96
翌朝、ディバイドを出てから今日で三日目。
急ピッチで進めてきた謎解きが、ついにあと一歩というところまで来た。
96-2
それは思った以上にスムーズで、どこか早計な気もしたが、それでも今日を合わせて残り五日しかない。
97
その日の早朝、我々はスカイ・ヘイヴン聖堂を後にし、コルバンヤンド遺跡に向かう事になる。
98
現在のスカイリムは、領主制度を設けているらしい。
9つの地域には首長もいるが、彼等を何人かの領主が統括している状況だ。
99
内戦終結後、帝国の残党兵の殆どは吸収されたらしいが、不満を理由に徒党を組み、現在の体制に抗う者もいた。
連中の取り締まりを強化するために、各地域への出入りには砦のような関所が設けられており、ここで通行証を見せる取り決めとなっている。
100
通行証は各地の首長が発行するのだが、複数の地域をまたぐ場合は、領主が超法的に出す場合もある。
デルフィンはウルフリックとの取り決めの際、彼から直接証書を貰っているので、スカイリムではある程度の自由が効くらしい。
101
スカイ・ヘイヴン聖堂からコルバンヤンドに向かう最短ルートは、南方のホワイトランホールドを通過するのが近道なのだが、そちらの方では許可が下りなかったんだそうだ。
101-1
その為今回は、一旦マルカルス方面に戻り、カース川を渡り、イーストリーチからハイアルマーチに入り北上、ドラゴンブリッジ付近で東へ向かうというルートに。
102
無人のように静まり返った砦を横目に、坂を下ったところで馬車は再び止まった。
103
御者
『橋についたぞ~』

小気味のいい御者の声は、どこか胸がスッとするようなところもあるが、同時に”なぜこんなところで?”という疑問が沸いた。
104
デルフィンは馬車から降りると、真っ先に御者の元へ行く。
我々もそれにつられて陸に足を着ける。
104-1
御者の言う通り、馬車は橋の手前で止まっていた。
その先に見えるのは、雪が降り積もった坂道だ。
105
馬車は少し広い場所で180度回転すると、元居た場所へと帰っていった。
天気もよく日差しもあるが、あまり暖かさを感じない。
106
デルフィン
『ここからモーサルまでは歩きよ』

どうやら彼らには別の計画があるらしい。
スカイリムが初めての我々は指示に従うしかなかった。
107
橋を渡り白い坂道を登り始めた。
足元がギュッ、ギュッ、と心地よく押しつぶす音に代わる。
時折もろいガラスの面を踏むような感覚もあった。
霜柱だ。
子供の頃、よく土の上から踏んだ記憶がある。
ちょうどスナック菓子を齧った時のような、心地いい感触だ。
108
坂道を登り切ると深緑だった木々の風景が、凍てつく棘のように鋭い景色に。
そしてそれは唐突に我々の目に入り込んできた。

椿・メアリー
うわぁ~

108-1
なんて美しいんだ...これが噂に名高い”スカイリムの空”か...
澄んだ空気と青い空が、どこまでも果てしなく続いている。
ついこの間まで戦火に包まれていたなんて信じられない。
108-2
大地には長い獣道が続いているが、どこまでいっても白い雪に埋め尽くされていた。
数分前とはまるで別世界...その風景に私は圧倒されたが、不安は全く感じなかった。
よくわからないが、まるで何か柔らかく暖かいモノに包まれるような、そんな錯覚を覚えたからだ。
109
モーサルまでは、歩きでもさほど掛からなかった。
天然の巨石を利用した門を抜けると、さっきまで気配すら感じ取れなかった町並みが、いきなり飛び込んでくる。
町というよりは村に等しい。
だが此処もまた、先ほどの雪景色とは全く違う別世界だった。
110
町中に入って最初に目についたのは、道路を塞ぐようにして居座っている馬車だ。
両脇には木造の家々が並び、その先には...高い緑の針葉樹が立ち並んでいた。
この町には雪が無い。
というより極端に少ないのだ。
110-1
辺りには溜池が広がっており、人々はその上に家を建てている。
どうやらここは、豪雪地帯と背中合わせの不思議な場所のようだ。
111
デルフィンとエズバーンの二人が足早に進むと我々も遅れまいと着いていく。
大きな馬車の脇を曲がり、一軒の宿屋の中へスルスルと入って行ってしまった。
112
この馬車、車輪に何か大きな物が付いている...それになんとも見事な幌だ。
我々ハイロック組にとっては、非常に興味深く思えた。
113
タケオ
『それ、馬ゾリですよ』

タケオが気付いて教えてくれた。

カズ
『もしかして、これに乗っていくのかな?』
114

タケオ
『そうですよ^^
ハイヤルマーチからペイル、ウィンドヘルム北東は殆どが雪道ですし、地盤の軟弱な悪路も多いので馬がへばり易いんですよ』

当然だが、彼もコルバンヤンドには足を運んだ事があるのだろう。

タケオ
『それにここから先は、天候次第でもっと厳しくなるかもしれないので..』

山の天気は変わり易いというが...ここはそんなに標高が高いのだろうか?
兎に角我々も彼らの後を追うように宿屋に入る事にした。
115
最初二人の姿を見失ってしまったのだが、デルフィンの声を捕らえる事ができた。
何かを手に持ちながら奥で誰かと話をしている。
116
ん?...犬?
117
デルフィン
『ホントに2ケースで足りるの?』

犬男
『ああ、大丈夫だ。それにこれはあんたら用じゃない』
118
デルフィン
『どういう事?』

犬男
『届け物用と砦の爺さん用さ』
119
デルフィンと犬顔の男は、再び立ち止まって会話する。
どうやら彼は、あの馬ゾリの御者らしい。
しかしまた随分と厚着をしている様に見える。
スカイリムが極寒の地と呼ばれているのはわかるが、この先の道すがらはそれほど厳しいのか...?
120
デルフィン
『関所は大丈夫なの?』

犬男
『問題ない。あいつら金に目が無いからな』

あまり穏やかじゃない話に聞こえる...というか通行書があるんじゃなったのか?
121

犬男
『関所を通過した後で悪いんだが、ドーンスターに寄り道させてもらうよ』

デルフィン
『届け物ってキャラバンなのね?』

犬男
『それが本業だからな』

デルフィン
『日暮れ前までにペイルに入れれば、それでいいわ』

犬男
『助かるよ』
122
エズバーン
『砦の方は大丈夫なのか?』

犬男
『だからこの酒があれば問題ないよ』

どおやら目的地までには色々と問題があるようだが、犬男の話だと大した問題ではないらしい。
123
デルフィン
『さっさと移動しましょう』

デルフィンは彼等に手招きをすると、イソイソと外へ出ていってしまった。
129
犬男
『みんな乗ったかぁ~?』

デルフィン
『いいわっ!出して!』

窓越しに犬男が声掛けすると、デルフィンはそれに呼応するように答えた。
131
犬男
さぁ~ジョリィ~今日も張り切っていこう♪
晩飯は、あまぁ~い♪あまぁ~い♪リンゴパイだぁ~♪
ハイサーッ!出発進行っ―!

掛け声を上げると、ザザザッという音と共に馬ゾリはゆっくりと動き出す。
132
犬男
テェイィィィ~シナモン♪ハチミツぅ~タップリぃ~リンゴパイぃ~♪

馬に指示を出しているのか、自分に言い聞かせているのかよく分からないが、独特の言い回しが面白い。

133
ある程度速度が上がり真っ直ぐな道に入ると、殆ど揺れを感じなくなった。
進んでいるという感覚はあるのだが...
それにしてもこの中は暖かいな...外の気温とは大違いだ。
天井にぶら下がっている...アレが熱源だろうか?
134
デルフィン
『紹介が遅れたわ。彼はジプサムよ』
135
彼女の話だと、ジプサムは立派なカジートなんだそうだ。
そおいえばどちらかと言えば、あの顔は犬というよりネコだな。
にしても、ずいぶんと特徴的な顔つきをしている。
136
元々彼はスカイリムを転々とするカジートキャラバンの一員だったらしい。
内戦当時、スカイリムでの彼等はあまり好ましく見られていなかった。
137
原因は一部のカジ―トが、”スク―マ”という麻薬の原料になる”ムーンシュガー”を売り歩いていたからだ。
その為、初期の頃の彼らは城壁の内側で商売することを認められなかった。
138
だがポエットという人物のおかげで、それが認められるようになったというのである。
キャラバンの商売も軌道に乗れた事で、事業拡大を目指す一方、商品の仕入れにも力を入れるために、ジプサムのような運送屋が必要になって来たという訳である。
139
とはいえ天候不順や、カジ―トに対して偏見を持ち続けている者も少なくないので、変動が激しいのが現実らしい。
そこで始めたのが、物資以外の運搬という訳である。
流石はカジートらしい商売魂と言った所か。
彼等の話を耳にする限りでは、あまり合法的とは言えそうもないが、それなりの実入りもあるのだろう。
139-1
いつの間にか外の様子に変化が表れていた。
タケオの言う通り白い雪がちらほらと降り始めてきたようだ。

140
皆思い思いに荷台の中で簡単な昼食を済ます。
馬車だとかなりの揺れがあるので、舌を噛む危険性から喋る事すら億劫になりがちだが、馬ゾリは殆ど揺れがないため食事までできる。
しかし、やはり不思議なのはこの暖かさだ。
141
木や皮で作られた馬車の中に火は持ち込めない。
外は吹雪いているというのに、何故こんなに暖かいのだろうか?
142
程なくして今日二つ目の関所に到着したようだ。
外で衛兵とジプサムが何かを話しているが、内容はよくわからない。
出発にはそれほど時間は掛からなかった。
143
硬貨が効果を発揮したらしいw
いずれにせよ陽が落ちる前にペイルに入る事が出来た。
144
馬ゾリは再び動き出し、今度はどんどん北上を続ける。
次の目的地は北の港町ドーンスターだ。
145
幌のせいで外の全景は見えないが、入口窓から逆に流れて行く景色はなんとも芸術的で荒々しく見えた。
まるで女神キナレスが与えた常命の者達への試練のようだ。
146
自然の力を敬い、自然の怒りを恐れること。
147

人は己を知り、身の程を弁え、自分自身に誠実であり続ける事が、生きる事の本当の答えなのかもしれない。
しかし当たり前な事ほど、難しい事は無いのだ。
148
ジプサム
セイヤァアア!

ジプサムは威勢よく奇声を上げ、縄鞭で馬のケツを叩く。
馬ゾリは曲がりが無いと猛烈な勢いで進んで行く。
149
デルフィン
『ずいぶんと早いわね』

エズバーン
『この分だと、暗くなる前にコルバンヤンドに到着できるかもな』

密かな期待を込めて馬ゾリは雪道を行く。

150
ドーンスターに到着した時、太陽は雪のため厚い雲の中に隠れてしまっていた。
それでも外は明るいので、夕方頃といった所だろう。
151
ジプサムが手持ちの弓で天井をドンッドンッと叩いた。

ジプサム
ヒスイッ!起きろ!荷下ろしを手伝ってくれっ!

その声は荷台の中まで聞こえる。
152
ヒスイ?そんな名前の人物がこの中にいただろうか?
皆が御者窓の方に目を向けた。
どうやら古参の二人にも知れていない事らしい。
153
ドスンッ!
とデルフィンの目の前に何かが着地した。
154
突然姿を現したボロを纏った少女...緑髪に角が生えている...

ヒスイ
『うーん...』

眠たそうに目を擦りながら私達の目の前をヨロヨロと歩く。
155
椿やメアリーも目を丸くし、完全に釘づけだ。
155-1
まさか幌の天井に女の子がいたなんて、全く気が付かなかった。
156
ジプサムが入口窓から顔を出す。
いつのまにか真っ白に変貌しており、異様さが倍に跳ね上がっていた。
157
ジプサム
『ちゃんと厚着しなさいっ!また風邪を引くぞ!』

ヒスイ
『あいあい』
158
ジプサム
『荷物は後ろにある四角い箱だ。それを降ろして持ってくるんだ』

ヒスイ
『あいあい』

ヒスイと呼ばれた娘は、カジートの言葉に不愛想に反応する。
159
ヒスイ
『はいはい、ごめんなさいねぇ~』

小さな荷物を抱え、ヨタヨタした足取りで乗客の足を避ける。
160
ジプサム
『ほれっ!ちゃんと帽子をかぶりなさい!』

ヒスイ
わかってるよっヘチャムクレッ!もぉっ!』

”ヘチャムクレ”とはまた面白い表現だ。
いっちょ前に仕事をする自分が誇らしかったが、それを認めてくれない親に苛立つ子供。
161
ジプサムは随分と口うるさい親方らしい。
本当の親子ではないだろうが、愛情が感じ取れる。
きっと彼女が心配なのだろう。
162
ジプサム
『悪いんだがぁ~すぐ終わるから少しばかり辛抱してくれ』

気を使ったのか彼は我々にそう言い残して行った。
163
辛抱するというより、ありきたりな家族の一場面が見れた気がして、どこか心が満たされた。

...だがその言葉の本当の意味は、すぐに分かる事になる。

164
ジプサムとヒスイは、荷物を持ち出すと馬車から離れ、キャラバンのテントに潜り込んでいった。
165
10分、15分程だろうか、彼はアハカリを伴って我々の元に戻ってきた。
そして気が付く。
166
ジプサム
ああっ!

アハカリ
なんてことっ!

ヒスイ
『あららぁ~』

167
幌の中は急激に温度が下がり、そこに居た全員が真っ白くなって歯をガチガチ鳴らしていた。

170
ヒスイが幌の定位置に着くと忽ち元の暖かさが戻ってきた。
それでも今度は、皆で厚着する事に。

ジプサム
『ヒスイがいる周辺は温度が上がるんだよ』

なるほど、だから暖かかったのか。
171
デルフィン
『それで私たち用の酒は無いって言ったのね...』

ジプサム
『ああ、そうなんだが...何でかは俺らにもよく分ってなくてな。
その場から離れると急に温度が下がるんだよ...だが、まさかここまでとは...』
171-1
デルフィン
それを早く言いなさいよっ!

ジプサム
『ああ、面目ない...』

彼は気まずそうに口する。
172
生きた暖房器具とも言うべき少女は、彼等のやり取りにニヤケ顔を浮かべて見下ろしていた。

デルフィン
死ぬところだったじゃないのっ!

ジプサム
『悪かったよ...』

不思議な少女...この世界にはまだまだ未知の部分がある事を、まざまざと思い知らされた気がした。

173
再び馬ゾリは動き出す。
ジプサムはキャラバンに荷物を置いてくる代わりに、きちんと土産も貰っていた。
これから向かうダンスタッド砦の監督官が入れ替わったらしい。
なんでもファセンディルというエルフなのだが、正義感が強く堅物で知れているらしく、カジートの間では有名人なんだとか...
174
面白いのはこのファセンディル、元帝国軍人であり、嘗てはリフト地方の監視を任された将校でもあった。
それがどういう訳か反乱軍の軍門に下ったというのである...
175
アハカリ
『あのエルフは物で釣れないわよ』

ジプサム
『俺も以前顔を合わせた事はあるが、悪いエルフじゃない。それに...サルモールを相当嫌っていた』
176
そいえば久しくその名を聞いていなかった。
”サルモール”
ウェイレストでも彼等が入り込んでいたという噂はあったが、スパイ活動が得意だったジョルジュも、そこまで刃先を入れる事が出来なかったらしい。(SOS第二話)
177
デルフィン
『リンの時はどうやったの?』

ジプサム
『あの時はウィンドヘルムで城壁修理の人員を募集していたから、その話に乗ったんだよ。
監督官のモースはアル中爺さんだったし、何度も通っていたから顔も知れていたしな』
178
エズバーン
『同じ手は通用しないか?』

アハカリ
『無理ね。募集はもう締め切ったそうよ』
179
いずれにせよ別な手を使うしか無いという訳だ。
エズバーンは時間がもったいないという事で、ドーンスターの出発を急がせ、作戦は幌の中で考える事にした。
180
デルフィン
『どうするのエズバーン?』

彼は額にしわを寄せ厳めしい表情を浮かべている。
181
カズ
『正義感の強い人物なら...事実を話してみては?』

エズバーン
『お前さんの言葉とは思えんな?』

真顔で返された。
考えてみれば虚栄や虚構が蔓延っていたウェイレストでは、”偽り”が最も洗練されている社会だった。
182
エズバーン
『ここはスカイリムだ。ハイロック組は口を挟まんでいい...』

互いに知恵を出し合う事も必用だが、今は余計なお世話なのだろう。
暗に”部外者は黙っていろ”と叱責された。
183
エズバーン
『デルフィン、刀の柄を寄越せ...』

言われたデルフィンは、不思議に思いながら柄を外すと彼に渡した。
184
デルフィン
『こんなものどうするつもり?』

その質問には答えず、彼は御者窓に向かって大声でジプサムを呼ぶ。
185
エズバーン
砦に着いたら、”監督官と話したい者がいるから会わせろ”と衛兵に伝えろっ!

ジプサム
『そんなんで大丈夫なのか?』

吹雪の中から声が帰ってくる。

エズバーン
ああっ!お前さんは知らぬ存ぜぬで通せっ!

187
ドーンスターからダンスタッドまで約一時間程だろうか。
随分経過した気もするが、おそらくジプサムは時間稼ぎをしてくれたんだろう。
188
ダンスタッド砦は両手の山林に挟まれるように建っている。
内戦当時はペイルとウィンドヘルムを隔てる頑強な要塞として活躍したらしいが、今はもっぱら巡回兵達の詰所になっている。
建物自体は非常に大きいので、行商などもよく立ち寄るらしく、ジプサムが言うには晴れた日はなかなか活気があるとか。
だが我々が到着した時、そんな活気など微塵もなく、吹雪の中であちこちと兵士達が見張りに立ち、物々しい雰囲気を醸し出していた。
189
ジプサムが衛兵と何かを話している声が聞こえる。
相変わらず内容はよく聞き取れない。
190
暫くすると衛兵の一人が、入口窓から顔を出した。

衛兵
『監督官と話したい者がいるそうだな?』
191
兵士がぶっきらぼうにそう口にすると、エズバーンは腰を上げ彼の後に着いていった。

192
15分程だろうか?彼は何食わぬ顔で馬車に戻ってきた。
193
外の衛兵が進めの合図を出すとソリが動き出す。
194
ザザザッという雪を掻き分ける音が聞こえ、入口窓からは砦の門がどんどん小さくなっていくのがわかった。
195
どうやら御老体は奇跡を起こしたらしい。

砦が吹雪で見えなくなった頃、デルフィンはエズバーンに何をしたのか聞いた。
我々も興味深い。

196
エズバーンは始め、テーブルの上に刀の柄を差し出した。
197
ファセンディル
『これは一体何だ?』

ファセンディルは眉を傾げる。
だがエズバーンは、疑わしく思っているエルフに対し訝し気に返す。
197-1
エズバーン
『お前さん、嘗ては帝国の臣ではなかったのか?
なのにこれが何なのか、本当にわからんのか?』

するとファセンディルは自然と視線を逸らし、少し恥ずかし気に口にした。

ファセンディル
『私は元々辺境勤務をさせられていた身だ...シロディールにはここ何年も帰っていない。それに暫くの間、世俗事とは離れていたのでな...』
198
エズバーン
『ふむぅ~まぁいいだろう。
これは嘗ての皇帝、マーティン・セプティムの刀の柄だ。
先日私の元に或る人物が来られてな、これを置いていかれた』
199
ファセンディル
『ある人物とは?』

エズバーン
『皇帝の勅使だ』
199-1
ファセンディル
何だとっ!陛下の勅使だってっ!?

ファセンディルの目の色が急に変わる。
199-2
エズバーン
『お前さんの忠誠心を陛下は買っておられる。
随分な堅物だと言われているらしいが、陛下はお前さんの帰属を願っているそうだ』

ファセンディル
『私の事をそこまで...』

しかしエルフは肩を落とし向こうを向いてしまう。
200
エズバーン
『陛下はスカイリムでの敗退を痛手と考え、我々ブレイズに再び権限を与えて下さった。
この柄はその証拠でもある』
201
エズバーン
『ファセンディル殿。貴殿の帝国に対する忠誠心がまだ残っておられると有難いのだが...』
202
湧き上がる何かを押し返す様に唾を飲み込んだ。

ファセンディル
『陛下が私のような一介の兵士に目を掛けて下さるとは...
しかし私はもう、帝国の臣ではない...私にいったい何ができるというのだ?』

辛辣な言葉遣いと後ろ髪を引いている様子がまざまざと感じ取れる。
どうやら口に出し難いらしい。
だがエズバーンにとってはそれだけで十分だった。
203
エズバーン
『何やら事情があるらしいな。それならば行動で示してもらいたい』

ファセンディル
『行動だと?』
204
エズバーン
単刀直入に言おう。我々はこれからウィンドヘルムへ向かい、ウルフリック・ストームクロークを暗殺するっ!

ファセンディル
『なんだとっ!』

ファセンディルは驚きの表情を浮かべた。
205
エズバーン
『この作戦は既に始動しており、我々が成功した暁には狼煙を上げ、ドーンスターの沖合に停泊している100からの帝国海軍がスカイリムに上陸する予定だ』

ファセンディル
なんとっ!帝国海軍がドースターにっ!?
207
エズバーン
『だがここで貴殿が我々を止めれば、この作戦は水泡に帰す事になる。
そうなればファセンディル殿、お前さんは二度とシロディールの地を踏めなくなるだろう...』

208
デルフィン
『忠誠心をくすぐったのね』

エズバーン
『堅物ならと思ってな。だがまぁ~内戦当時はリフテン監獄に収監されていたらしい。情勢を理解していなかった事が幸いしたよ』
209
ウルフリックを殺すとは...なんだか仕事をズル休みする為の口実みたいだw
209-1
ファセンディルというエルフが、この後どんな行動を取るかは別として、残すはコルバンヤンドまでの道をひたすら進むだけだ。
210
ソリは想像以上に速いスピードで走っているようだ。
辺りはすっかり暗みを帯びてしまい、いつの間にか陽も落ちていた。
211
御者のジプサムも大変だろうが、彼を含め我々とこの大きなソリを猛吹雪の中、懸命に動かしてくれているジョリーにも感謝するべきだろう。
スカイリムの馬がいかに頑強で優駿と呼ぶに相応しいか、身をもって教えてくれたのだから。
212
ジプサム
どう~どう~

ジプサムが馬に声を掛け、速度を緩めつつ少しづつ進行方向を変えているようだ。
213
デルフィン
『細道に入ったようね。あと少しだわ』

慣れていると見なくても解るのだろう。
ここにきてガタガタガタと馬車が揺れだした。
214
タケオ・フェニグ・カズ
うわっ!

突然大きく揺れた。
流石にこれには驚きを隠せない。
道が狭い分、道路の整備が行き届いていなかったようだ。
215
馬車の縦揺れが少し緩やかになった。
更に速度が落ちてきている。
216
ザザザザザァ―――――――ッ!

凍った雪を激しく削りながら車体を横滑りさせる。
217
ジプサム
コルバンヤンドに到着だァ―――――ッ!

ジプサムが時の声を上げると、馬も激しく嘶く。
馬車は雪煙を巻き上げ、定位置にピタリと嵌(はま)るように停車した。
218
その言葉を耳にした時、安堵感の震えが体中を駆け巡った。
219
黙々と荷台から降りる。
誰一人として言葉を発する者はいない。
ほぼ丸一日馬車に乗りっぱなしだった事もあり、尻や腰の痛みに耐えかねていた事でそんな元気も沸いてこなかった。
220
メアリー
『つばきぃ~着いたぞぉ~』

デルフィン
『こっちよ!』

タケオが松明に火を付け、デルフィンが先導する。

...が...
221
メアリー
ツバキッ!

突然メアリーが大きな声を上げた。
221-1
何事かと皆の視線が彼女に集まる。
222
荷台の中では椿が仰向けで倒れてしまっていた。

メアリー
おいっ!ウソだろっ!?目を覚ませよっ!

メアリーの必死の呼びかけにも全く反応を示さない。
222-1
彼女の顔からは血色が消えており、まるで遺体の様に青く冷たくなっていた...(To be continue...)



ポチットお願いしますm(_ _)m

[備考]

◎エズバーンの右耳
エズバーンは右耳の聞こえが悪いようです。
SSでこれを表現したかったので、ジプサムにダンスタッド砦の事をもう一度聞き返したという場面を加えました。

◎勅使(ちょくし)
皇帝の使者であり、皇帝直々の命令を伝える者の事。
彼らは職務上皇帝の代役という形になるので、勅使の命令に逆らう事は皇帝に逆らう事になる。
様々な理由から権力を振りかざす輩も多い。

◎ジプサムとヒスイ
ジプサムさんとヒスイちゃんには簡単なバックストーリーを作成いたしました。

ジプサムは元々カジートキャラバンのアハカリの隊にいたカジ―トで、独立心の高いカジートだった。
(カルジョがポエットの元に行っているのでその代役)
136
雪が降り積もるある日、彼は一人の女の子を救い出す。
翡翠色の髪に角が生えている奇妙な娘。
ボロ着を纏ったまま息も絶え絶えに倒れていた。

仲間たちの協力により、彼女は無事元気を取り戻し、やがて行動を共にする様になる。
ジプサムは自分の名前すら憶えていないこの娘に、ヒスイと名付けた。

ある日、リーダーのアハカリから物資の運搬の仕事をしてくれるよう頼まれる。
独立心の高いジプサムはここぞとばかりにOKをだすと、ヒスイも彼についていく事に。
D
ジョリーと名付けられた一頭の馬と最新の馬ゾリを預けられると、モーサルを拠点に、ペイル、ウィンドヘルム、ウィンターホールドと四つの地域を跨いだ運送屋の仕事をするようになった。
C
後ほどSOS Characterにて詳しく公開しようと思っております^^;スイマセン

因みにSOSのヒスイちゃんには特殊な能力がある設定になっています。
周りを暖かくする能力。
要するに生きたヒーターです。
彼女がいる半径数メートル以内は、人肌より少し暖かくなるためにストーブなどの暖房が必要ありません。
雪深いスカイリムには打って付けなのですが、何故か本人は風邪をひきます。
風邪を引くと治りにくい体質で、その間暖房の能力は失われます。
また彼女が離れるとその周辺は急激に温度が下がってしまいます。
保護者代わりのジプサムも、この能力についてはよくわかっていません。
カジ―トがどれほど寒さに強いかは別として、ジプサムは毛がある分あまり影響が無いとしています。

[使用MOD]

Custom Voice Follower_Airi...okame281さんが作成されたカスタムボイスフォロワーの【アイリ】ちゃんです。

kskFollowers...ksk201さんが作成されたフォロワー【ミック・ブーン】さんです。

FrogFollowerJP...kenokichi3さんが作成されたフォロワー【フロッグ】さんです。

Ring Summon Faithful Gear Knight...rireki_lymanさんが作成されたフォロワー【ゼファー】さんです。

MyuHechaMuCat...myunnvさんが作成されたフォロワー、へちゃむくれカジートの【ジプサム】さんです。

Yagi...Metenee_28さんが作成されたフォロワー【ヒスイ】ちゃんです。

今回のお話しには、実に様々に沢山のフォロワーさんにご参加いただき、そしてご協力いただきました。
物語の端役からメインまで(端役と言ってもこれから活躍していただく予定となっています^^;)
SOSの話の花となるだけでなく、奥深さと活力を加えてくれる方々ばかりでホントに感謝しております。
本当にありがとうございましたm(_ _)m
これからも大切に使わせて頂こうと思いますので、どうか長い目で見て頂けたらと思います。

※リンクはNexusや個人のサイトにて公開されている方となっております。

2018/1/27/18:00




ポチットお願いしますm(_ _)m