Nadia's Skyrim

  -スカイリムRP妄想日記-
【スカイリム独立戦争編】

2017年01月

【マルカルス アンダーストーン砦にて・・・】
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ソーナーは、イグマンド達を取り逃がした事を酷く後悔していた。
それに加え、カルセルモだけではなく、甥のアイカンターさえも姿を消していた事を知って驚いた。
まさかあのカルセルモが、ドゥーマーの研究を放棄してしまうとは、思いもよらなかったのである。
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マルカルスには、イグマンドの父親の代から、ハイエルフで組織されたサルモール達が常駐している。
彼らもカルセルモの研究資金を提供していたので、見事に出し抜かれたと思い、その意外性に驚いていた。
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実はソーナーが、クーデターを成功させる事ができたのは、自分が抱えている傭兵団の力だけでできた事ではない。
裏でサルモール達が、暗躍してくれていたからだった
といっても彼らとは、やはり”銀”の繋がりがでしかないのは確かなのだが、話を持ち掛けたのはソーナー自身であった。
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マルカルスは、カルセルモの読み通り、嘗てのドゥーマー達が作り上げた強大な都市国家であった。
その影響力は主にタムリエル北部で、しかも地上だけではなく地下までもが、彼らの支配地域として広がっていた。
なので彼らの事を【ディープエルフ】と呼ぶ場合もある。
ドゥーマーの技術力は非常に高く、現在に至ってもその解明は難題の一つとされている。
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しかし、そんなマルカルスだが、【歪んでいる】と評価する者も少なくない。
記録として残っているだけだが、嘗てのドゥーマー達は、自分達の技術力の高さには、相当なプライドと自信があったらしく、
自らの限界でも試そうとしたのか、神をも恐れぬような所業を何度も繰り返していたとか。
【恐ろしく不可解。知的で勤勉ではあるが、残酷でさえある】
もしかすると、世界の創造に至る真実まで、解き明かそうとしていたのではないだろうか?
それについては、真偽のほどはわかっていない。
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だが一つだけ確かな事実が残されている。
”理性と倫理に重きを置いたと思われる彼らは、デイドラ神への崇拝を軽蔑し嘲笑していた”という事である。

ドゥーマー達が謎のまま姿を消してからというもの、マルカルスの支配権は人間種達によって取って代わる事になる。
以後様々な勢力が興亡を繰り返してきたのだが、現在確認できる範囲でこの問題に直面していたのは、
ホルフディル以降になり、もちろんイグマンドもその一人として含まれいる。
噂だが、マダナックもこの事に関わっていたらしい。
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これはこの街の”特記事項”として、首長となった者達にだけに、代々語られてきた話になる・・・
マルカルスには【強大な獣が潜んでいる】と言い伝えられてきたのだ。
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イグマンドが、フォースウォーンの対処に遅れが出ていたのは、これが大きな原因だった。
というのも、前文でも説明したが、かつてマルカルスでは、ナミラの信奉者によるおぞましい事件が発生していた
しかし事件はこれだけではなく、無人のはずだった住居の一つから、あるはずのないモラグバルの祭壇が発見されたのである
82
デイドラ関連の問題が連発したせいか、自分たちでは手に余ると考え、イグマンドは【ステンダールの番人】と呼ばれる組織と手を組む事になる。
82-1
ところが、彼らが拠点としていた【ストゥーン渓谷】が、吸血鬼達の急襲を受けてしまった
突然の襲来に対し、準備もままならなかった彼らは劣勢に追い込まれてしまう。
82-2
その為、壊滅的なダメージを受けてしまい、一気に力を失ってしまったのだ
しかし、問題は人外の者の事だけではない。
82-3
この機に乗じてウルフリックが上級王トリグを殺し、スカイリムで内戦を引き起こし、イグマンド自身にもその火の粉が飛んできたのである
もはやフォースウォーンなど、貸す耳すら持てない状態だった。
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しかし、これらの出来事の一部にサルモールが絡んでいた事を知るのは、ほんの一握りの者しかいない。
その一握りが、ソーナーとレブルスである。
ソーナーにとっては、街の実権を握る為、サルモールにとっては、帝国の弱体化の一端を担う為の策であった





【マルカルス城外にて・・・】
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コルスケッガ―鉱山前で立ち往生していたリッケは、何度もマルカルスに密偵を送り、街の様子を探らせていた。
早い段階で中の様子を知りたかったからである。
とは言えフォースウォーン達は、退却する様子も無く、街中からの洪水は止みそうもなかった。
どこからか使者をねじ込む方法も考えていたのだが・・・
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二日ほど経過した頃、フォースウォーン達の姿がサルヴィウス農園から消えたという報告を受けた
ようやく諦めがついたのか、ネズミの穴に潜ったようである。
85-1
リッケはここでワザと隊を分け、少数兵でマルカルスに向かう事にした。
街中からの洪水により、布陣できる場所が小さく、フォースウォーンによる被害を最小限にするというのも理由なのだが・・・
本命は、マルカルスの首長が誰になったのか?である。
事と次第によっては、こちらも手を打っておく必要があったからだ。
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だが、農場に足を踏み入れた途端、唐突に目に入り込んできたモノは、その場にいる者全員にショックを与えるには十分な惨状だった。
人はかくもここまで残酷になれるモノなのか?と、問い詰めたくなる。
フォースウォーンとは、行き場を失った者が最後にたどり着く終着点だと、リッケは聞いた事があった
ともすればこれは、彼らの厳しい戒律による結果なのか、或いは最後に至ってまで悪足掻きをした結末なのか?

注意:次のSSは残酷な描写となっております!!心してご覧ください。










86-1
目の前に現れたのは、本当にあのマダナックなのか?
そう疑いたくもなった。
86-2
体中に剣を刺し込まれ、手足にも杭のように剣や斧が差し込まれている。
恐らく背中から刺された大剣が、最初の一撃だったのではないだろうか?
例えそうでなくでも、そうであって欲しいと願わんばかりだ。
その後に体を固定され、遠巻きに矢を打ち込んだといった所だろう。
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何故彼が、こんな最後を迎えなければいけなかったのか?
その真実は不明のままだが、それでもリッケは彼と、彼と死を共にした者を懇(ねんご)ろに弔ってやるよう、兵士達に指示した。
嘗てはリーチの王としてこの地に君臨し、帝国を散々に悩ませた男。
彼らの習慣が何であれ、一つの時代に生きた勇者であった事には変わりはない。
87-1
彼らの遺体は、草木に覆われた場所にある、一本の痩せた木の下に埋葬された。
決して目立たぬよう、それでも”此処に有りき”と示せるよう、精一杯の心意気として。
87-2
そしてリッケは、無人になったサルヴィウス農園に簡易的に陣を敷く事にした。
個人宅が在るのだが、不在の為そこは使わず、暫くの間だけ外を使わせてもらう事にしたのである。
生死は不明だが、ここを去る際にでも土地を整備し、僅かな賃金と手紙を認(したた)める事で許してもらおうと彼女は考えた。
軍の勝手による、良民に対する迷惑への最低限の配慮である。
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ソーナーも帝国軍の存在に気づき、街から水を引かせる段取りを取る必要性を感じていた。
元々彼自身が呼んだようなモノなのなのだが、本来ならイグマンドとラエレクの死体があるはずだった。
だが、この二人を仕留め損なっている。
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【この二人が死んだので、止む終えず首長の座に就く事にした】
というシナリオを設定していたのだ。
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だがレブルスは、その事に関して重きを置いていなかった。
傭兵団の力があり、それによりマルカルス兵達も支配している。
更にアンダーストーン砦を占拠した以上、この街の実権はソーナー自身が持っている訳で、
今更になってイグマンドが戻ってきたとしても、状況は何も変わらないとわかっていたからである。

だが主君の悩みも解らない訳ではなかった。
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レブルス
『二人を仕留め損なった事を後悔しても始まりません』

ソーナー
『だがあの二人がいないと、帝国は私を正式なマルカルスの首長として認めない。
そう言ったのはお前だぞっ!!

レブルス
『その可能性があると言っただけで、必ずしも認めないとは限りません』

ソーナー
『どういう事だ?』
92
レブルス
『シルバー・ブラッド家は、この街の利権を殆ど手中に治めています。
それはホルフディルの代であった頃より、スカイリム中で知れ渡っている事です。
シルバー・ブラッド家の持つ利権と人脈は、帝国にとっても非常に有用的であるはず。
彼らが内戦を治めようと考えている以上、今もこれからもこの関係を崩そうなどとは、
余ほどの馬鹿でもない限り、考えようとはしないでしょう』

ソーナー
『う~ん』
93
レブルス
『しかし、帝国も恐らくシドナ鉱山の所有権を狙っているとは思えます』

ソーナー
『だろうな・・・我々にとって最もな弱みだ・・・
もしクーデターが明るみになったら、帝国は我々を罪人扱いし、鉱山を奪いかねないぞ?』
93-1
レブルス
『なので排水をする前に、なんとか外に出て、帝国軍と接触する必要があります』

ソーナー
『こっちから先に出向くと言うのか?』
94
レブルス
『そうです。
帝国もシドナ鉱山を欲しがるでしょうが、それよりも守りたいモノがあるはず
そちらの方に話を持っていくためにも、こちらから先に出向くのです』
94-1
ソーナー
『帝国が守りたいものとは・・・なんだ?』

レブルス
『それについては、私が帰って来てからにしましょう』

ソーナーにとっては、彼のここまでの惜しまぬ尽力を考えれば、この程度のワガママは見逃すに値した。
一方のレブルスにとっては、この事が彼を追い詰める事であっても、説得できる自信があった。
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ソーナー
『それはいいが、お前が行くのか?』

ソーナーとしては珍しい言動だった。

レブルス
『元々私が進めてきた計画です。
誰が指揮をとり、マルカルスの動きをどこまで知っているのか探り、状況に応じて対処します』
96
レブルスはシロディールでの自分の苦い経験を元に、ソーナーに対して、全てを掛けて補佐しようと考えていた。
彼にはそれだけの価値があると、認めていたからである。
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抜け道がある訳ではないが、水が溢れ出ていない北側の壁を数人の兵士達に協力させ、ロープなどを使ってレブルスと共の者を街の外に出した。
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そして馬を使いサルヴィウス農園の帝国軍の陣に到着すると、大将に謁見を求める。
この時彼は、自分の事をこう言った。

”シルバー・ブラッド家の使者だ”と・・・
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その事を耳にしたリッケは、 ”やっぱり”という言葉が頭に浮かんだ。
ロリクステッドに来たマルカルス兵達が、フォースウォーンに進路を絶たれたハズなのに、考えていたよりも早く報告ができたのは、
シルバー・ブラッド家の手による者だという予想は、大方間違いないと確信できた。
彼らがこの混乱を利用しないハズがないと言えるのは、マルカルスにおけるシルバー・ブラッド家の影響力は、
嘗てのホルフディルを大きく上回っている事が、スカイリム中でも周知の事実だからだ。
100
しかし問題は二つある。
いったいどうやってクーデーターを引き起こしたのか?
そして今現在の首長は?
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だが反面、ここで彼らを追い詰めるような事をすれば、シルバー・ブラッド家との亀裂が生じる危険性がある。
彼らのマルカルスでの影響力を考えると、第二のウルフリックを作る事になり兼ねない恐れもあった。
とはいえ、 【シルバー・ブラッド故の帝国有き】という構図だけは、避けねばならい・・・
102
レブルス
『レブルス・クインティリアスと申します』

リッケ
『大将のリッケだ』
103
リッケ
『シルバー・ブラッド家の使者と聞いたが?』

それでもやはり、この名前を口にするには奇妙な違和感を感じざる得なかった。
104
レブルス
『その通りでございます』

レブルスは真顔で答えた。
105
リッケ
『マルカルスの首長は、イグマンドだったと思ったが?
何故シルバー・ブラッド家の使者が此処に来る?』

レブルス
『実はそのイグマンド首長なのですが、執政のラエレク及び従士のファリーンを含め、行方不明となっており、現在街中にて捜索をしている次第です』
106
シピウス
『なんだとっ!?いったいどういう事だっ!?』

リッケを差し置いて、シピウスは即座に反応した。
レブルスは、自分がいったい誰と話をしているのか一瞬迷った。
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リッケ
『あなたは黙ってなさいっ!』

リッケが有無を言わさず喝を入れる。
彼は”しまった”とばかりに口を噤んだ。
108
『では、今現在マルカルスを統括しているのは誰?』

レブルス
『現在、仮の首長として、シルバー・ブラッド家の二男で有らせられる ”ソーナー様”が、マルカルスを統括なさっております』
109
シピウスを含め、側近達も少なからず驚いた。
だがリッケは、ある程度覚悟はしていた。
そしてその名前を聞いた聞いた時、少々安心できたのは事実である。
ポエットが関わっていないと確信できたからだ
110
リッケ
『どういう事なのか説明して欲しいわ』

彼女は落ち着いた表情を見せて口にした。
111
レブルス
『フォースウォーンが攻めてきた時、首長のイグマンドは排水溝を堰き止め、街中に水を貯め、水攻めを使って彼らを退(しりぞ)きました』

レブルスは平然とし淡々と語る。

レブルス
『その後、我々シルバー・ブラッド家の元に一人の兵士が訪れ、首長が不在の為に代わりに指揮を執って欲しいという要請を受け、現在に至っている次第です』
112
リッケ
『イグマンドが突然、職務を放棄したというの?』

リッケは眉を顰める。
113
レブルス
『詳しい内容は、御本人が不在なので我々にも理解しかねています。
ですが、何故かイグマンド首長の一派だけではなく、我々シルバー・ブラッド家の長兄であるソーンヴァー殿も、行方を暗ませています』
114
リッケ
”ソーンヴァーも・・・?”

自分達の方にも奇妙な出来事が起きていると、まるで被害者寄りの言い分だった。

シピウス
『ゆくえふめぇって・・・おまえなぁ~~』

あまりにも都合の良い話のせいか、シピウスは呆れぎみだ。
だがリッケはそれを無視し、問答を続けた。
115
リッケ
『レブルスとやら。
お主の話の内容を聞く限りでは、随分と都合が良い様に思えてならないのだが?』

レブルス
『しかし、我々としても、どう答えようもありません。
実際、フォースウォーンが攻めてきた時、シルバー・ブラッド家は一切関わっていなかったのですから』

これは事実である。
116
リッケ
『水攻めで攻勢に転じている以上、要請もしてこなかった訳か・・・』

レブルス
『おそらくはそういう事かと・・・』

リッケ
『その後に、上層部が突如として姿を消し、困った兵士達がそなた等を頼ったと?』

レブルス
『その通りです』

レブルスは、しごく平然と答えた。
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この問答は酷く幼稚な印象であり、はぐらかされているようにしか思えない。
だが当のイグマンドの立場にしてみれば、何かの危険を察知し、マルカルスから脱出を図ったとも考えられた
それにコルスケッガ―にて、マルカルス兵達の遺体を目にしている事から、フォースウォーンが攻めて来るのを知って、兵を先行させた可能性もある
だがどれも、これと言って証拠となるものは見当たらない。
元々シルバー・ブラッド家が、自分達を呼びよせたのだと思われるが、その確たるモノすらない。
これらの人物を行方不明扱いにする事は、一見稚拙(ちせつ)の様にも見えるが、”常套手段”と表現したほうが適切だと思えた
118
彼女は一息つくと、椅子から立ち上がり口を開いた。

リッケ
『私が考えていた事を話そう』

”そらきた”
レブルスは心中で囁いた。
119
リッケ
『私はこの一連の出来事を、フォースウォーンを利用したシルバー・ブラッド家の仕業と見ている

しかし、リッケの唐突とも思えるこの言葉には、冷や汗を掻かざる得なかった。
120
レブルス
『それは・・・どういう事でしょうか?』
121
リッケ
『そもそもの発端は、ロリクステッドに来たマルカルスの伝達兵だ』

レブルス
『・・・』

リッケ
『そこでそなたに聞きたい。
コスルケッガ―鉱山の前で落石が起きていた事と、マルカルス手前の橋が沈められていた事は、知っているか?』
122
レブルス
『街の目の前の橋が壊されているという報告は受けましたが、コスルケッガ―については初耳でございます』
123
リッケ
『なるほど。
という事は、仮にイグマンドが、伝達兵をロリクステッドに送ったとしても、簡単には到達できないという事は理解できるな?』

レブルス
『マルカルスから外に出るには、通常この二本の道しか存在していませんので・・・』
123-1
リッケ
『となると、マルカルスはその伝達兵を”いつ”送ったかという事になる』

レブルス
『帝国軍に救援を求めに行った伝達兵という訳ですね』

リッケ
『そうだ』
124
レブルス
『残念ながらその事について、我が君ソーナー様も、私も一切関与していないので、答えようがございません』

シピウス
『なんだとぉ~!!』

シピウスは歯ぎしりをして口にする。
しかし、間髪入れずリッケが言葉を綴る。
125
リッケ
『だろうな』

そしてレブルスとの間を急に詰め、彼の事を疑わしいと言わんばかりに見下ろす。

リッケ
『残念ながら我々も、シルバー・ブラッド家が、この件に関わったという決定的な証拠を持ち合わせてない。
何せ我々に知らせた後、”その伝達兵は姿を暗ませたからな”』

舐めずり回すような言葉遣いに、レブルスは思わず唾を飲み込んでしまった。
126
リッケ
『それにっ!』

リッケは急に語尾を強く発すると、レブルスの目を蟻一匹逃すまいと刺すような視線で凝視した。
そして更に顔を近づける
126-1
リッケ
『裏付けをしようにも、送ったと思われる本人が行方不明となれば、尚の事都合がいいと感じないか?』

彼女が本当に言いたい事は、
”誰も呼んでないと言うなら、なんで私たちが此処にいるんだ?”という明らかな矛盾である。
そしてこれは、シピウスが怒った事を代弁しつつ、暗に”帝国を舐めるなよ”と威圧している意味も含まれている。
127
そしてその意味は、レブルスにも嫌というほど理解できた。
心の焦りが表に出てくる。
リッケが自分を覗き込む瞳は獣のようであり、思考ごと飲み込まれていきそうな感覚があった。
本物の将とは、 【爪痕を敵の心に刻むものだ】と聞いた事がある。
ある程度は承知ではあったが、百聞は一見に如かずとは正にこの事だと実感できた。
とはいえ自分がここでしなくてはいけな事は、徹底的にシラを切り通す事である
彼は声の上擦りを防ぐため、気づかれまいと唾を飲み込んでから口を開いた。
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レブルス
『私が知る限り、マルカルス兵はフォースウォーンとの戦いの際、一兵卒も城門の外へは出ていないはずです』

リッケ
『何故そう言い切れる?』

幸いにも、帝国軍が決定的な証拠を持ち合わせていない事が確認できた。
”強気に出ろ”そう自分に言い聞かせる。
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レブルス
『戦闘の後、現場で戦っていたマルカルス兵から、直接得た情報ですので。
何度も言うようですが、シルバー・ブラッド家は、フォースウォーンとの戦いの際、イグマンド首長には一切手を貸していません。
戦いがほぼを終わりを見せてから、我々の所に要請が来たのです。
私共シルバー・ブラッド家が知っている事は、戦闘以後の事であり、戦闘以前や最中に関しては答えようが無いという事です』
129-1
レブルスの抗弁はさらに過熱する。

レブルス
『そして我々シルバー・ブラッド家は、マルカルスにおける名士ではありますが、決してイグマンド首長との確執があった訳ではありません。
我々は常に、街の事を第一に考えています。
だからこそ信用があり、多くの住民達から支持を得ていられるのです。
ソーナー様が、帝国軍を支援しているのも、マルカルスという街を考えての事。
イグマンド首長の身に何があったにせよ、彼がこの街を投げ捨てたのは事実です』
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リッケはレブルスの語りに、一切水を差さなかった。

レブルス
『しかしソーナー様が、この街を今現在統括されていますが、混乱一つ起きておりません。
私が知る限りでは、一度(ひとたび)戦が起きれば、力のない良民達は第一の被害者になります。
この街の統括を受け入れた以上、シルバー・ブラッド家はその責務を全うしなくてはいけません。
今回のフォースウォーンの襲撃が、イグマンド殿が招いた事なのかは不明であっても、最も大変な後始末を投げ捨てたのは明白なハズ!
我々がどの様に疑われようと、この事実は覆りませんっ!!』

レブルスは、心内に燻(くすぶ)っているモノを吐き出すかのように言い切った。
シルバー・ブラッド家によるクーデターなど無い。
職務を放棄したイグマンドこそ、戦犯に問われるべきである
と言わんばかりに熱弁を振るった。
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リッケ
『そなたは、イグマンドより、ソーナーこそ、この街の首長に相応しいと言いたげだな・・・?』

それを聞いた時レブルスは、一瞬背筋が凍り、思わず奥歯を強く噛みしめた。
”しまったっ!ミス待ちしていたのかっ!?”
132
実際、シルバー・ブラッド家というのは、帝国軍内部においても謎の多い一族ではあった。
シドナ鉱山で採掘される”銀”によって成り上がり、帝国だけではなく、サルモールに至るまで広い人脈を持ってはいるが、把握すらできていない組織とも繋がりがあるとか・・・
黒い噂も絶えない分、彼らを支持する者が多いのも事実である。
寧ろそんな一族が、マルカルスを支配していない事自体がおかしいと言わんばかりに。
実兄である”ソーンヴァー”でさえも行方不明扱いにする事に、何かの不気味ささえ感じ得なかった。
133
レブルス
『それは・・・私個人としての見解ですので・・・』

彼は気まずそうに口にした。

しかしリッケは、仮にこの不可解と思われる出来事を不問にしたとしても、帝国軍としての権威(プライド)だけは守り通さねばならないと考えていた。
134
なのでこれ以上の問答は、お互いの為にならないと考え、早々に切り上げ、椅子に腰かけてから話を進める事にした。

リッケ
『マルカルスには、いつ入れる?』
134-1
この言葉に、レブルスは落ち着きを取り戻した。
だが”ため息”だけは絶対しなかった。

レブルス
『現在マルカルス内にて、積み上げた土嚢を取り除く作業をしております。
早ければ今日の夕方頃には、町の北側よりアンダーストーン砦へご案内できるかと・・・』
135
しかしそれでも”楔(くさび)だけは打つ”

リッケ
『よし、ならば水が引き次第、こちらも入城するとしよう。
しかしそれがわかるよう、お前達も外に出て来て、我々を出迎えて欲しい』
136
レブルス
『わ、私達と申しますと?』
137
リッケ
『ソーナー以下、重臣達全員だっ!』

リッケは睨むような目つきで、ぶっきらぼうに答えた。
要するに”臣下の礼をとれ”と言っているのである。
マルカルスにて権威を振るっているシルバー・ブラッド家と言っても、それは帝国が着いてくれているからだという事を暗に示したかったのだ。






138
レブルスは、 ”やはりそうきたか”と胸中を抓(つね)る思いだったが、それでも今後の事を考えれば選択肢は無い事も分かっていた。
だが当初の目的通り、鉱山目当てよりも、帝国の権威を守らせる事で好条件を引き出せた。
と同時にリッケという人物が、ノルドであっても中々の切れ者であり、要注意である事もわかった。
あとは残りの後始末だが、ソーナー本人の激怒は免れなかった。
139
ソーナー
『なにっ!!臣下の礼だと!?』

それも当然である。
ソーナーにとっては【シルバー・ブラッド故の帝国有き】が、プライドの一つだったからだ。
140
レブルス
『我が君、ここは辛抱する所です・・・』

ソーナー
『ぐぬぬ・・・ テュリウスの腰巾着に頭を下げろと言うのか ・・・』
141
レブルス
『我が君は、まだ正式な首長と認められた訳ではありません』

ソーナー
そんな事は百も承知だ!!
シルバー・ブラッドは、帝国を散々に支援してきたっ!
なのに!私を足元に据え置こうと言うのかっ!?

142
レブルス
『私はリッケ大将と、クーデターの話は一切していません。
疑っているような衒(てら)いはありましたが、彼らも我々との関係にヒビが入る事を最も恐れているようでした』

ソーナー
それがお前の言う、帝国が銀鉱山を手に入れるより、守りたいと言っていた事なのかっ!?

レブルス
『いいえそれだけではなく、それを含めた上での帝国としての権威を守る事ですっ!』

ソーナーは気難しい表情を浮かべながら、暫く黙り込んだ。
そして言葉をゆっくりと吐く・・・
143
ソーナー
”帝国有き故のシルバー・ブラッド”を示したい訳だな・・・

ようやく彼が、プライドの枷(かせ)を一つ外したようだった。
144
レブルス
『リッケ大将は、証拠を一つも持ち合わせていないと、私に直接話しました』

ソーナー
『それは、 ”今は持っていない”という事だろう?』
145
レブルスは表情を急に強張らせる。

レブルス
『我が君。
今の帝国軍にとって最も重要なのは、シルバー・ブラッド家のクーデターを糾弾する事ではありません!
スカイリムの独立を阻止し、ウルフリックの反乱を鎮圧する事ですっ!

ソーナーは再び口を閉ざした。
146
レブルス
『テュリウスが、我々との繋がりを持っているのは、自分達だけでリーチを治める事は、難しいと考えているからですっ!
なぜなら彼は、スカイリムにとって外国人であり、現地の人間では無いからですっ!
その為の多少のリスクも承知のはずっ!』
147
ソーナー
テュリウスが、我々のクーデターを不問にすると?
148
レブルス
不問にするのではなく、おそらく帝国全体の事を考え、揉み消しを図るでしょう。
それだけではありません、我が君がこの街の首長となる方向性だけでも決まれば、
イグマンド達は、”職務放棄”他多数の”犯罪人”として、帝国軍が処罰してくれます!

流石にこれには、ソーナーも驚きを隠せなかった。
149
レブルス
『なので今回はプライドを捨て、この”臣下の礼”を一つ守れば、シドナ鉱山の利権を奪われる事も無いはずです』
150
”やはりこの男はデキル。自分には無い物を持っている”
ソーナーは単純にそう感じ、奇妙にも身震いさえした。
時にハラハラさせる所もあるが、自分の右腕としては申し分のない人材だと感心した。
151
元々彼は商人である。
”益”こそが、彼を説得する唯一の方法だとレブルスは心得ていた。
同じ数字を扱っていた彼にとっても、一番に理解できる事でもあった。
152
ソーナーは不愉快な気持ちはあったが、レブルスの説得もあり、演技を続ける事にした。
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街中の水を引かせた後、彼は城門前に立ち、 ”臣下の礼”を取ってリッケ率いる帝国軍を迎え入れた。
153
リッケはソーナー以下重臣達を含め、今後のマルカルスの方針を端的に話し合った。

リッケ
マルカルスは、帝国統治の元で治められる事で、商業、医療、工業などの産業支援を受け続ける事ができる。
ただし、軍による行動は制限され、本国(これはテュリウス将軍も含まれる)の命令が無い限り、勝手な行動は一切認められない!
マルカルスは帝国軍の一部として統合され、共にスカイリムの和平及び帝国法制度における順守に活用される物とする!

153-1
これはつまり、シルバー・ブラッド家がマルカルスを統治するのなら、彼らの持つ私兵も、帝国軍の兵士と見なされる事を指す。
そしてその”帝国軍兵士”によってマルカルスは守られる代わりに、現在遠征軍として、ソリチュードを拠点に活動している帝国軍を全面的に支援しなくてはいけない。
という事はソーナーは、帝国軍に対して”銀”の供給を止めてはならない という事になる。

リッケはこの時、サルモール達も会談に臨ませた。
首長の交代に同意させ、なおかつマルカルスが帝国軍傘下に治まる事を”証人”として立ち合わせたのだ。
154
そしてリッケは、ホワイトランホールドに陣取るテュリウスに手紙を送った。
受け取ったテュリウスは、その内容にかなり驚いた。
154-1
将兵達の間では、しばしば不満の声が上がった。

”腹黒い事で有名なシルバー・ブラッド家を首長に据えるなど・・・”

”そのうち帝国を裏切るに違いない!”

”信用にならない・・・”

それでも現在の状況を考えれば、リッケは最善の方法を取ってくれたとテュリウスには思えた。

154-2
将兵達の意見も最もだが、今はホワイトランを奪還せねばならない。
その為には、マルカルスを敵に回すような事だけは控えねば・・・

今回は素直に受け入れる事で、目の前の問題に注視しようと判断した。
そしてソリチュードとロリクステッドの陣に手紙を送ったのである。
155
ソリチュードのエリシフには、マルカルス首長として”ソーナー・シルバー・ブラッド”を推挙する内容を。
そしてロリクステッドのバルグルーフには・・・
156
ホワイトランホールドから西側一帯に、多数の捜索隊を差し向けるよう指示を出した。
目的は ”元マルカルス首長のイグマンド”、”元執政のラエレク”、”元従士のファリーン”
この三名の逮捕である
そしてこの逮捕には”生死を問わず”と付け加えた。
しかもこの内容は、ソリチュードに送った手紙にも書き加えられていたのである。
だがこの中には、カルセルモとアイカンターの二人は除外されていた。




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<備考>

◎アーンリーフ・アンド・サンズ貿易会社
初代の名前はアーンリーフであり、その息子がグンナールで、息子の嫁がリスベットです。
そしてイメドゥナインとコスナッチは、アーンリーフが存命からの従業員でした。
この事は、リスベットとイメドゥナインから直接聞く事ができます。

おそらく『アーンリーフ・アンド・サンズ』という店名は『アーンリーフとその息子達(子供達)』とでも解釈できると思われるので、
初代のアーンリーフは、血筋よりも家族の輪を大切にした人物だったのかもしれません。
ゲーム内では、リスベットはグンナールといつ結婚したのかはわかっていません。
スカイリムの始まりは【E4 201(第四紀の201年)】となっているので、その五年前にグンナールがフォースウォーンの襲撃で命を落としています。

SOSではアーンリーフ・アンド・サンス貿易会社の起源について、いつ発足されたのかまでは書きませんでした。
そのうえでワザと”マルカルス事件”を跨がせています。
実際のマルカルス事件は176年に起きているようで、帝国対アルドメリによる大戦終結の翌年という形になります。
なので、SOSにおけるアーンリーフ・アンド・サンズ貿易会社は、20年以上続いている老舗という形にしてあります。
ただし、シルバーブラッド家による買収話があったかどうかは分かりません。

マルグレッドと言う人物の日記には、ソーナーはマルカルスのあちこちで地上げをし、土地を買い漁っていた。
とあるので、アーンリーフ・アンド・サンズもその対象であった可能性はあると思われます。
という所からストーリーに仕立てました。


◎シルバー・ブラット家のバナー

a1

このバナーは、著者のオリジナルですw
銀のインゴットに血が注がれているというイメージです。
マルカルスには血と銀が流れているを比喩しましたw


◎イメドゥナインとコスナッチ
彼ら二人は従兄弟同士だというのは、イメドゥナインから聞く事ができます。
二人ともブレトンですが、二人でのイベントは見当たりません。
共に同種族のブレトンではあるのですが、ゲーム内でイメドゥナインは店で雑務を担当し、コスナッチは宿屋シルバー・ブラッドで酒ばっかり飲んでますw
SOSでは”互いにブレトンという種族でありながら、ノルドの影響が強いらしく、消耗する事に必死だったようである。”と表現してみました。
ちなみにコスナッチは、プレイヤーとの殴り合いのイベントがあり、これに勝利するとフォロワーになってくれます。

”ブレトン”という種族は”人間”と”エルフ”の混血種であり、ハイロックに住みついたネディック(人間種)が、エルフに支配されていた時代に誕生したとされています。
当時は”マンマー”と呼ばれていたらしく、マンは人間、マーはエルフなのでそのマンマーでしょうw
オマンマではないのだ(´・ω・`)あふぅ?
彼らの特徴は、人間種でありながら魔法も使えるバイリンガル的な要素を持ち、情熱的であり知的であり気高く独創的であるとされています。
そんな彼らだからこそ、プライドも高いはずなのですが・・・
彼ら二人は完全に落ち目といった存在にしか見えませんw
ブレトンと言えば、フォースウォーンもブレトンを主軸として構成されていますが、二人は彼らとの関りは無いようです。

因みにSOS主人公のナディアも、何を隠そうブレトン種ですw


◎シルバー・ブラッド家の傭兵団の起源
シルバー・ブラッド家の傘下に入った、アーン・リーフ・アンドサンズでの仕事の為に傭兵団が発足されたという話は、架空ですw


Particle Field
ライアーの隠居所にて毒ガスのイメージを、こちらのフォグを使わせていただきました^^
綺麗なSSを撮影するには持ってこいのMODで、ナディアも以前個人撮影で使わせてもらった事があります^^
フォグ以外にも、羽とか花びらとか泡とかが、自分の周りを飛び回ったりします
すばらしいMODですね^^ノ


◎ファルメル(ファルマー)
タムリエル大陸を元々支配していたのは、ハイエルフ種族だったそうです。
彼らから派生した種族が多数おり、実はファルメルもその一つです。
彼らは元々スカイリムに定住していた、スノーエルフと呼ばれる種族だったのですが、アトモーラ大陸から人間種(イスグラモル)が入り込んできたおかげで住処を失い、
嘗てのドゥーマー(ドワーフ)を頼る事で地下に潜ります。
しかしそのドワーフに騙され、毒キノコを食べされたおかげで視力を失い、完全に奴隷扱いされ、ドゥーマーが姿を消した後も、何世代にも渡って地下に住み続ける事によって、
現在の醜悪な姿に変化してしまったという、悲しい過去を持つ種族でもあります。
そして、だからなのですが、ドゥーマーの遺跡の傍には彼らが多数蔓延っている事が多々あります。


◎クリフサイドとライアーの隠居所
二つのロケーションは、実際のスカイリムでも地図上ではほぼ密接しています。
ライアーの隠居所は、ブロークンタワー要塞からクリフサイドに向かう途中にあるのですが、個人的に意外と気付き難いと感じました。
またこの場所は、元々山賊達が占拠していたのですが、ファルメル達が地上に出るために穴を掘っており、彼らと戦った為に全滅させられたというエピソードになっています。
そしてプレイヤーがこの場所を訪れると、すでに事が終わっているのですが、たまたま外に出っ張っていた山賊達が帰って来て、戦闘になるイベント付きです。
今回はこの辺をチョコチョコ変えて、新米の傭兵団を抱えたコスナッチが、マルカルスに戻れないから、中継点として予定していたライアーの隠居所を訪れたのだが、
カルセルモとアイカンターの二人が迷い込んでいた所に鉢合わせ、その上ファルメル達が襲って来た。
そのファルメル達が壁の穴を掘っていた音が、たまたま地上にいたマリアの耳に入ったという設定にしてみました。
因みに本編では『ナミラの祠』は出てきませんw


◎リッケの警戒
リッケがサルヴィウス農園に向かう際に、兵を少数編成させた理由は・・・
①使える土地の狭さ。
②フォースウォーンの奇襲への対処。
③マルカルスの首長が誰になったのか?という警戒から。
と書きました。

使える土地が狭いのは、事前に偵察隊の報告によるものです。

フォースウォーンの奇襲は、ネズミの巣からの襲撃があった場合、道幅が限られている場所で、多数兵による戦闘は不利になり易いです。
また少数で戦いになったとしても、援軍があれば逆に奇襲になります。
そして、すぐに逃げられるようにするという意味もあります。

マルカルスの首長については、リッケはこの時点ではまだ兄であるソーンヴァーが、クーデター?か何かの首謀者と考えてます。(SOS第十三話EP3後編)
そうなると、ホワイトランにいるはずのポエットが関わっているのでは?という疑いが浮上してきます。
もしこれが当たりなら、即座に戦闘態勢に切り替えなければいけないからです。
その為の少数兵であり、そして偵察という意味も含めてあります。


◎モラグバルとナミラ
共にデイドラの王子です。

●モラグバル
支配・使役・冒涜・不和を司るデイドラロード。
元々はデイドロスという、ワニを二足歩行させたようなデイドラだったが、デイドラロードに伸し上がった。
以前、タムリエルに吸血症をもたらしたデイドラロードと書いたのですが、どうやら彼が直接広めた訳ではないようです。
この病の発端は、ラマエ・ベオルファグという一人の女性が関わってきます。
モラグバルは、彼女を散々に冒涜した事により、彼女の負の部分が増大し、それが元で吸血症が広まったというお話しです。
これはスカイリム内の【オプスカルス・ラマエ・バル】という書籍で確認できます。

●ナミラ
古代の闇を司るデイドラ、または霊魂のデイドラとも呼ばれ、あらゆる悪霊や邪霊を統べている。
蜘蛛、昆虫、ナメクジなどの人間が本能的に嫌悪する薄金悪い生物と関りがある。
『廃滅の女公』とも呼ばれている。
今作スカイリムでは、最も弾けているクエストを持つデイドラとも呼ばれていたりします。
内容に関しては、敢えて言及しませんが・・・
ナミラに関しての書籍は少なく、有名な一冊は『物乞い王子』です。
デイドラロードの中では、大人しい部類に入るかと思われてもいるようです。

ちなみにSOS十一話EP2の、ロザリーがナディアを助けた時のお話しに使ったロケーションは、『Beyond Reach』というクエストMODを使用しています。
このMODにはナミラが密接に関係してくる内容であり、彼女が支配する領域『スカトリングヴォイド』に足を踏み入れる事ができます。



◎ストゥーン渓谷
ストゥーン渓谷は実際のゲーム上のスカイリムには存在していません。
クエストMOD『Vigilant』にて登場する架空のロケーションです。
ゲーム上には『番人の間』と呼ばれるロケーションがあり、DLCであるDawnguardを導入する事によって、吸血鬼達に襲われたという設定になります。
今回は、筆者がVigilantをプレイしていた事と、ステンダールの拠点が印象的に良かった点で使わせてもらいました^^
非常に人気があるMODですのでお勧めですw

また”ストゥーン”とはステンダールの昔の名前だそうです。
なので九大神の一人である【ステンダール】の事を指します。
因みに前話である【第十四話EP2後編】に登場した、ファルクリース首長のデンジャールは、正式には”ストゥーンのデンジェール”という二つ名となっています。
彼との会話で『ファルクリースはステンダールに守られるだろう』と語る場面がありますが、どうやら彼はステンダールの信者のようです。
彼の親族が吸血鬼になっていたりと、奇妙な繋がりがあるようなので、この点は間違いがないと思われます。
最もステンダールの番人とは、関りがあるのかどうなのかは不明です。


◎ステンダールの番人
オブリビオンクライシスを起源として組織された集団。
主にデイドラ及びその崇拝者、または人外の者を排除・殲滅を目的としている。


◎イグマンドとラエレク、そしてファリーンとカルセルモ
イグマンドとラエレクは伯父、甥という関係で家族ですが、ファリーンは血筋が違います。
ソーナーが、イグマンドとラエレクの命を狙うのは、自分が正式に首長の座につくためという野心があるからなのですが、何故かファリーンだけターゲットに入ってません。
それはファリーンがカルセルモに見初められたからです。
彼女を亡き者にされたら、カルセルモの怒りを買い、マルカルスから出ていく、あるいは復讐しに来るなどの、デメリットの可能性がある為にリストに入れてませんでした。
カルセルモと言う人はマルカルスだけでなく、タムリエル全土における貴重な財産、人間国宝級の人物とSOSでは考えているので、主要人物からは基本的にターゲット外という事にしています。
寧ろ重宝した方が、自分にも利益があると考えられるからです。
ファリーンはその保護があるおかげで、今はリストに入っていないという事です。
これがもし、イグマンドと血筋が繋がっていたとしたら、状況はまた複雑になっていたかもしれませんw
ただし物語上では、ソーナーはこの全員を取り逃がしていますw
そしてこれは、マルカルスの裏の支配者らしい選択と表現しているつもりです。
というのも、帝国軍のテュリウスやリッケにとっては、カルセルモとファリーンの関係など問題に入っていません。
あるいは知らないのかも・・・?





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大変!大変!お待たせいたしました!!
SOS第十四話EP3
ようやく公開いたします!!

今回はマルカルスでの出来事がメインとなっています。

フォースウォーンのマルカルス襲撃により、行き場を失ったスカッジを始めとする鉱山労働者達は、ハイロックから来たレッドガードのマリアの助力もあり、
途中、マルカルス従士であるファリーンと、フョトラという女の子を助け出し、全員でクリフサイドに避難する事になりました。
ファリーンが目を覚ました日の夜、マリアが地面の下の奇妙な音に気が付きます。
一方、ファリーンを捜索していたはずのカルセルモと甥のアイカンターは、とある洞窟に迷い込んでしまい、そこで山賊らしき男達に捕らえられてしまいました。
彼ら二人の運命はいかに!?

マルカルスにてクーデターを引き起こし、その実権を握ったと思われたソーナーですが、それでも外にはリッケ率いる帝国軍が近づいています。
ソーナーの懐刀であるレブルスは、この事態にどう対処するつもりなのでしょうか?
また、サルヴィウス農園に避難したマダナック率いるフォースウォーン達は?

今話は嘗てないほどに戦闘シーンに力を入れました^^;
マルカルスを攻めるフォースウォーンの様に、多数による攻撃とは違い、個人による攻撃に色を加えたつもりですw
また、物語内における会話にも幅を広げようと、一触即発な緊張感を対談の中に加え、それに見合ったSSになるよう頑張ってみましたw

個人差はあると思いますが、多くの場所にそれぞれの見所があると思われますので、そんなところを楽しんでいただけたらと思います。
そして今回、気付かれる方もいるかと思われますが、新たなキャラクターがチラッと登場しています。
彼はいったい何者なのか?
実は彼は、ある書籍に登場する人物をフォロワー化させました。
しかし今後の内容に触れるので、誰なのかは秘密ですw

さて前講釈はこんな具合でいいでしょうw
今回もまた長い内容となっております。
復帰第一作!そして今年最初のSOSを、お時間のある時にお楽しみください・・・なのだぁ(´・ω・`)あふぅ♪


【リーチ クリフサイドにて】
1
スカッジ達は、今後の事も考えて皆と相談し、明日の早朝にでも”ドラゴンブリッジ”に移動しようと考えていた。
ドラゴンブリッジは、ここから歩いても半日とかからず、しかも帝国の領地であり、
そして、昔一緒に働いていた仲間が、定住していると聞いていたからである。
マルカルスの従士であるファリーンにとっては、戻れないというやり切れない部分もあったが、助けてもらった以上、口答えできる立場でもなかった。
2
それに、スカッジはまだ理解があるにしても、彼の家族や共に働いている仲間にとって、首長のイグマンドは、あまり良い印象のある人物でも無かった。
フォースウォーンの対処に遅れが出ていたせいで、働き場所どころか、住む家まで失ってしまったからである。
3
カースワスティンにて無事に救い出す事のできたフョトラは、
フォースウォーンのせいで両親を失った事もあり、周りからの同情はあっても、
公僕のファリーンには、冷たい目線しか返ってこない。
4
一人娘を抱えた鉱山仲間のダイグレの目線は、特に痛々しい。
”生きていられるだけでもありがたいと思えっ!”
口では言わなくても、目で発しているのが肌を通じて感じ取れたほどだった。
5
ふいにマリアが、何かに気づいたかのようにスカッジに詰め寄った。

マリア
『この辺りは鉱脈が多いのか?』

スカッジは一瞬、妙な事を聞かれた気がしたが、一間置いてから口を開く。

スカッジ
『昔は高地だったっていう言い伝えがあるくらいだ。
だからリーチ周辺は鉱山だらけだよ』
5-1
マリア
『じゃあ、誰がどこで穴を掘っていても、可笑しくないと言う事か?』

スカッジ
『可笑しくないって言えば・・・まぁ、もし掘っている奴がいるなら、恐らく鉱脈があるって事だろうな?』

どうも言葉の行き違いがある事をマリアは察した。
そこで彼女は、今度は地面に指さして質問をする事にした。
6
マリア
『丁度この下で、誰かが何かを掘っている音がする。
この下に鉱脈があるのか?』

スカッジ
『え?
そんな馬鹿な・・・?』

スカッジは意外な事を聞いたと思い、片耳を地面に押し当てあちこち探り始めた。
7
マリア
『どういう意味だ?』

スカッジ
『どういう意味も何も・・・最近この辺りじゃ、旅人が襲われるってもっぱら話題になってるんだ。
よほどでなければ、地元の人間だって近づこうとしないよ』

マリア
『何に襲われるんだ?』

スカッジ
『いや、そこまでは・・・』






8
マルカルスには、 【アーンリーフ・アンド・サンズ】という中堅的な貿易会社が存在している。
嘗てはリスベットという女主人が経営していた会社なのだが、彼女が謎の失踪を遂げてからというモノ、今は”イメドゥナイン”という男が経営を一任されていた。
元々はリスベットの旦那の父親が立ち上げた会社であり、当時としては東帝都社との取引が最も大口だった。
特にイグマンドの父親であるホルフディルが首長の時期は、その最盛期だったと言える。
マルカルスは内陸に位置し、交通の便も難儀な地域でもあるため、遠方からの物資の出入りは非常に喜ばれた。
だがフォースウォーンに街を乗っ取られた事が原因で、会社の経営が急にガタツキ始めたのである
9
高齢だった初代が亡くなり、息子のグンナールが跡を引き継いだのだが、約二年後にマルカルス事件が発生し、街は再びノルドの手に戻る事になる。
そしてホルフディルが、再び首長の座に就く事になり、さらに妻を娶る事によって、今後も会社は安泰かと思われていた。
しかし、フォースウォーンが街を支配していた二年の間、帝国はリーチに対して”経済制裁”を加えていた
大口だった東帝都社との繋がりが無くなってしまい、これが会社に大きな打撃を与えていたのだ。
グンナールは再び繋がりを回復しようと、ソリ―チュードだけではなく、シロディールに直接通達を出した事もあったのだが、結局受理されるまでには至らなかった。
10
営業を妻のリスベットに任せると、彼は会社の存続の為に、スカイリム中を東奔西走する事になる。
暫くは小口の仕事をこなす事で、なんとかやりくりをしていたのだが、不幸は突然訪れた。
夫のグンナールが、フォースウォーンによって殺されたという報せが入ってきたのである。
会社は再び、どん底に陥る結果になるかと思われていたのだが・・・
11
実はリスベットは、夫が留守の間に会社の株を売りに出していた
彼女の言い分としては、会社の将来性を考えてと吹聴していたのだが・・・
おかげでシルバー・ブラッド家の情報を耳にできたのである。
当時”銀”の採掘で新進気鋭だったシルバー・ブラッド家には、大きな力があった。
12
大株主はもちろんグンナール自身ではあったのだが、彼が亡くなった以上、その利権は妻であるリスベットに自動的に移行する形になる。
彼女は、会社を存続せるためにも、その利権をシルバー・ブラッド家に売り渡さざる得なかった。
一家の大黒柱を失った以上、彼女にとってみれば、止む終えない選択肢だったと言えるだろう。
その為【アーンリーフ・アンド・サンズ】という会社は、事実上シルバー・ブラッド家の傘下に入るという結果になった
13
しかし、リスベットはその後に、謎の失踪を遂げる事になる
なので当時従業員だった”イメドゥナイン”が、今現在の経営責任者となっていた。
因みにリスベッドの行方は、未だに不明のままである。
14
実はイメドゥナインは、初代の頃からここを手伝っている。
最盛期の頃には、猫の手も借りたかったくらいだったので、従兄弟のコスナッチを誘い、共に会社の運営に携わってきた。
しかし彼らの主な仕事は雑務ばかりで、そればかりやらされていた。
元々裕福な出ではない為か、そういう機会に恵まれなかったというのも事実だが・・・
14-1
互いにブレトンという種族でありながら、ノルドの影響が強いらしく、消耗する事に必死だったようである。
後輩であるはずのリスベットから、経営のノウハウを学んだとはいえ、初代やグンナールに比べれば、その能力は雲泥の差だった。
なのでシルバー・ブラット家の傘下に加わっていた事が、唯一の救いだったと言える。
言われた事をやれば良いだけだったからだ。
15
当時のシルバー・ブラッド家は、ソーナーの優秀な手腕のおかげもあり、マルカルスにおける名家にまで伸し上がっていた。
首長との繋がりから、帝国と手を組み、街中の産業を活発化させ、”銀”による一つのサイクルを作り上げ、一大産業都市として発展させたのである。
16
そんな中におけるアーンリーフ・アンド・サンズの主な役目は、精製された銀のインゴットを、多くの顧客に安全かつ速やかに送り届ける事だった。
しかし、マルカルスは海に面していないため、主な輸送方法は陸路になる。
海に海賊がいるように、陸には山賊やら追剥やらとトラブルには事欠かない。
これらの問題を解決するために、腕っぷしの立つ者を次々と雇い入れていく事になる。
これがシルバー・ブラッド家における”傭兵団”の始まりでもあった
17
イメドゥナインの従兄弟である”コスナッチ”は、元々荷下ろしの為に雇われた下男ではあったが、
仕事が増えるにつれ、それらの傭兵を纏める頭(かしら)の一人にまで出世していた。



【とある洞窟にて・・・】
18
コスナッチ
『まいったなぁ~こりゃあぁ~・・・』

コスナッチは、偶発的な出来事に頭を抱える。

コスナッチ
『あんたらぁ~一体全体ここで何してたんだぁ?』
19
カルセルモ
『お前らこそ!いったい何者なんだ!?』

カルセルモは不満げに怒鳴る。
20
コスナッチ
『そっちが勝手に入ってきたんだぞっ!
質問するのは、こっちが先だろぉ!?』

状況から考えれば、自分たちは囚われの身であり、相手がいったい何者なのかがわからない上、抵抗すればその分損する事は、火を見て明らかだった。
20-1
カルセルモ
『なんだとぉ~!?』

それでもカルセルモは反抗した。
身動きが取れない事に加え、気絶させられた上に、身包み剥がされた事に苛立ちが隠せない様子だ。

経験上こういう事態は、何度か遭遇した事はある。
危険な研究には付き物とはいうモノの、相変わらずのオジの無謀ともとれる行動に、アイカンターは見兼ねて宥めようとする。
20-2
アイカンター
『オジ上、落ち着いてください』

カルセルモ
『これが落ち着けるかっ!?』

最もこれは、甥である自分を守ろうとする年長者としての見栄のようなモノなのだが。
21
アイカンター
『止めてください!
今反抗しても、損するばかりですよ!?』

カルセルモ
『こいつらはどう見ても山賊崩れだ!!
ワシらを殺すに違いない!!』

アイカンター
『殺すなら、もうやっているでしょう?』
22
コスナッチ
『エルフの兄ちゃんの言う通りだよ。
最初から殺すつもりなら、寝てる間にだってできるだろう?』

その言葉にカルセルモは口を噤んだ。
彼の様子を見計らい、アイカンターが口を開く。
23
アイカンター
『私達はある人を探して、この辺りで捜索をしていたんだ』

コスナッチ
『誰を探していたんだよ?』

アイカンター
『マルカルス従士のファリーン殿だ』
24
その名前を聞いた途端、コスナッチは口を閉じてしまった。

実は彼らは、本部があるマルカルスがフォースウォーンの襲撃を受けた事により、戻る事ができず足止めを喰らっていた。
元々この辺りには、中継点の一つを作りたいと考えていたので、事前に何度か調査をし、”ライアーの隠居所”と呼ばれていた場所が無人である事を確認していた。
今回は出戻りの際に、偶々マルカルスの城攻めに鉢合わせてしまい、元々目を付けていた場所に足を運んだのだが、
整備もまだ行き届いていなかったせいか、カルセルモ達が先に侵入してしまっていた。
25
暗がりで不意打ちを喰らった二人だったが、気が付いたら自分たちが囚われの身になっていたという訳である。
ふとドゥーマーの鎧を着こんだオークが振り向き、急に視界が開ける。
すると、カルセルモとアイカンターの目にある物が入り込んた。
26
カルセルモ
『おい!!
おっ、お前達まさか・・・な、ナミラの信奉者なのか?』

カルセルモは、声をわずかに震わせながら口にする。
27
コスナッチ
『冗談言うなよw
俺達はあんなエゲツナイ集団の仲間じゃねぇよっ!
ちょっと見ない内に、誰かが勝手に運び込んだみたいで、オマケまで残していきやがった。
まったく、こっちはいい迷惑さ』
28
ナミラとは、デイドラの王子の一人である。
マルカルスでは以前、このナミラの信奉者によるおぞましい事件が起きていた。
お互いこの事は知っていたのだが、首謀者と思える者が捕まっていなかった。

カルセルモは唾を飲み込んだが、コスナッチの事を”悪い奴”と決めつけるのは止めようと思い始めた。
29
コスナッチ
『あんたらの事は知っているよ。
ドゥーマー研究者のカルセルモと、助手で甥のアイカンターだろ?』

彼のその言葉に、二人とも驚きを隠せなかった。
30
カルセルモ
『何故知っている?』

コスナッチ
『俺は”アーンリーフ・アンド・サンズ”の者だよ』

カルセルモ
『シルバー・ブラッドか!?』

コスナッチ
『まぁ、そういう事になるな』

カルセルモは大きくため息をつく。
31
アイカンター
『シルバーブラッドが、なんでこんなところに?』

コスナッチ
『ここは新しい中継地点として、以前から何度も下見を繰り返していたのさ。
そこにアンタらが紛れ込んだって訳だ』
32
アイカンター
『じゃぁ・・・彼らは・・・?』

アイカンターは、山賊のような風貌の彼らに目を向ける。

コスナッチ
『俺が雇った新入生達だ。
まだ入りたてだから、素行は褒められね~が、悪い連中って訳でもね~、
つまり傭兵候補生達さ』

二人ともため息をついた。
33
カルセルモ
『ワシらの事を知っているのなら、もう縄を解いてくれてもいいだろ!?』
33-1
コスナッチ
『そうはいかね~さ。
ここは秘密のアジトだ。
縄を解いて、あちこち嗅ぎまわられたら困る。
それにあんたらは役人だけど、イグマンド側だろ?
閉じ込めないだけ、ありがたいと思ってほしいよ』
34
コスナッチの話を聞く分では、外での様子に大よそ見当を付けているかのように思えた。
先に”ファリーン”の事を口にしてしまったのは、早計だったのかもしれない・・・
しかし、実際マルカルス内における勢力図は、かなり複雑になっているため、カルセルモ達にとってみれば単に利害の一致でしかないのだが・・・
35
突然、岩が崩れ落ちるような音と、固い塊が壁にぶつかったような衝撃音が聞こえた。
その場にいる全員が、何事かと忽ち騒然となる。

カルセルモ
『何の音だ!?』
36
コスナッチは近くにいた者に目配せで指示を出し、隣の通路の方に様子を見に行かせた。
37
しかし、アイカンターが何かに気づいた。

アイカンター
『おじ上!この臭いはっ!』

カルセルモ
『うむ、間違いあるまい・・・』

コスナッチ
『なんだよ?』
38
アイカンター
『じゃぁ、ここにもドゥーマーの遺跡が?』

カルセルモ
彼らがいるなら十分考えられる。
遥か昔のマルカルスは、今よりもっと東に広がっていたのだ。
だがスカイリムが寒冷地帯という事もあり、開発と侵攻をもっと下部で行うしかなかったのだ!』

39
コスナッチ
『おいっ!
二人していったい何の話をしてるんだっ!?』
40
アイカンター
『やはりおじ上の推測通り、第一紀以前のリーチには、巨大なドゥーマーの宮殿が存在し、そしてそれは陸上だけではなく、地下にも・・・』




41
???
『うわああああぁあああっ!!!!』

隣の通路に繋がる狭い入口の向こうで、大きな声が響いた。
先ほど物見に行かせた者が、強い追い風でも受けたかのように、吹き飛ばされた姿が目に入った。
ドサッと落ちる音が聞こえる。
コスナッチを含め、傭兵達は唾を飲み込んだ。
42
カルセルモ
『来るぞ・・・』

コスナッチ
『何がっ!?』

老エルフを問いただしたいのだが、通路の方から視線が離せない。




43
カルセルモ
『ファルメルだ』




44
激しい地鳴りと、悲鳴のような嘶(いなな)き、カラカラと奇妙な鳴き声を響かせ、青白く醜悪な小鬼の集団がゾロゾロと姿を現した
カルセルモはファルメルと言ったが、少なくとも友好的には見えなかった。
45
突如として戦いは始まった。
彼らはお手製の武器を携え、奇妙な動きを見せつつも、次々とその場にいる者に襲い掛かって行った。
45-1
実戦経験のある者は、即座に切り返して立ち向かおうとするが、突然の出来事のせいか、あっという間に孤立させられ、死角を取られてしまう。

45-2
中には見た事も無いような化け物に腰を抜かし、仲間の背後に身を屈めて隠れようとする者まで現れた。
45-3
ファルメル達は隙を伺い、得意の氷系の魔法で足止めさせ、集団で襲い掛かる。
45-4
そして奇形じみた剣や斧で斬り、刺し、次々と殺して行く。
予想外に連携と纏まりが取れており、実戦においては経験豊富で、力量の差は明らかだった。
45-5
素性はどうであれ、これから正規の傭兵として働くはずだった彼らでは、到底太刀打ちできる相手ではなかった。
45-6
あちこちで血しぶきと悲鳴、強力な魔法が飛び交い、傭兵志願者達は忽ち劣勢に追い込まれてしまった。
46
コスナッチ
『馬鹿野郎!!コイツらだって不死身って訳じゃねーんだ!戦えっ!!』
47
流石は手練れの傭兵達を束ねているだけはあるのか、コスナッチは脇に携えたメイスを抜くと、悠然と化け物に戦いを挑んで行った。
47-1
彼に勇気づけられたのか、彼を慕う何人かは、武器を抜いて続く。
眼前で待ち構える小鬼の群れに立ち向かって行った。
47-2
コスナッチ
『おらぁあああぁあっ!!』

コスナッチがファルメルを一撃で仕留める。
47-3
それを目にした連中が”殺せる”と理解し、状況が急に色めき立つ。
今まで弱腰だった者でさせ、武器を手に取り立ち向かおうとする。
48
だがファルメルという種族は、決して人間種族に劣っている訳ではない。
寧ろ優れていると言っても過言ではないだろう。
48-1
戦場の変化を敏感に感じ取ると、すぐさま戦法を変えできた。
今まで襲い掛かっていた彼らが、バラけるように散り始めたのだ
48-2
躍起になっている傭兵達には、それが”自分達から逃げようとしている”様に見えるため、攻撃の視界に入れようと追い掛ける。
48-3
しかし、深追いしてしまったと気が付いた時には遅かった。
再び孤立させられ、複数で襲ってくる。
恐ろしいまでの愚鈍さで、相手を罠にハメるのだ
49
新米の彼らを混乱させるには十分であった。
戦局の読めない者にできる事はただ一つ、ひたすら逃げ回る事である。

傭兵A
『くっそぉ!いったいどうなってやがるんだ!?』

傭兵B
『なんでいつの間にか囲まれるんだ!?』

傭兵C
『こんなの俺達じゃ無理だ!!退却しろっ!!退却だっ!!』
50
旗色が悪いと判断すると、彼ら一人一人が勝手な行動をとり始めた。
元々ならず者の集まりでもあるためか、纏まりが全くない。
腕っぷしが立つとはいっても、しょせんは雇われ兵である。
こうなってしまうと、いかに彼らに”頭(かしら)”と呼ばれていても、言葉の表現だけになってしまっていた。
51
コスナッチ
『おい!!お前ら待てよっ!!どこ行くんだよっ!?』

残念ながら、コスナッチの言葉に耳を傾ける者はいなかった。
53
それでも逃げる傭兵達を、ファルメルの集団が追い掛けていく。
追い掛けられた傭兵達は、何故自分達の方に向かってくるのか、全く理解できないまま、大きな足音と大声を上げて逃げまくっていた。

傭兵A
『なんなんだ!?こっちくんなよ!!』

傭兵B
『なんで俺らばっかり追い掛けてくるんだ!?』

傭兵C
『くっそぉ~!あっちいけよぉ~><;』
54
カルセルモには、その意味が理解できた。
ドゥーマーの研究に携わった者、あるいは何らかの形で関わった者ならば、大抵は知っている事である。

”ファルメルは長い洞窟暮らしの為に、視力よりも、嗅覚と聴覚だけがズバ抜けて発達している”
という事を・・・
55
コスナッチ
『おい・・・どうすりゃいんだよ?』

コスナッチは小声でカルセルモに話す。

カルセルモ
『どうするもこうするもない、外に出ないと・・・』
56
彼は、手持ちのナイフで二人の縄を切ってやった。
カルセルモとアイカンターは四つん這いになり、ゆっくりと近くのカウンターテーブルの下に向かって行く。
コスナッチも、彼らの真似をし後をついて行った。
ファルメル達の関心は、もっぱら逃げ惑う傭兵達の姿だった。
57
コスナッチ
『出口は上の一ヵ所しかねぇよ』

彼は階段上の方に目配せした。
だがそこには、逃げ惑う傭兵達とファルメル達であふれている。
58
アイカンター
『籠城できるような部屋は?』

コスナッチ
『隣の通路に、ドアのある部屋が二つあるが・・・』
58-1
カルセルモ
『籠城はダメだ。何とかしてここから出る方法を考えるんだ』

アイカンター
『でも入口は陣取られてますよ?』

カルセルモは周囲を気にしつつ悩んだ。
こっちで大きな音を出せば、当然こっちに向かってくる。
59
ならば離れた所で音を立てるか、強烈な臭いを沸き立たせるしかないと・・・
そんな時だった、ホールの真ん中に大きな瓶(かめ)が置いてある事に気が付く
60
火は着いていないようだが、あり得ない具材が浮いていた
どうやらナミラ信者が、自分たちの〇〇?を用意していたようである。
何日か放っておいたのか、腐った臭いを沸き立たせていた。
61
カルセルモ
『あれだ!あの巨大な瓶をひっくり返して、向こうの階段下で身を隠すのだ!』

即席の作戦だが、今できる最善の方法だと判断した。

コスナッチ
『あんなのどうやってひっくり返すんだよ?』

カルセルモ
『押せばいいだろっ!!』
61-1
コスナッチ
『冗談言うなよ!
あんなの撒き散らしたら、臭いが取れなくなるぞっ!!』

カルセルモ
『お前は助かりたくないのかっ!?』

コスナッチは、それでもこの場所を使いたかったのだが、現状をまともに考える余裕も無かった。

コスナッチ
『わかった!やるよ!やりゃぁいんだろ!』

ヤケになるしかなかった。
62
そうと決まれば行動は早い。
カウンターの下から姿を現した三人は、傭兵と剣を交えているファルメルに気づかれまいと、身を屈めて恐る恐る瓶に近づく。
63
それほど遠いわけでもないので、無事にたどり着く事に成功した。
大きな瓶に近寄ると、三人で両手を押し当て、体重を掛けて一気に押し倒した。
64
気色の悪い液体が地面にばら撒かれる。
まるで風船が割れた時の様に、不気味に色づいた臭気が一気に広がって行った。
どうやらスープ?の表面に分厚い膜を張っていたようで、倒した瞬間それが破れて異臭が飛散したのである。
65
三人はそのまま走り、正面階段の真下に身を屈め、押し合い圧し合いするかのように身を隠した。
66
そして気が付く。
臭気はどうやら空気よりも重いようで、上に行くどころか下に広がるばかりだった
67
三人は激しく咳き込み、しまいには嘔吐(えず)いていた・・・

コスナッチ
『おまえ!本当にあの有名なカルセルモなのかっ!?ゲホゲホッ!!』

カルセルモ
『ああ、きっとお前さんの勘違いだ!!ゲホゲホッ!!』

アイカンター
『だい丈夫ですか!?おじ・・ゲホゲホッ!!オエッ!!』
68
彼らは臭気というより、瘴気(しょうき)にしか思えない毒ガスを撒き散らしてしまった。
咳き込むことはできても、息を吸い込むにはかなりの勇気が必要で、皮膚はピリピリし、瞼さえさえ開けられない。
そして何故か意識が徐々に奪われていくのを感じた。
69
意識が遠のきそうになりながら、視界の悪い中で、バッシュ!バッシュ!と斬撃の音が繰り返される。
音と共に、傭兵達なのか?それとも臭に誘われて集まって来たファルメル達なのか?
悲鳴なのか叫び声なのかさえ区別がつかない音が、そこかしこから耳に入ってくる。
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”もう息が続かない・・・こんな、こんな所で終わってしまうのか・・・もう駄目だ・・・”
カルセルモは意識が遠のいていくのを感じながら、死出の道を覚悟しようとしていた。






だがその瞬間、耳元で聞いた事も無いような大きな悲鳴が入り込んできた。






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あまりに醜悪な顔が真横に現れる。
カルセルモは驚いてしまい、我慢の限界を超え、タガが外れたかのように息を吸い込む。
同時に瘴気ガスが一気に肺に入り込む。
彼の声は既に発する事が出来ず、涙と鼻水を垂らしながら無音の叫び声を上げた。
そして更にその横から、色黒な悪魔?が顔を覗かせたのを最後に、彼は意識を失ってしまった。






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後編に続く・・・




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存続建国独立
新年明けましておめでとうございます(*^▽^*)ノ
旧年中は、作者自身も多くの方にお世話になり、『SOS』も愛でて頂ける方が増え大変喜ばしい限りでございます。
大変ありがとうございました。
まだまだ至らぬ点も多数ございますが、本年度も変わらぬご愛好を頂けたら喜ばしい限りでございます。
どうぞ今年もよろしくお願いいたしますm(_ _)m

2017年 元旦




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