離しなさいよっ!

フロッグ
えぇっ!
108
アイリはフロッグを振り切ると、エズバーン達の前に歩みより手に持っているモノを広げて見せた。

エズバーン
『何だこれは?』

丸いガラス玉...スノードームだ。

アイリ
『中をよ~く見てみて』
110
彼女の言うがまま、そのガラス玉の中に目を凝らした。
目を凝らす...凝らす...凝らす...

111
ガラス玉の中には家が在り、周りに木々が生い茂り、雪が降り、雪だるまの前に...小人達が手を振ったり、ジャンプしたりしている。

111-2
オ―――――イッ!

こっから出してくれぇ――っ!
112
タケオ
リンッ!

なんと姿を暗ました彼等はこんな所に閉じ込められていた。
113
エズバーン
『なるほどな...我々の元にスパイを送り込み、人質を取って優位に立ったという訳か...』
114
アイリ
『へへーんっ!悪く思わないでねぇ~私もプロだからさぁ~
それにお爺ちゃん達、泣く子も黙るブレイズでしょ。
これぐらいのハンデあって当たり前よねw』

ここまでする以上、彼女のブレイズへの挑戦心は本気のようだ。
115
タケオ
どうやって出すっ!?
116
アイリ
『スノードームから彼等を救うにはスペルワードが必要よ。
もちろんそれを知っているのは、"私だけ"だけどねw』
117
可愛い顔をしている割にはなかなか狡賢い。
完全に先手を打たれている。
118
エズバーン
『聞くだけ野暮だろうが一応聞いておこう。目的はなんだ?』

エズバーンも腹を据えかねているようだが、流石に表に出す事はためらっている。
119
アイリ
もちろん”尖った王冠”だよw

ここまで来て競争相手が現れるなんて。
120
だが彼は鼻で笑った。

エズバーン
『フン、プロのトレジャーハンターか...』
120-1
アイリ
何がおかしいのよっ!?
120-2
エズバーン
『悪戯に罠を発動させたせいで最奥聖域への道が閉ざされた。
鍵も持たずにあちこち触った結果だな。
上の階の有様も、大方お前さんらの仕業だろう。
大口叩く割には、やる事がずさんだと思ってな』

彼は吐き捨てるように詰った。
121
アイリ
くぅっ!罠はフロッグが変なモノを踏んづけたからよっ!私じゃないわっ!
122
アイリ
入口のドアを壊したのもゼファーで、これも私じゃないっ!

どうやら随分な負けず嫌いと見える。
もしここにデルフィンがいたらと思うと、ゾッとしたのは私だけだろうか?
123
エズバーン
お前さんらのような軽率な輩が、王冠を手に入れてどうするつもりだ?と聞いているんだっ!?
123-1
アイリ
そんな事おじいちゃんには関係ないでしょ!これが仕事なのっ!
124
カズ
ちょっと、ちょっと待ってくれ...』

私は無理にでも割込んで発言権を得ようとした。
125
カズ
君も"尖った王冠"を欲しているのだろうが、私達にはどうしても必要なんだ

論理的に説き伏せようと考えたのだが、アイリはむくれ顔で冷たい視線を向けている。
126
カズ
『私はハイロックのディバイドから来た者だ。
今ディバイドは、ウィッチマンというならず者達の攻撃に晒されようとしている。
私達はそれを防ぐために、尖った王冠を元手にし、ウルフリック・ストームクロークから援軍を出してもらうつもりだ』

彼女が眉を傾げたのが目に入った。
127
カズ
『もし援軍が到着できなければ、罪もない多くの市民に犠牲が出てしまう。
武器を持たない女、子供、年寄...その数は有に数百を超える事になるだろう。
それだけはなんとしても...』
128
アイリ
ウルフリックが援軍を出すぅ~?

アイリは覗き込むような目つきで話の腰を折ってきた。
129
アイリ
『おじさん、彼が今どうしているか知らないの?』

カズ
『え?』
130
アイリ
『ミック、教えてやって』
131
ミック
ウルフリックは今、自身の城に軟禁させられている。兵馬の権限は一切持っていない。
援軍どころか、小便するのにも衛兵の許可が必要だ
132
カズ
『そんな...じゃぁいったい...』

瞬間、頭の中が真っ白になってしまった。
行き場を失った魂が空を漂うように私の両の瞳が宙に浮かぶ。
人はこういう時、心の底で頼りにしているモノに自然と目線が向いてしまうものだ。
133
私の"それ"はエズバーンだった。
しかし彼は、私の予想とは裏腹に目を細くさせアイリに向かって刺すような視線を送っている。
134
エズバーン
『ぬぅ~...』

戦慄の瞬間。
彼の表情はまるで、触れてはいけなかったような殺気を放っていた。
135
私は即座に感じ取った。

カズ
『いっ...いったい...どういうことですか?』



後編へ続く...


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[備考]

◎アシリウス
【アシリウス・ボラ―】の事。
スカイリムでは彼が持っていたとされる【ボラ―の忠誠剣】が有名。
シロディールの曇王の城にてサルモールの攻撃から逃れ生き残った三人目のブレイズだが、彼の事はエズバーンもデルフィンも語ってくれない。
なのでここで出してみました。

◎魂石症
スカイリムには魂石(こんせき)という架空の石が出てきますが、この石は人やモンスターなどが亡くなった時、その魂を吸収させる事ができる魔法効果のある石となっています。
この作用を"ドラゴンの魂を吸収する事の出来るドラゴンボーン"と重ねる事で起きる、一時的な病の症状を【魂石症】と名付けました。
実際のゲーム内には無い病気です。

症状の幾つかをデルフィンが上げてくれたのですが、今回は三つだけ。
①意識を失う。
②高熱を出して寝込む。
③死んだように冷たくなってしまう。

この症状は【スカイリム道中日記】にて【argonian】さんが書かれている物語からヒントを頂きました。
タイトル『英雄の再来』より...

◎黄金の瞳=竜の瞳
今回、椿ちゃんが魂石症を患った際に、彼女の瞳に金の輪が浮かび上がる症状を重ねました。
興味のある方は画像をアップしてよく見てみてください。

アシリウスのレポートは架空の物なのですが、エズバーン達と同じように曇王の城で存命だったらしいので、彼もドラゴンについての研究を続けていたとしています。
彼の研究対象は"ドラゴンを従わせる事ができる"【黄金の瞳】または【竜の瞳】についてと設定しました。

内容については追々書いていこうと思います。
しかし、実はSOSの本編にて既にこの【黄金の瞳】を持つキャラを登場させています。
果たしてこの関係は?
A


[使用MOD]

Snow Globe House...ひげよしさんが作成されたお家MODです。

2018/4/13/17:55


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