Nadia's Skyrim

  -スカイリムRP妄想日記-
【スカイリム独立戦争編】

1

ナディア
『ポエット・・・ごめん・・・ド、ドラゴンボーンじゃなくなっちゃった・・・』

ポエット
『ええっ!?』

2

リバーウッドはホワイト川沿いに佇む小さな村落であり、
北にホワイトラン、南にヘルゲン、ファルクリースがある。
南北交易には欠かせない重要な交易街でもある。
村民の殆どが林業によって生計を立てている。

街中には雑貨店、宿屋、鍛冶屋、パブと。
旅行者、冒険者にとっての利便性は非常に高い。
交易路でもあるので人の往来が多いのも特徴である。

しかし、それだけ重要な交易路にもかかわらず、
高い防壁などが建てられていないのが問題だった。

過去にホワイトラン首長のバルグルーフが数名の衛兵を配置しただけで、
スカイリムの実権を握ったウルフリックも増兵はしたが、山賊や盗賊の被害が減ることは無かった。
もっとも懸念されているドラゴン襲来は未だに大きな課題となっている。


3

ホワイト・リバー・コテージ

内戦以後ナディアはここに居を構えることにした。
彼女の威光は強く、大抵の山賊達はその名前を聞いただけで震え上がり逃げ出すほどだった。
おかげで犯罪件数は減少、ドラゴン襲来は未だ無いにせよ。
山賊や野盗どもはリバーウッドには好んで近づこうとしなくなっていた。

現在、ここにはドラゴンボーンの従者二人が目を光らせている。

4

実はナディアに居を構えることを進言したのはポエットという一人の女性だった。

彼女はタムリエルでは珍しい放浪民の一人である。
放浪民になる前の彼らはヴァレンウッドを故郷とする少数部族の民だった。
ところがウッドエルフとの不和が数十年続き、
遂には種族間闘争にまで発展したために、故郷を追いやられたのだ。

彼らはチンパンノルドと呼ばれ華奢で小柄なのが特徴なノルドの一種である。
女性の場合は大人になっても体格は変わらないが、
男性の場合は成人すると体格も大柄になり、ワイルドノルドと呼ばれ、
普通のノルド人を二人並べて一人ほどの体躯をほこるようになる。

男性は主に狩猟や移動時の護衛を仕事としている。
とは言え必要以上に狩りをしたりはしないので、
普段は木の上などでハンモックを広げ、一日寝て過ごすことが多かった。
もともと穏やかな性格なのだが、同族の絆を何よりも重んじる習慣があるため、
一族に危機が及んだ場合は命を張ってこれを守ろうとする。
しかし、むやみに殺したりすることはまずないのだが、
彼らが激高した時の怪力は巨木さえ片手で持ち上げるほどだとか。

女性の場合は家事と娯楽に興じることが多かった。
特に娯楽に関しては、占星術、ダンス、音楽などに精通しており、
複数の言語を使いこなす才能がある。
お陰で町や村など人の集まるところでは、よく見世物などを披露して生活費を稼いでいた。
女性の中でも『テオ』と呼ばれる特別な存在が数十年に一度現れるとされている。
この『テオ』とは、古代ネディック人の言語で『未来を予知する者』と訳されている。
普段は人骨や獣の骨などを使った占星術なのだが、
『テオ』に関しては本人の意思次第でいつでも未来を見ることができるのだとか。

しかし、ポエットはそんな放浪民の血を引いているにもかかわらず、
一族の慣習をどうしても受け入難く感じていた。
彼女の興味はいつも兵法と政治、戦略などの文明的学問だった。
将来は人望ある主君に仕え、自分を重要視してくれる人の下で働きたかった。

5

17の頃、一族でエルスウェアとシロディールの国境沿いを放浪していた時、
偶然ウッドエルフの一団と鉢合わせてしまい、小競り合いになった。
形勢不利と考えたポエットの父は、かなり無茶な方法で彼女を逃がした。
片手で軽く彼女を持ち上げると、シロディールの国境先まで投げ飛ばしたのである。

6

気づいた時には、服の襟元が枝木に引っかかって宙に浮いていた。
あわてて元の場所に戻ろうと思ったが、国境警備兵に止められてしまった。
家族との再会は未だ実現できていない。

しかし、彼女はこの時を好機を考えた。
今まで一族とともに長い間過ごして来た。
離れた今こそ行動を起こすべきだと。

まずタムリエルの状況を分析してみた。

放浪民だった頃はシロディールとエルスウェアを往来するばかりだった。
ごく最近、北のハンマーフェルにも立ち寄ったが、
帝国がアルドメリにこの地域を明け渡してしまったので、すぐに離れることになった。

南方のブラックマーシュは帝国から離脱し、モロウィンドウまで支配地域を広めたらしい
レッドマウンテンの噴火を期にアルゴ二アン達が侵攻し、ダークエルフから故郷を奪ったのだ。
おそらくアルドメリや帝国にとって最も懸念すべき存在になりつつあるだろう。
加えてアルゴ二アン達が住む地域は、タムリエルの中でも最も衛生環境が悪く、
人間種が住みつける地域とは思えない。

現在のタムリエルは大まかに三つの勢力図に置き換えられる。

7

ハイエルフを主としたアルドメリ自治領
インペリアルという人間種を主とした帝国
アルゴ二アンという獣人種を主としたブラックマーシュ

アルドメリには、長年不和を続けてきたウッドエルフ達がいる。
差別になるがアルゴ二アンがタムリエルを支配するなど想像したもくない。

もし今身を寄せるならやはり人間種が妥当な選択だった。

現在帝国が所有している地域は、シロディールから北のスカイリムと、そこから北西のハイロックのみ。
白金協定の行く末次第によっては、ハイロックは孤立してしまう可能性がある。
タロス崇拝を禁止した帝国に対し、スカイリムのノルドが黙っている可能性は少ない。

誰が台頭を掲げるかはわからないが、内戦が始まる頃には自分の道も開けるだろうと思っていた。

8

目的地は決まった。
だが内心はタムリエルの色んな地域を旅し、もっと見知ってみたかった。
そうするにはタムリエルにもっと安全な地域を作らないといけない。

スカイリムを目指している旅の宿で話を耳にすることができた。
ウルフリック・ストームクロークがノルドの台頭を掲げ、帝国に反旗を翻したこと。
帝国が鎮圧軍としてテゥリウス将軍を派遣したこと。

9

そこで、まずソリチュードのドール城にいるテゥリウス将軍の元に赴いた。
作戦本部前にいた衛兵に帝国軍に加わりたいと伝えたが、
【ここは子供のくる場所じゃない】と一括され、突き返された。
自分が外見で判断されることには慣れていた。

帝国軍に加われば、アルドメリを打つ機会に出会える。
そうすれば故郷であるヴァレンウッドを取り戻せるかもしれない。

念のためテゥリウス将軍が何かの用事でドール城から出てくるのを待ってみた。
夕方頃に数人の護衛兵をつれて出てきた所を狙い、もう一度声をかけてみた。

ポエット
『私も帝国軍に加えてください!』

叫んだ大きな声にテゥリウスが振り向いた。

テゥリウス
『なんだあの小娘は?』

衛兵
『午前中に作戦本部前に姿を現した者ですが、軍に加わりたいと』

テゥリウスが近寄ってきてポエットに言う

テゥリウス
『小娘にしてはなかなか気概がありそうだな。
だが帝国は子供さえ使わなければ、
鎮圧もできないのかと反乱軍に馬鹿にされかねない。
・・・その勇気は称えるがな』

そう言うと彼は振り向きもせずブルーパレスに向かって行った。

ポエットはある程度のデメリットは覚悟していたが、
あくまで外見でしか判断できないようでは、帝国の明日は短いかもしれないと悟った。

10

やむ終えず、今度は反乱軍のウルフリックに会いに行った。

ウルフリックはテゥリウス将軍と違い、
ポエットの気持ちを何の抵抗もなく受け入れてくれた。

一つにはチンパンノルドは遠縁ではあるが同族であること。
一つには猫の手も借りたいからである。

ウルフリックはポエットを駐屯兵の職に就けた。

元々ストームクロークは、山賊や野盗の対応のため、スカイリム各地に駐屯兵を配置していた。
ウルフリックが帝国に反旗を翻し、帝国軍がスカイリムに入り始めてから間もなく、
帝国も同じように駐屯兵の配置を行ったのである。
まるで威嚇でもするかのように、ストームクロークの近くに配置することがほとんどだったので、
当然毎日のように小競り合いが起こった。

11

罵声の浴びせ合いから始まり、石の投げ合い、
何か物がなくなっただけで、子供のような殴り合いを始める。
当然、無意味な怪我人が出始める。
やがてお互いの間に憎しみが生まれ、
果ては殺し合いに繋がっていくようになった。

部隊長の言葉など耳に入らず、軍律などお構いなしの状態だった。

ある日のことである。
たまたま一人の市民が小競り合いしている間を通りかかった。

双方ともそんなことはつゆ知らず、矢の雨を浴びせあった。
やがて剣での斬り合いになり、なんとか痛み分けで夕刻頃ようやく落ち着いた。

その時初めて市民が犠牲になったことを彼らは知ったのである。

市民の頭には二本の矢が刺さっており、即死状態だった。
近くに狐の死骸がもあった。

武器も持っていなかったので、おそらく自分がかわいがっていたペットが、
逃げだしたので追い掛けてきた際、流れ矢に当たったのだろう。

12

衛兵A
『ノルドだ・・・』

衛兵B
『ヒ――――ッ!』

衛兵A
『落ち着け!これは事故だ!』

だが、実際こんな事は珍しくなかった。
ポエットが経験しただけでも、おそらく5回以上。
それ以上は数えていなかった。

【敵に遭遇し 敵を殺し 味方も殺し 自分を救った】

いつの間にか、一部の衛兵の間では、そんなジンクスのような暗号が呟かれるようになった。
やがて反乱軍の間では

【いつになったら帝国を追い出せるんだ!】
【ウルフリックは何をためらっているんだ!】
【早く帝国軍と戦いたい!】

などと、まるで飢えを抑えたオオカミのような声が聞こえ始めた。

反乱軍は帝国軍と比べたら正規軍という言葉とは程遠い物があった。
ウルフリックはタロス崇拝を掲げているため、ノルドらしい生き方を推奨するものの、
帝国と違って長年培ってきた軍律の重みが浅い。
お陰で上下関係もあやふやな面もあれば、イノシシ部隊が多いため烏合の衆に近かった。

あるときポエットはウルフリックにこう進言した。

13

ポエット
『兵にもっと訓練をさせ、上下関係をはっきりさせ、発言にも制限をかけ、軍律を厳しくするべきです』

ウルフリック
『ノルドは縛られるのを何よりも嫌う種族だ。
お前もノルドの血を引いているのなら、それがわかるであろう。
これ以上軍律を厳しくすれば、軍の中で反乱が起きかねない!』

ポエット
『今でも状況は変わりません。実際、兵達はイラついてます。
こういう時こそ剣の訓練や弓矢の訓練を行い、日頃から発散させるべきなんです』

ガルマル
『ポエット。帝国を倒す日も近い。
そのためには士気をあげておく必要がある。
兵達が日々イラついているのも承知の上なのだ』

ポエット
『兵士たちは酒を飲みながら愚痴っているんですよ!
そんな状況で士気が上がっていると本当にお思いですか!
それにっ!』

ガルマル
『黙れポエット!ノルドとはそういうものなのだ!』

ポエット
『・・・』

ウルフリック
『今の我らには、常日頃から込み上げてくるものを抑え込む必要があるのだ。
白金協定が結ばれた時点から、このイラつきは始まっている。
たかがハチミツ酒如きで、士気が下がるほど北国のノルドは軟ではない』

風船に空気を入れ続けるとやがて破裂する。
問題はそのタイミングだが、スカイリムにはもう一つ大きな問題がある。
その問題を解決しない限り、内戦は本格化しない。
どこかでガス抜きをしないと、やがて士気が萎えてしまう。

心配事は的中した。

帝国との停戦条約である。

14

スカイリムには内戦以外にも、【世界を喰らう者 アルドゥイン】の復活という難題があった。
ドラゴンボーンを中心に帝国とストームクロークとの停戦条約がハイフロスガーで決定したのである。

この条約にウルフリックが賛同した時点で、ポエットは彼の支配権の狭さを感じた。
ウルフリックはスカイリムの上級王止まりではないのだろうか?

ストームクローク軍のオオカミの声は、まるで雑音のようにウインドヘルムに広がった。

【ここに来て停戦だと!ふざけるな!】
【さっさと帝国に攻め込まないからだ!】
【ウルフリックは腰抜けだ!】

15

ポエットはストームクロークの軍を抜ける覚悟を決めた。
この頃、彼女は19歳になっていた。

ドラゴンボーンがアルドゥインを倒し、再びスカイリムは内戦状態に戻ったころ、
ポエットはシロディールの北の町ブルーマの酒場にいた。

一人のカジ―トが声をかけてきた。

16

カルジョ
『ポエット?』

ポエット
『カルジョ?』

カルジョ
『おいおい、久しぶりだなぁ~元気にしていたか?』

ポエット
『カルジョ~^^ノ』

カルジョ
『おまえ全然変わってないな!子供のままだぞ!』

ポエット
『私はこれ以上成長しないの!ヽ(`Д´)ノプンプン』

カルジョは2年前にポエットがシロディールからスカイリムに向かう際、
ひょんな事がきっかけで旅のお供をしてくれたカジ―トだった。
だが北の国境で衛兵に見つかってしまい窃盗の罪で逮捕され、帝都に送還されてしまったのである。

ポエット
『出てこれたの?』

カルジョ
『まぁな。といっても借金は増えたけどな・・・』

帝都にいた頃、カルジョは手癖の悪さで有名だった。
真夜中の寝静まった頃、彼は手際よくガキを開けると抜き足差し足で家の中を物色する。
プロらしく全部は盗まず適度に金塊などを袋に詰めると、サッサと退参した。、
ところが下水道に入ろうとしたところで衛兵に見つかってしまう。
慌てて下水道を走り、なんとか衛兵を巻くことに成功。
無事出口から外に出ることができて、ホッとしたところで袋の中身を確認した。

17

カルジョ
『オホホッ!これでしばらくは食いつないでいけるな。たまにはスクゥーマでも決めるか!』

と喜んでいる脇から・・・

ポエット
『おじさん何してるの?』

カルジョ
『ウォオオオオオオΣ(゚Д゚)!』

ビックリして一瞬息を呑んだが、よく見たら小さい子供だった。

カルジョ
『なんだ、子供か・・・』

ポエット
『子供じゃないよ!ヽ(`Д´)ノプンプン』

カルジョ
『真夜中だぞ!こんなところで何やってるんだ?』

ポエット
『これからスカイリムに向かうの』

カルジョ
『お前さんひとりでか?』

ポエット
『うん』

懐も温かくなったし、どのみち帝都にはしばらく近づけないと判断したカルジョは、かつて自分は傭兵をしていたこともあったんだと、
嘘をついてポエットの護衛をすることにしシロディールを離れようとした。

18

ポエット
『どうせまた賭け事とお酒でしょ』

カルジョ
『いいや、そうじゃない。
あそこにいるアハカリっていう雌猫に保釈金を肩代わりしてもらったのさ』

ポエット
『裏がありそうだね』

カルジョ
『これからスカイリムに行くんだよ』

ポエット
『何しに行くの?』

カルジョ
『行商さ。戦争は商売のチャンスになる。
カルジョはその護衛ってことで雇われた。
無収入だが食事と寝床にはありつける』

ポエット
『そっか・・・』

カルジョ
『お前がここにいるってことは、
盟主様ってのには出会ってないようだな』

ポエット
『・・・』

カルジョ
『どうするんだこれから?』

ポエット
『家族でも探そうかなって思っててね^^;』

カルジョ
『そうだよな、家族は大事なんだよな』

ポエット
『カルジョの家族はどこにいるの?』

カルジョ
『わからない』

ポエット
『わからないって、どういうこと?』

カルジョ
『親父はカルジョが小さい時に戦争に行ったきり帰ってこなかった。
兄貴は出稼ぎで鉱山労働をしにシロディールにいるらしいが、未だに音信不通だ。
母親は<たてがみ>奉公のせいでスクゥーマ狂いになっちまってな。
3年間母親の世話をしたが、結局スクゥーマがやめられなくて2年前に死んじまったよ』

ポエット
『<たてがみ>奉公って何?』

カルジョ
『<たてがみ>って言う生まれながらのエリートがいてな。
そいつの身の回りの世話をさせられるんだよ。
男の場合は狩りや飯の支度、運が悪いと剣や弓矢の的役。
女になるとクソの世話やケツ拭き、夜の相手までやらされる』

ポエット
『酷い・・・土地の有力者とか、権力者とか、そういうこと?』

カルジョ
『第三の月って呼ばれる日に生まれた子供の事さ。
その子供はどんなに下賤の者でも、
将来部族の長になることを約束されてるんだ』

ポエット
『なにそれ?・・生まれてすぐ長になるなんて変な風習ね』

カルジョ
『お前たち人間種からみれば不思議かもしれんが、カジ―トにとっては普通の事なのさ。
将来が約束されている者には、黙っていても金や食い物が舞い込んでくる。
一人じゃ食いきれないから、自分の部下に分け与える。
そうすれば自然と生活は安泰になってくるのさ。
それが嫌なら部族から出て行けってこった』

ポエット
『お母さんかわいそう・・・頭に来ないの?』

カルジョ
『当然、殺してやりたいとまで思ったさ。
だが、母親の面倒を見ている間に、<たてがみ>の奴がエルフの高官に殺されたんだよ』

ポエット
『どうして?』

カルジョ
『さぁな。後で聞いた話じゃ、連中と裏で繋がっていたらしい。
エルフ達は利用価値がなく、自分らに害でもあると判断して消したんだろうって』

ポエット
『・・・』

カルジョ
『とにかく俺にはやり場のない怒りだけが残ってな。
最初の頃はボロボロの母親に当たったりもした』

カルジョ
『だが、思ったよ。
こんなになりながらも俺をここまで育ててくれたんだなって。
守ってくれたんだなって』

ポエット
『いいお母さんじゃない^^』

カルジョ
『だから、家族は大事なんだよなってことだ』

ポエット
『お兄さん見つかってないの?』

カルジョ
『母親が死んでからシロディールに来たよ。
最初の二、三ヶ月くらいは探したんだがなぁ~それっきりだ』

ポエット
『それっきりって?探してないの?』

カルジョ
『金も食い物も尽きちまった時~ついうっかり物色しっちまってよ』

ポエット
『ぬ、盗んだの?』

カルジョ
『母親の世話をしてる時はよくやってたんだよ』

ポエット
『犯罪じゃないの!』

カルジョ
『カルジョはカジ―トだ。
お前たちにとっちゃ、泥棒だとか手癖の悪い奴なんて言うかもしれないが、
カジ―トにとっては、俺の物は俺の物、お前の物は俺の物がまかり通るんだよ』

ポエット
『なんなのその無茶苦茶な理論・・・私の物は私の物だからね!』

カルジョ
『こんな話をした相手から盗みをするほどカルジョは馬鹿じゃない』

ポエット
『お兄さんは探さないの?』

カルジョ
『カジ―トは独立心が強んだ。
いまさら兄貴を見つけて何になる。
何も変わりはしないさ』

カルジョ
『それにシロディールに来てからというもの、
カルジョも人間種について色々と学んだよ。
酒と賭け事をイッペンにやるもんじゃないともな^^』

ポエット
『ふ~ん』

19

カルジョ
『家族の手掛かりはあるのか?』

ポエット
『・・・ない・・・』

カルジョ
『たしか、見世物とかをやるんだろう?
どこかでやっていれば、人が集まって賑やかになるはずだ。
その辺を手掛かりにしたらどうだ?』

ポエット
『そんなことわかってるよっ!』

カルジョ
『なんだ?家族の元に帰りたくないのか?』

ポエット
『だってさぁ~17年間ずっと放浪民をしてきたんだよ。
あちこち旅するのには慣れてるんだけどさ』

カルジョ
『うむ』

ポエット
『なんていうか、やっぱり窮屈なんだよね。
私って小さい時から一族とは違う考え方を持っていたし、
それに今更会ってもどうなんだろうってさぁ~』

カルジョ
『うーむ。インペリアルには”故郷に錦を飾る”という言葉があるらしい』

ポエット
『錦?』

カルジョ
『色鮮やかな織物のことだよ。
つまり”故郷を離れていた者が、立身出世して華やかになって帰ってくる”という意味だ』

ポエット
『私に出世してから帰れって言ってるの?』

カルジョ
『なにもそうしろと言ってはいない。
お前自身の事だ。カルジョには決められないよ。
ただ、そういう言葉もあるということだ』

ポエット
『う~ん』

カルジョ
『どうするかはお前が決めることだ』

20

カルジョと別れた後、ポエットは一人宿屋の一室で横になり
しばらく考えにふけった。

もし、また家族の元に戻れたとして、私は必要な存在なのだろうか?
一ヶ月、半年、一年たった頃、きっとまた窮屈な思いをしてしまうんじゃないだろうか?

それにタムリエル中どこに行っても安全とは言えない。

そんなに偉い人に仕えたいわけじゃない。
帝国だってストームクロークだって私にとってはチャンスだと思ったけど、
組織としては成熟し尽くしているところがあった。

私はただ自分を必要としてくれる人。
重要視してくれる人。
今まで学んできた知識を生かしてくれる人。
そういう人の下で働きたい。

するとある一つことが思い浮かんだ。
かつて帝国を築き上げ、タムリエルを一つにまとめた者。

翌日早朝、ポエットの顔には迷いが消えていた。

21

ポエット
『カルジョ!!』

カルジョ
『ああ?』

ポエット
『私もスカイリムに行くよ!』

こうして彼女は目標を立て直し、再びスカイリムへと戻る事にした。

ドラゴンボーンを探すために。



ポチットお願いしますm(_ _)m

<備考>

◎白金協定
タムリエルでは元々八大神の信仰が主だった。
第三期にタムリエルを統一し、皇帝となったタイバー・セプティムが神格化され、これが加わり九大神の信仰がはじまった。
しかし、これを良しとしなかったのがアルドメリ自治領のハイエルフ達だった。

大戦でエルフは一度はシロディールにある帝都を奪ったものの、帝国は再びこの地を取り戻した。
しかし帝国は大きな損害を受けてしまい、エルフ達との停戦協定を結ぶことにしたのである。

これが白金協定である。

この条項の一つにタロス信仰の廃止が入っていた。
タロスとは前述のタイバー・セプティムの事である。
彼はノルド人であったためスカイリムではタロス信仰が根強かった。

帝国がこの条項を受け入れたことで、スカイリムの人々の反感を買い、
内戦に繋がったのである。


◎スクゥーマ
主にカジ―トの間で流通している麻薬の一種。
カジ―トにとっては、それほど害はないようだが、
他の種族にとっては非常に中毒性の高い麻薬。
しかし、カジ―トも常用すると中毒になる。

ムーンシュガーという原料を精製することで作ることができる。

◎ブルーマ
帝国が支配するシロディールの北にある町。
後半このブルーマを舞台にしたのですが、
スカイリムにはないのでドーンスターの酒場を使用してます。
作者はオブリビオンプレイヤーなのですが、
たしかブルーマって雪あったよな?
あと、シロディールの英雄像があったよな程度しか覚えていません。


<謝辞>
今回から”五鉄さん”のポエットちゃんに出演してもらいました。
どっから見ても抱きつきたくなるほどカワ(・∀・)イイ!!ですね。

”五鉄さん”の脳内設定をちょっとだけ変えて、大幅に追加している感じです。
イメージ的には【三国志の諸葛亮孔明】を考えています。
【演技】のほうですけど。

ポエットちゃんには、これからナディアにとって欠かせない頭脳になってもらおうと思っているので、色々と活躍してもらうつもりです。

よいフォロワーを作っていただき感謝です^^

1
その日の出来事は、目を疑うしかなかった。
2
奴らは全身傷だらけの血まみれになろうと...体中が炎に包まれようと...
3
体力の続く限り、命の続く限り、決して戦いを止めようとしない。
4
奴らとの戦いは...単なる殺し合いなどという言葉では収まらない。
5
凄まじい命の奪い合いなのだ...
6
その夜、突如としてウィッチマンがレイブン・スプリングスを襲った。
まだまともに門さえ築いていなかった為、エヴァ―モア兵達との激しい白兵戦となってしまった。
7
我々は一時、深い恐怖感に襲われた。
重厚な鎧を装備している兵士でさえ、悲惨な最期を遂げている。
ボロしか纏っていない我々など、毒塗りの武器で一振りされたら、一瞬であの世に逝けるだろう。
ある意味...死も覚悟した。
8
だが指揮官の一人が、牢獄内に避難するよう勧告してきた。
我々は訳も分からず、必死に足を動かし逃げた。
9
戦いは一時間も掛からない内に終わった。
幸い襲ってきたウィッチマンは全滅させたが、エバーモア兵はその過半数を失っていた。
何故こんな無謀な戦い方をしたのか?理解に苦しむが、苦い勝利である。
9-2
上官達の話では、今回は様子見だった可能性が高いと予想しているようだった。
どうやら彼らとの戦いは、これからが本番の様だ。
10
実は指揮官の指示に従ってここへ逃げ込んだ際、我々は仲間のジョルジュを失っていた。
壁の上を越えてきた一本の毒矢が、彼の左胸を深く突き刺し、それが元で絶命したのだ。
11
最初私は、彼の死が受け入れられなかった。
彼は工作員として紛れもなく一流だった。
その彼が、私達の目の前で命を落とすなんて信じられなかったのだ。
11-2
諜報を得意とする彼には、情報収集に色々と立ち回ってもらった。
敵の懐近くまで潜り込んでは、貴重な情報を盗んできてくれた。
彼に救われた命は決して少なくない。
12

此処にいる者の殆どを含め、私もその一人だ。

13
実は彼の妻子は、ウェイレストで絞首刑にされていた。
家族の元に召されたのだと、私は仲間を宥めるよう説得した。
14
私は彼に恩を返す事ができず、ノウノウと生きながらえている事が悔しかった。
ウェイレストのウーサー王に、一矢報いてやると息巻いていたというのに...
何より悔しかったのは、彼のそんな思いを汲み取ってやれなかった自分に腹がった。
私は心のどこかで、ここでの生活に満足してしまっていたのだ。
15
その日の地下牢は、今までに無いくらい静かだった。
蝋燭の火の揺らめきさえ、何も音を発しなかった。
16
しかし私の静寂を破ったのは、看守長が肩を叩いた音だった。
私に会いたいという者が来ているらしい。
17
そこで初めて会ったのが”デルフィン”という、ブレトンの女だった。
18
ウィッチマンが本戦を仕掛けてくるまで、丸一日も無かった。
彼らは翌朝には、城壁の外に姿を現したのである。
しかも昨日とは比べ物にもならない程の圧倒的な大人数であると同時に、全員赤い血のような戦化粧をして....
19
昨夜襲撃してきた連中は、入口の門がまだ設置されてない西側から侵入してきた。
だが今日は、門が設置されている北側に姿を現したのである。
ところが彼らは、そこから一歩も動こうとせず、ただ不気味に城壁の上を眺め続けていた。
19-1
兵士達もその光景にくぎ付けになる。
ウィッチマンに動きが無いので、弓を構えて待機していた。
19-2
だがその異様さに圧倒されたのか、一人の兵士の手から引き絞っていた弦が離れてしまう。
無造作に放たれた一本の矢が、ウィッチマンの集団の中に飛んで行った。
19-3
そしてそれは、一人の額を貫いてしまう...
19-4
これが火を着けてしまう結果に。
彼らは悲鳴に似た雄たけびを上げ、次々と壁をよじ登り始めた。
まるで地を這う蟻の群れの様に...
20
というのが、後になって兵士の一人から聞いた話だったのだが...
その頃、何故か地下牢にいた我々の方が、完全に追い立てられていた。
20-1
どうやら北門だけが侵入口ではなかったようで、どういう訳か地下牢にまで入り込んで来たのである。
20-2
看守が襲われているのを横目に、私は仲間を逃がす事で頭がイッパイだった。
私達は、手薄な東側の階段を駆け上がり脱出を計った。
21
ドアを開けて外に出ると、雨が降っていた。
一寸先がわからないほどの土砂降り。
22
『おいっ!おまえらこっちだっ!!』

衛兵の一人が、私たちを見つけて声を掛けてくれた。
22-1
兵隊長のジャッコスという男が、生き残った兵士達を纏め脱出を図っていた途中だった。
私達も彼についていく事になる。
激しい雨の中ディバイドまで走り抜けるという強硬策に...
23
途中、追手のウィッチマン達の視界を誤魔化そうと、雨の為に柔らかくなった泥を体中に塗ったくる事によって、周りの風景に溶け込んだ。
一時間ほどでディバイドには到着できたが、殆どがこの強硬策に着いてこれず置いてくる事に。
我々の仲間も随分とバラバラにはなったが、なんとか無事到着できた者もいた。
24
そして衛兵に連れられ、町の向こう端にある大きな宿に詰め込まれた。
どうやら次の塒(ねぐら)はここらしい。
24-1
ウェイレストを出てから一ヶ月。
昔の王侯も随分と汚れモノになったなと、仲間にからかわれた。
25
ホッと一息できるのも束の間、一人の衛兵と、貴族の男が宿屋に踏み込んできた。

衛兵
カズというは誰だっ!?
26
一括するような怒声が響く。
だがその声に反応するように、仲間が一斉に衛兵の方に視線を向け、そして私を隠すように彼らの前に立ち塞がった。
27
ノルド
俺がカズだ!なんか用か?あぁっ!?

ノルドの大男が、厚い胸板を突き出して威嚇した。
28
衛兵
嘘をつくな!
お前のようなデカブツだなんて聞いてないぞっ!もっと痩せっぽちだと聞いているっ!

衛兵は物怖じ一つせず言い放った。
29
ウッドエルフ
なら俺がカズだっ!

今度は華奢で、いかにも狡賢そうな男が名乗り出た。
彼はヘラヘラと笑っている。

衛兵
お前はウッドエルフだろ!ブレトンだと聞いているぞっ!
31
すると...

おれだ!

いや!おれだ!

俺がカズだ!!

と、矢継ぎ早に”自分こそが”と手をあげて名乗りはじめた。
流石に衛兵も困り果てている。
こんな出来事を傍から見ていたら、結構な酒の肴になるだろう。
32
貴族の男
やめろやめろっ!もういい!十分だっ!

貴族の男が静止を求めた。
33
貴族の男
『我々はディバイドの領主様の指示でここに来た。
お前達も知っての通り、復興作業中のレイブン・スプリングスが陥落した!
領主様は”カズ”という男に参事会に参加してもらい、町の為に手を貸してもらいたいと仰せだ。
だから...お前達を罪に問おうなどという訳では無いのだ』

疚(やま)しい事など無いと、彼は額に汗しながら訴えた。
35
ここまでくると、流石に自分が恥ずかしくなってくる。
私は素直に名乗り出る事にした。

ディバイド 参事会ホールにて...
36
ホール内では、町の有力者達が集まっていた。
流石にあの格好ではという事で、風呂と着替えを提供されたのだが、それでも彼等の向ける視線は痛い。
まるで珍獣でも目にしているかのように、そこかしこでヒソヒソ話をしている。
37
領主様は何故あんな薄汚い下男を...?
いったいどういうおつもりなのかしら...?
37-1
どうやら彼等にとって私は、招かざる客のようである。
38
前を歩く貴族の男は、階段を昇ってから右手に曲がり、こじんまりした部屋に私を案内した。
赤い絨毯に高価な置物、中央には玉座があり、そしてそこには白く美しく、またどこか妖艶な女性が腰かけている。
多くの重臣達が、彼女を取り囲むように位置し、私に好奇の視線を向けていた。
39
デルフィン
『やっと来たわねぇ~』

だが最初に声を掛けてきたのは、昨日顔を合わせたデルフィンという女性だった。

カズ
『なんだ?...昨日の事なら、私は断ったはずだが?』
40
私には、何故彼女がここにいるのかわからなかった。
彼女が私の元に姿を現したのは、何処からか入手した情報により、私がアカヴィリの血を引いている事を知り、ブレイズ再興に手を貸して欲しいとの事だった。
私はクーデターで多くの仲間を失い、そして自分さえも失い掛けた。
これ以上の争い事に加担する気はないと、キッパリと断ったのだ。
41
???
『今日はその事ではありません』

高貴な女性が玉座を立ち、私の前まで歩み寄る。
42
メロサ
『紹介が遅れました。私はメロサ。
この町の領主を務めています。
今日は貴方に助けてもらいたいと思い、召喚に応えてもらった次第です』

顔立ちからして低い独特な声質だが、彼女の言葉には、どこか誠実さと優しさのようなモノを感じた。
43
カズ
『私は嘗ての...ウェイレストの王族ではありますが、今はただの落ちぶれた下男でしかありません。
そして国を裏切った反逆者です。
いったいどんな事をすれば、あなたの手助けになるのか、皆目見当もつきません...』

私は恭(うやうや)しく答える。
まるで奴隷が、主人に弁解しているかのように。
44
デルフィン
『私が何故、あなたがアカヴィリの血を引いている事を知っているのか?見当がつかない?』

再びデルフィンが口を開く。
まるで私に、挑戦状でも叩きつけるかのように。

カズ
『いや...悪いが、興味もない...』
45
デルフィン
『嘘でしょ?自分の出自よ?そんなハズがないわ!』

私は一瞬、触れられたくないモノを触れられた気がして、不快な目で睨んだ。
だが彼女にとっては、お構い無しのようだ。
46
デルフィン
『ブレイズの拠点の一つ、スカイ・ヘイヴン聖堂には、古い蔵書が沢山置いてあってね。
そこには、ブレイズの事だけじゃなく、アカヴィリのタムリエル侵攻について書かれた本も残っていたのよ』

タムリエル侵攻...そのワードが耳に入った瞬間、私は古い記憶を呼び起こそうとしていた。
47
デルフィン
『ブレイズの前身である、ドラゴンガードを創設したとされるであるアカヴィリは、嘗て三度に渡ってタムリエル侵攻を計り、そして三度とも失敗したわ。
私が注目したのは、最後の侵攻の事なんだけど...』

彼女は抑揚をつけ、いかにもドラマティックに語る。
48
デルフィン
『記録によるとアカヴィリは、第二紀572年にタムリエルへの三度目の侵攻を計ってる。
これが切っ掛けとなってノルド、ダンマー、アルゴ二アンによるエボンハート・パクトが結成されたと云われているわ。
この頃は”三国同盟”と呼ばれた時代ね』

歩きながらの説明に、皆が耳をそばだたせた。
49
デルフィン
『アカヴィリは、彼らの起こした洪水によって撃退され、ほぼ全滅させられたとも云われている。
でも彼らは屈強な種族だった。
そう、生き残った者がいたのよ。
そして彼らは、秘密裏にタムリエルで散っていった。
面白いのは彼らが、ただ散っていったただけじゃないって事よ』
50
カズ
グラム・オーカー、【亡命者】...我々アカヴィリ系ブレトンの始祖。
”尖った王冠”の事か?
51
デルフィン
『...やっぱり知っていたじゃないw』

カズ
『あれは...呪われた王冠だと云われている...』
52
デルフィン
『それは私達がブレトンだからよ!
あの王冠は、元々ノルドの上級王が被っていた物で、それを当時のアカヴィリ人が盗み出し、ハイロックに持ち込んだ』
52-1
デルフィン
『自分達の保護の代わりに、上級王エメリックに献上したという伝説。
そしてエメリック以降、尖った王冠を被った代々のブレトンの王は、謎の死を遂げている。
ノルドの伝説じゃ、あの王冠には代々の王の力が宿っているんだそうよ。
それが呪われていると解釈されてきたのよ』

彼女は、自ら調べ上げてきた事を自慢げに語った。
53
デルフィン
『だけどグラム・オーカーの記録は、肝心な所が抜け落ちていて、王冠の所在が不明なのよ』

徐々にだが、彼女が私に何をさせたいのか?
その企みが薄っすらと浮かび上がってきた。
54
カズ
『尖った王冠はノルド上級王の証。
ウルフリックに献上し、見返りをもらう...今の状況から察するに...援軍か?』
55
デルフィン
『援軍だけじゃないわ。
援助物資や多くの錬金術師、治癒師達も呼べる。
あなたの返答次第でね』

この時点で私は、彼女がまったく解っていないという事が理解できた。
私は鼻でため息を吐くと、ゆっくりと口を開いた。
56
カズ
『まず第一に、【亡命者】と題された本の内容は、ウェイレスト王宮図書館の学者らによって研究及び調査が続けられてきた。
結果、信憑性が非常に低いと評価されている』

デルフィン
『え?どうして...』
57
カズ
『おそらく貴女は、その本に描かれていたエメリック王の肖像画を見て、尖った王冠だと判断されたのでは?』

デルフィン
『えぇ...』

デルフィンの声は弱弱しくなってしまった。
58
カズ
『尖った王冠は、第一紀300年代の上級王である、ボルガス王が最後に使用したとされている。
また彼の死後、共に墓に埋葬されたとも言われている。
だがそれ以降、スカイリムは継承戦争へと突入したせいで、記録の殆どが消失してしまい、ボルガス王の墓の位置さえ分からなくなってしまった。
つまり当時から今に至る4000年以上もの間、誰一人その姿形(すがたかたち)を見た者はいないのだ』

デルフィン
『で、でも...』
59
カズ
『何故グラム・オーカーの著書には、その挿絵があるのか?
答えは簡単だ。
尖った王冠とは【jagged crown】(ジャギー・クラウン)、ギザギザの王冠とも訳せるからだ』

デルフィン
『じゃぁ...これは偽物なの?』
59-1
カズ
『偽物と言うよりも、一族の王冠だと考えた方が無難だろう。
おそらくそれが、たまたまノルドの”尖った王冠と重なっただけ”だ、と学会は結論付けている』

デルフィン
『でもそれじゃ、つじつまが合わないわ...』

私は彼女に視線を合わせてから、再び語りだした。
60
カズ
『第二に、グラム・オーカーという人物自体が不鮮明だとされている。
彼は出自も、いつ亡くなったのかもハッキリしていない。
ボルガス王に仕えていた魔術師だとか、セプティム王朝時代の歴史家だとも云われている。
だが中でも、最も整合性として高いのは、貴女が仰っていた、ハイロックに逃げ込んだアカヴィリ軍の残党の一人だとされる説だが...』

デルフィン
『...』
61
カズ
『残念ながらこの事にも、アカヴィリ系ブレトンの始祖という点で、矛盾が発生する』

デルフィン
『矛盾って...?』
62
カズ
『我々の知っているアカヴィリ人とは、本来アカヴィル大陸に住まう全種族の事を指す。
人間種が存在したという話もあるが、タムリエルに三度の侵攻を計ったアカヴィリ人とは、【ツァエシ】という種族だったと考えられているのだ』

デルフィン
『...』

その場にいた者で、この話の顛末が予測できた者は、自分の足に目を落した。
64
カズ
『ある書籍によると、ツァエシは上半身は人だが、下半身は蛇という獣人種らしい。しいて言うなら蛇人間だ』
64-1
カズ
『もしグラム・オーカーがアカヴィリ系ブレトンの始祖とされるのならば、今の我々の体にも...何らかの...人とは別な部位を持っていても、おかしくはないだろう...』

この話のせいなのか、今まで活発だったデルフィンが、急に黙り込んでしまった。

だが今度は、代わりに領主のメロサが口を開いた。
65
メロサ
『カズ殿...では王冠はどこへ行ったのです?』

彼女は話の核心を望んできた。
私は一瞬、下唇を噛んだ。
65-1
カズ
『申し訳ありませんが、皆目見当もつきません。
そんな物が有ったのかという事自体も、危ういのですから...』
66
私のこの言葉に、周りの重臣たちも同様を隠せない様子だった。

重臣A
『そんな...』

重臣B
『だから言ったのだ、ブレイズの女など...』

重臣A
『このままだとディバイドはおわりだ...』

どうやらウルフリックの援軍話を、余ほど当てにしていたらしい。
67
カズ
『メロサ殿。援軍を望むのならば、スカイリムのウルフリックを頼るよりも、北方のジェハンナを頼られるべきでは?』

皆を失望させた事の罪悪感からか、私なりの罪滅ぼしな助言だった。
68
メロサ
『ジェハンナは同国であっても、王国を名乗る他国であり、何年もの間断絶状態が続ていています。
一番近いマルカルスには、ウィッチマン対策の為に、何度も協力体制を取りたいと願い出ています。
ですが内戦時の体制の交代もあってか、この件に関しては梨の礫同然に後回しにされています』

なるほど...私は頭の中で呟いた。
69
メロサ
『しかも首都のエバーモアは、アヴァンチュリエのおかげで城門に巨大なシールド魔法が張られ、連携も取れなくなりました。
私たちは今、ウェストリーチで孤立しているのです...』

カズ
『そ、そんな...』

正直驚いた。
王国が属領であるディバイドを切り捨てるなんて...
70
重臣C
やはりこの男を、この男をウーサー王に差し出すべきだっ!!

重臣D
そうだっ!首をウェイレストに送り届ければ、王は和平を受け入れ、きっとディバイドに援軍を送ってくれるに違いないっ!!
70-1
瞬間、私は言葉を詰まらせ理解に苦しんだ。
彼らは、あたかも全ての責任を私一人に擦り付けるかのように指さし、怒号を放ちながら口にしたのだ。
71
メロサ
やめなさいっ!みっともないっ!

メロサは激しく一括する。

重臣B
ですが領主っ!これは事実です!
72
メロサ
事実であろうと何であろうと、それだけは絶対に許しませんっ!

彼女は声を荒げて、重臣達を一蹴した。
73
カズ
”なんという事だ...いつの間にかこんな話になっていたなんて...
階下にいた貴族達が私を疎ましく語っていたのは、これが理由だったのか...
確かに彼らの言う事に一理あるのは分かる。
だがいったい私は、何の為にウーサー王を裏切ってまで、ここへ亡命して来たというのだ....?”
74
メロサ
カズ殿!貴方も故郷を捨ててまで亡命して来たのならば、この国がどれほど愚かしい戦争を繰り返して来たか分かるはずです

そうだ、この国が戦争を続けている根本的な原因は、貴族階級達の権力闘争が元になっている。
74-1
何時の世も上流階級は下の者に目もくれず、奴隷は奴隷である事が当たり前であると思われている。
それを良い事に、彼らは更なる力を欲し、時には血の繋がった親族同士で平気で殺し合ったりもする。
愚かしい骨肉の争いこそが、元凶そのモノなのだ。
75
重臣A
『ですがメロサ殿。王都であるエバーモアにまで、我々は見捨てられたのだぞっ!?』

彼らは必死の様相を呈している。
76
メロサ
『アヴァンチュリエは独立した組織です。
彼等は王都を守るために動いたまでの事。
シグメイン王は、私の従兄ですよっ!
王は決して、我々を見捨てたりはしませんっ!』

彼女はこれ以上、血族同士の争いを避けたい一心のようだ。
だが重臣達は、こぞって疑問符を浮かべている。
あたかもそうする事が当たり前かのように...
77
メロサは、兵隊長であるジャッコスを名指した。

メロサ
『もしウィッチマンが、次に攻勢に出るとしたら、ディバイドはどの程度持ち堪えられますか?』

ジャッコス
『どの程度と...言うと?』

メロサ
推し量れるモノがあるなら何でも構いませんっ!
78
メロサに一喝されると、彼は面倒そうに頭を掻きムシリつつ答えた。

ジャッコス
『奴らが...どれ程の戦力で攻め込んで来るかは予測が出来ない。
同時にいつ攻めてくるかもわからない』
78-1
『だからもし、レイブン・スプリングスで見た連中が一気に攻め込んで来たら...今敷いている防衛ラインは、一日とかからず崩されてしまうだろう。
その後、籠城戦になったとしても、ここは橋上の町だから守りに適していない。
丁度いい場所に油袋でも投げられて、火矢の一本でも飛んで来たら、それだけでパニックに陥り、一巻の終わりだ...』
79
経験豊富な兵士としての意見と言った所だろう。
彼は当たり前の事を、当たり前に語った。
私は思わず生唾を飲み込んだ。

だが思わぬ人物が、助け船を出してくれた。
80
シャルロット
『守りに徹するのではなく、逆にこちらから攻めましょう』
90
彼女のその発言に、重臣達が騒めきだす。

重臣C
『攻めるだと...話にならんな...』

重臣D
『戦を知らんのか?こんな少数兵でいったいどうやって戦うつもりだ?』

図体とは裏腹で、口から出る言葉はかけ離れている。
彼等のネガティブな発言には、ホトホト呆れるばかりだ。
91
シャルロット
『実際に攻めるのではなく、攻めると見せかけるのです。
防衛ラインの壁を高くさせ、前方に大きな焚火の壁を作り、なおディバイドに通じる道にも火を付けるなど...
短期間なら、彼らの足止めをさせる事もできるはず』
92
ジャッコス
『あいつらだってバカじゃない。
猫だまし程度じゃ難しいだろう。
レイブン・スプリングスに攻め込む前に、様子見までしてきた連中だぞ』

シャルロット
『ええ、それは分かるわ...』
93
そして彼女は、メロサに向き直る。

シャルロット
『だからメロサ様が、どうしてもご自身の意思を貫き通したいと仰るのであれば、最終的にこの町の特徴を生かすしかありません』

メロサ
『町の特徴とは...なんです?』
94
シャルロット
橋を落とすのです
95
その一言に、重臣達が一斉に騒ぎ出した。

重臣C
ふざけるな!そんな事をしたらウェイレストに援軍を請えなくなるだろっ!

重臣D
やっぱりこの女は、サルモールと繋がっているのだっ!そうに違いないっ!

重臣C
そうだっ!橋を落とすなど...サルモールの破壊工作なんだろうっ!
96
椿
ひどいっ!!シャルはサルモールなんかじゃないわっ!

椿が即座に反論する。
仲間に濡れ衣を着せようとする者達を激しく非難した。
97
重臣C
ふん、お前らのようなヒヨッコ騎士団など、信用できるものかっ!

彼は唾を吐き捨てるように彼女を罵った。
98
だが次の瞬間、頬に傷がある大女が何処から持ち込んだ剣を抜き、いつの間にか彼の股下に刃先を置いていた。

メアリー
おぃっ!おっさん!
いいかげんにしね~と、橋が落ちるより先に、イチモツが落ちるかもしんねぇぞぉ~?

彼女の不敵な笑みもそうだが、冷たい物が知らぬ間に股の下に入り込んでいた事は、彼の肝を冷やすのに十分だったようである。

99
ここは領主の部屋...武器の持ち込みは一切禁止である。

椿
あぶないじゃいっ!武器持ち込んじゃだめでしょぉ~><;

メアリー
『あっ...わりぃわりぃ~うっかりしてたよぉ~w』

100
メロサ
『どうやら、あなたの意見に従った方が懸命なようですが...いったん橋を落としてしまったら、町としての機能は失われてしまうのではありませんか?』

シャルロット
『橋脚を崩さないようにし、被害を最小限に留めるようにすれば、再興は可能かと思われます』

メロサは、ジャッコスに意見を求めるよう視線を移した。
101
ジャッコス
『もし橋を落とすなら、早めに準備したほうがイイ。
前方から攻め込めなくなれば、リーチを遠回りしてくることになる。
その間にも時間は稼げるし、上手くいけば、一週間は持ち堪えられるだろう...』
102
狭い部屋が急に慌ただしくなる。
メロサは、シャルロットとジャッコスに橋を落とす作戦の実行を命令した。
さらに前線に様々な罠を仕掛けて、ウィッチマンが町に近づく時間稼ぎをするよう指示した。
重臣達の中には不満をあらわにする者もいたが、領主の命令には逆らわないところを見ると、彼女には忠誠を誓っているようだった。
103
とはいえ私個人としては、すこぶる不可解な光景でしかなかった。
首が繋がった事は良いのだが、一週間持ち堪えられるだと?
これは一体、何の時間稼ぎなのだろうか?
マルカルスへ逃げるという事か?
ディバイドからマルカルスまで半日とかからない。

104
部屋から数人が出て行き、ひとしきり経った頃、メロサが私を指名した。

メロサ
『カズ殿。貴方は嘗ての王族であり、そしてこの国の歴史や文化についても深く理解されているという事が、私も解りました』

彼女は意を決したかのような表情で、私を見た。
これから何かが始まりそうな...そんな予感さえした。
105
メロサ
『その事を踏まえて、あなたには見て頂きたいモノがあります...』

カズ
『な、なんでしょう?』
106
メロサは席からゆっくりと立ち上がり、両手を胸の前で組み合わせ、ブツブツと呪文を唱え始めた。

魔法だ...
私とてブレトンの端くれ、彼女が変性魔法を試みている事は察しがついた。
107
手の中に貯め込んだ緑色の光がピークに達すると、彼女はそれを一気に解き放った。
眩しく、優しい光が辺りに広がる。
それは音もなく彼女の体から放たれ、そして徐々にゆっくりと小さくなっていった。
107-1
私はその様子に両の目を凝らした。
光が更に小さくなった時、思わず自分の目を疑った。
108
ツァエシ”だ...
紛れもない【蛇人間】が、自分の目の前に姿を現したのだ。
109
彼女は目覚めたかのようにゆっくりと瞼を開く。
そしておもむろに話し始めた。
110
メロサ
『あなたの仰る通り、三度目のタムリエル侵攻を図ったアカヴィリ軍の大部分は、ツァエシでした。
第二紀初頭のタムリエルは、彼等が帝国を統治していましたが、各地の反乱が相次いだ事も有り、帝国は窮地に追いやられました。
アカヴィリ軍は、なんとかその権威を取り戻そうと、大陸からの増援を試みたんだそうです』

私は驚きあまり、目を丸くするしかなかった。
111
メロサ
『詳しい事は分かりませんが、アカヴィルという大陸は、多種族による領土戦争が頻発していたために、人間が住める環境ではなかったそうです。
私達の祖先は、上陸作戦に紛れタムリエルに移住する決意をし、その一部がハイロックへと亡命したと云われています』
112
カズ
『...アカヴィル大陸のツァエシは、人間種を捕食していたと...確か記録では...そうあったと思ったのですが...』

メロサ
『それは事実です。
ですが一方で、人間達と友好的な関係を保っていたツァエシも存在していました』

確かに、第一紀後期のレマン朝には、ツァエシが人間の統治下で政治的手腕を発揮していた記録がある。
なので彼女の言う事も、嘘とは言い難い。
113
メロサ
『彼らは人間を捕食する事を拒み、地下組織として彼らを助けたのだそうです。
ですがその殆どが失敗に終わったとか....』
113-1
『今現在”アカヴィリ系ブレトン”と公称する者の殆どは、その時の僅かな生き残りの末裔です』
114
レジスタンスがいたとは驚きだ。
だから詳細な記録が残されなかったのか...

カズ
『つまり、人間種のアカヴィリの生き残りもいたと...』
115
メロサ
『その通りです。
ただ人によっては、代々言い伝えられてきた者とそうで無い者がいるため、何人生き残っているのかまでは把握できていません』

私はその生き残りの一人なのか...
しかし、という事は...
116
カズ
『グラム・オーカーは...存在していたのですか?』

メロサ
『彼は組織の一人だったという記録が残っています。
私とエバーモア王は、彼の子孫です。
ですが、捕食や吸血と言った行為は、本能的にも退化しており、今は全く必要としません』

彼女との数分間のやりとりは、まさに驚きの連続であり、そして滝の様に心が洗われていくのを感じた。
117
メロサ
『カズ殿。ここまで話せば、大方予測がつくでしょう?』

カズ
『あぁ~...まさか...そんな...』
118
メロサ

『【亡命者】に描かれているエメリック王の肖像画...彼が被っている”尖った王冠”は、当時ハイロックに一度持ち込まれ、そしてスカイリムに返還されました』

カズ
『本物が...存在しているというのか...』

私は声が震えてしまった。
119
メロサ
『その通りです。
ハイロックでの不吉な出来事を知った当時の上級王が、王冠を秘密裏に封印する事にしたそうです』
120
デルフィン
『ノルドは尖った王冠に関して、古い詩歌を残しているわ。
”吹雪を吐き出す青き竜を制し、ここに凍える冬を往くは、尖った王冠を頂きし上級王なり”ってね。
この詩が、王冠の唯一の手掛かりなのよ...』
121
知っている詩歌だ。
だが違う。
違うが覚えているぞ...
122
カズ
吹雪を吐き出す青き竜を従えるはぁ~♪ 白銀の静寂(しじま)を遡りし風なりぃ~♪
ここに凍える冬を往くはぁ~♪ 大樹に抱かれし十の角なりぃ~♪
銀の夜を舞う竜を手にする者はぁ~♪ 尖った王冠を頂きし上級王...なり...
123
思わず口から溢れ出てしまった。
新たなフレーズが現れた事に、驚きを感じたのだろう。
123-1
瞬間的に皆言葉を失ってしまい、私は注目を浴びていた。
124
カズ
『ぬ、抜け落ちた部分というのはおそらく...この事だろう』
125
デルフィンはメロサに向き直る。

デルフィン
やっぱりそうなのよっ!
彼の今言った言葉は、おそらく後になって書き足したんだわ!
126
メロサ
『貴方の予想通り、グラムの跡を継いだ者がいますね』
127
デルフィン
『ええ、たぶん彼は、尖った王冠の封印の儀式に参列していた司祭だったのよ。
だからどこに封印したのか、本に書き加える事ができた。
そしてウェイレストに戻って、何食わぬ顔で王宮図書館に保管していたのよ』
128
再び私に向きなおる。

デルフィン
『その閲覧ができたハズの人物と言えば...当時の王家の者であり、そして今の子孫である、あなたしかいないわっ!
129
だから私を呼んだのか。
というより少々不快でもあった。
それは、彼女の表情から直感できたからだ。

”試すために、ワザと知らないフリをしたな...”
130
カズ
『だが...その詩歌を知っていたからって、私には何もわからない...』

デルフィン
『いいえ、貴方が読んだ”亡命者”は、私が読んだ”亡命者”と違っている。
だからきっと、あなたしか知らない事があるはずよ!
特にこの詩歌は、ただの詩じゃない。
王冠の眠る場所を示しているんじゃないか?って、私たちは見ているのよ』

私は何が何だかよくわからず、呆気にとられた。
140
デルフィン
『だから...ごめんなさいね、実は王冠が眠る場所は、大方見当がついているの』

カズ
『いったい...どういう事なんだ?』
141
デルフィン
『細かいことは後で説明するわ!
貴方が読んだグラム・オーカーの【亡命者】には、他に何か書かれていなかった?
覚えている事は無い?』

デルフィンの目の鋭さがさらに増す。
私はこれから、彼女にとっての慰み者になってしまうのかと不安になった。
142
メロサ
『唐突な事なので、さぞ驚かれておられるでしょう。
種族は違えど、私達は共にアカヴィリの血を引いている一族です。
この血を絶やさないためにも、私たち自身も警戒をしなくてはいけません。
なので無礼を承知の上で、このような態度で臨ませて頂いた事を、お詫びいたします』

領主にまで恭しくされると、私としては困り果てるしかない。
143
メロサ
『ですが、分かっていただきたのです。
今これが、私たちが生き残るための唯一の手段なのです』

カズ
『じゃぁ...王冠を探すために私も同行しろと...?』

デルフィン
『そうっ!見つけて、援軍を連れてくるのよ』
144
だが迷った。
要するにウィッチマン対策の為に、スカイリムに手を貸してもらおうという魂胆なのはわかる。
だがこれは、逆を言えば、スカイリムに侵略を申し出ている事と変わらない。
つまりは売国奴そのものの行為である。
145
カズ
『いや...やはり私は賛成できません。
尖った王冠を掘り起こすよりも、ジェハンナやマルカルスを頼るべきだ。
それにもし...もし王冠が、ウルフリックの目に叶う物でなかった時。
あるいは、彼が呪いに掛かってしまった場合...』
146
メロサ
『あなたが危惧しているのは、ウルフリックの身に何かあった場合、スカイリムの怒りを買い、ハイロック侵攻の切っ掛けを作りかねなという事ですね...』
147
カズ
『その通りです。
立場の弱い国は、強国に都合よく利用されるのが外交の常です。
貴方は生贄にされるんですよっ!
こんな事危険すぎるっ!』

近くにいた椿は思いもよらなかったのか、話を耳にした途端口を覆い隠し驚いた様子を見せた。
148
カズ
『貴女は私に助けを求められた。
だから助言いたします。
こんな危険な賭け事はおやめなさい...』
149
だがメロサは、件(くだん)の貴族とは違い、民衆思いな人物でも知られていた。

メロサ
『カズ殿...もし、もしあなたが私の立場だったら...どうしますか?』

人に教えを説くというのは、どこまでも自分に厳しく、聖人でもなければ、ただの驕りにしかならい場合もしばしばある。
私は”しまった”と心内で呟き、言葉を詰まらせてしまった。
150
メロサ
『あなたは王族でありながら、ウェイレストの現状を憂いて、クーデターの首謀者を買って出たそうですね?』

カズ
『そ、それは...』
151
メロサ
『ここは小さな橋の町ではありますが、長年二つの国の橋渡しを続けてきた、歴史ある町でもあります。
首都が他国との戦争を繰り返しているせいで、悲しみや絶望も多い場所ではありますが、それでも小さな希望が継ぐんできた物もあります。
そういう沢山の人々の思いに比べれば、私の命など羽毛程でしかありません....よろこんで生贄になりましょう』
152
その微笑に、私は返す言葉が思いつかなかった。



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[備考]

◎レイブン・スプリングス
レイブン・スプリングスは、帝国軍が【リーチ事変】における当時の出来事を揉み消すために、全てに火を着けました。
この出来事はロザリーとナディアがこの場所を去ってからすぐの出来事です。(第十一話EP2)
そして二十年以上もの間、内戦が続いた事もあり、この街は放置され続けてきたのです。
ようやくその復興に着手したのですが、そこに原住民であるウィッチマン達が攻め込んで来ました。
今の所彼らの目的は、ハッキリとはわかっていません。

◎メロサ
ディバイド領主を務めているアカヴィリ系ブレトン。
ただし椿やカズとは違い、ツァエシとブレトンの混血。
世代を重ねるごとに、ツァエシの本来の特性である吸血や食人といった特性は失われ、更に人間種に擬態する独自の変性魔法を獲得している。

性格はいたって温厚であり、ディバイドの民からは名君として尊敬を集めている。
一部の重臣達による反感はあるモノの、彼女はそれを一意見として受け入れ、慢性的な貴族体制の”悪”に対して真っ向から立ち向かう姿勢を崩さない。
好奇心旺盛な面があり、デルフィンの提案を宝探しの様に受け止めている衒いがある。
それが影響しているせいで、デルフィンは重臣達に疎ましく思われている。

【亡命者】の著者であり、アカヴィル大陸から人間種を亡命させたツァエシの英雄【グラム・オーカー】の子孫である。
また彼は【尖った王冠】をスカイリムから持ち出した人物と目されている。

メロサは大型MOD【Beyond Reach】に登場する実際のディバイドの領主です。
SOSでの彼女はディバイドの領主であり、エバーモアのシグメイン王の従妹という独自の設定にしました。
また実は彼女は、ナディアの勝手な判断でフランスの女優さんである【エヴァ・グリーン】をモデルに顔を変えてあります。
ツァエシ(蛇人間)のイメージから、彼女が頭に浮かんだので..
これから少しづつ頂点編集を繰り返して彼女の独立化を考えています^^;
A1
余談ですが、【Beyond Reach】でのウェイレスト王である【ウーサー王】も、ウェイレストの残党兵と一緒に登場します。(どこにいるのかわからないw)
今回は名前だけを使わせてもらっています。

ツァエシは長寿だそうです。
なので彼女は【リーチ事変】の頃には既に領主であり、マウリシオとも親交があったとか...ともすればロザリーとナディアを逃がす手引きをしてくれた人物...なのでは...?

◎アヴァンチュリエ
【Beyond Reach】では、エバーモア衛兵隊の中でも強力な魔戦士集団という設定です。
実際の彼らは、重装備に身を包んだ火炎系の魔法を得意とする集団であり、エバーモアの門番をしています。

SOSでは強力な魔法戦士の集団という事で、エバーモアの中で王都を優先的に守る事を目的とした組織としました。
今回はレイブン・スプリングスがウィッチマンの手に落ちた事により、王都であるエバーモアを守るために、彼らが巨大なシールド魔法を張ったという事になっています。

因みに意味は”ならず者”だそうです。

◎グラム・オーカー
第二紀572年 アカヴィル大陸より侵攻してきたアカヴィリ軍がモロウィンドウから上陸する。
当時ツァエシの捕食対象だった人間種を守る為に、地下組織として働いたツァエシの一人。
彼はアカヴィリ大陸より人間種を守るために、上陸作戦に紛れて、ハイロックへと逃亡した。
その時、何処からか”尖った王冠”を手に入れ、それを手土産にして、エメリック王に取り入ったとされる。

タムリエル第二紀は【ヴェルシデュ・シャイエ】というツァエシが支配した時代です。
しかし430年後に彼の息子である【サヴィリエン・チョラック】が暗殺されることによって、皇帝空位の時代が始まりました。
彼らが亡くなってからアカヴィリ軍は、二回タムリエル侵攻を計っています。
(【ヴェルシデュ・シャイエ】が初めてタムリエルに侵攻したのを合計すると三回)

SOSでのメロサの話では、”増援”という形でタムリエル侵攻を計ったと書いたのですが、これは【ヴェルシデュ・シャイエ】やその息子が亡くなっても、
【ブレイズ】という組織は健在だったのでは?という予想からこう表現しました。
当時のブレイズが何をしていたのかは不明です。
ブレイズの前身はドラゴンガードであり、この組織を立ち上げたのが彼らだと云われています。

アカヴィリ軍の三度目の侵攻は、モロウィンドウから侵攻したそうです。
この事が切っ掛けとなり、ESOのエボンハート・パクトが結成されました。

◎亡命者
グラム・オーカーが書いたとされる書籍。
元々は彼の半世紀を書き綴った物であり、特に当時のアカヴィリ・レジスタンスの行動に限られて書かれている。
グラムは、アカヴィル大陸に住んでいた人間種達をタムリエルに亡命させるべく、軍の侵攻作戦に紛れてハイロックに逃げ込んだツァエシである。
その際、スカイリムの上級王が被っていたとされる【尖った王冠】を盗み出し、これをエメリック王に献上したと云われている。
この本は、当時の出来事を事細かに知る事のできる歴史書でもあるが、反乱組織だった事もあってか、故意に記載されなかった部分もある。
57
しかし、デルフィンが読んだ【亡命者】と、カズが読んだ【亡命者】には相違する点がある。
また、著者であるグラム・オーカーはハイロックに逃げたはずなのに、何故かこの本はスカイリムのスカイ・ヘイヴン聖堂の書庫に眠っていた。
王冠を返還する際にでも戻したのか?
そして何故二冊も存在しているのか?
また大部分の文章が鏡文字で書かれている。
いずれにせよ謎の多い書物である。

因みにこの本の名前の元ネタは、第二紀812年の出来事で、アカヴィリの亡命者達をエルスウェア―のカジートが保護した事を由来にしています。  

◎尖った王冠に関する古いノルドの詩歌について
これについて出典がどこなのか?
個人的に色々と調べたのですが、見つかりませんでした。
尖った王冠は第一紀のボルガス王の時代が最後で、それ以降使われていません。
なのでこの詩を納めた書籍と言うのも、継承戦争当時に失われたのではないかと思われます。

因みに紛失した尖った王冠の代替品として作られたのが”フレイディスの王冠”と命名された冠で、ゲームでも”フレイディス女王の剣”のクエストで見る名前です。
彼女は第二紀431年にスカイリムの上級女王として選ばれた人物で、隻眼のオラフの次の上級王のようです。
ON-item-Crown_of_Freydis
ESOにおけるエボン・ハート・パクトを纏めたノルドの上級王ジョルンは、この冠を戴冠したそうです。
面白い事に、その当時のムート(上級王を選ぶための合議)が開催した場所は、”スクルダフン”だったそうですw
当時は歩きで行けたんでしょうか?

[使用MOD]

Torumekian White Witch Outfit...【風の谷のナウシカ】に登場するクシャナの衣装MOD。メロサに使わせて頂きました。

Tsaesci Race - Snake-like race from Akavir...アカヴィリの種族ツァエシをスカイリムに追加するMOD。

2017/8/28/17:45


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1-1

1-2

1-3
その日...人々は大きな過ちを犯した。


1-4
希望の光になるはずだったの者を...殺してしまったのだ。

1-5
だがそんな事は、誰にも分からないし、気が付くはずも無かった。

1-6
彼の名前さえ知る者も、ここにはいなかった...

1-7
その命を絶たなければ、運命はもっと別な方向を進んでいたかもしれない...

1-8
だがこれもまた、真実の道である...

2
スカイリムの内戦は、隣接する他の国々に少なからず波紋を呼んでいた。
タムリエル北西に位置するハイロックにとって、両境の国々が帝国からの離脱を図ろうしていれば、何も起こらないはずが無い。
3
当然ながら、ここでも様々な大義を掲げては、内戦が繰り返されていた。
4
嘗ての大戦では、多くのブレトンが、帝国の旗の下に一つになった。
だが時代は変わっても、人の本質はそう簡単に変わるモノではない。
5
大きな支配から遠ざかると、人は他(た)よりも個(こ)を尊重しようとする衒いがある。
欲やプライドが信念を覆い隠し、盲目なまま堕落へと落ちていく事も珍しくはなかった。
6
スカイリムとハイロックの国境を跨ぐリーチは、東に【マルカルス】、西に【エバーモア】と二つの都市を抱えている。
その中心に位置する橋梁には、【ディバイド】と呼ばれる小さな集落があり、この小さな町が二つの国の関所を担っていた。
7
エバーモアが領有する西側のリーチこと”ウェストリーチ”には、中心に【レイブン・スプリングス】という貴族達が作り上げた中規模な町を有している。
8
『桃李自ずと小道を成す(とうりおのずとこみちをなす)』とは言ったもので、その貴族はよほど民に好かれていたのか、周囲に人々が集まっては開拓が行われ、大小様々と集落が形成。
まるで城壁の外に更に城壁を作るかのように、徐々に広がっていった。
特に南側の【フォーローン】は、レイブン・スプリングスと橋一本隔てて最も栄えていた集落でもある。


しかし、人が集まる事は、決して良い事ばかりが集まる訳ではない。


9
大戦後、南方のハンマーフェルが独立を宣誓し、帝国から譲渡を認められたサルモール達との主導権争いが始まった。
おかげでハイロックには、多くの流民達がなだれ込んでくるようになる。
彼らは勝手に土地を開拓し始め、次第に小さな村落まで作るようになっていった。
10
だがリーチには、元々の原住民であるウィッチマンの存在があり、彼らは自分達の土地を荒らす流民達を毛嫌いし、やがて排除するようになっていく。
11
また、戦時中に傭兵を生業としていた者などは、士官の話に有り付けないと、次の拠り所を探したりする。
だがそれすら見つけられないと、山賊や野盗にまで落ちぶれる者も珍しくは無かった。
まるで落書きを繰り返す壁の様に、そういった類のならず者達までウェストリーチに集まるようになると、根拠の無い縄張り争いが始まるようになる。
12
帝国軍はエバーモア王国と協力し、大規模な鎮圧に乗り出した。
だが多種多様な種族が住まう土地を、武力行使のみで抑え込もうというのは全くの逆効果で、かえって相手の感情を逆撫でする結果になった。
止む終えず王国は、様々な懐柔策を取る事になる。
13
おかげでウェストリーチは、独自の統治法を用いる事により、多種多様な種族が共存する土地へと姿を変えていったのだ。
そしてこの平穏が、長きに渡り続くかと思われていた...


しかし、それも束の間だった...

14
突如として大きな洪水が、この土地を襲ったのだ。
巨大な波が、多くの人々を下流へと連れ去ってしまった。
15
生き残った者は、大自然の怒りに触れたと思い込み、天に祈りを捧げ、信仰心でもってこれを防ごうと考えた。

だが世界は残酷だった。
16
やがて町の端々から、謎の病が発症し始める。
それは人々の肉体だけではなく、精神まで蝕んでいった。

”神々への祈りが足りない 信仰心が足りないのだ”と...
18
血迷った教主が、怒りを鎮めようと、多くの命が生贄として捧げられた。
19
最初は処女の若い女、子供の血肉、赤子の心臓、終いは儀式と称した強姦を強要させ、わざわざ捧げ物を作らせたのである。
20
それはやがて、信仰という名の果てない恐怖となり、人々を支配するようになっていく。
歪んだ信仰が生み出すのモノは、本来の正義さえも歪ませてしまう。
例えそれがおかしい事であっても、当事者はそれを正しい事として認識してしまう。
21
だから嘗ての帝国軍は、この地に巨大な火を放つ事にした。
腫物を覆い隠すように、穴に埋めて無かった事にするように、手に負えないモノを封印するように...
22
だが、誰も過去から逃れる事はできない。
過去は必ず追い掛けてくる。
死して肉体は滅び、土と骨だけになったとしても、怒りや憎しみといった感情は生き続けるモノなのだ。


23
24
私の仕事は不毛だ...
最初から無理を承知で引き受けたのだが、おそらく報われる事はないだろう。
25
嘗ての故郷であるウェイレストは、長年に渡り北方のエバーモアと戦争を繰り返してきた。
始まりはなんて事のない、ただの貴族同士の権力闘争だった。
そう、私の国は、貴族と平民の差別階級によって成り立っている。
26
平民は誰よりも早く目を覚まし、朝から晩まで野良仕事をしては、法外な税金と尊厳をむしり取られ、その日食事にあり付けた事と、生き長らえた事に感謝する。
27
商才がある者は、思った以上に気を使う。
彼らは金の無い者には冷たくあたり、パンの一欠けらさえケチる。
目上の貴族にはゴマをすり、中には運よく取り入れられ、男爵の身分になれた者もいたらしい。
28
だがやはり、なんといっても一番質が悪いのが貴族だ。
下男下女を卑下し、自分達の価値観に見合わない事は決して受け入れない。
王族に媚びを売り、下々の生き血を吸い上げ、無知は罪として断罪し、時には神さえ平気で裏切る。
他人の努力を見て見ぬふりし、自惚れた自分に酔いしれ、彼らに将来が無い事を嘲笑うのだ。29
そんな差別主義が長年続けば、不満と言うしがらみが溜まり、やがては反乱が起こる。
29-1
少し知恵が回る者がいれば、北方のエバーモアに協力を取付け、この堕落に満ちた社会に鉄槌を下そうと躍起になるだろう。
29-2
だがおよそ戦いに無縁だった我々に出来る事は、何もかもを捨てて、ここから逃げ出す事だった。
30
それは、思っていたよりも早く始まり、そうして私は、これから第二の故郷になるであろう”エバーモア”に足を踏み入れた。
だがそれが、単に一時しのぎにしかならなかったと知ったのは、我々が降伏してから1時間後の事だった。
31
降伏は認められたが、その足で東のレイブン・スプリングスに連れて行かれ、強制労働に従事させられたのである。
エバーモアもまたウェイレスト同様、激しい格差社会で成り立っていた。
32
私は労働者達を纏める”監督官”という役職のおかげで、牢獄暮らしは免れた。
最も夜は、看守達と同じ場所で寝泊まりするので、地下牢で寝泊まりしている事には変わらないが...
他の者と違う待遇を受ける事ができた理由は、ただ一つ。
私が有名な王侯の血を引く人間だったからだ。
33
【上級王エメリック】と言えば、タムリエルではそこそこ知られている存在である。
嘗ての三国同盟であるブレトン、レッドガード、オークの三種族を纏め、ルビーの玉座奪還の戦いに挑んだ人物だった。

私はこれまで、インクで書かれた系譜など本気で信用した事はなかったが、この時ばかりは縋るような思いだった。
34
そう、私の祖先にはエメリック王がいる。
私は嘗ての王の末裔なのだ。
35
だが私の出自については、祖父の代で隠蔽されるようになった。
どの代だったのかは忘れたが、一族の血筋にアカヴィリ人の血が混じっていたらしい。
36
アカヴィルといえば、タムリエルの東方にある巨大な大陸だと云われている。
だがそこに住まうアカヴィリ人は、タムリエルにも何度か侵攻してきた事がある。
一説ではアカヴィル大陸に住んでいたドラゴンが、タムリエルに上陸した為に、アカヴィリ人が追い掛けて来たとか。
その後ドラゴンスレイヤーとして、皇帝の護衛兵を務めるブレイズとなるも、今ではサルモールから追われる存在であり、故郷さえ失ってしまった種族である。
つまり私は希少種でもある訳だ。


37
レイブン・スプリングスは、嘗てのリーチ事変を治めるために、帝国軍が火を放った事で有名だった。
その炎は二十日間もの間燃え続け、町一つが真っ黒な炭になるまで消えなかったという。
余ほどの事でもあったのか、この事に対して”やり過ぎだ”と語る者も少なくは無い。
38
行き過ぎたカルトが招いた結果だとは言われているが、このサマを目にすれば、まるで開けてしまった蓋を、慌てて閉めたようにも伺える。
38-1
地面を掘り返すたびに嘗ての惨劇が姿を現す。
一体ここで何人の命が奪われたのだろうか?
今はそれを知る術もないが、事件から既に二十年以上も経過しているのに、殆ど手つかずというのもまた奇妙な話である。
39
兎に角、私達は町の再建の為に駆り立てられていたのだ。
毎日の重労働が苦になると、エバーモアが我々を裏切ったとも思えたが、それでもウェイレストの悲惨さに比べたら、まだましな方だと言えた。
40
暗い地下牢はジメジメしていて、スキーバーや虫たちが闊歩する事もあるが、腐った死体まで歩き回るような事はない。
食べる事のできる黒パンに寝床、酒に仲間の笑い、今までの差別に比べればこの上なく快適だろう。
41
ウェイレストでの反乱を企てた私は、ここの皆に信頼されていた。
私が嘗ての王族であった事は周知の事実だが、何よりな事は、彼らは私を王族として見ている訳では無く、共に命を懸けた仲間として受け入れてくれた事だった。
私はこの信頼を裏切りたくない...裏切るような事だけは...したくない...

42
我々は国境の町ディバイドを出て、マルカルスを越え、山からの下り道を進み、一本の橋を渡った。
この辺りの地形は、私にはよくわからない。
43
橋を渡り切った所で馬車を降り、そこからは徒歩に変わった。
案内役のデルフィンの話によると、目的地であるスカイ・ヘイヴン聖堂に行くには、カーススパイアーという小さな村落を横切らないといけないらしい。
44
ところで、考古学の見地からして、今回の旅は記録するに値する価値がある。
それは旅に出発する前から、驚きの連続だったのだ。
まずは彼等の事を簡単にだが、頭に入れて置く必要がある。
45
後ろを歩く二人の女性は、ディバイドから私の護衛を任された騎士達だ。
目の下に傷がある方が”メアリー”で、女の身でありながら歴戦の猛者といった様相をしている。

もう一人の黒髪の方が”椿”で、風が吹けば飛んでいってしまいそうな娘にしか見えない。
だが信じられない事に、彼女が騎士団長なんだそうだ...
人は見た目で判断してはいけないとは、よく言ったものであるが、ハッキリ言って未知数な存在だ。

ここまでの道すがらで交わされた会話で、二人は長年の付き合いがあるらしい。
メアリーはそうでもないようだが、椿の方はブレイズという組織に興味があるとの事。
46
実は彼女たちが共に所属している【カミリア騎士団】には、もう一人シャルロットというハイエルフがいる。
今回は別件もあってディバイドの領主に同行を控えさせられた。
おそらくだが、彼女がエルフだという事もあり、ウルフリックにサルモールを連想させない事も含まれていると思われる。
47
二人のすぐ後ろを歩いている男はフェニグ。
彼はディバイドの執政であるエンテモン直属の部下らしい。

身分的に私は囚人なので、彼はお目付け役と言った所だろう。
椿やメアリーによれば、嘗てはレイブン・スプリングスの領主に仕えていた事があるらしく、何故か酷く無口なんだそうだ。
なので、たまに目が合った時などは、少し不気味にも思えるのだが...別段害がある訳でもないので、私としては気にしないようしている。

とはいえ執政の部下という事であれば、領主の代理人でもあるので、おそらく同行者の中で、この事態を最も重く見ている人物であると思われる。
48
そして今回の案内役のデルフィンだ。
彼女はブレイズの生き残りであり、スカイリムを拠点に活動をしてきた人物らしい。
個人的にだが、あまり良い印象は持っていない。
目尻の吊り上がった、なんとも灰汁の強い表情をしており、少し触っただけで紙の端で指を切った時のような嫌な感覚に陥る。

ブレイズとしての彼女は、長い間一人で活動していた事もあり、かなりの勝気な女性であるのは事実だ。
正直彼女を見ていると、どうしても落ち着かない。
だが少なくとも、人を欺く能力はかなりのモノのようだ。

当初私は、彼女をそういう風に見ていたのだが...
49
さて、ハイロックのウェイレスト出身で、国王を見限り、エバーモアに亡命。
レイブン・スプリングスで城壁の修復作業をさせられていた私が、何故今この者達と一緒にスカイリムにいるのか?
正直言えば、私は好んで来た訳ではない。
落ちぶれた王侯貴族だったおかげで、歴史にも少なからず精通していた事が幸いしたとでも言うべきか...
領主に助けてもらいたいと懇願されたのも事実だが、やはり自分の食指が動いたという方が動機としては近いだろう。

私としても、なんとか成功さなくてはと焦ってはいる。
何故なら、私を信頼してくれる多くの仲間達の命も懸かっているからだ。
50
だが今回の任務遂行は、ほぼ不可能に近い。
とある一文の謎を解明し、あるモノを手に入れなくてはいけない。
そしてそれを元手に、スカイリムの遥か東から、全く反対方向の隣国ハイロックのディバイドに向けて、援軍を連れて帰らねばならないのだ。
しかもこの全ての行程を、最低でも一週間以内に終わらせないといけない。

つまりは【不毛】であり、そして【報われない】という事である。


51
川の上に櫓(やぐら)を建て、その上に住居があるようだ。
カーススパイアーという集落は、実にユニークな作りになっている。
52
デルフィン
『ここには昔、フォースウォーン達の野営地が有ったのよ』

椿
『フォースウォーンって...マルカルス事件の?』

デルフィン
『彼等を排除して、今は私達の拠点にしているわ』
53
よく見ると、ブレイズの鎧を着こんだ連中がポツラポツラと見受けられる。
53-1
ボロ着を着た男女もいれば、面白いことにアルゴ二アンやカジートまでいた。
どうやら彼等は、この集落の護衛を司っているようだ。
54
デルフィン
『ここにいる連中は、全員ブレイズよ』

ブレイズは、元々帝国の皇帝護衛を司っていた組織だった。
だが王朝が変わると、帝国からは無用の長物となり、そしてエルフとの白金条約においては、”解散”の二文字を突きつけられた組織である。
54-1
故に彼らは、その存在そのモノが危うい組織とも言えた。
その彼らが、今こうして在る事ができるのは、どうやらスカイリムの内戦は、思いがけない恩恵を与えてくれたのかもしれない。
55
嘗てのブレイズは、皇室に仕える者として、徹底した秘密主義の組織だったと聞いた事がある。
だがここにいる彼らの表情を見ていると、そんな堅苦しい印象はまったく感じられなかった。
56
少し歩いたところで、巨大な石の階段に差し掛かった。
上ではブレイズの鎧を着こんだ若々しい男が、我々を出迎えてくれた。

タケオ
『お帰りなさいデルフィン』

デルフィン
『ただいまタケオ。エズバーンはいる?』

タケオ
『ええ、聖堂にいますよ^^』

二人は軽く挨拶を交した。
57
デルフィン
『紹介するわ。
うちのホープのタケオよ。
彼には留守中の私の代わりを頼んでおいたの。
なかなか優秀な男よ^^』

そう紹介されると、彼は我々を笑顔で迎えてくれた。

タケオ
『みなさん、スカイ・ヘイヴン聖堂によくお越しくださいました。
タケオと申します。
ゆっくりして行ってください...と言いたいのですが、
そうもいかなそうなので、できる限りのお世話をさせていただきますm(_ _)m』

将来有望そうな顔つきをしている。
58
こんな雰囲気を見せられれば、ブレイズもなかなか居心地がイイのかもしれない。
初めてデルフィンに会った時、彼女からの要求を断った事に、少々後ろめたさを感じた。
59
本堂に到着するまでに、彼女はスカイ・ヘイヴン聖堂という場所について色々と説明してくれた。
ブレイズの聖堂はタムリエルの各地に存在しており、ここはその一つで、元々は前哨基地でもあったらしい。
既に千年以上も経過しており、歴史ある建築物なんだそうだ。
60
ところでスカイリムと言えば、嘗ての竜戦争を経てきた歴史が有り、邪竜アルドゥインが復活したという噂は、ハイロックでも耳にしていた。
60-1
デルフィンの話では、レマンのようなドラゴン・ボーンが復活するはずだったのだが、彼女は”あいつは違う”と言い張っている。
少々感情的になっているようで、話の内容が上手く呑み込めなかったのだが...
どうもアルドゥインを倒した人物は、まだスカイリムにいるらしく、彼女はその人物とは現在、不和状態にあるらしい。

61
本堂に到着した途端に、巨大なレリーフが目に入り込んできた。
素晴らしく精巧な作り込みであり、何かの歴史を現しているようにも見える。
考古学を趣向とする私としては、思わず食指が動いてしまった。
62
カズ
『これは美しい...』

たまらず口の端から漏れてしまう。
62-1
エズバーン
『アルドゥインの壁だ』

初老の男性が近づき、声を掛けてきた。

カズ
『アルドゥインの壁?』
63
エズバーン
『この壁は第一紀の2812年に建設が始まり、帝国中の名工が集められ、およそ7年の年月をかけて制作された。
当時のブレイズの前身であるドラゴンガードが、後世に警鐘を鳴らすために作らせたのだ』

カズ
『警鐘...』
64
エズバーン
『ここには、アルドゥインの復活の予言が刻まれている。
そして世界を喰らいし者を、時の彼方に封印した三人の英雄の事も描かれているのだ』

私は少々驚いた。
噂でしか耳にしなかったが、アルドゥインというドラゴンは、やはり存在したらしい。
65
エズバーン
『もっとも、アルドゥインが死んだ今は、ただの彫刻なのかもしれないがな^^
...エズバーンだ』

彼は私に握手を求めてきた。

カズ
『カズと申します』
66
エズバーン
『デルフィンの言うエメリック王の末裔と言うのは、貴方でよろしいのかな?』

カズ
『は、はい...』

少々恥ずかし気に応えた。
67
エズバーン
『元王族の方だというのに、むさ苦しい場所で申し訳ない...』

彼は恭しく口にする。

カズ
『いえ、そのような事は...』

エズバーン
『なにぶんブレイズは、未だに人手不足でな...』

こんな風に扱われる事は、心苦しくも思えてくる。
68
エズバーン
『多分、デルフィンにも誘されたんじゃないかな?』

カズ
『えぇ...』

最初は気乗りがしなかったが、今は少し違っていた。
69
エズバーン
『まぁ、その事は後々という事で...今は心に留めておいてもらえればそれでいい』
70
最もだ。
今日はその為にここに来たのではないのだから...
私は軽く頷いた。

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[備考]

◎桃李自ずと小道を成す
桃(もも)や李(すもも)の実がなる木の下には、放っておいても自然と人が歩く道ができるという意味。
人望や人徳、あるいは魅力のある人物の元には、何もしなくても自然と人が集まってくるという意味。

◎ウィッチマン
ウェストリーチ地方における原住民族達で、主にブレトン種によって構成されている一派です。
彼等は魔女やデイドラ崇拝によって、独自のコミュニティを形成しているようですが、あまり好ましい連中とはいえません。
実際の【Beyond Reach】においても、見るからに獣のような集団であり、かなり強力な敵となって登場しています。

スカイリムにおけるリーチメン(後のフォースウォーン)の原型とも目されているらしいです。
フォールウォーンも彼等同様不気味な儀式や魔法を用いており、強力な一派となっています。
ウィッチマンはその更に上を行くと言っていいでしょう。

ウィッチマンについてはロアな設定が見当たらなかったので、断言は控えさせていただきます。
因みに【TES:Legends】というカードゲームに登場しており、彼等はリーチ奪還の為に戦っているようです。
また【ESO】においては【Witchman Armor】という鎧が存在しているようですね。

◎上級王エメリック
エルダー・スクロールズ・オンライ(ESO)に登場する上級王。
エメリックは商人出身の貴族で、匠な話術と交渉術によってブレトン、レッドガード、オークの三種族を纏め、同盟を勝ち取り、ダガ―フォール・カヴァナントを結成。
シロディールのルビーの玉座奪還の戦いに挑んだ人物。

エメリック2

今回の主人公であるカズは、彼の子孫と言う無茶設定をしてみましたw
実はナディアはESO未プレイなのでよくわかりませんw
ESOの時代はスカイリムから約1000年前の出来事で、設定上は第二紀582年が舞台となっています。
TES(ザ・エルダー・スクロールズ)シリーズにおいて、最も長いとされている第一紀が終わり、第二紀に入ると帝国の支配は人間からアカヴィリという別種族が支配するようになります。
アカヴィリは実に様々な文化や政治的手腕を発揮し、タムリエル大陸に多くの恩恵を残してくれるのですが、僅か400年と言う短い年月で彼らの支配は終わってしまいます。
その後帝国は皇帝空位の時代に入り、後の第三紀を宣言するタイバー・セプティムが台頭を掲げるまで、タムリエル全土で約400年という長い混迷の時代が続く事になります。

◎カズ
ナディアが作成したフォロワーさんです。
行きつけの床屋さんがモデルになっており、本人様の希望から実際の通り名を使わせていただきました。

彼は序章の主人公です。
なので殆どの場合、彼の目線で物事が語られています。

カズは嘗てのウェイレストの上級王である、エメリック王の末裔であり、現在は政権を奪われてしまい落ちぶれた王侯貴族となっていますが、奴隷と何ら変わりません。
彼の一族は政権が転覆した後に粛清される事はなく、国民に情を見せるという理由で強制的に現政権に仕えせられました。
こうする事で政治的にも上手く回るというウェイレスト独自の統治法によって、カズは生きながらえる事ができたのです。

一応彼の父親は”理髪師”という設定であり、そのおかげで王族達にはかなり信頼されていました。
なのでカズ自身もある程度の自由が認められ、幼い頃より歴史が好きだったという事で、考古学を専門とする人物に設定しています。

※王宮の理髪師は、王を殺すことのできる刃物を持っている事から、身分が高い事が多々ある。

◎アカヴィルとアカヴィリ
アカヴィルは大陸の事を指し、アカヴィリとはアカヴィル大陸に住まう種族全体を指すそうです。
アカヴィル大陸は、タムリエルの東に位置する巨大な大陸です。
色々と調べてみたのですが、調べるたびにアカヴィル大陸は様々な形となって描かれているので、恐らく”よくわかっていないのでは?”と思い、SOSの物語上には地図を掲載しませんでした。

◎リーチ事変
この事件はSOS各所で語られている出来事で、特に第十一話EP2においては物語の舞台になっています。

◎Firone`s Followers
【ツバキ・ハドソン】
【メアリー・アイレンブルク】
【シャルロット・イザヴェル・スクルージ】
言わず者がなの【フィロン】君のフォロワーさん、三人娘です。
オリジナルの設定では、ハイロックから来た椿ちゃんを追って、幼馴染の二人が合流し、ホワイトランにて仕事を請負う自警団という独自の組織となっているようです。
彼女たちはホワイトランホールドを拠点にしつつ、様々な難事件に立ち向かって行くというお話を、御本人のサイトにて読む事ができます。

SOSではハイロックエバーモア出身の貴族で、元々はそこで自警団をやっていたのだが、父親の勧めで騎士団を結成。
新米騎士団として国境の町ディバイドに派遣され、今は領主の下で働いているといった設定です。
今回は最終目的にウルフリックのゴマを擦らないといけないないので、ハイエルフであるシャルロットさんだけディバイドに残る事になりました。

因みに今回のテーマの一つである【アカヴィリ系ブレトン】という種族は、椿さんが元になっています。
主人公であるカズもこの種族になります。

フィロン君の三人娘は前々からSOSに出てもらおうと考えていたのですが、なかなか設定が噛み合わず、今回序章改編という事もあり、思い切って彼女達を使わせていただく事にしました。
フィロン君(人''▽`)ありがとう☆ございます
これからのRPに色々と使わせて頂こうと思います(*´▽`*)ワーイ
因みにお父さんのフォロワー化も待っているので、よろしくお願い致しますm(_ _)m

◎タケオ
nariteteさんが作成されたフォロワーさんです。
SOSではスカイ・ヘイヴン聖堂にてエズバーンの護衛役を務めてもらいました。
なのでエズバーンが行く所には、彼も必ず着いていく設定です。

彼は第三紀のオブリビオン・クライシスにおけるシロディール・チャンピオンです。
【深淵の暁】を壊滅させ【メイルーンズ・デイゴン】を撃退し、マーティンが皇帝の座についた後、シヴァリング・アイルズに調査に向かった後、行方不明になったという人物です。
実際の歴史とは違う、パラレルワールドから来た存在とでも言いましょうか、nariteteさんの設定があまりにもユニークだったので、ぜひ使おうと決意しました^^v

SOSで彼がスカイ・ヘイヴン聖堂にいるのには理由があり、そして彼しか知らないブレイズの事実を知っているという設定です。

nariteteさん、素晴らしフォロワーさんを(人''▽`)ありがとう☆ございます!
じっくり使わせて頂こうと思いますので、よろしくお願い致しますm(_ _)m

◎スカイヘヴン聖堂ではなく、スカイヘイヴン聖堂
ヘイヴンは避難所という意味があるらしく、ここは誤訳らしい。

◎レマン
レマン・シロディール
第一紀後期に活躍した英雄にして第二帝国の立役者。
DLC[Dragonborn]におけるミラークが登場するまでは、公的に最古のドラゴンボーンとして認知されていた人物。
ペイル峠の戦いにてタムリエルに侵攻してきたアカヴィリ軍を降伏させ、彼らを積極的に採用する事により、ドラゴンガード(後のブレイズ)の一団を配下に加える事となる。
皇帝の戴冠式や帝国の紋章(スカイリムのエンブレム)など、様々な事柄がこの時代に制定され、後の帝国の礎となった。

[使用MOD]

Beyond Reach...今話の主な舞台となっているMODです。

Firone`s Followers...フィロン君が作成された三人のフォロワーさんです。御本人様のサイトからリンクがあります。

Takeo Follower 1.0...nariteteさんが作成されたタケオ君フォロワーさんです。使用にはパスワードが必要です。(Pass:championcyrodiil)作者さんご本人から紹介の許可を頂いております。

Covered Carriages...馬車を幌付きの幌馬車に変更してくれます。

2017/8/26/17:40


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