大変!大変!お待たせいたしました!!
SOS第十四話EP3
ようやく公開いたします!!

今回はマルカルスでの出来事がメインとなっています。

フォースウォーンのマルカルス襲撃により、行き場を失ったスカッジを始めとする鉱山労働者達は、ハイロックから来たレッドガードのマリアの助力もあり、
途中、マルカルス従士であるファリーンと、フョトラという女の子を助け出し、全員でクリフサイドに避難する事になりました。
ファリーンが目を覚ました日の夜、マリアが地面の下の奇妙な音に気が付きます。
一方、ファリーンを捜索していたはずのカルセルモと甥のアイカンターは、とある洞窟に迷い込んでしまい、そこで山賊らしき男達に捕らえられてしまいました。
彼ら二人の運命はいかに!?

マルカルスにてクーデターを引き起こし、その実権を握ったと思われたソーナーですが、それでも外にはリッケ率いる帝国軍が近づいています。
ソーナーの懐刀であるレブルスは、この事態にどう対処するつもりなのでしょうか?
また、サルヴィウス農園に避難したマダナック率いるフォースウォーン達は?

今話は嘗てないほどに戦闘シーンに力を入れました^^;
マルカルスを攻めるフォースウォーンの様に、多数による攻撃とは違い、個人による攻撃に色を加えたつもりですw
また、物語内における会話にも幅を広げようと、一触即発な緊張感を対談の中に加え、それに見合ったSSになるよう頑張ってみましたw

個人差はあると思いますが、多くの場所にそれぞれの見所があると思われますので、そんなところを楽しんでいただけたらと思います。
そして今回、気付かれる方もいるかと思われますが、新たなキャラクターがチラッと登場しています。
彼はいったい何者なのか?
実は彼は、ある書籍に登場する人物をフォロワー化させました。
しかし今後の内容に触れるので、誰なのかは秘密ですw

さて前講釈はこんな具合でいいでしょうw
今回もまた長い内容となっております。
復帰第一作!そして今年最初のSOSを、お時間のある時にお楽しみください・・・なのだぁ(´・ω・`)あふぅ♪


【リーチ クリフサイドにて】
1
スカッジ達は、今後の事も考えて皆と相談し、明日の早朝にでも”ドラゴンブリッジ”に移動しようと考えていた。
ドラゴンブリッジは、ここから歩いても半日とかからず、しかも帝国の領地であり、
そして、昔一緒に働いていた仲間が、定住していると聞いていたからである。
マルカルスの従士であるファリーンにとっては、戻れないというやり切れない部分もあったが、助けてもらった以上、口答えできる立場でもなかった。
2
それに、スカッジはまだ理解があるにしても、彼の家族や共に働いている仲間にとって、首長のイグマンドは、あまり良い印象のある人物でも無かった。
フォースウォーンの対処に遅れが出ていたせいで、働き場所どころか、住む家まで失ってしまったからである。
3
カースワスティンにて無事に救い出す事のできたフョトラは、
フォースウォーンのせいで両親を失った事もあり、周りからの同情はあっても、
公僕のファリーンには、冷たい目線しか返ってこない。
4
一人娘を抱えた鉱山仲間のダイグレの目線は、特に痛々しい。
”生きていられるだけでもありがたいと思えっ!”
口では言わなくても、目で発しているのが肌を通じて感じ取れたほどだった。
5
ふいにマリアが、何かに気づいたかのようにスカッジに詰め寄った。

マリア
『この辺りは鉱脈が多いのか?』

スカッジは一瞬、妙な事を聞かれた気がしたが、一間置いてから口を開く。

スカッジ
『昔は高地だったっていう言い伝えがあるくらいだ。
だからリーチ周辺は鉱山だらけだよ』
5-1
マリア
『じゃあ、誰がどこで穴を掘っていても、可笑しくないと言う事か?』

スカッジ
『可笑しくないって言えば・・・まぁ、もし掘っている奴がいるなら、恐らく鉱脈があるって事だろうな?』

どうも言葉の行き違いがある事をマリアは察した。
そこで彼女は、今度は地面に指さして質問をする事にした。
6
マリア
『丁度この下で、誰かが何かを掘っている音がする。
この下に鉱脈があるのか?』

スカッジ
『え?
そんな馬鹿な・・・?』

スカッジは意外な事を聞いたと思い、片耳を地面に押し当てあちこち探り始めた。
7
マリア
『どういう意味だ?』

スカッジ
『どういう意味も何も・・・最近この辺りじゃ、旅人が襲われるってもっぱら話題になってるんだ。
よほどでなければ、地元の人間だって近づこうとしないよ』

マリア
『何に襲われるんだ?』

スカッジ
『いや、そこまでは・・・』






8
マルカルスには、 【アーンリーフ・アンド・サンズ】という中堅的な貿易会社が存在している。
嘗てはリスベットという女主人が経営していた会社なのだが、彼女が謎の失踪を遂げてからというモノ、今は”イメドゥナイン”という男が経営を一任されていた。
元々はリスベットの旦那の父親が立ち上げた会社であり、当時としては東帝都社との取引が最も大口だった。
特にイグマンドの父親であるホルフディルが首長の時期は、その最盛期だったと言える。
マルカルスは内陸に位置し、交通の便も難儀な地域でもあるため、遠方からの物資の出入りは非常に喜ばれた。
だがフォースウォーンに街を乗っ取られた事が原因で、会社の経営が急にガタツキ始めたのである
9
高齢だった初代が亡くなり、息子のグンナールが跡を引き継いだのだが、約二年後にマルカルス事件が発生し、街は再びノルドの手に戻る事になる。
そしてホルフディルが、再び首長の座に就く事になり、さらに妻を娶る事によって、今後も会社は安泰かと思われていた。
しかし、フォースウォーンが街を支配していた二年の間、帝国はリーチに対して”経済制裁”を加えていた
大口だった東帝都社との繋がりが無くなってしまい、これが会社に大きな打撃を与えていたのだ。
グンナールは再び繋がりを回復しようと、ソリ―チュードだけではなく、シロディールに直接通達を出した事もあったのだが、結局受理されるまでには至らなかった。
10
営業を妻のリスベットに任せると、彼は会社の存続の為に、スカイリム中を東奔西走する事になる。
暫くは小口の仕事をこなす事で、なんとかやりくりをしていたのだが、不幸は突然訪れた。
夫のグンナールが、フォースウォーンによって殺されたという報せが入ってきたのである。
会社は再び、どん底に陥る結果になるかと思われていたのだが・・・
11
実はリスベットは、夫が留守の間に会社の株を売りに出していた
彼女の言い分としては、会社の将来性を考えてと吹聴していたのだが・・・
おかげでシルバー・ブラッド家の情報を耳にできたのである。
当時”銀”の採掘で新進気鋭だったシルバー・ブラッド家には、大きな力があった。
12
大株主はもちろんグンナール自身ではあったのだが、彼が亡くなった以上、その利権は妻であるリスベットに自動的に移行する形になる。
彼女は、会社を存続せるためにも、その利権をシルバー・ブラッド家に売り渡さざる得なかった。
一家の大黒柱を失った以上、彼女にとってみれば、止む終えない選択肢だったと言えるだろう。
その為【アーンリーフ・アンド・サンズ】という会社は、事実上シルバー・ブラッド家の傘下に入るという結果になった
13
しかし、リスベットはその後に、謎の失踪を遂げる事になる
なので当時従業員だった”イメドゥナイン”が、今現在の経営責任者となっていた。
因みにリスベッドの行方は、未だに不明のままである。
14
実はイメドゥナインは、初代の頃からここを手伝っている。
最盛期の頃には、猫の手も借りたかったくらいだったので、従兄弟のコスナッチを誘い、共に会社の運営に携わってきた。
しかし彼らの主な仕事は雑務ばかりで、そればかりやらされていた。
元々裕福な出ではない為か、そういう機会に恵まれなかったというのも事実だが・・・
14-1
互いにブレトンという種族でありながら、ノルドの影響が強いらしく、消耗する事に必死だったようである。
後輩であるはずのリスベットから、経営のノウハウを学んだとはいえ、初代やグンナールに比べれば、その能力は雲泥の差だった。
なのでシルバー・ブラット家の傘下に加わっていた事が、唯一の救いだったと言える。
言われた事をやれば良いだけだったからだ。
15
当時のシルバー・ブラッド家は、ソーナーの優秀な手腕のおかげもあり、マルカルスにおける名家にまで伸し上がっていた。
首長との繋がりから、帝国と手を組み、街中の産業を活発化させ、”銀”による一つのサイクルを作り上げ、一大産業都市として発展させたのである。
16
そんな中におけるアーンリーフ・アンド・サンズの主な役目は、精製された銀のインゴットを、多くの顧客に安全かつ速やかに送り届ける事だった。
しかし、マルカルスは海に面していないため、主な輸送方法は陸路になる。
海に海賊がいるように、陸には山賊やら追剥やらとトラブルには事欠かない。
これらの問題を解決するために、腕っぷしの立つ者を次々と雇い入れていく事になる。
これがシルバー・ブラッド家における”傭兵団”の始まりでもあった
17
イメドゥナインの従兄弟である”コスナッチ”は、元々荷下ろしの為に雇われた下男ではあったが、
仕事が増えるにつれ、それらの傭兵を纏める頭(かしら)の一人にまで出世していた。



【とある洞窟にて・・・】
18
コスナッチ
『まいったなぁ~こりゃあぁ~・・・』

コスナッチは、偶発的な出来事に頭を抱える。

コスナッチ
『あんたらぁ~一体全体ここで何してたんだぁ?』
19
カルセルモ
『お前らこそ!いったい何者なんだ!?』

カルセルモは不満げに怒鳴る。
20
コスナッチ
『そっちが勝手に入ってきたんだぞっ!
質問するのは、こっちが先だろぉ!?』

状況から考えれば、自分たちは囚われの身であり、相手がいったい何者なのかがわからない上、抵抗すればその分損する事は、火を見て明らかだった。
20-1
カルセルモ
『なんだとぉ~!?』

それでもカルセルモは反抗した。
身動きが取れない事に加え、気絶させられた上に、身包み剥がされた事に苛立ちが隠せない様子だ。

経験上こういう事態は、何度か遭遇した事はある。
危険な研究には付き物とはいうモノの、相変わらずのオジの無謀ともとれる行動に、アイカンターは見兼ねて宥めようとする。
20-2
アイカンター
『オジ上、落ち着いてください』

カルセルモ
『これが落ち着けるかっ!?』

最もこれは、甥である自分を守ろうとする年長者としての見栄のようなモノなのだが。
21
アイカンター
『止めてください!
今反抗しても、損するばかりですよ!?』

カルセルモ
『こいつらはどう見ても山賊崩れだ!!
ワシらを殺すに違いない!!』

アイカンター
『殺すなら、もうやっているでしょう?』
22
コスナッチ
『エルフの兄ちゃんの言う通りだよ。
最初から殺すつもりなら、寝てる間にだってできるだろう?』

その言葉にカルセルモは口を噤んだ。
彼の様子を見計らい、アイカンターが口を開く。
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アイカンター
『私達はある人を探して、この辺りで捜索をしていたんだ』

コスナッチ
『誰を探していたんだよ?』

アイカンター
『マルカルス従士のファリーン殿だ』
24
その名前を聞いた途端、コスナッチは口を閉じてしまった。

実は彼らは、本部があるマルカルスがフォースウォーンの襲撃を受けた事により、戻る事ができず足止めを喰らっていた。
元々この辺りには、中継点の一つを作りたいと考えていたので、事前に何度か調査をし、”ライアーの隠居所”と呼ばれていた場所が無人である事を確認していた。
今回は出戻りの際に、偶々マルカルスの城攻めに鉢合わせてしまい、元々目を付けていた場所に足を運んだのだが、
整備もまだ行き届いていなかったせいか、カルセルモ達が先に侵入してしまっていた。
25
暗がりで不意打ちを喰らった二人だったが、気が付いたら自分たちが囚われの身になっていたという訳である。
ふとドゥーマーの鎧を着こんだオークが振り向き、急に視界が開ける。
すると、カルセルモとアイカンターの目にある物が入り込んた。
26
カルセルモ
『おい!!
おっ、お前達まさか・・・な、ナミラの信奉者なのか?』

カルセルモは、声をわずかに震わせながら口にする。
27
コスナッチ
『冗談言うなよw
俺達はあんなエゲツナイ集団の仲間じゃねぇよっ!
ちょっと見ない内に、誰かが勝手に運び込んだみたいで、オマケまで残していきやがった。
まったく、こっちはいい迷惑さ』
28
ナミラとは、デイドラの王子の一人である。
マルカルスでは以前、このナミラの信奉者によるおぞましい事件が起きていた。
お互いこの事は知っていたのだが、首謀者と思える者が捕まっていなかった。

カルセルモは唾を飲み込んだが、コスナッチの事を”悪い奴”と決めつけるのは止めようと思い始めた。
29
コスナッチ
『あんたらの事は知っているよ。
ドゥーマー研究者のカルセルモと、助手で甥のアイカンターだろ?』

彼のその言葉に、二人とも驚きを隠せなかった。
30
カルセルモ
『何故知っている?』

コスナッチ
『俺は”アーンリーフ・アンド・サンズ”の者だよ』

カルセルモ
『シルバー・ブラッドか!?』

コスナッチ
『まぁ、そういう事になるな』

カルセルモは大きくため息をつく。
31
アイカンター
『シルバーブラッドが、なんでこんなところに?』

コスナッチ
『ここは新しい中継地点として、以前から何度も下見を繰り返していたのさ。
そこにアンタらが紛れ込んだって訳だ』
32
アイカンター
『じゃぁ・・・彼らは・・・?』

アイカンターは、山賊のような風貌の彼らに目を向ける。

コスナッチ
『俺が雇った新入生達だ。
まだ入りたてだから、素行は褒められね~が、悪い連中って訳でもね~、
つまり傭兵候補生達さ』

二人ともため息をついた。
33
カルセルモ
『ワシらの事を知っているのなら、もう縄を解いてくれてもいいだろ!?』
33-1
コスナッチ
『そうはいかね~さ。
ここは秘密のアジトだ。
縄を解いて、あちこち嗅ぎまわられたら困る。
それにあんたらは役人だけど、イグマンド側だろ?
閉じ込めないだけ、ありがたいと思ってほしいよ』
34
コスナッチの話を聞く分では、外での様子に大よそ見当を付けているかのように思えた。
先に”ファリーン”の事を口にしてしまったのは、早計だったのかもしれない・・・
しかし、実際マルカルス内における勢力図は、かなり複雑になっているため、カルセルモ達にとってみれば単に利害の一致でしかないのだが・・・
35
突然、岩が崩れ落ちるような音と、固い塊が壁にぶつかったような衝撃音が聞こえた。
その場にいる全員が、何事かと忽ち騒然となる。

カルセルモ
『何の音だ!?』
36
コスナッチは近くにいた者に目配せで指示を出し、隣の通路の方に様子を見に行かせた。
37
しかし、アイカンターが何かに気づいた。

アイカンター
『おじ上!この臭いはっ!』

カルセルモ
『うむ、間違いあるまい・・・』

コスナッチ
『なんだよ?』
38
アイカンター
『じゃぁ、ここにもドゥーマーの遺跡が?』

カルセルモ
彼らがいるなら十分考えられる。
遥か昔のマルカルスは、今よりもっと東に広がっていたのだ。
だがスカイリムが寒冷地帯という事もあり、開発と侵攻をもっと下部で行うしかなかったのだ!』

39
コスナッチ
『おいっ!
二人していったい何の話をしてるんだっ!?』
40
アイカンター
『やはりおじ上の推測通り、第一紀以前のリーチには、巨大なドゥーマーの宮殿が存在し、そしてそれは陸上だけではなく、地下にも・・・』




41
???
『うわああああぁあああっ!!!!』

隣の通路に繋がる狭い入口の向こうで、大きな声が響いた。
先ほど物見に行かせた者が、強い追い風でも受けたかのように、吹き飛ばされた姿が目に入った。
ドサッと落ちる音が聞こえる。
コスナッチを含め、傭兵達は唾を飲み込んだ。
42
カルセルモ
『来るぞ・・・』

コスナッチ
『何がっ!?』

老エルフを問いただしたいのだが、通路の方から視線が離せない。




43
カルセルモ
『ファルメルだ』




44
激しい地鳴りと、悲鳴のような嘶(いなな)き、カラカラと奇妙な鳴き声を響かせ、青白く醜悪な小鬼の集団がゾロゾロと姿を現した
カルセルモはファルメルと言ったが、少なくとも友好的には見えなかった。
45
突如として戦いは始まった。
彼らはお手製の武器を携え、奇妙な動きを見せつつも、次々とその場にいる者に襲い掛かって行った。
45-1
実戦経験のある者は、即座に切り返して立ち向かおうとするが、突然の出来事のせいか、あっという間に孤立させられ、死角を取られてしまう。

45-2
中には見た事も無いような化け物に腰を抜かし、仲間の背後に身を屈めて隠れようとする者まで現れた。
45-3
ファルメル達は隙を伺い、得意の氷系の魔法で足止めさせ、集団で襲い掛かる。
45-4
そして奇形じみた剣や斧で斬り、刺し、次々と殺して行く。
予想外に連携と纏まりが取れており、実戦においては経験豊富で、力量の差は明らかだった。
45-5
素性はどうであれ、これから正規の傭兵として働くはずだった彼らでは、到底太刀打ちできる相手ではなかった。
45-6
あちこちで血しぶきと悲鳴、強力な魔法が飛び交い、傭兵志願者達は忽ち劣勢に追い込まれてしまった。
46
コスナッチ
『馬鹿野郎!!コイツらだって不死身って訳じゃねーんだ!戦えっ!!』
47
流石は手練れの傭兵達を束ねているだけはあるのか、コスナッチは脇に携えたメイスを抜くと、悠然と化け物に戦いを挑んで行った。
47-1
彼に勇気づけられたのか、彼を慕う何人かは、武器を抜いて続く。
眼前で待ち構える小鬼の群れに立ち向かって行った。
47-2
コスナッチ
『おらぁあああぁあっ!!』

コスナッチがファルメルを一撃で仕留める。
47-3
それを目にした連中が”殺せる”と理解し、状況が急に色めき立つ。
今まで弱腰だった者でさせ、武器を手に取り立ち向かおうとする。
48
だがファルメルという種族は、決して人間種族に劣っている訳ではない。
寧ろ優れていると言っても過言ではないだろう。
48-1
戦場の変化を敏感に感じ取ると、すぐさま戦法を変えできた。
今まで襲い掛かっていた彼らが、バラけるように散り始めたのだ
48-2
躍起になっている傭兵達には、それが”自分達から逃げようとしている”様に見えるため、攻撃の視界に入れようと追い掛ける。
48-3
しかし、深追いしてしまったと気が付いた時には遅かった。
再び孤立させられ、複数で襲ってくる。
恐ろしいまでの愚鈍さで、相手を罠にハメるのだ
49
新米の彼らを混乱させるには十分であった。
戦局の読めない者にできる事はただ一つ、ひたすら逃げ回る事である。

傭兵A
『くっそぉ!いったいどうなってやがるんだ!?』

傭兵B
『なんでいつの間にか囲まれるんだ!?』

傭兵C
『こんなの俺達じゃ無理だ!!退却しろっ!!退却だっ!!』
50
旗色が悪いと判断すると、彼ら一人一人が勝手な行動をとり始めた。
元々ならず者の集まりでもあるためか、纏まりが全くない。
腕っぷしが立つとはいっても、しょせんは雇われ兵である。
こうなってしまうと、いかに彼らに”頭(かしら)”と呼ばれていても、言葉の表現だけになってしまっていた。
51
コスナッチ
『おい!!お前ら待てよっ!!どこ行くんだよっ!?』

残念ながら、コスナッチの言葉に耳を傾ける者はいなかった。
53
それでも逃げる傭兵達を、ファルメルの集団が追い掛けていく。
追い掛けられた傭兵達は、何故自分達の方に向かってくるのか、全く理解できないまま、大きな足音と大声を上げて逃げまくっていた。

傭兵A
『なんなんだ!?こっちくんなよ!!』

傭兵B
『なんで俺らばっかり追い掛けてくるんだ!?』

傭兵C
『くっそぉ~!あっちいけよぉ~><;』
54
カルセルモには、その意味が理解できた。
ドゥーマーの研究に携わった者、あるいは何らかの形で関わった者ならば、大抵は知っている事である。

”ファルメルは長い洞窟暮らしの為に、視力よりも、嗅覚と聴覚だけがズバ抜けて発達している”
という事を・・・
55
コスナッチ
『おい・・・どうすりゃいんだよ?』

コスナッチは小声でカルセルモに話す。

カルセルモ
『どうするもこうするもない、外に出ないと・・・』
56
彼は、手持ちのナイフで二人の縄を切ってやった。
カルセルモとアイカンターは四つん這いになり、ゆっくりと近くのカウンターテーブルの下に向かって行く。
コスナッチも、彼らの真似をし後をついて行った。
ファルメル達の関心は、もっぱら逃げ惑う傭兵達の姿だった。
57
コスナッチ
『出口は上の一ヵ所しかねぇよ』

彼は階段上の方に目配せした。
だがそこには、逃げ惑う傭兵達とファルメル達であふれている。
58
アイカンター
『籠城できるような部屋は?』

コスナッチ
『隣の通路に、ドアのある部屋が二つあるが・・・』
58-1
カルセルモ
『籠城はダメだ。何とかしてここから出る方法を考えるんだ』

アイカンター
『でも入口は陣取られてますよ?』

カルセルモは周囲を気にしつつ悩んだ。
こっちで大きな音を出せば、当然こっちに向かってくる。
59
ならば離れた所で音を立てるか、強烈な臭いを沸き立たせるしかないと・・・
そんな時だった、ホールの真ん中に大きな瓶(かめ)が置いてある事に気が付く
60
火は着いていないようだが、あり得ない具材が浮いていた
どうやらナミラ信者が、自分たちの〇〇?を用意していたようである。
何日か放っておいたのか、腐った臭いを沸き立たせていた。
61
カルセルモ
『あれだ!あの巨大な瓶をひっくり返して、向こうの階段下で身を隠すのだ!』

即席の作戦だが、今できる最善の方法だと判断した。

コスナッチ
『あんなのどうやってひっくり返すんだよ?』

カルセルモ
『押せばいいだろっ!!』
61-1
コスナッチ
『冗談言うなよ!
あんなの撒き散らしたら、臭いが取れなくなるぞっ!!』

カルセルモ
『お前は助かりたくないのかっ!?』

コスナッチは、それでもこの場所を使いたかったのだが、現状をまともに考える余裕も無かった。

コスナッチ
『わかった!やるよ!やりゃぁいんだろ!』

ヤケになるしかなかった。
62
そうと決まれば行動は早い。
カウンターの下から姿を現した三人は、傭兵と剣を交えているファルメルに気づかれまいと、身を屈めて恐る恐る瓶に近づく。
63
それほど遠いわけでもないので、無事にたどり着く事に成功した。
大きな瓶に近寄ると、三人で両手を押し当て、体重を掛けて一気に押し倒した。
64
気色の悪い液体が地面にばら撒かれる。
まるで風船が割れた時の様に、不気味に色づいた臭気が一気に広がって行った。
どうやらスープ?の表面に分厚い膜を張っていたようで、倒した瞬間それが破れて異臭が飛散したのである。
65
三人はそのまま走り、正面階段の真下に身を屈め、押し合い圧し合いするかのように身を隠した。
66
そして気が付く。
臭気はどうやら空気よりも重いようで、上に行くどころか下に広がるばかりだった
67
三人は激しく咳き込み、しまいには嘔吐(えず)いていた・・・

コスナッチ
『おまえ!本当にあの有名なカルセルモなのかっ!?ゲホゲホッ!!』

カルセルモ
『ああ、きっとお前さんの勘違いだ!!ゲホゲホッ!!』

アイカンター
『だい丈夫ですか!?おじ・・ゲホゲホッ!!オエッ!!』
68
彼らは臭気というより、瘴気(しょうき)にしか思えない毒ガスを撒き散らしてしまった。
咳き込むことはできても、息を吸い込むにはかなりの勇気が必要で、皮膚はピリピリし、瞼さえさえ開けられない。
そして何故か意識が徐々に奪われていくのを感じた。
69
意識が遠のきそうになりながら、視界の悪い中で、バッシュ!バッシュ!と斬撃の音が繰り返される。
音と共に、傭兵達なのか?それとも臭に誘われて集まって来たファルメル達なのか?
悲鳴なのか叫び声なのかさえ区別がつかない音が、そこかしこから耳に入ってくる。
70
”もう息が続かない・・・こんな、こんな所で終わってしまうのか・・・もう駄目だ・・・”
カルセルモは意識が遠のいていくのを感じながら、死出の道を覚悟しようとしていた。






だがその瞬間、耳元で聞いた事も無いような大きな悲鳴が入り込んできた。






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あまりに醜悪な顔が真横に現れる。
カルセルモは驚いてしまい、我慢の限界を超え、タガが外れたかのように息を吸い込む。
同時に瘴気ガスが一気に肺に入り込む。
彼の声は既に発する事が出来ず、涙と鼻水を垂らしながら無音の叫び声を上げた。
そして更にその横から、色黒な悪魔?が顔を覗かせたのを最後に、彼は意識を失ってしまった。






72





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後編に続く・・・




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