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汚職の街、犯罪の街、盗賊の街

リフテンには様々な病名があった。
この街を取り仕切る者【ライラ・ロー・ギバー(Low-giver 立法者)】
その名の通りとはよく言ったもので、彼女がこの街の首長である。
しかし、この街で彼女を首長として認める者はごくわずかだった。

様々な問題を抱えた街が、街として成り立っている理由。
それは、この街の裏社会を仕切る人物がいるからだ。

【メイビン・ブラック・ブライアー】

彼女を怒らせてはいけない。
これがこの街の基本ルールである。
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彼女はスカイリムで有名なブラック・ブライアーハチミツ酒の製造主である。
街のすぐ傍には、ホンリッヒ湖という湖がある。
この湖に浮かぶ小島で、自らの広大な敷地の養蜂場を所有している。
これがブラック・ブライアー家の主な収入源となっている。

しかしこれは表の話。
本当のところは誰も知らない。知りたくもないと言ったところだろうか。

何れにせよ膨大な資金力のある者が、この街の真の支配者となっていることは間違いない。
つまりは、首長でさえ彼女には逆らえないと言ったところである。

ホワイトランのクーデターを終えた後、ポエット達がここに急ぎ向かったのには理由があった。

【守りを固めるためのリフテン兵を借りること】
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いくらウィンドヘルムから帝国兵が撤退するとしても、テュリウスも馬鹿ではない。
守りながら周囲に情報網を敷きつつ、撤退するはずである。
となれば隙あらば牙を剥く瞬間を狙ってくるということだ。
実際ドーンスターよりモーサルを含む西方は帝国領となっているため、テュリウスがホワイトランを伺うには十分な可能性があるのだ。
だが、本隊であるテュリウスの軍をホワイトランへ向けるには、何れの地域から進軍するとしてもどうしても時間がかかってしまう。

つまりはその時間を利用して、リフテンから兵を借り、防備に充てるということである。

とはいえこれには大きな壁が立ち塞がる。
それが【メイビン・ブラック・ブライアー】である。

ポエットは軍役していた頃、リフテンには伝達兵として何度か赴いたことがあった。
なのでこの街の情勢は理解していたものの、メイビンという女性だけは素性が掴めずじまいだった。
ハチミツ酒醸造所のオーナーであり、養蜂場の主であることは知っていたが、
たったそれだけの事でこの街の首長であるライラに対し、殆どため口ともいえる態度で接することができる物なのか?と。
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ナディアの家に向かう時、カーリアに初めてその真実を教えてもらうことができた。

カーリア
『彼女はスク―マの売人よ。それも随分貴重なレッド・スクゥ―マのね』

ポエット
『レッド・スクゥ―マ?』

カーリア
『リフテンからちょっと西に向かったところにレッド・ウォータ―の隠れ家ってところがあるのよ。
そこの地下には赤い水が沸いているらしくて、何なのかは解らないけど、それをスク―マーに加えて作ってるって話だわ』

ポエット
『それを売りさばいているんですか?』

カーリア
『そうなんだけど、どこに売っているかはわからない。ただ彼女が帝国にもアルドメリにも顔が通じているってことは事実ね』

ポエット
『ならそこを潰してしまえばいいじゃないですか?』

カーリア
『あなたもナディアに関わるなら知っておいた方がいいわ。メイビンは私たち盗賊ギルドのパトロンよ』

ポエット
『えっ!?』

カーリア
『それに彼女に関わっているのは人間種だけじゃない。明らかに人外の者も含まれてる。
ナディアがギルドに関わった際にも忠告したけど、彼女に手を出すことは絶対に許されないのよ』

その時の彼女にはそれ以上何も言えなかった。

そう、ナディアの資産を知るまでは。

彼女は武力ではなく舌三寸と金の力でホワイトランを無血開城させた。
ナディアはどちらかというとお金に対し無頓着なところがあり、その管理はリディアが一人で行っていた。

が・・・
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リディア
『そうねぇ~不動産だけでもホワイトランのブリーズホームにリフテンのハニーサイドでしょぉ・・・以後割愛

スカイリム
ホワイトラン ブリーズホーム
リフテン   ハニーサイド
マルカルス  ヴリンドリルの間
ウィンドヘルム ヒジェリム
ソリチュード ブラウドスパイヤー邸
ドーンスター ヘリヤ―ケン・ホール 
モーサル   ウィンドスタッド邸  
ファルクリース レイクビュー邸   

ソルスセイム島
レイヴンロック セヴェリン邸

そしてここエリジウムエステート
5-1

それ以外にも現在の自宅には、大量の宝石から調度品、膨大なインゴットから金貨に及ぶまで、
金額に置きなおしてみても、巨大な城を20から30は平気で持てるほど溢れていた。

山賊やモンスター退治などから得た賞金、またその戦利品の数々。
錬金術などに使用される稀少価値の高いモンスターの部位や植物。
またはそれによって生み出される高価な薬の品々。
各町の商店街への投資。
または自らが鍛冶場に立ち、武器防具などあるいはオリジナルの品々を製造、そして販売。

いかに冒険という混沌の中で、ハイレベルな経験をこなして来たかが伺えた。
それでも街の規則に従い、毎月一定の税も各町ごとに支払っているというのだから驚きである。

ナディアという人物が、ドラゴンボーンである以上に、途方もない資産家であることは間違いないが、
それを微塵も感じさせないところが、ポエットには魅力だった。

兎にも角にもこれだけの資産があれば、街一つ買い取るくらい平気なはずである。

とはいえナディアには上級王になってもらわなければいけない。
リフテンの首長はライラを据え置き、そしてメイビン以下悪党どもを排除。
そのためには立法者たるライラの【権威復興】をしなくてはいけなかった。
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ブリニョルフ
『いきなり現れて、ギルドを移転しろだと!?ふざけてるのかお前は!?』

以前ポエットに肩無しにされた彼だったが、今回は違った。

ブリニョルフ
『おい!ナディア!お前マスターのくせにこんなこと了解するのか!?』

ナディア
ブリブリ~話聞いてよぉ~^^;』

ブリニョルフ
『これが黙ってられるか!?それにその呼び方やめろって言っただろう!

ポエット
『私は本気です!』

ポエットは負けじと一際大きな声で言った。

ポエット
『ギルドの皆さんに聞きたいことはただ一つです。
この先メイビンの援助を受け続けて、このギルドが本当に存続できると思いますか?』

ヴェックス
『今まではそれで旨くやってきたヨ』

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ポエット
『今まで?・・・これからはどうです?
カーリアさんから話は聞いてます!彼女は明らかに悪事に手を染めている!
あなたたちはどう言われようともアウトローであることには変わりありません!
反乱軍がもしこの戦に勝つことがあれば、今度は帝国との本格的な戦争になります!
いえ!アルドメリかもしれません!
メイビンは!!
帝国にもアルドメリにも顔が効く!
自身の身に危険が及ぶと思えば、あなたたちなんて簡単に切り捨てますよ!! 

ポエットの声がホールに木霊し、その場が一瞬静寂に包まれた。

デルビン
『なら、他に方法があるのか?俺たちが存続できる方法だ』
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ブリニョルフ
『おい!デルビン!』

デルビン
『お前だってメルセルが何をしたか覚えてるだろう?』

ブリニョルフ
『うっ・・・』

デルビン
『闇の一党だって、帝国とアルドメリの大戦のせいでブルーマから移転せざる得なくなったって話だ。
戦争は俺たちの場所も間違いなく奪いに来る。他に方法あるなら・・・俺は聞くべきだと思う』
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ポエットはブリニョルフを睨みつけた。
ブリニョルフは肩の荷をおろし、観念した表情で”わかった”と了解した。

ブリニョルフ
『で?どこに引っ越せばいいんだ?』

ポエット
『それについては現在検討中です』

ブリニョルフ
『検討中?じゃぁメイビンの代わりは!?』

ブリニョルフは再び苛立ちを見せた。

ポエット
『それなら、ナディアがいます』
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ブリニョルフ
『じょ、冗談だろ!こいつは確かに、俺たちの中でも間違いなく腕はピカイチだ!
ギルドを立て直してくれたのもこいつだ!そいつは認めるさ!
だがギルドのパトロンをするってのは、訳が違うんだぞ!』

ナディア
『幾ら出せばギルドのパトロンになれるの?』

ブリニョルフ
『え?』

ナディア
『幾ら出せばみんなを守ってあげられるの?』

ブリニョルフ
『そ、それは・・・』
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ナディア
『私がさ、このギルドに入った時に言われたのはさ、お金持ちから盗んでいるんだって聞いたのね。とくに悪党のね。
でもさ、そこにいる新しく入った人達だとか、幹部以外の人たちに話を聞くとさ、お金持ってない人達から物を捕ったりしてるのね。
例えばウィンドヘルムの石地区とかさ、リバーウッドの商店とかさ、リフテンだってバリマンドの家に押し入ってるんだよ。
それにハニーサイドの私の家まで入ってこようとしたことあったんだよ。
まぁ私の家はいいとしてもさ、どう見たって関係のない弱い人たちから盗んでるじゃん?滅茶苦茶だよね?』

みなが押し黙る・・・

ナディア
『このギルドはさ、義賊的な考え方があるのかな?って私は思っていたのね。
でもさ、メイビンがいるから必要のない犯罪を犯しても、お金払えば許してもらえるっていう変な習慣ができてるんだよ』

彼女の言葉に誰も言い返すことができない奇妙な空気が流れた。

ナディア
『ギルドには守るべき信条がある』

ゆっくりとした口調でそう言うと、ブリニョルフを睨みつけた。

ナディア
『お前・・・私にそう言ったよな?』

ブリニョルフ
『えっ・・・』
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ナディア
『おぃ!ブリニョルフ!おめーに聞いてんだよっ!これのいったいどこに信条なんてあるってんだ!?ああっ!?』

ナディアは近くにあった【物?】を蹴とばし、聞いたこともない怒号を放った。
彼女の表情は鬼のように怒り狂っていた。
普段が普段なだけに、彼女の変わりように皆が驚愕する。

ナディア
『メイビンなんてクソババア頼ってっからそうなるんだよぉ~!』

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隣にいたポエットさえ驚きが隠せずにいた。
ふと最初に出会ったときの事を思い出す。

ナディアを怒らせるとこうなると・・・

皆が突然の出来事に呆気に取られてしまった。
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カーリア
『ナ、ナディア・・・お、お、おちついて^^;』

カーリアは下腹部に落ちた言葉を必死に押し上げて、震え気味で口にした。
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ナディア
『私だって無意味な殺しをしたり、酷いことも沢山してきた。
悲痛に叫ぶ人たちを見て、助けてあげられらなかった事もあった。
メイビンに関わってたら、盗賊ギルドも盗賊ギルドじゃなくて殺人ギルドに変わっちゃうんじゃない?』

ナディアはいつの間にかいつもの表情に戻っていた。

ナディア
『ナディアはさ、ギルドマスターだけどさ、ここにいる人たちにそんな意味のないことなんてさせたくないのね。
もちろん、泥棒なんていいことじゃないけどさ、今の世の中には必要不可欠だとも思うのね。
だから否定もしないよ。ただメイビンに関わるのだけはやめた方がいいと思うよ^^』

ポエットは思った。状況から判断して正論を述べることしかできない自分よりも、
ナディアのように同じ背丈で相手を見、感情に訴える事ができれば、より効果が高いのでは?と。
あの激高と若干ズレタ性格が、多くの者を付き従わせる原動力。
あれは自分には真似できそうもない・・・
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カーリア
『ポエットの言うことにも一理あるし、ナディアの言うことにも一理あるのは確かよ。
あの女は自分の利益のためなら自分の家族に殺しをさせたり、不必要なら牢に閉じ込めたりもしてる。
私たちだけが例外と言うのは難しいと思うわ』

デルビン
『俺もそう思う・・・』

ヴェックス
『あたいもそう思うよ・・・』

多くの仲間を守ろうとする者は、兎角保守的で慣習に慣れやすい。
ブリニョルフはその典型と言えるのかもしれない。

彼は一呼吸置くと口を開いた。
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ブリニョルフ
『なぁ、この件はもう少し俺たちで話合いをさせてくれないか?期待するほどではないかもしれないが、色は付けるぜ』

カーリア
『私もそのほうがイイと思うわ』

さすがにポエットもナディアもそれをダメとは言えなかった。
だが盗賊ギルドを説得させることにほぼ成功したと言えるだろう。
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プロベンタス
『あの~そのぉ~』

プロベンタスがバツが悪そうに手を挙げて出てきた。

プロベンタス
『お取込み中もうしわけないんだがなぁ~・・・』
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ナディア
『あっ!ごめん!プロベンタス忘れてたw』

ブリニョルフ一同最初は何事かと驚いていたが、理由を説明し暫く預かってほしいと願い出ると、それほど抵抗することなく受け入れてくれた。
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次はライラとの接触だった。
彼女は基本的にミストヴェール砦から出てくることがない。
だがどうしても密会を開く必要があった。

彼女には二人の息子がいる。長兄のハラルドと弟のサエルンド。
ハラルドは反乱押しだったが、弟は真逆だった。

ハラルドは一日に一回、外に剣術の訓練をしに出てくることがある。
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リフテン衛兵を務めたこともあるイオナには、隠密で衛兵に変装してもらい彼と接触してもらった。
【ドラゴンボーンが首長と内密に話をしたがっている】という内容で手紙をしたためた。
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翌日の真夜中にミストヴェール砦の作戦室にてライラと密会を開くことができた。
ただし彼女の私兵であるアンミッドと息子のハラルドも一緒だった。

ライラ
『私に何の用だ。内密な話などらしくもない・・・』

ポエットが横から顔を出す。

ポエット
『始めましてライラ首長^^』

ライラ
『そちらは?』
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ポエット
『私はポエット、ナディア様の従者です^^』

ライラ
『ナディアの従者だと・・・?』

ポエット
『単刀直入にお伺いします。首長はメイビン・ブラック・ブライアーを信用しておられますか?』

ライラ
『メイビンを信用しているかだと?そんな事を聞きに?』

ポエット
『はい』

ライラ
『彼女にはこの街の秩序の一部を任せてある。
特に盗賊ギルドに関しては、彼女が必ず一掃すると私に約束した。
私には結果がすべてだ。彼女の申し出が成功することを願っているだけだ』

ポエット
『彼女が盗賊ギルドのパトロンだとしても?』

ライラは苦顔をみせた。

ライラ
『な、なに!?』

ポエット
『彼女が盗賊ギルドを支えているんです』

ライラ
『証拠はあるの?』
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ナディア
『ナディアがギルドマスターだよ^^』

ライラが驚く。

ライラ
『なっ!なんですって!?』

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瞬時に空気が殺伐とする。
アンミッドとハラルドがライラを守るように構えた。

ポエット
『まっ!待ってください!!』

ポエットが慌てて静止に入る。

ポエット
『私たちは争いに来たわけではありません!』

アンミッド
『じゃぁ目的はなん
だ!?』
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ポエット
『ライラ首長の権威復興です!』











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ライラ
『権威・・・復興ですって・・・?』

ポエット
『はい!そのためにもメイビンを排除しないといけません!』

ライラが二人を落ち着かせると、イオナも抜いた剣をひっこめた。
彼女は一呼吸置くと椅子に腰かけた。
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ライラ
『話を聞こうじゃない・・・』

ポエットはリフテンの現状を説明し、どうメイビンを排除すればいいのか、綿密に練った策をライラに言って聞かせた。
彼女は時折驚いた表情を見せるが、納得し首を縦に振ることもあった。
ライラの質問に対し、ポエットは毅然とした態度で返答する。
お互い抜かりがないことを確認し合うと、ライラは言った。

ライラ
『気になるのは、あなた方が望んでいる見返りは何?』

当然の質問だった。

ポエット
『ホワイトランを守るために、リフテンの兵を貸してほしいんです』

ライラは少し考えた後、口を開いた。

ライラ
『私の権威復興に手を貸してくれることはありがたいけど、それは難しい話だわ』

ポエット
『首長がおっしゃりたいのは帝国の動きですよね?』

ライラ
『その通りよ・・・リフテンはシロディールとの国境沿いの街。
いつ帝国が兵を送り込んでくるかわからない。
ここの首長である以上、私にはこの街を守る義務があるのよ』

ポエット
『首長の懸念は最もだと思われます。しかし、私の見立てでは帝国は援軍を向かわせることはありません』

ライラ
『自信がありそうね?どうして?』
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ポエット
『理由は三つあります。
一つは、帝国はアルドメリとの大戦で大きなダメージを負っているということ。
テュリウスは内戦鎮圧のために1万程度の兵しか与えてもらえませんでした。
彼は現地調達を余儀なくされたんです』

ポエット
『二つ目は、内戦における停戦協定です。
私が思うにテュリウスという人は戦略には長けてますが、外交内政に関してはてんで疎い人物だと見ています。
その証拠に、その当時帝国領だったファルクリースをドーンスターとの交換に容易に応じました。
リフテンを反乱軍が所有している以上、ファルクリースは帝国にとって最も近い玄関口のはずです。
これを簡単に手放すということは、援軍は来ないと自ら口にしているようなものです』

ライラは苦顔し神妙な面持ちでポエットの話に耳を傾けた。

ライラ
『うむ・・・』

ポエット
『そして三つめは、今です』

ライラ
『今?』

ポエット
『現在、ウィンドヘルムは帝国軍と睨み合いの状況にあります。
これは戦況が帝国に傾いたせいもありますが、
テュリウスにしてみれば本来シロディールからの援軍を送ってもらい、
リフテンを襲う絶好の機会と言えるでしょう。
・・・でも来てません』

ライラ
『・・・確かに』

ポエット
『以上の3つが援軍が来ない理由です』

ライラはポエットの話に関心していた。
正直これほど自分にズケズケと物を言ってくる人間も、最近ではメイビンくらいだったが、
ポエットの話には奇妙な含みを全く感じなかった。
しかし・・・

ライラ
『でも・・・残念だけど援軍は出せないわ』

ポエットは驚く。

ポエット
『え?どうしてですか?』
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ライラ
『その話を聞いた以上、私たちが最初にやることはウィンドヘルムへの援軍よ』

ポエット
『それならご心配いりません^^』

ポエットは帝国がウィンドヘルムから撤退する理由を説明した。
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ライラ
『私の権威が復興できたとして、兵を持たない首長なんて話にならないわ』

アンミッド
『首長、この話を鵜呑みにするつもりですか?』

ライラ
『もちろん、私は憶測よりも結果を重視する人間よ。彼女の策が実ったらの話に決まっている』

ライラ
『だから、成功すればあなたの望むだけの兵を貸してあげるわ』

ポエット
『ありがとうございます^^』
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密会の後、ライラは早速ポエットに言われた通りに行動を起こした。

リフテン監獄にはメイビンの孫である、【シビ・ブラック・ブライアー】が囚われている。
彼が前述でカーリアが語っていた男であり、家族のために殺しまでする悪漢であった。
だが街の権力者であるメイビンの名の元、彼の待遇は自宅の部屋と変わらず装飾品から家具に至るまで高級品を揃え、おまけに食事まで特別扱いされていた。

だがこの事をライラは知らされていなかったのだ。

手始めに彼女は、シビの待遇をもっと刺激的なものに変更させることにした。
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素っ裸にし両手を縛りあげたシビを連れ、まるで見せつけるが如く中心街を歩かせる。
イオナが先頭に立ちシビを挟んで衛兵が付いていく。

シビ
『おい!俺をいったい何処に連れていくつもりだ!?』

イオナと衛兵は何も言わない。

この様子をメイビンが目にしていた。
彼女は驚いた表情でイオナに問い詰める。
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メイビン
『お待ちなさい!!これはいったいなんのつもり!?』

彼女は自分の家族が辱めを受けていることに憤慨し、上目目線で怒鳴った。

イオナ
『首長の命令だ!そこをどけっ!!』

イオナはお構いなしに怒鳴り返す。
彼女は寸分も狼狽(うろた)えることなく、逆にメイビンを強い眼光で睨みつけた。

メイビン
『首長ですって・・・?』
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メイビンは驚愕する。

イオナ
『申し出があるなら首長に直訴することだな』

そう言い放つと、彼らはラットウェイに姿を消していった。
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メイビン
『首長!?』

メイビンは砦に入るなり、いきなり怒鳴り声でライラを指名した。

メイビン
『私の家族があのような辱めを受けるとは一体どういうことなの!?』

ライラは平然と答える。

ライラ
『メイビンか。どうした?何か問題でも?』
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メイビン
『問題も大問題よ!先ほど衛兵に連れて行かれた男は、私の孫だ!
私はただお灸を据えるためだけに牢に入れておいたのだ!
あのような扱いをするのなら即刻釈放を求める!』

ライラ
『釈放?』

メイビン
『そうだ!!今すぐ私の権限で釈放しなさい!!』

彼女は完全にいきり立っている。

ライラ
『それはおかしな話ね?』
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メイビン
『お・か・し・い~?』

ライラ
『私の調べでは、あの男は連続殺人鬼よ。それも重度のね』

メイビン
『はっ!いったい何を根拠にそのような事を言っているのか!?説明してほしいものね!?』
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???
『直接本人から聞いたんだよぉ^^』

メイビンが怒りの形相で声の方に目を向ける。






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メイビン
『ナディア!?』

彼女はしばし硬直し、一息してから再び口を開いた。
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メイビン
『ははははははっ!』

メイビンが嘲笑する。

メイビン
『なるぅほ~どぉ~そういうことですか。あなたは私を売ったわけですね』

彼女の眼は細くなり、ナディアを嘲る視線を送った。

メイビン
『あなたがどれほど身のほどを弁えていないか、よ~くわかりましたよ』
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彼女は開き直りナディアに指さし言った。

メイビン
『首長!あの女は盗賊ギルドのマスターよ!今すぐ逮捕なさい!!!』

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ライラ
『知っている』

メイビン
『・・・え?』

ライラ
『だが、今はその話をしている訳じゃない。お前の孫の話だろ』

メイビンは硬直してしまった。

ライラ
『何か申し開きはあるのか?』
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メイビンはショックのためか何も答えない。

ライラ
『何もなさそうだな。ならば私から話そう』
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ライラは隣に座っている執政のアヌリエルに目を向けた。

ライラ
『アヌリエル』

アヌリエル
『は、はい・・・』

彼女の声は震え掠れていた。
そしてライラは言った。

ライラ
『メイビンの横に立て』
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アヌリエルは無言のまま身を震わせ、メイビンの横に立った。
その表情は明らかに血色がない。
43-1

そしてライラは二人の前にある手紙を投げ捨てた。

ライラ
『さて、お二方。その手紙の内容を説明してもらおうか?』
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メイビンは気が付いたように手紙を拾うと、読むこともなく丸めて口に放り込み、丸呑みしてしまった。

ナディア
『ああ!食べっちゃった!?』

メイビン
『手紙?いったいなんのことです?』

ライラはあきれ顔でため息をついた。

ライラ
『まったく・・・お前という女は、どこまでも往生際の悪い奴だな』

そう言うと彼女は腰の下にしまっていたもう一枚の手紙を取り出し、開いて二人に見せた。
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それを見た二人は開いた口が塞がらない。

実はこの手紙、ポエットがカーリアに頼み、事前にアヌリエルの寝所からこっそり盗み出していたものである。

知者は知者に溺れるという。

ポエットはメイビンの狡賢さを読み取り、おそらく破り捨てるか食べるだろうとライラに伝えていた。
なのでワザと偽物を床に投げ捨てたのである。
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ライラ
『この内容によると、アヌリエル、お前は私に隠れてシビの待遇を良くしていたようだな?』

アヌリエルは土下座して謝りだした。

アヌリエル
『首長!申し訳ございません!申し訳ございません!』

ライラ
『お前に問い詰めることはもうなさそうだ。衛兵!連れて行け!
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アヌリエル
『首長!どうか!どうかおゆるしぉ~ぉぉおおお』

彼女は衛兵に両腕を掴まれ連れて行かれた。
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メイビンは興奮した牛のように鼻息を荒げる。

メイビン
『わ、私をどうするつもり・・・?』

ライラ
『うん・・・お前は追放処分とする』

メイビン
『追放?私をこの街から追い出すということ?』

メイビンは再び嘲笑する。
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メイビン
『やはり!
お前は私には何もできない愚か者だ!
暗愚な首長なのだ!
私を追放ですって!?
はっ!!笑わせる!
そんなことをしてみろ!
街の人間はお前の言うことなど何一つ聞かなくなる!
そればかりか街自体が立ち行かなくなる!
そんなこともわからないのか!?』

ライラ
『メイビン!』

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ライラは怒り顔でメイビンの胸倉をつかみ言い放った。

ライラ
『私は貴様を信じていた!にもかかわらず貴様は私を裏切り続けてきた!この報いは受けてもらうからな!』

メイビンの両目が見開き、額に冷や汗が流れる。

ライラ
『お前の資産はすべて凍結した!養蜂場からハチミツ酒醸造所!お前の家!別荘!そしてっ!レッドウォーターの隠れ家もだっ!!!』

メイビンは開いた口が塞がらず呼吸が震え始めた。

ライラ
『あそこは以前、リフテン兵を差し向けてスクゥ―マの一掃をさせたところだ。
にも関わらず!?お前はそれを都合よく利用し、息子のヘミングと一緒に売人までやっていたそうだな!?』

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彼女は力なく項垂れほぼ観念した様子だった。

ライラ
『申し開きもなさそうだな・・・衛兵!!

衛兵
『はっ!』

ライラ
『この者を我が町の慣例に従って処罰し、国境沿いに捨ててこい!息子のヘミングも一緒だ!』

衛兵
『了解しました!!』

ライラ
『お前ら二人はリフテンからの追放ではなく、
スカイリムからの永久追放だ!』
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メイビンとヘミングは着ている衣服を剥ぎ取られ、街中を一周させられた。
これはリフテンの規則であり、ライラがいかにスクゥーマという麻薬を嫌っているかという見せしめでもあった。
それでも二人を生かしておいたのは、ライラの温情でもあったのだ。
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その後、彼ら二人はシロディールの国境付近で捨てられた。
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衛兵は彼らにこう言った。

『この線を超えて戻ってきたら、その首が飛ぶぞ』

『死にたくなければ、早めに着る物と武器を調達するのねw』

『お前らはハチミツの臭いが染みついてるから、クマさんたちとお友達になれるだろう』
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メイビンは”帝国兵を連れてきて、報いを受けさせてやる”などどほざいていたが、誰一人耳に入るものはいなかった。
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リフテンのラットウェイと言えば、盗賊ギルドの本拠地がある。
だが、更にその下には精神異常者を閉じ込めておく【ラットウェイ・ウォーレンズ】がある。
すでに何人かの住人が住みついているその場所に、シビを閉じ込めることにした。
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盗賊ギルドの次の当留置が必要だった。
そこでナディアとイオナはレッド・ウォーターの隠れ家を視察。
中に吸血鬼やらその従徒などが蔓延っていたので大掃除することにした。
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あっという間に制圧すると、ギルドメンバーを集めてここを根城にするよう勧めた。
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アヌリエルが逮捕されたのでリフテンには執政が空席になってしまった。
ライラがポエットに相談したところ、手ごろな人がいるということでプロベンタスを紹介した。
実は彼女は彼の事をよく知っていた。
その才能と実直さは遠くリフテンまで名が通っていたのである。
プロベンタスは、はじめこそ断っていたが、ライラの誠実さに負け、彼女の隣に座ることにした。
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ライラは約束通り望むだけの兵をナディアに貸し与えた。
ポエットは彼らを引き連れ急ぎホワイトランへ向い、北からの攻撃に即時備えることができた。
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ポエットがホワイトランの防備を完了する頃、テュリウスの元に知らせが届き、帝国はウィンドヘルムのからの撤退を始めた。
彼は撤退する際も、ホワイトランの動向を探るためあちこちから偵察兵を送り込んだが、どの場所も守りが固く容易に攻め込めなくなってしまっていた。



ポチットお願いしますm(_ _)m

<備考>

【レッド・スクゥ―マ】
通常のスクゥーマに比べて効果も中毒性も遥かに強い。
レッド・ウォーターの隠れ家の地下に湧き出ている、謎の水を混ぜることで精製して作っている。
この場所は吸血鬼とその従者たちが守っている場所で、特に危害を加えることがなければ、普通にスクゥーマやレッドスクゥーマを購入できる。

DLC【Dawnguard】のクエストで、基本的にメイビンとは全く関わりはありません。
作中では彼女は人外の者との繋がりを持たせて、更なる悪女をイメージ付けることで、より虐めがいがあるようにしました。

【盗賊ギルドの信条】
殺すなかれ、弱きものから盗むなかれ、仲間から盗むなかれ

【メルセル・フレイ】
約25年前、当時のギルドマスターだったガルスを密かに殺害。
お陰で自分がギルドマスターとしての地位を手に入れたのだが、
ガルスの恋人だったカーリアの策略とナディアの協力によって復讐を果たすことができた。

【インガン・ブラック・ブライアー】
ブラック・ブライアー家の孫娘。
ゲーム中では錬金術を学んでいる女性。
やや危ない面があり、よく小動物などを捕まえては実験に使ったりする癖がある。
今作では、彼女を追放するほどの罪を犯しているとは思えなかったので、存在していないことにしました。

ブラック・ブライアー家についてはゲーム中と設定とが、食い違っていたりしているようなので、
メイビンを母とし、その息子がヘミングス、そしてヘミングスの息子がシビということにしています。